出題マップ/品基報1監査事務所における品質管理
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品基報1
監査事務所における品質管理
1.本報告書の範囲
11-2JP2345
2.監査事務所の品質管理システム
6789F9-2JP
(1)適用の柔軟性
10
(2)ネットワークとサービス・プロバイダー
11
3.本報告書の規範性
12
4.適用時期
13
5.目的
1415
6.定義
16
1.関連する要求事項の適用と遵守
1718
2.品質管理システム
19
責任
2020-2JP2122F22-2JP
3.事務所のリスク評価プロセス
2324252627
4.ガバナンス及びリーダーシップ
28
5.職業倫理及び独立性
29
6.契約の新規の締結及び更新
30F30-2JP
7.業務の実施
31F31-2JPF31-3JPF31-4JP
8.資源
32F32-2JP
9.情報と伝達
33
10.特定の対応
3434-2JP34-3JPF34-4JP
11.モニタリング及び改善プロセス
35
(1)モニタリング活動のデザインと実施
363738F38-2JP39
(2)発見事項の評価と不備の識別
40
(3)識別された不備の評価
41
(4)識別された不備への対処
424344
(5)特定の業務に関する発見事項
45
(6)モニタリング及び改善に関する継続的なコミュニケーション
4647
12.ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス
4849
(1)監査事務所の品質管理システムに関するネットワークのモニタリング活動
50
(2)ネットワークがネットワーク・ファームを対象として実施するモニタリング活動
51
(3)監査事務所が識別したネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの不備
52
13.品質管理システムの評価
53545556
14.文書化
57585960
15JP.監査事務所間の引継
61JP62JP63JP
1.本報告書の範囲(第3項及び第4項参照)
A1A2
2.監査事務所の品質管理システム(第6項から第9項参照)
A3A4A5
3.本報告書の規範性(第12項参照)
A6A7A8A9
(1)不備(第16項(1)参照)
A10A11A12
(2)監査チーム(第16項(6)参照)
A13
(3)外部の検証(第16項(7)参照)
A14
(4)発見事項(第16項(8)参照)
A15A16A17
(5)監査事務所(第16項(9)参照)
A18
(6)ネットワーク(第16項(12)及び第48項参照)
A19
(7)専門要員(第16項(14)参照)
A20A21
(8)我が国における職業倫理に関する規定(第16項(20)及び第29項参照)
A22A23A24
(9)対応(第16項(21)参照)
A25A26A27
(10)サービス・プロバイダー(第16項(22)参照)
A28
5.関連する要求事項の適用と遵守(第17項参照)
A29
(1)品質管理のデザイン、適用及び運用(第19項参照)
A30A31
(2)責任(第20項、第21項及び第28項(4)参照)
A32A33A34A35A36A37A38FA38-2JP
7.事務所のリスク評価プロセス(第23項参照)
A39A40A41
(1)品質目標の設定(第24項参照)
A42A43A44
(2)品質リスクの識別と評価(第25項参照)
A45A46A47A48
(3)品質リスクに対処するための対応のデザインと適用(第16項(21)及び第26項参照)
A49A50A51
(4)監査事務所の性質及び状況又は監査事務所が実施する業務の内容と状況の変化(第27項参照)
A52A53A54
(1)品質へのコミットメント(第28(1)参照)
A55A56
(2)リーダーシップ(第28項(2)及び第28項(3)参照)
A57A58
(3)組織構造(第28項(4)参照)
A59
(4)資源(第28項(5)参照)
A60A61
9.職業倫理及び独立性(第16項(20)及び第29項参照)
A62A63A64A65A66
(1)業務の内容及び状況、並びに関与先の誠実性と倫理的価値観(第30項(1)①参照)
A67A68FA68-2JPA69A70A71
(2)監査事務所の業務を実施する能力(第30項(1)②参照)
A72A73A74
(1)監査チームの責任、並びに指揮、監督及び査閲(第31項(1)及び第31項(2)参照)
A75A76A77A78
(3)専門的な見解の問合せ(第31項(4)参照)
A79A80A81FA81-2JP
(4)監査上の判断の相違(第31項(5)参照)
A82
(5)業務の文書化(第31項(6)参照)
A83A84A85
12.資源(第32項参照)
A86A87
①専門要員の採用、育成及び継続雇用、並びに専門要員の適性と能力(第32項(1)及び第32項(4)参照)
A88A89A90A91A92A93A94
④各業務に割り当てられる監査チームのメンバー(第32項(4)参照)
A95A96A97
(2)テクノロジー資源(第32項(6)参照)
A98A99A100A101
(3)知的資源(第32項(7)参照)
A102A103
(4)テクノロジー資源及び知的資源の利用(第32項(6)から第32項(7)参照)
A104
(5)サービス・プロバイダー(第16項(22)及び第32項(8)参照)
A105A106A107A108
13.情報と伝達(第33項参照)
A109
(1)監査事務所の情報システム(第33項(1)参照)
A110A111
(2)監査事務所内のコミュニケーション(第33項(2)及び第33項(3)参照)
A112
①監査事務所のネットワーク内又は当該ネットワーク及びサービス・プロバイダーに対するコミュニケーション(第33項(4)①参照)
A113
②監査事務所外の他の者とのコミュニケーション(第33項(4)②参照)
A114A115A116
(1)我が国における職業倫理に関する規定(第34項(1)参照)
A117A118A119A120A121
(3)契約の新規の締結又は更新の後に知ることとなった情報(第34項(4)参照)
A122A123
(4)外部とのコミュニケーション(第34項(5)参照)
A124A125A126A127A128A129A130
③外部の者とのコミュニケーションの内容、時期及び範囲並びに適切な様式(第34項(5)③参照)
A131A132A133A134A135A135-2JPA136A137A138
(1)モニタリング活動のデザインと適用(第37項及び第38項参照)
A139A140A141A142
①監査事務所のリスク評価プロセス、並びにモニタリング及び改善プロセスのデザイン(第37項(3)参照)
A143A144
②品質管理システムの変更(第37項(4)参照)
A145
③過去のモニタリング活動(第37項(5)参照)
A146A147
④その他の関連情報(第37項(6)参照)
A148A149A150
(2)監査業務の検証(第38項参照)
A151A152A153A154
(3)モニタリング活動を実施する者(第39項(2)参照)
A155A156
(4)発見事項の評価と不備の識別(第16項(1)、第40項及び第41項参照)
A157A158A159A160A161A162
(5)識別された不備の評価(第41項参照)
A163A164
①識別された不備の根本原因(第41項(1)参照)
A165A166A167A168A169
(6)識別された不備への対処(第42項参照)
A170A171A172
①特定の業務に関する発見事項(第45項参照)
A173
(7)モニタリング及び改善に関する継続的なコミュニケーション(第46項参照)
A174
16.ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス(第48項参照)
A175A176A177
(1)監査事務所の品質管理システムにおけるネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス(第49項参照)
A178A179A180
(2)監査事務所の品質管理システムに関するネットワークのモニタリング活動(第50項(3)参照)
A181A182A183A184
(4)監査事務所が識別したネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの不備(第52項参照)
A185A186A187A188A189
(1)品質管理システムについての結論付け(第54項参照)
A190A191A192A193A194A195
(2)迅速かつ適切な措置及び追加的なコミュニケーション(第55項参照)
A196A197A198A199A200A201A202A203A204A205A206
19JP.監査事務所間の引継(第61JP項参照)
A207JPA208JP
20JP.共同監査(第63JP項参照)
A209JP
品基報1

品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」

出典:日本公認会計士協会『品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」』最終改正 2024年9月26日公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧 ↗本文(要求事項・適用指針)を収録。付録(文例・表)と「適用」の節は載せていません。本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された3か所に線を引いています。

改正の予定:2026年3月18日に改正されています(サステナビリティ保証業務実務指針5000の公表等に伴う改正。表題は「事務所における品質管理」に変わります)。改正後の版は2027年4月1日以後開始する事業年度の監査から適用。ここでは、いま適用されている2024年9月26日改正の版を載せています。 JICPA 2026年3月の改正の公表 ↗

1.本報告書の範囲

1
本報告書は、監査事務所における財務諸表監査、中間監査及び期中レビュー並びに内部統制監査の品質管理に関する実務上の指針を提供するものである。なお、中間監査及び期中レビューは財務諸表監査の一環として実施されるものであり、また、内部統制監査は財務諸表監査と一体として実施されるものであるため、これらの業務の品質管理は、財務諸表監査の品質管理の一環として実施する。ただし、それぞれの業務の目的に照らして財務諸表監査と取扱いが異なる点は、関連する適用指針に記載している。また、本報告書は、日本公認会計士協会が公表する報告書及び実務指針において、本報告書の適用が求められている業務における監査事務所の品質管理において適用される。
1-2JP
本報告書では、国際監査・保証基準審議会の公表するISQM1において規定された、「本報告書の範囲及び目的」、「要求事項」又は「適用指針」には含まれていないが、日本公認会計士協会が本報告書の起草に当たり追加した規定については、項番号に「JP」の文字を付している。一方、ISQM1において規定されているが、本報告書において導入されていない規定については、「欠番」としている。また、本報告書には、監査における不正リスク対応基準(以下「不正リスク対応基準」という。)に準拠して実施される監査業務を行う監査事務所に遵守が求められる要求事項と関連する適用指針(項番号の冒頭に「F」が付されている。)が含まれている。不正リスク対応基準に準拠して実施される監査業務を行っていない監査事務所においても、監査事務所における方針又は手続を定める際に、当該要求事項と関連する適用指針を参考にすることができる。
2
審査は、監査事務所の品質管理システムの一環であり、また、(1)本報告書は、審査の対象とすることが要求される業務に関する方針又は手続を整備する監査事務所の責任を扱う。(2)品質管理基準報告書第2号「監査業務に係る審査」は、審査担当者の選任と適格性及び審査の実施と文書化を扱う。
3
審査に関する指針は、品質管理基準報告書第2号に、個々の監査業務における品質管理に関する指針は、監査基準報告書220「監査業務における品質管理」にそれぞれ記載されている。
4
本報告書は、関連する職業倫理に関する規定と併せて適用される。法令等又は関連する職業倫理に関する規定は、本報告書に記載されている責任を越えて、監査事務所の品質管理に関する責任を要求することがある(A2項参照)。
5
本報告書は、本報告書第1項に記載している業務を行う全ての監査事務所に適用される(すなわち、監査事務所がこれらの業務のいずれかを実施する場合、本基準が適用され、また本基準の要求事項に従って整備された品質管理システムは、監査事務所によるこれらの業務の一貫した実施を可能にする。)。

2.監査事務所の品質管理システム

6
品質管理システムは、継続的かつ反復的に運用され、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化に対応して運用されるべきものであり、一方向で直線的に運用されるものではない。本報告書の目的においては、品質管理システムは、以下の9項目の構成要素を対象としている(A3項参照)。(1)監査事務所のリスク評価プロセス(2)ガバナンス及びリーダーシップ(3)職業倫理及び独立性(4)監査契約の新規の締結及び更新(5)業務の実施(6)監査事務所の業務運営に関する資源(7)情報と伝達(8)品質管理システムのモニタリング及び改善プロセス(9)監査事務所間の引継
7
本報告書は、品質管理システムの構成要素が相互に連携することにより、監査事務所が主体的に業務の品質を管理できるよう、各構成要素を整備及び運用するために、リスク・アプローチを適用することを監査事務所に要求する(A4項参照)。
8
リスク・アプローチは、以下により本報告書の要求事項に組み込まれている。(1)品質目標の設定監査事務所が設定する品質目標は、監査事務所が達成すべき品質管理システムの構成要素に関連する目標である。監査事務所は、本報告書が規定する品質目標の他、品質管理システムの目的を達成するために監査事務所が必要と定めた品質目標を設定することが要求される。(2)品質目標の達成を阻害し得るリスクの識別と評価(本報告書では品質リスクと記載している。)監査事務所は、対応をデザインし適用するために、品質リスクを識別し評価することが要求される。(3)品質リスクに対処するための対応のデザインと適用監査事務所の品質リスクへの対応の内容、時期及び範囲は、品質リスクに対する評価の根拠に基づいて決定されるものである。
9
本報告書は、品質管理システムに関する最高責任者が、少なくとも年に一度、品質管理システムを評価し、品質管理システムが第14項(1)及び(2)に規定されている当該システムの目的を達成しているという合理的な保証を監査事務所に提供しているかどうかを結論付けることを要求する(A5項参照)。
F9-2JP
監査事務所は、不正リスクに留意して品質管理に関する適切な方針及び手続を定めなければならない。

(1)適用の柔軟性

10
リスク・アプローチを適用する際には、監査事務所は以下を考慮することが要求される。(1)監査事務所の性質及び状況(2)監査事務所が実施する業務の内容及び状況各監査事務所の品質管理システムの設計は、特にその複雑性や組織化の点において多様なものとなる。例えば上場企業の財務諸表監査を含む、多種多様な企業に対して様々な業務を実施する監査事務所は、財務諸表のレビューや調製業務のみを実施する監査事務所に比べ、より複雑で組織化された品質管理システムとそれを支える文書化が必要となる。

(2)ネットワークとサービス・プロバイダー

11
本報告書は、以下の場合の監査事務所の責任を扱う。(1)監査事務所がネットワークに属し、ネットワークの要求事項を遵守する場合又は品質管理システムや業務の実施において、ネットワーク・サービスを利用する場合(2)監査事務所が、品質管理システムや業務の実施において、サービス・プロバイダーの資源を利用する場合監査事務所がネットワークの要求事項を遵守する場合又はネットワーク・サービスやサービス・プロバイダーからの資源を利用する場合であっても、監査事務所は自らの品質管理システムについて責任を負う。

