不正リスク対応基準
監査における不正リスク対応基準
出典:企業会計審議会(金融庁)『監査における不正リスク対応基準』平成25年3月26日時点(付録は載せていません)公式ページ:金融庁 企業会計審議会 ↗ 取得元:PDF ↗本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された2か所に線を引いています。
第一
職業的懐疑心の強調
1
監査人は、経営者等の誠実性に関する監査人の過去の経験にかかわらず、不正リスクに常に留意し、監査の全過程を通じて、職業的懐疑心を保持しなければならない。
2
監査人は、職業的懐疑心を発揮して、不正の持つ特性に留意し、不正リスクを評価しなければならない。
3
監査人は、職業的懐疑心を発揮して、識別した不正リスクに対応する監査手続を実施しなければならない。
4
監査人は、職業的懐疑心を発揮して、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を看過することがないように、入手した監査証拠を評価しなければならない。
5
監査人は、職業的懐疑心を高め、不正による重要な虚偽の表示の疑義に該当するかどうかを判断し、当該疑義に対応する監査手続を実施しなければならない。
第二
不正リスクに対応した監査の実施
1
企業及び当該企業が属する産業における不正事例の理解
監査人は、不正リスクを適切に評価するため、企業及び当該企業が属する産業を取り巻く環境を理解するに当たって、公表されている主な不正事例並びに不正に利用される可能性のある一般的及び当該企業の属する産業特有の取引慣行を理解しなければならない。
2
不正リスクに関連する質問
監査人は、経営者、監査役等及び必要な場合には関連するその他の企業構成員に、不正リスクに関連して把握している事実を質問しなければならない。また、監査人は、経営者に対して、当該企業において想定される不正の要因、態様及び不正への対応策等に関する経営者の考え方を質問し、リスク評価に反映しなければならない。
3
不正リスク要因を考慮した監査計画の策定
監査人は、監査計画の策定に当たり、入手した情報が不正リスク要因の存在を示しているかどうか検討し、それらを財務諸表全体及び財務諸表項目の不正リスクの識別及び評価において考慮しなければならない。監査人は、評価した不正リスクに応じた全般的な対応と個別の監査手続に係る監査計画を策定しなければならない。典型的な不正リスク要因は、付録1に例示されているが、この他にも不正リスク要因が存在することがあることに留意しなければならない。
4
監査チーム内の討議・情報共有
監査人は、監査実施の責任者と監査チームの主要構成員の間において、不正による重要な虚偽の表示が財務諸表のどこにどのように行われる可能性があるのかについて討議を行うとともに、知識や情報を共有しなければならない。監査実施の責任者は、監査の過程で発見した事業上の合理性に疑問を抱かせる特異な取引など重要な会計及び監査上の問題となる可能性のある事項を、監査実施の責任者及び監査チーム内のより経験のある構成員に報告する必要があることを監査チームの構成員に指示しなければならない。
5
不正リスクに対応する監査人の手続
監査人は、識別した不正リスクに関連する監査要点に対しては、当該監査要点について不正リスクを識別していない場合に比べ、より適合性が高く、より証明力が強く、又はより多くの監査証拠を入手しなければならない。
6
企業が想定しない要素の組み込み
監査人は、財務諸表全体に関連する不正リスクが識別された場合には、実施する監査手続の種類、実施の時期及び範囲の決定に当たって、企業が想定しない要素を監査計画に組み込まなければならない。
7
不正リスクに対応して実施する確認
監査人は、不正リスクに対応する手続として積極的確認を実施する場合において、回答がない又は回答が不十分なときには、代替的な手続により十分かつ適切な監査証拠を入手できるか否か慎重に判断しなければならない。監査人は、代替的な手続を実施する場合は、監査要点に適合した証明力のある監査証拠が入手できるかどうかを判断しなければならない。代替的な手続を実施する場合において、監査証拠として企業及び当該企業の子会社等が作成した情報のみを利用するときは、当該情報の信頼性についてより慎重に判断しなければならない。
8
入手した監査証拠の十分性及び適切性の評価
監査人は、実施した監査手続及び入手した監査証拠に基づき、不正リスクに関連する監査要点に対する十分かつ適切な監査証拠を入手したかどうかを判断しなければならない。監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手していないと判断した場合は、追加的な監査手続を実施しなければならない。
9