3.本報告書の規範性

12
第14項には、本報告書に従った監査事務所の目的を記載している。本報告書には以下が含まれる(A6項参照)。(1)監査事務所が第14項の目的を達成できるように定められた要求事項(A7項参照)(2)関連する指針を記載した適用指針(A8項参照)(3)本報告書を適切に理解するための背景説明等(4)定義(A9項参照)

4.適用時期

13
本報告書の適用時期は以下のとおりである。・本報告書(2011年12月22日)は、2012年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。・本報告書(2013年6月17日)は、2014年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。なお、不正リスク対応基準に基づく指針(項番号の冒頭に「F」が付されているもの)及び第60-2項については、2013年10月1日から適用する。・本報告書(2014年4月4日)は、2015年4月1日以後に開始する事業年度又は会計期間に係る監査から適用する。ただし、監査基準委員会報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」又は監査基準委員会報告書805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」に基づいて2014年4月1日以後に監査報告書を発行する監査の場合には本報告書を適用する。・本報告書(2015年5月29日)は、2015年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。・本報告書(2019年2月27日)は、2019年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。・本報告書(2022年6月16日)は、2023年7月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。なお、公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。本報告書中、品質管理システムの評価については、本報告書の適用以後に開始する監査事務所の会計年度の末日から適用することができる。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。なおその場合、品質管理基準委員会報告書第2号(2022年6月16日)及び監査基準委員会報告書220(2022年6月16日)と同時に適用する。・本報告書(2022年10月13日)のうち、倫理規則に関する事項は、2023年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。ただし、本報告書を、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査から早期適用することを妨げない。なお、品質管理に関する事項は、2022年6月16日付け改正の本報告書、品質管理基準委員会報告書第2号「監査業務に係る審査」及び監査基準委員会報告書220「監査業務における品質管理」と同時に適用する。・本報告書(2023年1月12日)は、2024年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。また、公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。その場合、品質管理基準委員会報告書第2号「監査業務に係る審査」(2022年6月16日)及び監査基準委員会報告書220「監査業務における品質管理」(2022年6月16日)と同時に適用する。なお、2022年6月16日付けで改正された品質管理基準に関する事項は、品質管理基準委員会報告書第2号(2022年6月16日)及び監査基準委員会報告書220(2022年6月16日)と同時に適用する。さらに、本報告書(2022年10月13日)のうち、倫理規則に関する事項は、2023年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。ただし、本報告書を、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査から早期適用することを妨げない。

5.目的

14
本報告書における監査事務所の目的は、監査事務所が実施する本報告書の適用対象業務に関し、以下の合理的な保証を提供するために、監査事務所が品質管理システムを整備し運用することである。(1)監査事務所及び専門要員が、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って自らの責任を果たすとともに、当該基準及び法令等に従って監査業務を実施すること。(2)監査事務所又は監査責任者が状況に応じた適切な監査報告書を発行すること。
15
公共の利益は、より質の高い監査を一貫して実施することにより実現される。監査事務所が品質管理システムを整備し運用することで、第14項(1)及び(2)に記載されている品質管理システムの目的の達成についての合理的な保証を確保し、より質の高い監査を一貫して実施することが可能となる。より質の高い監査は、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って、業務を計画し実施し、報告することによって達成される。職業的専門家としての基準の目的を達成し、適用される法令等における要求事項を遵守するためには、職業的専門家としての判断を行使し、業務の種類に応じて職業的専門家としての懐疑心を保持及び発揮することが必要である。

6.定義

16
本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。(1)「監査事務所の品質管理システムの不備(本報告書において「不備」と表記する。)」-不備は、以下のいずれかの場合に存在する(A10項、A159項及びA160項参照)。①品質管理システムの目的を達成するために必要な品質目標が設定されていない場合②品質リスク又は品質リスクの組合せが、識別されていない又は適切に評価されていない場合(A11項参照)③対応又は対応の組合せが、適切に整備又は有効に運用されていないことにより、関連する品質リスクの発生可能性が許容可能な水準まで低減されていない場合④①~③以外で、品質管理システムのある側面が欠如している、若しくは適切に整備又は有効に運用されていないことにより、本報告書の要求事項が満たされていない場合(A12項参照)(2)「監査調書」-実施した監査手続、入手した監査証拠及び監査人が到達した結論の記録をいう。(3)「監査責任者」-監査事務所に選任された、監査業務の実施の責任者、すなわち、専門要員のうち、監査業務とその実施及び発行する監査報告書に対する責任を負う社員等をいう。(4)「審査」-審査担当者によって監査報告書日又はそれ以前に実施される、監査チームが行った重要な判断及び到達した結論についての客観的評価をいう。(5)「審査担当者」-審査を実施するために監査事務所が選任した社員等、監査事務所内の他の者又は外部の者をいう。(6)「監査チーム」-個々の監査業務を実施する全ての社員等及び専門職員、並びに当該業務において監査手続を実施する他の全ての者から構成される。監査人の利用する外部の専門家(監査基準報告書620「専門家の業務の利用」第6項)は含まない(A13項参照)。(7)「外部の検証」-監査事務所の品質管理システム又は監査事務所が実施した監査業務に関連して、外部の監督当局等によって実施される検証又は調査をいう。これには、公認会計士・監査審査会による検査及び日本公認会計士協会による品質管理レビューが含まれる(A14項参照)。(8)「発見事項(品質管理システムに関する)」-モニタリング活動の実施、外部の検証及びその他の関連する情報源から蓄積された、品質管理システムの整備及び運用に関する情報のうち、一つ又は複数の不備が存在する可能性を示すものをいう(A15項からA17項参照)。(9)「監査事務所」-公認会計士法に基づき登録された個人事務所又は監査法人をいう(A26項参照)。(10)JP「大会社等」-ア.全ての上場会社等イ.法令により、監査を実施するに当たり、上場会社等と同じ独立性の要件が求められる事業体ウ.倫理規則第400.8項により追加的に大会社等と同様に扱うこととした事業体上記ア及びイについて、我が国においては、公認会計士法上の大会社等がこれらの要件を満たしている。(11)「ネットワーク・ファーム」-ネットワークに所属する監査事務所又は事業体をいう。(12)「ネットワーク」-監査事務所よりも大きな組織体であって、所属する事業体の相互の協力を目的としており、かつ以下のいずれかを備えている組織体をいう(A19項参照)。ア.利益の分配又は費用の分担を目的にしていること。イ.共通の組織により所有、支配及び経営されていること。ウ.品質管理の方針又は手続を共有していること。エ.事業戦略を共有していること。オ.ブランド名を共有していること。カ.業務運営に関する資源の重要な部分を共有していること。(13)「社員等」-監査事務所において、専門業務の業務執行権を有する全ての個人をいう。したがって、監査法人の場合は監査法人の社員をいい、個人事務所及び共同事務所の場合は業務執行責任者として業務を行っている者をいう。(14)「専門要員」-監査事務所に所属する社員等及び専門職員全体をいう(A20項及びA21項参照)。(15)「職業的専門家としての判断」-監査事務所の品質管理システムの整備及び運用における適切な行動について十分な情報を得た上で判断を行う際に、職業的専門家としての基準に照らして、関連する研修、知識及び経験を適用することをいう。(16)「職業的専門家としての基準及び適用される法令等」-専門業務を実施するに当たって遵守しなければならない基準及び適用される法令等をいう。監査基準・不正リスク対応基準(法令により準拠が求められている場合)・監査基準報告書・監査に関する品質管理基準・品質管理基準報告書、公認会計士法・同施行令・同施行規則、金融商品取引法、会社法、日本公認会計士協会が公表する会則・倫理規則・報告書・実務指針・通達その他から構成される。(17)「品質目標」-品質管理システムの構成要素について監査事務所が達成すべき成果(18)「品質リスク」-①発生可能性及び②個別に又は他のリスクと組み合わせて、一つ又は複数の品質目標の達成を阻害する可能性の双方が合理的に存在するリスク(19)「合理的な保証」-本報告書において、絶対的ではないが、高い水準の保証をいう。(20)「我が国における職業倫理に関する規定」-監査事務所並びに監査チーム及び審査担当者が従うべき職業倫理に関する規定をいい、公認会計士法・同施行令・同施行規則、日本公認会計士協会が公表する会則、倫理規則及びその他の倫理に関する規定から構成される。なお、「職業倫理に関する規定」と表記することもある。(21)「(品質管理システムに関連する)対応」-品質リスクに対処するために監査事務所がデザイン及び適用している方針又は手続(A25項からA27項及びA50項参照)①方針とは、品質リスクに対処するために、すべきこと、又はすべきでないことを示すものをいい、文書化されていることもあれば、伝達の中で明示的に述べられていることもあり、行為や意思決定を通じて黙示的に示されていることもある。②手続とは、方針を実行するための行為をいう。(22)「サービス・プロバイダー」-品質管理システム又は監査業務の実施において利用される資源を提供する監査事務所の外部の個人又は組織をいう。したがって監査事務所のネットワーク、ネットワーク・ファーム又はその他形態にかかわらずネットワークに属する組織はサービス・プロバイダーには含まれない(A28項及びA105項参照)。「監査に関する品質管理基準」における「外部の業務提供者」と同義である。(23)「専門職員」-専門業務に従事する社員等以外の者をいう。監査事務所が雇用する専門家(会計又は監査以外の分野において専門知識を有する個人)を含む。(24)「品質管理システム」-以下の合理的な保証を提供するために監査事務所が整備及び運用するシステム①監査事務所及び専門要員が、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って自らの責任を果たすとともに、当該基準及び法令等に従って監査業務を実施すること。②《Ⅱ監査事務所又は監査責任者が状況に応じた適切な監査報告書を発行すること。要求事項》

1.関連する要求事項の適用と遵守

17
監査事務所は、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況により、要求事項が監査事務所に関連しない場合を除き、本報告書の各要求事項に準拠しなければならない(A29項参照)。
18
品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者は、本報告書の目的を理解し、要求事項を適切に適用するために、適用指針を含め、本報告書を理解しなければならない。

2.品質管理システム

19
監査事務所は、品質管理システムを整備し運用しなければならない。その際、監査事務所は、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況を考慮した上で、職業的専門家としての判断を行わなければならない。品質管理システムの構成要素であるガバナンス及びリーダーシップは、品質管理システムの整備及び運用を支える環境を確立するものである(A30項及びA31項参照)。

責任

20
監査事務所は以下の責任を事務所内部で割り当てなければならない(A32項からA35項参照)。(1)品質管理システムに関する最高責任。当該責任は、監査事務所の最高責任者又は監査事務所の業務執行理事(若しくはそれに相当するもの)又は適切と判断される場合、監査事務所の理事会(若しくはそれに相当するもの)に割り当てられなければならない。(2)品質管理システムの整備及び運用に関する責任(3)品質管理システムの特定の側面の運用に関する責任。これには、以下の運用に関する責任が含まれる。①独立性に係る要求事項の遵守(A36項参照)②モニタリング及び改善プロセス
20-2JP
監査事務所の最高責任者は品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負う。なお、監査事務所が品質管理システムに関する最高責任を監査事務所の最高責任者以外に割り当てた場合においても、監査事務所の最高責任者は品質管理システムに関する説明責任を含む最終的な責任を負う。
21
監査事務所は、第20項に定める役割を割り当てる際に、その者が以下の要件を満たすかどうかを判断しなければならない(A37項参照)。(1)適切な経験、知識、影響力及び事務所内の権限を有し、かつ割り当てられた責任を果たすための十分な時間を有すること(A38項参照)。(2)割り当てられた役割及び当該役割の遂行について説明責任を負う旨を理解していること。
22
監査事務所は、品質管理システムの運用、独立性に係る要求事項の遵守の運用並びにモニタリング及び改善プロセスの運用について責任を割り当てられた者が、それぞれ、品質管理システムに関する最高責任者に対して直接報告することを可能とする伝達経路が存在するかどうかを判断しなければならない。
F22-2JP
監査事務所は、不正リスクに関する品質管理の責任者を明確にしなければならない(FA382JP項参照)。

3.事務所のリスク評価プロセス

23
監査事務所は、リスク評価プロセスをデザインし適用しなければならない。リスク評価プロセスは、品質目標を設定し、品質リスクを識別して評価し、また品質リスクに対処するための対応をデザインし適用するものである(A39項からA41項参照)。
24
監査事務所は、品質管理システムの目的を達成するために、本報告書により規定された品質目標及び監査事務所が必要と考える追加の品質目標を設定しなければならない(A42項からA44項参照)。
25
監査事務所は、品質リスクへの対応の整備及び運用の基礎を提供するために、品質リスクを識別し評価しなければならない。その際、監査事務所は以下を実施しなければならない。(1)品質目標の達成を阻害し得る状況、事象、環境又は行動について理解する。これには以下が含まれる(A45項からA47項参照)。①監査事務所の性質及び状況について、以下に関連する事項ア.監査事務所の複雑さと運営上の特徴イ.監査事務所の戦略及び業務上の意思決定並びに行動、ビジネスプロセス及びビジネスモデルウ.リーダーシップの特徴及び経営スタイルエ.サービス・プロバイダーから提供される資源を含む、監査事務所の資源オ.法令等、職業的専門家としての基準及び監査事務所が事業活動を行う環境カ.ネットワークに属する監査事務所の場合、ネットワークの要求事項及びネットワーク・サービス(該当する場合)の内容及び範囲②監査事務所が実施する業務の内容及び状況について、以下に関連する事項ア.監査事務所が実施する業務の種類及び発行する報告書イ.業務の対象となる企業の種類(2)第25項(1)に規定される条件、事象、状況又は行動の有無が、品質目標の達成について、どのように、またどの程度、阻害し得るかを考慮する(A48項参照)。
26
監査事務所は、品質リスクの評価の根拠に基づき、また当該根拠に応じた方法により、品質リスクに対処するための対応をデザインし適用しなければならない。監査事務所の対応には、第34項に規定されている対応も含まれなければならない(A49項からA51項参照)。
27
監査事務所は、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化を踏まえ、品質目標の追加、品質リスクや対応の追加又は修正の必要性を示唆する情報を識別するための方針又は手続を定めなければならない。そのような情報が識別された場合、監査事務所は、当該情報を考慮するとともに、適切な場合には以下を実施しなければならない(A52項及びA53項参照)。(1)追加の品質目標を設定する、又は既に監査事務所が設定した追加の品質目標を修正する(A54項参照)。(2)追加の品質リスクを識別し、評価するほか、品質リスクの修正又は再評価を実施する。(3)追加の対応をデザインし適用する、又は対応を修正する。

4.ガバナンス及びリーダーシップ

28
監査事務所は、品質管理システムを支援する環境を確立するために、ガバナンス及びリーダーシップに関する以下の品質目標を設定しなければならない。(1)監査事務所は、事務所全体の組織風土を通じて、品質へのコミットメントを示し、以下を認識し強化すること(A55項及びA56項参照)。①より質の高い監査を一貫して実施することにより、公共の利益に資する監査事務所の役割②職業的専門家としての倫理、価値観及び姿勢の重要性③業務の実施又は品質管理システムの活動における品質に対する全ての専門要員の責任並びに期待される行動④財務上及び業務上の優先事項を含む、監査事務所の戦略的意思決定及び行動における品質の重要性(2)最高責任者等は、品質に関して説明責任を含む責任を負うこと(A57項参照)。(3)最高責任者等は、その行動と姿勢を通じて品質へのコミットメントを示すこと(A58項参照)。(4)監査事務所の品質管理システムの整備及び運用を可能にするように、組織構造並びに役割、責任及び権限の分担が適切であること(A32項、A33項、A35項及びA59項参照)。(5)財源を含む必要な資源が計画され、監査事務所の品質へのコミットメントと整合した方法で資源が入手、配分又は割り当てられていること(A60項及びA61項参照)。

5.職業倫理及び独立性

29
監査事務所は、独立性を含む職業倫理に関する規定に従った責任を果たすために、以下のそれぞれの者に関する品質目標を設定しなければならない(A62項からA64項及びA66項参照)。(1)監査事務所及びその専門要員①監査事務所及びその業務が対象となる職業倫理に関する規定を理解すること(A22項及びA24項参照)。②監査事務所及びその業務が対象となる職業倫理に関する規定に関連する責任を果たすこと。(2)監査事務所及びその業務に適用される職業倫理に関する規定の対象となるその他の者。これには、ネットワーク、ネットワーク・ファーム、ネットワーク若しくはネットワーク・ファームに所属する者、又はサービス・プロバイダー等が含まれる。①適用される職業倫理に関する規定を理解すること(A22項、A24項及びA65項参照)。②適用される職業倫理に関する規定に関連した責任を果たすこと。

6.契約の新規の締結及び更新

30
監査事務所は、契約の新規の締結及び更新に対処するために、以下の品質目標を設定しなければならない。(1)契約の新規の締結又は更新を行うかどうかについての監査事務所による判断は、以下に基づいて適切であること。①その判断を支えるのに十分な、業務の性質及び状況、並びに依頼人(経営者及び適切な場合には監査役等を含む。)の誠実性及び倫理的価値観に関する情報(A67項からA71項参照)②職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って、業務を実施する監査事務所の能力(A72項参照)(2)監査事務所の財務上及び業務上の優先事項が、契約の新規の締結又は更新についての不適切な判断につながらないこと(A73項及びA74項参照)。
F30-2JP
監査事務所は、監査契約の新規の締結及び更新の判断に関する方針及び手続に、不正リスクを考慮して監査契約の締結及び更新に伴うリスクを評価すること、並びに、当該評価の妥当性について、新規の締結時、及び更新時はリスクの程度に応じて、監査チーム外の適切な部署又は者により検討することを含めなければならない(FA68-2JP項参照)。

7.業務の実施

31
監査事務所は、より質の高い監査の実施に対処するために、以下の品質目標を設定しなければならない。(1)監査責任者が監査業務の品質の管理と達成に対して、監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与するという全体的な責任を含め、監査チームが自らの責任を理解し果たすこと(A75項参照)。(2)監査チームの指揮及び監督の内容、時期及び範囲、並びに作業の査閲が、業務の内容及び状況、監査チームに割り当てられた資源に基づき適切であること。また、経験の浅い監査チームのメンバーが行う業務については、より経験のある監査チームのメンバーが指揮、監督及び作業の査閲を行うこと(A76項及びA77項参照)。(3)監査チームは、職業的専門家としての適切な判断を行い、また、職業的専門家としての懐疑心を保持及び発揮すること(A78項参照)。(4)専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項について専門的な見解の問合せを行い、合意された結論に従って対処すること(A79項からA81項参照)。(5)監査チーム内の監査上の判断の相違又は監査チームと審査担当者若しくは事務所の品質管理システムにおいて活動を実施する者との監査上の判断の相違は、監査事務所に報告され、解消されていること(A82項参照)。(6)監査調書は監査報告書の提出日後に適時に整理され、監査事務所自らの必要性を満たし、また法令等、職業倫理に関する規定及び職業的専門家としての基準を遵守するために適切に維持及び保存されること(A83項からA85項参照)。
F31-2JP
監査事務所は、監査業務の実施における品質を保持するための方針及び手続において、同一の企業の監査業務を担当する監査責任者が全員交代した場合、監査の過程で識別した不正リスクを含む重要な事項が適切に伝達されるように定めなければならない。
F31-3JP
監査事務所は、不正リスクに適切に対応できるように、監査業務に係る監督及び査閲に関する方針及び手続を定めなければならない。
F31-4JP
監査事務所は、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況が識別された場合又は不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断された場合には、必要に応じ監査事務所内外の適切な者から専門的な見解を得られるようにするための方針及び手続を定めなければならない(FA81-2JP項参照)。

8.資源

32
監査事務所は、品質管理システムの整備及び運用を可能にするために、適切な資源の取得、開発、利用、維持、配分及び割り当てに適時に対処する、以下の品質目標を定めなければならない(A86項及びA87項参照)。人的資源(1)専門要員が雇用、育成及び維持され、かつそれらの専門要員が以下の適性及び能力を有していること(A88項からA90項参照)。①監査事務所が実施する業務に関連する知識や経験を有することを含め、より質の高い監査を一貫して実施する。②監査事務所の品質管理システムの運用に関連する活動を行う、又は責任を果たす。(2)専門要員は、その行動と姿勢を通じて品質へのコミットメントを示し、その役割を果たすための適切な能力を開発及び維持し、また適時の査定、報酬、昇進及び他のインセンティブを通じて責任を負い評価されること(A91項からA93項参照)。(3)監査事務所の品質管理システムの運用又は業務の実施を可能にする、十分な又は適切な専門要員を有していない場合、人的資源を監査事務所の外部(すなわち、ネットワーク、ネットワーク・ファーム又はサービス・プロバイダー)から調達すること(A94項参照)。(4)より質の高い監査を一貫して実施するための十分な時間が与えられていることを含め、適性及び適切な能力を有する、監査責任者を含む監査チームのメンバーが各業務に割り当てられていること(A88項、A89項及びA95項からA97項参照)。(5)品質管理システムにおける活動を実施するために、十分な時間を含む、適性及び適切な能力を有する者が割り当てられていること。テクノロジー資源(6)適切なテクノロジー資源は、監査事務所の品質管理システムの運用及び業務の実施を可能にするために、取得又は開発され、適用、維持及び利用されること(A98項からA101項及びA104項参照)。知的資源(7)適切な知的資源は、監査事務所の品質管理システムの運用及びより質の高い監査の一貫した実施を可能にするために、取得又は開発され、適用、維持及び利用される。また、そのような知的資源は、該当する場合、職業的専門家としての基準及び適用される法令等と整合的であること(A102項からA104項参照)。サービス・プロバイダー(8)第32項(4)、(5)、(6)及び(7)における品質目標を考慮した上で、サービス・プロバイダーから調達する人的資源、テクノロジー資源又は知的資源は、監査事務所の品質管理システム及び業務の実施において利用するにあたり、適切であること(A105項からA108項参照)。
F32-2JP
監査事務所は、専門要員の教育・訓練に関する方針及び手続を定め、専門要員が監査業務を行う上で必要な不正事例に関する知識を習得し、能力を開発できるよう、監査事務所内外の研修等を含め、不正に関する教育・訓練の適切な機会を提供しなければならない。

9.情報と伝達

33
監査事務所は、品質管理システムの整備及び運用を可能にするために、品質管理システムに関する情報の取得、生成又は利用、及び監査事務所内外への適時な情報の伝達に対処する、以下の品質目標を設定しなければならない(A109項参照)。(1)情報システムが、内外の情報源を問わず、品質管理システムを支える、関連性のある信頼性の高い情報を識別し、捕捉し、処理し、また維持すること(A110項及びA111項参照)。(2)監査事務所の組織風土が、専門要員と監査事務所との間及び専門要員間で情報を交換する責任を認識させ強化するものであること(A112項参照)。(3)監査チームを含む監査事務所全体で関連性のある信頼性の高い情報が以下のように交換されること(A112項参照)。①専門要員と監査チームに情報が伝達されており、また当該情報の内容、時期及び範囲は、品質管理システムの活動又は監査業務の実施に関連する責任を理解し、果たす上で十分である。②専門要員及び監査チームは、品質管理システムの活動又は監査業務を実施する際に、監査事務所に情報を伝達する。(4)関連性及び信頼性の高い情報が以下を含め外部の者にも伝達されること。①監査事務所から監査事務所のネットワーク又はサービス・プロバイダーに対して情報が伝達される。該当がある場合、当該情報は、ネットワーク又はサービス・プロバイダーが、ネットワークの要求事項若しくはネットワーク・サービス又はそれらによって提供される資源に関する責任を果たすことを可能にする(A113項参照)。②法令等若しくは職業的専門家としての基準により要求される場合又は外部の者の品質管理システムに対する理解を支援するために、外部にも情報が伝達される(A114項及びA115項参照)。

10.特定の対応

34
監査事務所は、第26項に従った対応のデザインと適用において、以下の対応を含めなければならない(A116項参照)。(1)監査事務所は以下の事項に係る方針又は手続を定める。①職業倫理に関する規定の遵守に関する阻害要因を識別、評価及び対処すること(A117項参照)。②職業倫理に関する規定の違反を識別、伝達、評価及び報告し、また当該違反の原因と結果に適時に対応すること(A118項及びA119項参照)。(2)監査事務所は、独立性の保持が要求される全ての専門要員から、独立性の保持のための方針又は手続の遵守に関する確認書を、少なくとも年に一度入手する。(3)監査事務所は、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って監査業務が実施されなかったこと、又は監査事務所の方針若しくは手続が遵守されなかったことに関する、不服と疑義の申立てを受領し、調査し、また解決するための方針又は手続を定める(A120項及びA121項参照)。(4)監査事務所は、以下の場合に対処する方針又は手続を定める。①契約の新規の締結又は更新の前に監査事務所が認識していれば契約の締結を辞退する原因となるような情報を監査事務所が契約の新規の締結又は更新の後に知ることとなった場合(A122項及びA123項参照)②法令等により、契約の新規の締結又は更新を行うことが義務付けられている場合(A123項参照)(5)監査事務所は、以下の事項に関する方針又は手続を定める(A124項からA126項参照)。①監査基準報告書260第18-2JP項に記載した企業等の財務諸表監査を実施する際に、品質管理システムがより質の高い監査を一貫して実施することをどのように支援しているかについて、監査役等とのコミュニケーションを要求する(A127項からA129項参照)。②①以外に、外部の関係者と監査事務所の品質管理システムについてコミュニケーションすることが適切な場合(A130項参照)③コミュニケーションの内容、時期及び範囲、並びに適切な形式を含む、第34項(5)①及び第34項(5)②に従って行う外部とのコミュニケーションの際に提供すべき情報(A131項及びA132項参照)(6)監査事務所は、品質管理基準報告書第2号に従って審査に対処し、企業等の財務諸表の監査について審査を要求するための方針又は手続を定める(A135項及びA135-2JP参照)。
34-2JP
監査事務所は、幼稚園のみを設置している都道府県知事所轄学校法人の私立学校振興助成法に基づく監査又は任意監査(公認会計士法第2条第1項業務のうち、法令で求められている業務を除く監査)のうち、監査報告の対象となる財務諸表の社会的影響が小さく、かつ、監査報告の利用者が限定されている監査業務については審査を要しないとすることができる。ただし、上記に該当する場合であっても、監査事務所は、以下のようなリスク要因が存在する監査業務については、審査の必要性を慎重に検討し、審査を要しない監査業務の範囲について、審査に関する方針又は手続に明確に定めなければならない(A37項参照)。・独立性の阻害要因に対するセーフガードとして審査を実施する場合・会計方針、会計上の見積り及び財務諸表の開示を含む、企業の会計実務の質的側面のうち重要なものについて、監査意見に影響を与える懸念がある場合(監基報260第16項(1)参照)・監査期間中に困難な状況に直面した場合(監基報260第16項(2)参照)・監査の過程で発見され、経営者と協議又は経営者に伝達すべき重要な事項について、監査意見に影響を与える懸念がある場合(監基報260第16項(3)参照)・絶大な影響力を有する関連当事者との重要な取引が存在する場合(監基報550第18項参照)・継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況がある場合(監基報570第15項参照)・監査契約締結後に監査の前提条件(特に適用される財務報告の枠組みの受入可能性)が満たされていないことを示唆する情報を入手した場合(監基報210第4項及び第10項参照)・特別目的の財務諸表又は個別の財務表若しくは財務諸表項目等に対する監査契約を新規に締結する場合において、類似した財務報告の枠組みに準拠した財務諸表等に対する監査の経験がないとき(監査基準報告書800「特別目的の財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表に対する監査」及び監査基準報告書805「個別の財務表又は財務諸表項目等に対する監査」参照)。・完全な一組の財務諸表に対する監査報告書に除外事項付意見が表明されている場合又は強調事項区分若しくはその他の事項区分が含まれている場合において、個別の財務表又は財務諸表項目等の監査を行うとき(監基報805第13項参照)。
34-3JP
監査事務所は、審査を実施しない監査業務に関して、監査意見が適切に形成されていることを確認できる他の方法(文書化の方法を含む。)を定めなければならない(A135-2JP項参照)。
F34-4JP
監査事務所は、不服と疑義の申立てに関する方針及び手続に、以下の事項に適切に対処することを合理的に確保するため、監査事務所内外からもたらされる情報に対処するための方針及び手続を含めなければならない。(1)不正リスクに関連して監査事務所内外から監査事務所に寄せられた情報を受け付けること。(2)当該情報について、関連する監査責任者へ適時に伝達すること。(3)監査責任者は、監査チームが監査の実施において当該情報をどのように検討したかについて、監査事務所の適切な部署又は者に報告すること。