矛盾した監査証拠があった場合等の監査手続の実施
監査人は、監査実施の過程で把握した状況により、ある記録や証憑書類が真正ではないと疑われる場合、又は文言が後から変更されていると疑われる場合、また、矛盾した監査証拠が発見された場合には、監査手続の変更又は追加(例えば、第三者への直接確認、専門家の利用等)が必要であるかを判断しなければならない。
10
不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況
監査人は、監査実施の過程において、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況を識別した場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義が存在していないかどうかを判断するために、経営者に質問し説明を求めるとともに、追加的な監査手続を実施しなければならない。なお、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況は、付録2に例示されているが、この他の状況が該当することがあることに留意しなければならない。
11
不正による重要な虚偽の表示の疑義
監査人は、識別した不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況について、関連して入手した監査証拠に基づいて経営者の説明に合理性がないと判断した場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義があるとして扱わなければならない。また、識別した不正リスクに対応して当初計画した監査手続を実施した結果必要と判断した追加的な監査手続を実施してもなお、不正リスクに関連する十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合には、不正による重要な虚偽の表示の疑義があるとして扱わなければならない。監査人は、不正による重要な虚偽の表示の疑義がないと判断したときは、その旨と理由を監査調書に記載しなければならない。
12
不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合の監査計画の修正
監査人は、監査計画の策定後、監査の実施過程において不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合には、当該疑義に関する十分かつ適切な監査証拠を入手するため、不正による重要な虚偽の表示の疑義に関する十分な検討を含め、想定される不正の態様等に直接対応した監査手続を立案し監査計画を修正しなければならない。
13
不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合の監査手続の実施
監査人は、不正による重要な虚偽の表示の疑義に関連する監査要点について十分かつ適切な監査証拠を入手するため、修正した監査計画にしたがい監査手続を実施しなければならない。
14
専門家の業務の利用
監査人は、不正リスクの評価、監査手続の実施、監査証拠の評価及びその他の監査実施の過程において、不正リスクの内容や程度に応じて専門家の技能又は知識を利用する必要があるかどうかを判断しなければならない。
15
不正リスクに対応した審査
監査人は、不正リスクへの対応に関する重要な判断とその結論について、監査事務所の方針と手続に従って、監査の適切な段階で審査を受けなければならない。
16
不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合の審査
監査人は、不正による財務諸表の重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合には、当該疑義に係る監査人の対応について、監査事務所の方針と手続に従って、適切な審査の担当者による審査が完了するまでは意見の表明をしてはならない。
17
監査役等との連携
監査人は、監査の各段階において、不正リスクの内容や程度に応じ、適切に監査役等と協議する等、監査役等との連携を図らなければならない。監査人は、不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合には、速やかに監査役等に報告するとともに、監査を完了するために必要となる監査手続の種類、時期及び範囲についても協議しなければならない。
18
経営者の関与が疑われる不正への対応
監査人は、監査実施の過程において経営者の関与が疑われる不正を発見した場合には、監査役等に報告し、協議の上、経営者に問題点の是正等適切な措置を求めるとともに、当該不正が財務諸表に与える影響を評価しなければならない。