11.モニタリング及び改善プロセス

35
監査事務所は、以下の事項を達成するためにモニタリング及び改善プロセスを定めなければならない(A138項参照)。(1)品質管理システムの整備及び運用について、関連性及び信頼性が高くかつ適時性を有する情報を提供すること。(2)不備が適時に改善されるように、識別された不備に対応する適切な措置を講じること。

(1)モニタリング活動のデザインと実施

36
監査事務所は、不備を識別するための基礎を提供するために、モニタリング活動をデザインし、実施しなければならない。
37
監査事務所は、モニタリング活動の内容、時期及び範囲を決定する際に、以下の事項を考慮しなければならない(A139項からA142項参照)。(1)品質リスクに対する評価の根拠(2)対応のデザイン(3)監査事務所のリスク評価プロセス、並びにモニタリング及び改善プロセスのデザイン(A143項及びA144項参照)(4)品質管理システムの変更(A145項参照)(5)過去のモニタリング活動の結果、過去のモニタリング活動が監査事務所の品質管理システムの評価において依然として目的適合的であるかどうか、及び過去に識別された不備に対する是正措置が有効であったかどうか(A146項及びA147項参照)。(6)職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って監査業務が実施されなかったこと、又は監査事務所の方針若しくは手続が遵守されなかったことに関する、不服と疑義の申立て、外部の検証からの情報及びサービス・プロバイダーからの情報を含む、その他の関連情報(A148項からA150項参照)
38
監査事務所は、モニタリング活動において、完了した監査業務の検証を含めなければならず、またどの監査業務及びどの監査責任者を選定するかを判断しなければならない。その際には、監査事務所は、以下を実施しなければならない(A141項及びA151項からA154項参照)。(1)第37項の事項を考慮する。(2)監査事務所が行う他のモニタリング活動の内容、時期及び範囲、並びにそのようなモニタリング活動の対象となる監査業務と監査責任者を考慮する。(3)監査責任者ごとに少なくとも監査事務所が定めた一定期間ごとに一つの完了した監査業務を選定する。
F38-2JP
監査事務所は、監査業務における不正リスクへの対応状況について、定期的な検証により、以下に掲げる項目が監査事務所の品質管理の方針及び手続に準拠して実施されていることを確かめなければならない。(1)監査契約の新規の締結及び更新(2)不正に関する教育・訓練(3)業務の実施(監督及び査閲、監査事務所内外からもたらされる情報への対処、専門的な見解の問合せ、審査、同一の企業の監査業務を担当する監査責任者が全員交代した場合の引継を含む。)(4)監査事務所間の引継
39
監査事務所は、以下の事項に関する方針又は手続を定めなければならない。(1)モニタリング活動を実施する者が、モニタリング活動を効果的に行うための十分な時間を含む適性及び適切な能力を有すること。(2)モニタリング活動を実施する者の客観性当該方針又は手続においては監査チームのメンバー又は審査担当者が当該監査業務の検証を実施することを禁止しなければならない(A155項及びA156項参照)。

(2)発見事項の評価と不備の識別

40
監査事務所は、モニタリング及び改善プロセス自体に関するものを含め、発見事項を評価し、不備が存在するかどうかを判断しなければならない(A157項からA162項参照)。

(3)識別された不備の評価

41
監査事務所は、識別された不備の重大性と広範性を以下により評価しなければならない(A161項、A163項及びA164項参照)。(1)識別された不備の根本原因を調査する。調査手続の内容、時期及び範囲を決定する際に監査事務所は、識別された不備の内容及び想定される重大性を考慮しなければならない(A165項からA169項参照)。(2)識別された不備が品質管理システムに及ぼす影響を評価する。この評価は識別された不備について個別に、及び他の不備との組合せにより実施する。

(4)識別された不備への対処

42
監査事務所は、識別された不備に対処するための是正措置を、その根本原因の分析結果に応じてデザインし、適用しなければならない(A170項からA172項参照)。
43
モニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者は、是正措置に関して以下を実施しなければならない。(1)是正措置が、識別された不備と関連する根本原因に応じて適切にデザインされているか評価し、また、適用されているか判断する。(2)過去に識別された不備に対処するために適用された是正措置が有効であるか評価する。
44
是正措置が適切にデザイン及び適用されていない、又は有効でないと判断された場合、モニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者は、是正措置が適切に修正され有効であると判断できるまで、適切に対処しなければならない。

(5)特定の業務に関する発見事項

45
監査業務の実施過程で要求される手続が実施されていなかった、又は不適切な監査報告書が発行されたおそれがあることを発見事項が示唆している場合、監査事務所は以下を含めてその状況に対処しなければならない(A173項参照)。(1)関連する職業的専門家としての基準及び適用される法令等を遵守するための適切な措置を講じる。(2)監査報告書が不適切であると考えられる場合、法律家に助言を求めるかどうかの検討を含め、その影響を考慮して適切な措置を講じる。

(6)モニタリング及び改善に関する継続的なコミュニケーション

46
モニタリング及び改善プロセスの運用に関する責任者は、品質管理システムに関する最高責任者、並びに品質管理システムの整備及び運用に関する責任者へ、以下の事項を適時に報告しなければならない(A174項参照)。(1)実施したモニタリング活動の内容(2)識別された不備及びその重大性及び広範性(3)識別された不備に対処するための是正措置
47
監査事務所は、監査チーム及び品質管理システムにおいて活動を実施する者へ第46項に記載された事項を伝達し、各自がその責任に応じて迅速かつ適切な措置を講じることを可能にしなければならない。

12.ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス

48
監査事務所は、ネットワークに属する場合、該当するときには以下の事項を理解しなければならない(A19項及びA175項参照)。(1)監査事務所の品質管理システムに関してネットワークが定めた要求事項。これには、ネットワークがデザイン又は提供した資源やサービスを、監査事務所が適用又は利用するための要求事項が含まれる(すなわち、ネットワークの要求事項)。(2)監査事務所が、自らの品質管理システムをデザイン、適用又は運用する際に、適用又は利用することを選択した、ネットワークが提供する全てのサービス又は資源(すなわち、ネットワーク・サービス)(3)ネットワークの要求事項を適用する、又はネットワーク・サービスを利用するために必要な、全ての措置に対する監査事務所の責任(A176項参照)監査事務所は、品質管理システムを整備及び運用する際の職業的専門家としての判断を含め、自らの品質管理システムに対して上記にかかわらず責任を負わなければならない。監査事務所は、本報告書の要求事項に違反するような、ネットワークの要求事項への準拠又はネットワーク・サービスの使用を許容してはならない(A177項参照)。
49
監査事務所は、第48項で得られた理解に基づき、以下を行わなければならない。(1)ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスが、監査事務所の品質管理システムにどのように関連するかを判断し、どのように考慮するかを適用方法を含めて決定する(A178項参照)。(2)ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスを、監査事務所の品質管理システムにおいて適切に利用するために、適応させる、又は補完する必要があるかどうか、またその場合には適応させる、又は補完する方法を評価する(A179項及びA180項参照)。

(1)監査事務所の品質管理システムに関するネットワークのモニタリング活動

50
監査事務所は、ネットワークが監査事務所の品質管理システムに関するモニタリング活動を実施する場合、以下を行わなければならない。(1)第36項から第38項に従って実施される監査事務所のモニタリング活動の内容、時期及び範囲に対する、ネットワークのモニタリング活動の影響を判断する。(2)ネットワークのモニタリング活動に関する、監査事務所の行動を含め、監査事務所の責任を判断する。(3)第40項における発見事項の評価及び不備の識別の一環として、ネットワークからモニタリング活動の結果を適時に入手する(A181項参照)。

(2)ネットワークがネットワーク・ファームを対象として実施するモニタリング活動

51
監査事務所は、以下を行わなければならない。(1)ネットワークがネットワーク・ファームを対象として実施するモニタリング活動の全体的な範囲を理解する。これには、ネットワークの要求事項がネットワーク・ファームで適切に実施されていることを判断するためのモニタリング活動及びネットワークのモニタリング活動の結果を監査事務所に伝達する方法が含まれる。(2)少なくとも毎年、ネットワークから、ネットワーク・ファームを対象とするモニタリング活動の全体的な結果に関する情報を入手する。また、該当する場合には以下を行う(A182項からA184項参照)。①各自がその責任に応じて迅速かつ適切に措置を講じることができるように、監査チーム及び品質管理システムにおいて活動を実施する者に適切に情報を伝達する。②その情報が監査事務所の品質管理システムに与える影響を検討する。

(3)監査事務所が識別したネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの不備

52
監査事務所がネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスについて不備を識別した場合、監査事務所は以下を行わなければならない(A185項参照)。(1)識別された不備に関連する情報をネットワークに報告する。(2)第42項に従って、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスについて識別された不備の影響に対処するために、是正措置をデザインし適用する(A186項参照)。

13.品質管理システムの評価

53
品質管理システムに関する最高責任者は、品質管理システムを評価しなければならない。当該評価は、特定の基準日において、少なくとも年に一度実施しなければならない(A187項からA189項参照)。
54
前項の評価に基づいて、品質管理システムに関する最高責任者は、以下のいずれかの結論を下さなければならない(A190項及びA195項参照)。(1)品質管理システムは、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供している(A191項参照)。(2)品質管理システムの整備及び運用について、重大ではあるが広範ではない識別された不備を除き、品質管理システムは、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供している(A192項参照)。(3)品質管理システムは、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供していない(A192項からA194項参照)。
55
品質管理システムに関する最高責任者が、第54項(2)又は第54項(3)の結論に達した場合、監査事務所は以下の事項を実施しなければならない(A196項参照)。(1)迅速かつ適切な措置を講じる。(2)以下の者に伝達する。①監査チーム及び品質管理システムにおいて活動を実施する者(A197項参照)②第34項(5)に記載されている外部の者(A198項参照)
56
監査事務所は、品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者それぞれの定期的な業績評価を実施しなければならない。その際、監査事務所は、品質管理システムの評価結果を考慮しなければならない(A199項からA201項参照)。

14.文書化

57
監査事務所は、以下の要件を満たす品質管理システムに関する文書を作成しなければならない(A202項からA204項参照)。(1)品質管理システム及び業務の実施における役割と責任を含む、品質管理システムに関する専門要員の一貫した理解を支援すること。(2)品質リスクへの対応を一貫して適用し、運用することを支援すること。(3)品質管理システムに関する最高責任者による品質管理システムの評価を支援するため、対応の整備及び運用の裏付けとなる証拠を提供すること。
58
監査事務所は、品質管理システムに関する文書に以下の事項を含めなければならない。(1)品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者(2)監査事務所の品質目標及び品質リスク(A205項参照)(3)対応の説明及びその対応が品質リスクにどのように対処するか。(4)モニタリング及び改善プロセスに関する以下の事項①実施したモニタリング活動の証拠②発見事項の評価、識別された不備及び関連する根本原因③識別された不備に対する是正措置及び是正措置のデザイン及び適用の評価④モニタリング及び改善に関するコミュニケーション(5)第54項の結論の根拠
59
監査事務所は、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスに関する第58項の事項及び第49項(2)に従った評価結果を文書化しなければならない(A206項参照)。
60
監査事務所は、品質管理システムに関する文書の保存期間を定めなければならない。当該保存期間は、品質管理システムの整備及び運用をモニタリングすることを可能にするのに十分な期間又は法令等によって要求される期間の方が長い場合にはその期間としなければならない。

15JP.監査事務所間の引継

61JP
監査事務所は、監査人の交代に際して、監査業務の質に重大な影響を及ぼさないようにするために、以下の品質目標を設定しなければならない(A207JP項及びA208JP項参照)。(1)後任の監査事務所に対して監査上の重要事項を伝達すること。(2)前任の監査事務所に対して監査上の重要事項について問い合わせを実施すること。
62JP
監査事務所は、前項の目標に関連して、以下の方針又は手続を定めなければならない。(1)後任の監査事務所に対して、財務諸表の重要な虚偽表示に関する情報若しくは状況又は企業との間の重要な意見の相違等を含め、監査上の重要な事項を伝達するとともに、後任の監査事務所から要請のあったそれらに関連する調書の閲覧に応じるための方針又は手続(2)前任の監査事務所に対して、監査事務所の交代事由、企業との間の重要な意見の相違等の監査上の重要な事項について問い合わせるための方針又は手続(3)監査実施の責任者が、実施した引継の状況を適切な部署又は者に報告するための方針又は手続《16JP.共同監査》
63JP
監査事務所が共同監査を実施する場合には、監査事務所は、当該監査業務の品質を合理的に確保するための共同監査に関する方針又は手続を定めなければならない。この方針又は手続には、他の監査事務所の品質管理システムがその監査業務の品質を合理的に確保するものであるかどうかを、監査事務所が、監査契約の新規の締結及び更新の際、並びに、必要に応じて監査業務の実施の過程において評価し、適切に対応するための方針又は手続を含めなければならない(A209JP項参照)。

1.本報告書の範囲(第3項及び第4項参照)

A1
レビュー業務実務指針2400「財務諸表のレビュー業務」、保証業務実務指針3000「監査及びレビュー業務以外の保証業務に関する実務指針」及び専門業務実務指針4400「合意された手続業務に関する実務指針」を含む日本公認会計士協会の他の公表物は、業務レベルでの品質管理における業務執行責任者に対する要求事項を規定する。
A2
倫理規則には、日本公認会計士協会の会員が公共の利益のために行動する責任を果たすことを可能にするための要求事項と適用指針が含まれている。第15項にあるように、本報告書における業務の実施の観点から、より質の高い監査を一貫して実施することは、公共の利益のために行動するという会員の責任の一部を構成する。

2.監査事務所の品質管理システム(第6項から第9項参照)

A3
監査事務所は、品質管理システムの構成要素を説明するために、異なる用語又は枠組みを用いることがある。
A4
相互に関連する構成要素の例としては、次のようなものがある。・監査事務所のリスク評価プロセスは、品質管理システム全体にわたってリスク・アプローチを適用する際に、監査事務所が従うべきプロセスを規定する。・ガバナンス及びリーダーシップの構成要素は、品質管理システムを支える環境を確立する。・監査事務所の業務運営に関する資源及び情報と伝達の構成要素は、品質管理システムの整備及び運用を可能にする。・品質管理システムのモニタリング及び改善プロセスは、品質管理システム全体のモニタリングを行うためにデザインされたプロセスである。モニタリング及び改善プロセスの結果は、監査事務所のリスク評価プロセスに関連する情報を提供する。例えば、職業倫理及び独立性の特定の側面は、特定の契約の新規の締結及び更新に関連する等、具体的な事項について関連することがある。
A5
第14項(1)及び(2)における監査事務所の目的が達成されないリスクが品質管理システムによって許容可能な低いレベルにまで低減される場合には、品質管理システムの目的が達成されているという合理的な保証が得られる。品質管理システムには固有の限界があるため、合理的な保証は絶対的な保証水準ではない。そのような限界には、意思決定における判断に誤りが生じ得ること、また例えば人的ミスや人の行動又は情報技術(IT)アプリケーションの不具合によって、監査事務所の品質管理システムに機能障害が発生する可能性があることが含まれる。

3.本報告書の規範性(第12項参照)

A6
本報告書の目的を記載した第14項及び第15項は、本報告書の要求事項が規定された背景を提供するとともに、本報告書の望ましい成果を示しており、さらに何が達成されるべきか及び必要であればそのための適切な方法を監査事務所が理解することを支援するものである。
A7
本報告書の要求事項は「~しなければならない」を用いて表現されている。
A8
適用指針は、必要に応じて、要求事項の詳細な説明及びその実施のための指針を提供しており、特に以下について記載していることがある。・要求事項の意味又は対象とすべき範囲に関するより詳細な説明・要求事項がどのように適用されるのかを説明するための例示これらの指針は、それ自体が要求事項を定めるものではないが、要求事項を適切に適用するために有用なものである。また、適用指針は、本報告書が扱う事項に関する背景を記載していることもある。
A9
本報告書の定義には、本報告書で使用される用語の説明が含まれる。これらは、本報告書を一貫して適用し解釈するために記載されているものであり、法令等の他の目的で規定された定義に優先することを意図するものではない。なお、他の品質管理基準報告書や監査基準報告書には、本報告書で定義している用語が含まれているが、それ以外の用語の定義も含まれている。

(1)不備(第16項(1)参照)

A10
監査事務所は、発見事項の評価を通じて不備を識別する。不備は、一つの発見事項又は発見事項の組合せから識別される。
A11
品質リスク又は品質リスクの組合せが識別されていない、又は適切に評価されていないことにより不備が識別された場合、当該品質リスクに対処するための対応も、欠如している、又は適切にデザイン若しくは適用されていないことがある。
A12
第16項(1)④に記載されている不備が生じ得る品質管理システムの側面とは、本報告書の以下の要求事項に関連するものである。・責任の割当(第20項から第22項参照)・監査事務所のリスク評価プロセス・モニタリング及び改善プロセス・品質管理システムの評価上記の品質管理システムの側面に関する不備の例・監査事務所の性質及び状況の変化並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化及び追加の品質目標を設定すること、又は品質リスク若しくは対応を修正することの必要性を示す情報を監査事務所の評価プロセスが識別できない。・監査事務所のモニタリング及び改善プロセスが、以下のようなデザイン又は適用となっていない。-品質管理システムの整備及び運用に関して、目的適合性、信頼性及び適時性を有する情報を提供する。-不備が適時に改善されるように、監査事務所が、識別された不備に対応する適切な措置を講じることを可能にする。・品質管理システムに関する最高責任者が、品質管理システムの年次評価を実施しない。

(2)監査チーム(第16項(6)参照)

A13
監査基準報告書220のA15項からA25項は、財務諸表監査の観点から、監査チームの定義を適用する際の指針を提供している。

(3)外部の検証(第16項(7)参照)

A14
状況によっては、外部の監督当局等は、例えば、選定した監査事務所に対して、監査業務又は監査事務所全体の実務の特定の側面に焦点を当てた、テーマ別レビューのような検証を実施することがある。

(4)発見事項(第16項(8)参照)

A15
監査事務所は、モニタリング活動、外部の検証及びその他の関連する情報源から発見事項を集約する過程で、品質管理システムに関する発見事項以外の所見を識別することがある。例えば、品質管理の有効性の観点からの好事例、若しくは品質管理システムを改善又は更に強化する機会である。A158項は、そのような所見を監査事務所がどのように品質管理システムにおいて活用することができるかを説明している。
A16
A148項は、その他の関連する情報源からの情報の例を示している。
A17
モニタリング活動には、監査業務の検証等の業務レベルでのモニタリングが含まれる。さらに、外部の検証及びその他の関連する情報源には、個別の監査業務に関する情報が含まれることがある。したがって、品質管理システムの整備及び運用に関する情報には個別の監査業務レベルの発見事項が含まれるが、そのような発見事項は品質管理システムに関する発見事項を示唆することがある。

(5)監査事務所(第16項(9)参照)

A18
職業倫理に関する規定における「監査事務所」の定義は、本報告書に規定されている定義とは異なることがある。

(6)ネットワーク(第16項(12)及び第48項参照)

A19
ネットワーク及びネットワークに属する監査事務所の構成は多様である。例えば、監査事務所の品質管理システムに関して以下の提供方法がある。・ネットワークが、品質管理システムに関する監査事務所の要求事項を定める、又は品質管理システムや業務の実施において監査事務所が利用するサービスを提供することがある。・ネットワークに属する他の事務所が、品質管理システム又は業務の実施において監査事務所が利用するサービス(例えば、資源)を提供することがある。・ネットワークに属する他の組織が、品質管理システムに関する監査事務所の要求事項を定める、又はサービスを提供することがある。本報告書においては、ネットワーク及びネットワークに属する他の事務所や他の組織から提供される要求事項又はサービスが、「ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス」であると考えられる。

(7)専門要員(第16項(14)参照)

A20
監査事務所は、専門要員(すなわち監査事務所内の者)に加えて、品質管理システムにおける活動の実施又は業務の実施において、監査事務所外の者を利用することがある。例えば、監査事務所外の者には、ネットワーク・ファームの者(例えば、ネットワーク・ファームのサービス・デリバリー・センターの者)又はサービス・プロバイダーによって雇用されている者(例えば、ネットワーク外の監査事務所が構成単位の監査人である場合)を含む。
A21
専門要員には、監査事務所のサービス・デリバリー・センターなど、監査事務所内の他の組織における社員や専門職員も含まれる。

(8)我が国における職業倫理に関する規定(第16項(20)及び第29項参照)

A22
品質管理システムにおいて適用される職業倫理に関する規定は、監査事務所及びその業務の性質及び状況によって異なることがある。「会員」という用語は、職業倫理に関する規定において定義されることがある。例えば、倫理規則は、「会員」という用語を定義し、また個々の会員とその事務所に適用される倫理規則が規定する範囲を更に説明している。
A23
倫理規則は、法令等により倫理規則の特定の部分を会員が遵守することができない状況に対処している。さらに、一部の法域では倫理規則の規定と異なる、又は範囲を越えた規定がある場合があり、会員はそのような差異を把握するとともに、法令等により禁止されている場合を除き、より厳格な規定を遵守する必要があることも認めている。
A24
職業倫理に関する規定の様々な定めのうち、業務の実施において個人のみに適用され、監査事務所そのものには適用されないものがある。例えば、以下が挙げられる。・倫理規則のパート2は、業務委託契約者、従業者若しくは所有者のいずれであるかを問わず、その監査事務所等との関係に従って専門業務を実施する際に会員である個人に適用され、またそれは業務の実施に関連することがある。・倫理規則のパート3及びパート4A及び4Bの特定の要求事項についても、依頼人に専門業務を提供する際に会員である個人に適用される。このような個人としての職業倫理に関する規定の遵守は、監査事務所の品質管理システムによって対処される必要があることがある。監査事務所ではなく個人のみに適用され、業務の実施に関連する職業倫理に関する規定の例倫理規則のパート2は、基本原則への違反のプレッシャーを扱っており、個人が次のことを行うことを禁止する要求事項を含んでいる。・他者からのプレッシャーにより基本原則に違反すること。・他者に対してプレッシャーを与えることにより、他者が基本原則に違反することが明らかな場合又はそのように信じるに足る理由がある場合に、会員がそのようなプレッシャーを他者に与えること。例えば、業務を実施する際に、監査チームの監査責任者又はその他の上位の管理者メンバーに基本原則に違反するようプレッシャーをかけられたとある個人が考える場合に、このような状況が生じる可能性がある。

(9)対応(第16項(21)参照)

A25
方針は、専門要員やその他の者(監査チームを含む。)の行動によって、又は当該方針に反する行動を抑制することによって適用される。
A26
手続は、正式な文書又はその他のコミュニケーションによって義務付けられることがあるが、個別に義務付けられなくとも、事務所の組織風土によって実質的に定められることもある。また、手続は、ITアプリケーションの仕様又は監査事務所のIT環境の他の側面によって実施されることがある。
A27
監査事務所は、品質管理システム又は業務の実施において監査事務所外の者を利用する場合、当該者の行動に対処するために異なる方針又は手続を整備する必要があることがある。監査基準報告書220のA23項からA25項は、財務諸表監査において、監査事務所外の者の行動に対処するために、監査事務所が異なる方針又は手続を整備する必要がある場合の指針を提供している。

(10)サービス・プロバイダー(第16項(22)参照)

A28
サービス・プロバイダーには、構成単位の監査人である場合のネットワーク外の監査事務所が含まれる。

5.関連する要求事項の適用と遵守(第17項参照)

A29
本報告書の要求事項が事務所に関連しない場合の要求事項の例・監査事務所が個人事務所の場合。例えば、組織構造への対処並びに監査事務所における、役割、責任及び権限の分担、指揮、監督及び査閲、並びに監査上の判断の相違に対処するための要求事項は関連しないことがある。・監査事務所が合意された手続業務又は調製業務のみを実施する場合。例えば、監査事務所が当該業務について独立性を維持することを要求されていない場合、全ての専門要員から独立性に関する要求事項の遵守を文書で確認する要求事項は関連しないことになる。

(1)品質管理のデザイン、適用及び運用(第19項参照)

A30
品質管理は、監査事務所において単独で機能するものではなく、品質に対するコミットメントを示す組織風土、監査事務所の戦略、事業活動及び業務プロセスを統合したものである。このため、品質管理システムと監査事務所の事業活動及び業務プロセスを統合的にデザインすることによって、監査事務所の業務運営をより調和の取れたものにするとともに、品質管理の有効性を高めることができる。
A31
監査事務所が行使する職業的専門家としての判断の質は、その判断を行う者が懐疑心を含む態度を示すときに高まる可能性が高い。懐疑心を含む態度は、以下の双方を伴うものである。・品質管理システムに関して入手される情報(監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況に関連する情報を含む。)の情報源、適合性及び十分性を考慮すること。・追加の調査又はその他の行動の必要性について予断を持たず、注意を払うこと。

(2)責任(第20項、第21項及び第28項(4)参照)