19
監査調書
監査人は、不正による財務諸表の重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合、当該疑義の内容、実施した監査手続とその結果、監査人としての結論及びその際になされた職業的専門家としての重要な判断について、監査調書に記載しなければならない。
第三
不正リスクに対応した監査事務所の品質管理
1
不正リスクに対応した品質管理
監査事務所は、不正リスクに留意して品質管理に関する適切な方針及び手続を定め、不正リスクに対応する品質管理の責任者を明確にしなければならない。
2
監査契約の新規の締結及び更新における不正リスクの考慮
監査事務所は、監査契約の新規の締結及び更新の判断に関する方針及び手続に、不正リスクを考慮して監査契約の締結及び更新に伴うリスクを評価すること、並びに、当該評価の妥当性について、新規の締結時、及び更新時はリスクの程度に応じて、監査チーム外の適切な部署又は者により検討することを含めなければならない。
3
不正に関する教育・訓練
監査事務所は、監査実施者の教育・訓練に関する方針及び手続を定め、監査実施者が監査業務を行う上で必要な不正事例に関する知識を習得し、能力を開発できるよう、監査事務所内外の研修等を含め、不正に関する教育・訓練の適切な機会を提供しなければならない。
4
不正リスクに対応した監督及び査閲
監査事務所は、不正リスクに適切に対応できるように、監査業務に係る監督及び査閲に関する方針及び手続を定めなければならない。
5
不正リスクに関連して監査事務所内外からもたらされる情報への対処
監査事務所は、監査事務所内外からもたらされる情報に対処するための方針及び手続において、不正リスクに関連して監査事務所に寄せられた情報を受け付け、関連する監査チームに適時に伝達し、監査チームが監査の実施において当該情報をどのように検討したかについて、監査チーム外の監査事務所の適切な部署又は者に報告することを求めなければならない。
6
不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断した場合等の専門的な見解の問合せ
監査事務所は、不正による重要な虚偽の表示を示唆する状況が識別された場合、又は不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断された場合には、必要に応じ監査事務所内外の適切な者(例えば、監査事務所の専門的な調査部門等)から専門的な見解を得られるようにするための方針及び手続を定めなければならない。
7
不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断された場合の審査
監査事務所は、不正による重要な虚偽の表示の疑義があると判断された場合には、修正後の監査計画及び監査手続が妥当であるかどうか、入手した監査証拠が十分かつ適切であるかどうかについて、監査事務所としての審査が行われるよう、審査に関する方針及び手続を定めなければならない。監査事務所は、当該疑義に対応する十分かつ適切な経験や職位等の資格を有する審査の担当者(適格者で構成される会議体を含む)を監査事務所として選任しなければならない。
8
監査事務所内における監査実施の責任者の間の引継
監査事務所は、監査業務の実施に関する品質管理の方針及び手続において、同一の企業の監査業務を担当する監査実施の責任者が全員交代した場合、不正リスクを含む監査上の重要な事項が適切に伝達されるように定めなければならない。
9
監査事務所間の引継
監査事務所は、後任の監査事務所への引継に関する方針及び手続において、後任の監査事務所に対して、不正リスクへの対応状況を含め、監査上の重要な事項を伝達するとともに、後任の監査事務所から要請のあったそれらに関連する調書の閲覧に応じるように定めなければならない。監査事務所は、前任の監査事務所からの引継に関する方針及び手続において、前任の監査事務所に対して、監査事務所の交代事由、及び不正リスクへの対応状況等の監査上の重要な事項について質問するように定めなければならない。監査事務所は、監査事務所間の引継に関する方針及び手続において、監査チームが実施した引継の状況について監査チーム外の適切な部署又は者に報告することを定めなければならない。
10
不正リスクへの対応状況の定期的な検証
監査事務所は、不正リスクへの対応状況についての定期的な検証により、次に掲げる項目が監査事務所の品質管理の方針及び手続に準拠して実施されていることを確かめなければならない。-監査契約の新規の締結及び更新-不正に関する教育・訓練-業務の実施(監督及び査閲、監査事務所内外からもたらされる情報への対処、専門的な見解の問合せ、審査、監査実施の責任者間の引継を含む)-監査事務所間の引継