A32
ガバナンス及びリーダーシップの構成要素には、監査事務所の品質管理システムの整備及び運用を可能にするために、監査事務所が適切な組織構造を有し、適切に役割及び責任並びに権限を割り当てなければならないという品質目標が含まれる。
A33
第20項に従った品質管理システムに関連する責任の割当にかかわらず、監査事務所は品質管理システムについて最終的な責任を負う。また、割り当てられた役割について各者に説明責任を含む責任を負わせることに関しても、同様である。例えば、監査事務所は、第53項及び第54項に従って、品質管理システムを評価し結論付けることを品質管理システムに関する最高責任者に割り当てるが、監査事務所は当該評価及び結論について責任を負う。
A34
第20項に記載される事項について責任を割り当てられる者は、典型的には監査事務所の社員である。これは、当該者が、第21項によって要求されるように、監査事務所内で適切な影響力と権限を有する必要があるためである。しかしながら、監査事務所の法的構造によっては、当該者が監査事務所の社員ではない状況があり得る。こうした場合でも、監査事務所又は監査事務所のネットワークによる正式な取決めにより、当該者は割り当てられた役割を果たすために監査事務所内での適切な影響力と権限を有している必要がある。
A35
監査事務所が事務所内で役割、責任及び権限を割り当てる方法は事務所ごとに異なる可能性があるほか、最高責任者等及び経営組織体又はそれらに割り当てられた責任に影響を与える要求事項が法令等によって事務所に課されていることがある。第20項に記載される事項について責任を割り当てられた者は、自らがその責任を果たすことができるように、さらに他の者に一定の役割、手続又は業務を割り当てることがある。しかしながら、第20項に記載される事項の責任を割り当てられた者は、割り当てられた責任について、自ら説明責任を含む責任を負う。規模等によって役割と責任の割当がどのように異なり得るかを示す例・複雑でない監査事務所では、品質管理システムに関する最高責任は、監査事務所の監督について全責任を持つ一人の経営担当の社員に割り当てられることがある。また、この者が、品質管理システムの整備及び運用に関する責任、独立性に関する要求事項の遵守、並びにモニタリング及び改善プロセスを含む、品質管理システムの全ての側面に対して責任を負うことがある。・より複雑な監査事務所では、監査事務所の組織構造を反映してリーダーシップに複数の階層が存在することがある。また、こうした事務所では、外部の者から構成される業務執行に関与せずに監督を行う独立したガバナンス機関が存在することがある。さらに、監査事務所によっては、第20項(3)で規定されている事項以外にも、職業倫理に関する規定の遵守に関する運用責任やサービスラインの経営に関する運用責任など、品質管理システムの特定の側面に関する運用責任を特定の者に割り当てることがある。
A36
独立性に関する要求事項の遵守は、財務諸表の監査若しくはレビュー又はその他の保証業務の実施において不可欠であり、また事務所が発行する報告書に依拠する利害関係者が期待していることでもある。独立性に関する要求事項の遵守に係る運用上の責任を割り当てられた者は、独立性に関する要求事項に対処するために強固で一貫性のあるアプローチを監査事務所が整備するように、通常、独立性に関連する全ての事項について監督する責任を有する。
A37
法令等又は職業的専門家としての基準において、第20項に記載される事項の責任を割り当てられた者に対して、専門家の資格、専門教育又は継続的な専門性の向上に関する要求事項など、追加の要求事項が設定されていることがある。
A38
品質管理システムの整備及び運用に関する責任者に必要とされる適切な経験と知識には、通常、監査事務所の戦略的意思決定と行動の理解及び事務所の事業運営に関する経験が含まれる。
FA38-2JP
最高責任者等により任命された品質管理システムの整備及び運用に関する責任者は、不正リスクに関する品質管理の責任者を兼ねることがある。

7.事務所のリスク評価プロセス(第23項参照)

A39
監査事務所のリスク評価プロセスのデザインの方法は、事務所の性質及び状況(事務所がどのような構造及び組織かを含む。)によって影響を受ける可能性がある。規模等によって監査事務所のリスク評価プロセスがどのように異なり得るかを示す適用の柔軟性の例・複雑でない監査事務所では、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者は、リスク評価プロセスを実施するために監査事務所及び監査事務所が実施する業務を十分に理解していることがある。また、品質目標、品質リスク及び対応の文書化は、より複雑な監査事務所の場合よりも簡潔となることがある(例えば、一つの文書で全てを文書化できることがある。)。・より複雑な監査事務所では、複数の担当者と多数の活動を含む正式なリスク評価プロセスが存在することがある。当該プロセスは、本部に集中化されることもあれば(例えば、品質目標、品質リスク及び対応は、全ての事業部門、機能及びサービスラインについて本部で一律に設定されている。)、分散化されることもある(例えば、品質目標、品質リスク及び対応は、事業部門、機能及びサービスラインのレベルで設定され、それぞれのアウトプットが事務所レベルで集約される。)。また、監査事務所のネットワークが、事務所の品質管理システムに含まれるべき品質目標、品質リスク及び対応を事務所に対して提供することがある。
A40
品質目標の設定、品質リスクの識別と評価及び対応のデザインと適用のプロセスは反復的であり、本報告書の要求事項は一方向で直線的に対処することを意図したものではない。例えば、以下が挙げられる。・品質リスクを識別し評価する際に、監査事務所は、追加の品質目標を設定する必要があると判断することがある。・対応をデザインし適用する際に、監査事務所は、ある品質リスクが識別及び評価されていなかったと判断することがある。
A41
監査事務所が品質目標を設定し、品質リスクを識別して評価し、対応をデザインし適用することを可能にする情報源は、事務所の情報と伝達の構成要素の一部である。また、情報源には、以下が含まれる。・監査事務所のモニタリング活動及び改善プロセスの結果(第42項及びA171項参照)・以下を含む、ネットワーク又はサービス・プロバイダーからの情報-ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスに関する情報(第48項参照)-ネットワークからのその他の情報(ネットワーク・ファームに対するネットワークが実施したモニタリング活動の結果に関する情報も含む。)(第50項及び第51項参照)事務所内外からのその他の情報は、以下のように、監査事務所のリスク評価プロセスに関連することがある。・職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って監査業務が実施されなかったこと、又は本報告書に従って設定された事務所の方針若しくは手続が遵守されなかったことに関する、不服と疑義の申立てに関する情報・外部の検証プログラムの結果・監査事務所が業務を実施する対象の企業に関する証券監督当局から得た情報(例えば、企業の財務諸表における非違行為又は証券規制の不遵守)など、監査事務所が業務を実施する対象の企業に関する情報で、規制当局から提供されたもの・品質管理システムのその他の側面に影響を与えるシステムの変更(例えば、監査事務所の資源についての変更)・その他外部の情報源(例えば、当該監査事務所又はその管轄区域内の他の事務所に対する規制上の措置及び訴訟など、監査事務所が検討すべき分野を明らかにする可能性のあるもの)

(1)品質目標の設定(第24項参照)

A42
法令等又は職業的専門家としての基準において、追加で品質目標を設定する必要のある要求事項が定められていることがある。例えば、法令等において、監査事務所に対して、業務執行に関与しない者を事務所のガバナンス組織のメンバーに選任することが義務付けられていることがある。これを踏まえ、監査事務所は当該要求事項に対処するために追加的な品質目標を設定することが必要であると考えることがある。
A43
監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況によっては、監査事務所が追加の品質目標を設定する必要がないと判断することがある。
A44
監査事務所は、品質リスクの識別と評価及び対応のデザインと適用を強化するため、補助的な品質目標を設定することができる。

(2)品質リスクの識別と評価(第25項参照)

A45
第25項(1)に記載されていない他の状況、事象、環境又は行動の有無が、品質目標の達成を阻害することがある。
A46
リスクは、状況、事象、環境又は行動の有無がどのように、またどの程度品質目標の達成を阻害し得るかによって生じる。全てのリスクが品質リスクの定義を満たすわけではない。リスクが品質リスクに該当するかどうかを監査事務所が決定する際に職業的専門家としての判断が役立つ。当該判断は、リスクが発生する合理的な可能性があるかどうか、並びに個別に又は他のリスクと組み合わせて、一つ又は複数の品質目標の達成を阻害し得るかどうかという監査事務所の検討に基づくものである。品質目標の達成を阻害し得ると監査事務所が発生する可能性のある品質リスクの例理解する状況、事象、環境又は行動の有無についての例・監査事務所の戦略的意思決定及び業務上ガバナンス及びリーダーシップに関して、こうの意思決定、行動、ビジネスプロセス並びにした状況は以下のような多くの品質リスクがビジネスモデルとして監査事務所の全体の生じる可能性がある。財務目標が、本報告書が対象としない業務に・過度に依存している。資源が本報告書が対象としない業務を優先するように配分又は割り当てられる。これにより、本報告書が対象とする業務の品質に悪影響を及ぼすことがある。・財務上及び業務上の優先事項に関する意思決定において、本報告書が対象とする業務の実施における品質の重要性が十分に又は適切に考慮されない。・リーダーシップの特徴及び経営スタイルガバナンス及びリーダーシップに関して、以下として、権限を共有する少数の監査責任者にのような多くの品質リスクが生じることがあより運営される小規模な監査事務所である。る。・品質に関する最高責任者等の説明責任を含む責任が明確に定義されておらず、また割り当てられていない。・品質を重視しない最高責任者等の行動や姿勢が疑問視されない。監査事務所の複雑さと業務上の特徴とし資源に関して、以下のような多くの品質リスク・て他の監査事務所との合併が最近完了した。が生じる可能性がある。・合併した二つの監査事務所が利用するテクノロジー資源に互換性がないことがある。・監査チームが、合併前の監査事務所によって開発された知的資源を利用しているが、これが合併後の新たな監査事務所が利用する新しい手法とは整合的でない。
A47
品質管理システムは絶えず変化していくものであることを踏まえると、監査事務所によってデザインされ適用される対応によって、更なる品質リスクをもたらす状況、事象、環境又は行動が生じることがある。例えば、品質リスクに対処するために監査事務所が新たに資源(例えば、テクノロジー資源)を導入し、品質リスクが当該資源の利用から生じることがある。
A48
リスクが個別に又は他のリスクと組み合せて、品質目標の達成を阻害し得る程度はリスクを生じさせる状況、事象、環境又は行動の有無に応じて異なることがある。また、その程度は、例えば、以下のような点によっても相違する。・状況、事象、環境又は行動の有無が品質目標の達成にどのような影響を与えると考えられるか。・状況、事象、環境又は行動の有無がどの程度頻繁に発生することが見込まれるか。・状況、事象、環境又は行動の有無が影響を与えるまでにどの程度の期間を要すると考えられるか。また、その時点で、監査事務所が状況、事象、環境又は行動の有無の影響を緩和するために対応する機会を有していると考えられるか。・仮に状況、事象、環境又は行動が一旦生じた場合、どの程度の期間にわたって品質目標の達成に影響を与え続けるか。品質リスクの評価に当たって、正式な評点付けや点数付けによることが妨げられているわけではないが、品質リスクの評価はこうした方法によらなければならないということでもない。

(3)品質リスクに対処するための対応のデザインと適用(第16項(21)及び第26項参照)

A49
対応の内容、時期及び範囲は、品質リスクに対する評価の根拠、すなわち想定される発生可能性及び一つ又は複数の品質目標の達成に与える影響に基づいている。
A50
監査事務所がデザインし適用する対応は、監査事務所レベル又は業務レベルのいずれかで運用されることがある。他方、そのような対応に関する責任が監査事務所レベル及び業務レベルの双方で共有されることもある。監査事務所レベル及び業務レベルの両方のレベルで運用する対応を監査事務所がデザインし適用する例監査事務所は、監査チームが誰に対して専門的な見解の問合せを実施すべきか、及び専門的見解の問合せの実施が必要となる具体的な事案を含む、専門的な見解の問合せの実施に関する方針又は手続を定める。監査事務所は、専門的な見解の問合せを提供するために、適切な資質と経験を有する者を選任する。監査チームは、専門的な見解の問合せを実施すべき事項が発生した際にそれを識別し、専門的な見解の問合せを実施し、当該問合せにより合意した結論に従って業務を実施する責任を負う(監基報220第35項参照)。
A51
多くの専門要員を有する、又は地理的に分散している監査事務所の方が、監査事務所全体での一貫性を達成するために正式に文書化された方針又は手続を整備する必要性が高いことがある。

(4)監査事務所の性質及び状況又は監査事務所が実施する業務の内容と状況の変化(第27項参照)

A52
規模等によって、監査事務所の性質及び状況又は監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化に関する情報を識別するための方針又は手続がどのように異なり得るかを示す適用の柔軟性に関する例・複雑でない監査事務所では、特に品質目標の設定、品質リスクの識別と評価、並びに対応のデザイン及び適用に責任を有する者が、その活動の通常の過程において当該情報を識別することができる場合、監査事務所の性質及び状況又は監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化に関する情報を識別するための非公式な方針又は手続を有しているといえることがある。・より複雑性な監査事務所では、監査事務所の性質及び状況又は監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化を識別し検討するために、正式な方針又は手続を設定する必要があることがある。例えば、監査事務所の内部及び外部環境におけるトレンド及び発生した事象を継続的に追跡すること等により、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の性質及び状況に関する情報について定期的なレビューを実施することがある。
A53
第42項に従って識別された不備に対処するために監査事務所が実施する是正措置の一部として、追加の品質目標を設定する、又は品質リスク及び対応を追加する若しくは変更することが必要となることがある。
A54
監査事務所は、本報告書によって規定されたものに追加して品質目標を設定することがある。また、監査事務所は、以前に設定した追加の品質目標が不要になった、又は修正する必要があることを示す情報を識別することがある。

(1)品質へのコミットメント(第28(1)参照)

A55
監査事務所の組織風土は、専門要員の行動に影響を与える重要な要素である。職業倫理に関する規定は、通常、職業倫理の原則を規定し、また本報告書の職業倫理及び独立性の構成要素においてさらに対処している。専門家としての価値観や姿勢には以下が含まれる。・専門家としての行動、例えば、適時性、礼儀正しさ、敬意、説明責任、即応性及び信頼性・チームワークへのコミットメント・職業的専門家としての業務の環境において、新しいアイデアや異なる視点に対する柔軟性の維持・卓越性の追求・継続的な改善へのコミットメント(例えば、最低限の要求事項を越える期待水準を設定し、継続的な学習に重点を置く。)・社会的責任
A56
事業戦略の策定を含む監査事務所の戦略的意思決定プロセスには、財務及び業務上の事項に関する事務所の意思決定、事務所の財務目標、財務的な資源の管理方法、事務所の市場シェアの拡大、業界の特定又は新サービスの提供等の事項が含まれることがある。このような監査事務所の財務上及び業務上の優先事項は、品質に対するコミットメントに直接的又は間接的に影響を与える可能性がある。例えば、監査事務所における財務上及び業務上の優先事項に焦点を当てたインセンティブが、品質へのコミットメントを示す行動を妨げる可能性がある。

(2)リーダーシップ(第28項(2)及び第28項(3)参照)

A57
最高責任者等に品質に対する説明責任を含む責任を負わせるために監査事務所がデザインし適用する対応には、第56項で要求される業績評価が含まれる。
A58
監査事務所の最高責任者等は、その行動と振る舞いを通じてトップとしての姿勢を示す。また、監査事務所内のあらゆるレベルにおける、明確で一貫性のある頻繁な行動とコミュニケーションの組み合わせにより、監査事務所の組織風土が醸成され、品質に対するコミットメントが示される。

(3)組織構造(第28項(4)参照)

A59
監査事務所の組織構造は、事業単位別、業務プロセス別、部門別又は所在地別及びそれら以外の形態を取ることがある。監査事務所は、場合によっては、サービス・デリバリー・センターにプロセス又は業務を集中化することがある。その場合、監査チームには、反復的な又は特定の性質の業務を実施するサービス・デリバリー・センターの者が含まれることがある。

(4)資源(第28項(5)参照)

A60
品質管理システムに関する最高責任者又は品質管理システムの整備及び運用に関する責任者は、通常、監査事務所が入手、開発、利用及び維持する資源の内容及び範囲、並びに利用時期を含む資源の配分方法又は割当方法に影響を与えることができる。
A61
資源の必要性は時間とともに変化する可能性があるため、全ての資源の必要性を予測することは現実的ではないことがある。監査事務所の資源に関する計画には、現在必要な資源の決定、将来における資源の必要性の予測及び予期せぬ資源の必要性が生じた場合に対処するためのプロセスの確立が含まれることがある。

9.職業倫理及び独立性(第16項(20)及び第29項参照)

A62
倫理規則は、会員に期待される質の高い倫理的行動基準を定めている。本規則は、職業的専門家としての公共の利益に関する責任に対する会員の認識を反映し、その倫理上の基本原則を定めている。これらの基本原則は、会員に期待される行動の基準を規定している。基本原則とは、誠実性、客観性、職業的専門家としての能力及び正当な注意、守秘義務並びに職業的専門家としての行動の各原則である。さらに、倫理規則は、会員が基本原則の遵守に対する阻害要因の識別、評価及び対処を行うために適用すべき概念的枠組みを定めている。倫理規則は、各トピックに対して概念的枠組みを適用する上で会員の利用に供するため、様々な事案に関する要求事項及び適用指針を定めている。
A63
監査事務所が品質管理システムにおいて対処する事項は、職業倫理に関する規定の定めよりも具体的又は追加的な場合もある。職業倫理に関する規定の定めよりも具体的又は追加的な事項を監査事務所が品質管理システムに含めている例・監査事務所は、たとえ重要ではない場合であっても、関与先からの贈答及び接待を受けることを禁じている。・監査事務所は、監査責任者の関与期間の上限を設定し、またそれを監査チームの全ての上位者に適用する。
A64
その他の構成要素が職業倫理及び独立性の構成要素に影響を及ぼす、又は関連することがある。職業倫理及び独立性とその他の構成要素との関係の例・情報と伝達の構成要素は、職業倫理及び独立性に関連する様々な事項のコミュニケーションに対処することがある。これには以下を含む。-監査事務所は、独立性に関する要求事項の対象となる全ての専門要員及びその他の者に独立性に関する要求事項を伝達する。-独立性に対する阻害要因又は職業倫理違反が生じる可能性がある状況等について、専門要員及び監査チームは報復を恐れることなく、監査事務所に関連する情報を伝達する。・監査事務所の業務運営に関する資源の構成要素において、監査事務所は、以下を実施することがある。-職業倫理の遵守を管理及びモニタリングする者又は職業倫理に関する事項について専門的な見解の問合せに対応する者を選任する。-独立性に関する情報の記録と維持を含む、職業倫理の遵守を監視するために、ITアプリケーションを使用する。
A65
その他の者に適用される職業倫理は、職業倫理に関する規定及び監査事務所が品質管理システム又は業務の実施においてその他の者をどのように利用するかによる。その他の者に適用される職業倫理に関する規定の例・職業倫理に関する規定には、ネットワーク・ファーム又はネットワーク・ファームの構成員に適用される、独立性の要求事項が含まれることがある。例えば、倫理規則は、ネットワーク・ファームに適用される独立性に関する要求事項を含んでいる。・職業倫理に関する規定には、監査チーム又はその他の類似の概念の定義が含まれる場合があり、その定義には保証業務において手続を実施する全ての者を含めることがある(例えば、遠隔地における実地棚卸に立会う構成単位の監査人又はサービス・プロバイダー)。したがって、職業倫理に関する規定において定義された監査チーム又はその他の類似の概念に適用される要求事項が、そのような者にも適用されることがある。・監査事務所のネットワーク、ネットワーク・ファーム又はサービス・プロバイダーが、監査事務所が入手した関与先の情報へのアクセスがある場合には、そのような者に対して守秘義務の原則が適用されることがある。
A66
欠番《10.契約の新規の締結及び更新》

(1)業務の内容及び状況、並びに関与先の誠実性と倫理的価値観(第30項(1)①参照)

A67
業務の内容及び状況について入手する情報には、以下が含まれることがある。・業務を実施する対象の企業の業種及び関連する規制要因・企業の性質(例えば、事業、組織構造、所有者とガバナンス、ビジネスモデル及び資金調達方法)・基礎となる主題及び適用される規準の内容。例えば、統合報告書の場合、-基礎となる主題には、社会、環境及び安全と衛生に関する情報が含まれることがある。-適用される規準は、広く認められている専門家団体によって設定された業績評価指標であることがある。
A68
監査事務所が関与先の誠実性及び倫理的価値観に関する判断を裏付けるために入手する情報には、関与先の主要な所有者、主要な経営者及び監査役等の氏名又は名称並びに事業上の評判が含まれることがある。関与先の誠実性や倫理的価値観について入手した情報の内容と範囲に影響を与える可能性のある要因の例・所有と経営構造の複雑さを含む、業務の実施対象となる企業の性質・関与先の事業や商慣行の特質・会計基準の解釈などに対する関与先に重要な影響力のある株主、経営者及び監査役等の姿勢並びに統制環境に関する情報・関与先が監査事務所の報酬を過度に低く抑えようとしているか否か。・監査範囲の制約など関与先による業務の範囲の制限の兆候・関与先が資金洗浄又は他の重要な違法行為に関与している兆候・別の監査事務所を選任する理由及び前任の監査事務所と契約を更新しない理由・関連当事者の氏名又は名称及び事業上の評判
FA68-2JP
監査契約の新規の締結及び更新の判断における不正リスクの考慮には、関与先の誠実性に関する理解が含まれる。また、監査契約の新規の締結及び更新に伴うリスク評価の妥当性を検討する監査チーム外の適切な者には、例えば、審査担当者などが該当する。
A69
監査事務所は、以下を含む様々な内部及び外部の情報源から情報を入手することがある。・既存の関与先の場合、該当する場合、現在若しくは過去の業務からの情報又は当該関与先に対して他の業務を行った他の専門要員への照会・新規の関与先の場合、職業倫理に関する規定に従って、当該関与先に対し職業専門家としての会計及び監査関連業務を現在又は過去に提供している者等への照会・金融機関、法律専門家、関与先の同業他社等の第三者との討議・関連するデータベース(知的資源に該当する場合もある。)を利用した背景調査。場合によっては、監査事務所がサービス・プロバイダーを利用して背景調査を実施することがある。
A70
監査事務所による契約の新規の締結及び更新プロセスにおいて得られた情報は、監査チームが監査業務を計画し実施する際にも関連することがある。職業的専門家としての基準は、そのような情報を入手又は検討することを特に監査チームに要求することがある。例えば、監査基準報告書220第23項は、監査業務を計画し実施する際に、契約の新規の締結及び更新プロセスにおいて得られた情報を考慮することを監査責任者に要求している。
A71
職業的専門家としての基準又は適用される法令等には、契約の新規の締結及び更新の前に対処する必要のある具体的な規定が含まれることがあり、また受嘱前に現任又は前任の監査事務所に質問することを監査事務所に要求することもある。例えば、監査人の変更があった場合、監査基準報告書300「監査計画」及び監査基準報告書900「監査人の交代」は初年度監査の開始前に、監査人が職業倫理に関する規定に準拠して前任の監査事務所とコミュニケーションを行うことを要求している。また、倫理規則は、契約の新規の締結時及び更新時における利益相反の検討を要求しており、財務諸表の監査又はレビューの業務を受嘱する際には、現任又は前任の監査事務所とのコミュニケーションを行うことを要求している。

(2)監査事務所の業務を実施する能力(第30項(1)②参照)

A72
監査事務所が職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って業務を実施できるか否かは、以下の事項により影響を受けることがある。・業務を実施するための適切な資源が利用できるかどうか。・業務を実施するための情報又は当該情報を提供する者へのアクセスがあるかどうか。・監査事務所及び監査チームが、職業倫理に関する規定に関する責任を果たすことができるかどうか。業務を実施するために適切な資源が利用可能かどうかを判断する際に監査事務所が考慮する可能性のある要因の例・業務の状況及び報告期限・業務を実施するための十分な時間を含む、適性と適切な能力を有する者が利用可能かどうか。これには以下が含まれる。-業務の指揮及び監督に対する全体的な責任を負う者-関連する業界若しくは基礎となる主題又は主題情報の作成に当たって適用される規準に関する知識、並びに関連する規制又は報告についての要求事項に関する経験を有する者-グループ財務諸表の監査を目的として、構成単位の財務情報に対して監査手続を実施する者・必要な場合、専門家が利用可能かどうか。・審査が必要な場合、品質管理基準報告書第2号の適格性に関する要求事項を満たす者が関与可能かどうか。・テクノロジー資源の必要性、例えば、監査チームが企業のデータに対して手続を実施することを可能にするITアプリケーションの必要性・知的資源の必要性、例えば、手法、業界若しくは主題特有の指針又は情報源へのアクセス《(3)監査事務所の財務上及び業務上の優先事項》(第30項(2)参照)
A73
財務上の優先事項により監査事務所の収益性に焦点が当たることがあり、また業務の実施により得られた報酬は監査事務所の財務上の資源に影響を与える。業務上の優先事項には、監査事務所の市場シェアの拡大、業界の特定又は新サービスの提供等の戦略的重点分野が含まれることがある。業務に関して見込まれる報酬額に不足はなくとも、監査事務所が契約の新規の締結及び更新が適切ではない場合がある(例えば、関与先の経営者が誠実性及び倫理的価値観を欠いている場合)。
A74
業務の内容及び状況を考慮すると、業務に関して提示及び請求する報酬額が低廉な場合もあり、監査事務所が職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って業務を実施できないことがある。倫理規則は、報酬及びその他の種類の対価を扱っており、その中には業務に関して提示及び請求する報酬が低すぎるため、職業的専門家としての能力及び正当な注意という基本原則の遵守が阻害され得る状況が含まれている。

(1)監査チームの責任、並びに指揮、監督及び査閲(第31項(1)及び第31項(2)参照)

A75
職業的専門家としての基準又は適用される法令等には、監査責任者の全体的な責任に関する具体的な規定を含むことがある。例えば、監査基準報告書220は、監査チームの適切な指揮、監督及び作業の査閲に関する責任を含む、監査品質を管理及び達成し、また監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与しているという監査責任者の全体的な責任を扱っている。
A76
指揮、監督及び査閲の例・監査チームへの指揮及び監督には、以下を含むことがある。-業務の進捗状況を把握すること。-個々のメンバーが各自に与えられた指示を理解しているかどうか、並びに作業が監査計画に従って実施されているかどうかについて検討すること。-監査の過程で発見された重要な会計及び業務上の問題となる可能性がある事項をより経験のある監査チーム内のメンバーに報告するように指示し、当該事項の重要性の程度を検討し、監査計画を適切に修正すること。-専門的な見解の問合せが必要な事項又はより経験のある監査チームのメンバーが検討を必要とする事項を特定すること。・作業の査閲には、以下の事項の検討が含まれることがある。-監査事務所の方針や手続、職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って作業を行っているかどうか。-重要な事項を詳細に検討しているかどうか。-専門的な見解の問合せを適切に実施しており、その結論を文書化し、かつその結論に従って業務を実施しているかどうか。-監査手続の種類、時期及び範囲を変更する必要があるどうか。-到達した結論は、実施した作業によって裏付けられているか、またそれが適切に監査調書に記載されているかどうか。-保証業務に関して得られた証拠は、報告書を裏付けるものとして十分かつ適切であるかどうか。-手続の目的は達成されているかどうか。
A77
場合によっては、監査事務所は監査手続を実施するために、監査事務所のサービス・デリバリー・センターの専門要員やネットワーク・ファームのサービス・デリバリー・センターの担当者を利用することがある(すなわち、専門要員又はその他の者を監査チームに含める。)。そのような場合には、監査事務所の方針又は手続において、以下のように当該担当者の指揮、監督及び作業の査閲が具体的に規定されることがある。・サービス・デリバリー・センターの担当者に業務のどの部分を割り当てるか。・監査責任者又はその指示を受けた者が、サービス・デリバリー・センターの担当者が行う作業をどのように指揮、監督及び査閲することが期待されるか。・監査チームとサービス・デリバリー・センターの担当者との間のコミュニケーションに関する取決め《(2)職業的専門家としての判断及び職業的専門家としての懐疑心》(第31項(3)参照)
A78
職業的専門家としての懐疑心は、保証業務について下される判断の質に資するものであり、当該判断を通じて、保証業務を実施する上での監査チームの全体的な有効性を支えている。日本公認会計士協会の他の公表物は、業務レベルでの職業的専門家としての判断の行使又は職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮を規定している。例えば、監査基準報告書220のA34項からA36項は、業務レベルでの職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮に対する障害、職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮を妨げる可能性のある無意識の監査人の偏向及びそのような障害を緩和するために監査チームが実施する可能性のある行動の例を示している。

(3)専門的な見解の問合せ(第31項(4)参照)

A79
通常、専門的な見解の問合せには、専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項について、専門的な知識を有する監査事務所内外の者と職業的専門家としての水準で議論することが含まれる。専門的な見解の問合せの重要性と利点を強調し、また監査チームの専門的な見解の問合せを奨励する環境は、品質へのコミットメントを示す組織風土を醸成するのに役立つことがある。
A80
専門的な見解の問合せが必要とされる専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項は、監査事務所が明示することがあり、又は監査チームが専門的な見解の問合せを必要とする事項を識別することもある。また、監査事務所は、結論がどのようにして合意され実施されるかを明示することがある。
A81
監査基準報告書220第35項には、専門的な見解の問合せに関連する監査責任者の要求事項が含まれている。
FA81-2JP
監査事務所内外の適切な者は、監査事務所の規模や状況により異なるが、例えば、監査事務所の専門的な調査部門や法律専門家等が含まれる。

(4)監査上の判断の相違(第31項(5)参照)

A82
監査事務所は、監査上の判断の相違が早い段階で識別されることを奨励し、そのような判断の相違がどのように解決され、関連する結論がどのように実施、文書化されるべきかを含め、判断の相違を提起して対処するためにとるべき手順を明示することがある。状況によっては、監査上の判断の相違を解決するために、他の業務実施者や事務所等に専門的な見解の問合せをすることがある。

(5)業務の文書化(第31項(6)参照)

A83
第31項(6)の品質目標への対応には、監査事務所の方針又は手続において監査ファイルの最終的な整理を完了する期限を設定することが含まれる。例えば、監査の場合には、通常、その期限は監査報告書日から60日程度を超えないものとする。
A84
業務に関する文書の保存と維持には、基礎となるデータの安全な保管、完全性、アクセス可能性又は復元可能性及び関連する技術の管理が含まれることがある。業務に関する文書の保存と維持には、ITアプリケーションの活用が含まれることがある。業務に関する文書の完全性は、承認なく変更、追加若しくは削除された場合又は永久に失われた若しくは破損した場合に、損なわれる可能性がある。
A85
監査事務所が監査調書を保存する必要性やその期間は、例えば、ある監査調書が次期以降も継続して重要となる事項の記録として使用されるかなど、業務の内容や監査事務所の状況に応じて異なる。監査調書の保存期間は、法令等が特定の業務について保存期間を定めているかどうか、又は法令等の規定がない場合に一般に認められた保存期間が存在するかどうかなどの要因にも影響を受ける。監査調書の保存期間としては会社法上の会計帳簿に関する保存期間(10年)が参考となるが、状況によっては、この保存期間よりも短い保存期間が適当であるとすることもある。また、監査事務所等の責任について係争中であるような場合にはこれよりも長い保存期間が適当であるとすることもある。

12.資源(第32項参照)

A86
資源には以下のものが含まれる。・人的資源・テクノロジー資源(例えば、ITアプリケーション)・知的資源(例えば、文書化された方針や手続、手法や指針)また、財源は、監査事務所の人的資源、テクノロジー資源及び知的資源を取得、開発及び維持するために必要であることから、品質管理システムにも関連している。財源の管理と配分がリーダーシップの影響を強く受けることから、ガバナンス及びリーダーシップの品質目標は、財務上及び業務上の優先事項に対処するとともに、財源にも対処している。
A87
資源は、監査事務所の内部にある場合もあれば、監査事務所のネットワーク、ネットワーク・ファーム又はサービス・プロバイダーといった外部から調達する場合もある。資源は、監査事務所の品質管理システムにおける活動を実施する際に、又は品質管理システムの運用の一環として個別業務を行う際に利用される。監査事務所のネットワーク又はネットワーク・ファームから資源が調達される場合には、第48項から第52項がこの構成要素の目標を達成する上で、監査事務所がデザイン及び適用する対応の一部を構成する。

①専門要員の採用、育成及び継続雇用、並びに専門要員の適性と能力(第32項(1)及び第32項(4)参照)

A88
適性とは、役割を果たすための能力であり、原則、基準、概念、事実及び手続に関する知識に限らず、技術的な能力、専門的な技能、並びに職業的専門家としての倫理、価値観及び態度を統合して活用する能力である。適性は、職業的専門家としての研修、継続的な職業的専門家としての能力開発、実務経験、経験豊富な監査チームのメンバーによる経験の少ない監査チームのメンバーへの指導等の様々な方法により向上させることができる。
A89
法令等又は職業的専門家としての基準は、職業的専門家としての研修、継続的な職業的専門家としての能力開発に関する要求事項を含む、監査責任者の専門家としての資格要件等、適性と能力に対処する要求事項を定めることがある。
A90
専門要員の採用、育成及び継続雇用に関する方針又は手続の例専門要員の採用、育成及び継続雇用に関連して、監査事務所がデザインし適用する方針又は手続は、以下の事項に対処することができる。・適性を有する、又は育成することのできる人材の採用・専門要員の育成と継続的な職業的専門家としての能力開発に焦点を当てた研修プログラム・適切な間隔で実施される能力分野やその他の評価指標を含む評価方法・監査責任者及び監査事務所の品質管理システムに関連する役割と責任を割り当てられた者を含む、全ての専門要員に対する報酬、昇進及びその他のインセンティブ《②専門要員の品質へのコミットメント、並びに品質へのコミットメントに関する説明責任及び評価》(第32項(2)参照)
A91
適時の評価とフィードバックは、専門要員の継続的な育成を支援し促進するのに役立つ。専門要員が少ない監査事務所では、正式に定められた評価やフィードバックの方法が用いられないことがある。
A92
専門要員によって示される積極的な行動又は姿勢は、報酬、昇進又は他のインセンティブ等の様々な手段を通じて評価されることがある。状況によっては、金銭的報酬に基づかない単純又は形式的ではないインセンティブが適切な場合もある。
A93
品質へのコミットメントを示さない、その役割を果たすための専門能力を維持も開発もしない、また監査事務所としての対応をデザインされたようには実施しないといった専門要員の行動や姿勢は、品質に悪影響を及ぼす。このような専門要員の行動や姿勢に対して説明責任を問う方法は、その重大性や発生頻度を含む、当該行動や姿勢の性質による。専門要員が品質に悪影響を及ぼす行動や姿勢を示す際に監査事務所が取り得る行動には以下が含まれる。・研修又はその他専門家としての能力開発・評価、報酬、昇進又は他のインセンティブへの考慮・適切な場合、懲戒処分《③外部から調達した人的資源》(第32項(3)参照)
A94
職業的専門家としての基準には、資源の適切性に関する監査責任者の責任が含まれることがある。例えば、監査基準報告書220第25項は、業務を実施するための十分かつ適切な資源が、監査事務所の方針又は手続に従って、適時に監査チームに割り当てられている又は利用可能であることを判断する監査責任者の責任を扱っている。

④各業務に割り当てられる監査チームのメンバー(第32項(4)参照)

A95
監査チームのメンバーは、以下によって業務に割り当てられることがある。・監査事務所(監査事務所内のサービス・デリバリー・センターからの専門要員の割当を含む。)・監査事務所が、業務を実施するために監査事務所のネットワーク又はネットワーク・ファームに所属する者を利用する場合における、当該監査事務所のネットワーク又はネットワーク・ファーム(例えば、構成単位の監査人であるネットワーク・ファーム、ネットワーク又はネットワーク・ファームのサービス・デリバリー・センター)・監査事務所が、業務を実施するためにサービス・プロバイダーの者を利用する場合における、当該サービス・プロバイダー(例えば、監査事務所のネットワーク外の監査事務所が構成単位の監査人である場合)。
A96
監査基準報告書220第26項は、監査チームのメンバー及び監査人が利用する外部の専門家が、全体として監査業務を実施するための十分な時間を含む、適性及び適切な能力を有しているかを判断する監査責任者の責任を規定している。監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」第26項は、グループ監査に関連して監査基準報告書220をどのように適用するかについて規定している。業務に割り当てられる監査チームのメンバーの適性及び能力に関して監査事務所によってデザインされ適用される対応には、以下に関する方針又は手続が含まれる。・監査事務所のネットワーク、ネットワーク・ファーム又はサービス・プロバイダーから割り当てられる者を含め、業務に割り当てられる監査チームのメンバーが、業務を実施するための適性及び能力を有しているかを判断する際に考慮する監査責任者が入手し得る情報及び要因・特に監査事務所のネットワーク、ネットワーク・ファーム又はサービス・プロバイダーによって割り当てられた監査チームのメンバーの適性及び能力に関する懸念がどのように解消されるか。
A97
構成単位の監査人を含む、監査事務所のネットワーク又はネットワーク・ファームに所属する者を業務に利用する場合には、第48項から第52項の要求事項も適用される(例えば、A179項参照)。

(2)テクノロジー資源(第32項(6)参照)

A98
ITアプリケーションに代表されるテクノロジー資源は、監査事務所のIT環境の一部を構成する。監査事務所のIT環境には、それを支えるITインフラ並びにITプロセス及び当該プロセスに関与する人的資源も含まれる。・ITアプリケーションとは、利用者のために、又は場合によっては別のアプリケーションプログラムのために、特定の機能を直接実行するようにデザインされたプログラム又はプログラムの集合である。・ITインフラとは、ITネットワーク、オペレーティングシステム、データベース及びそれらに関連するハードウェアとソフトウェアから構成される。・ITプロセスとは、IT環境へのアクセスを管理し、プログラム変更やIT環境に対する変更を管理し、IT環境のモニタリングを含むIT運用を管理する監査事務所のプロセスである。
A99
テクノロジー資源は、監査事務所の様々な目的のために利用されることがあり、一部の目的は、品質管理システムに関係しないこともある。本報告書の目的に関連するテクノロジー資源は、以下のとおりである。・監査事務所の品質管理システムの整備又は運用に直接的に利用されるテクノロジー資源・業務の実施において監査チームが直接利用するテクノロジー資源・ITアプリケーションを支えるITインフラやITプロセス等、上記の効果的な運用を可能にするために不可欠なテクノロジー資源本報告書の目的に関連するテクノロジー資源がどのように異なるかを示す適用の柔軟性の例・複雑でない監査事務所では、テクノロジー資源は、監査チームが利用する、サービス・プロバイダーから購入した市販のITアプリケーションから構成されることがある。ITアプリケーションの運用を支援するITプロセスも、単純であるかもしれないが、関連性があることがある(例えば、ITアプリケーションへのアクセスを承認するプロセスやITアプリケーションの更新を処理するプロセス)。・より複雑な監査事務所では、テクノロジー資源はより複雑であり、また以下から構成されることがある。-カスタム開発したアプリケーション又は監査事務所のネットワークが開発したアプリケーションを含む、以下のような複数のITアプリケーション・監査チームが利用するITアプリケーション(業務ソフトウェアや自動化された監査ツール等)・品質管理システムの特定の側面を管理するために監査事務所が開発及び利用するITアプリケーション(独立性のモニタリング又は業務への専門要員の割当のためのITアプリケーション等)-ITインフラ及びITプロセスの管理責任者や、ITアプリケーションへのプログラム変更を管理するための監査事務所のプロセスなど、これらのITアプリケーションの運用を支援するITプロセス
A100
監査事務所は、ITアプリケーションの取得、開発、導入及び維持において、以下の事項を検討する場合がある。・入力データが完全かつ適切である。・データの機密性が保持されている。・ITアプリケーションは、デザインどおりに動作しており、また意図された目的を達成する。・ITアプリケーションのアウトプットは、その利用目的を達成する。・ITアプリケーションがデザインどおりに継続して動作することを支援するために必要なIT全般統制が適切である。・ITアプリケーションを利用する人材の育成を含む、ITアプリケーションを効果的に利用するための専門的な技術の必要性・ITアプリケーションがどのように動作するかを示す手順書を開発する必要性
A101
監査事務所は、ITアプリケーションが適切に動作すると判断し、監査事務所がその利用を承認するまで、ITアプリケーション又はITアプリケーションの機能の利用を明確に禁止することがある。または、監査事務所は、承認を得ていないITアプリケーションを監査チームが利用する場合の方針又は手続を定めることがある。このような方針や手続は、A100項の事項を検討することにより、業務において使用する前に、ITアプリケーションが利用に適しているか判断することを監査チームに要求することがある。監査基準報告書220第25項から第28項では、業務の資源に関する監査責任者の責任を規定している。

(3)知的資源(第32項(7)参照)

A102
知的資源には、品質管理システムの運用を可能にし、また一貫した業務の実施を促進するために、監査事務所が利用する情報が含まれる。知的資源の例文書化された方針又は手続、手法、業界や特有の事象に関する指針、会計に関する指針、調書のひな型又は情報源へのアクセス(例えば、企業に関する詳細な情報を提供するウェブサイトの購読又は業務の実施において一般的に利用されるその他の情報)
A103
知的資源は、監査事務所の手法が業務の計画と実施を円滑にするITアプリケーションに組み込まれている等、テクノロジー資源を通して利用可能となることがある。

(4)テクノロジー資源及び知的資源の利用(第32項(6)から第32項(7)参照)

A104
監査事務所は、監査事務所のテクノロジー資源及び知的資源の利用に関する以下の方針又は手続を定めることがある。・業務の実施において、又は監査ファイルの保管等の業務の他の側面に関連して、特定のITアプリケーション又は知的資源の利用を要求する。・特定の資格又は研修の必要性を含め、資源を利用する者が必要とする資格又は経験を明記する。例えば、結果の解釈には専門的な技能が必要となることがあるため、監査事務所は、データを分析するITアプリケーションを利用するために必要な資格又は専門知識を規定することがある。・テクノロジー資源及び知的資源の利用に関する監査責任者の責任を明記する。・テクノロジー資源又は知的資源をどのように利用するか、また、テクノロジー資源又は知的資源を利用する際の支援体制の利用可能性を規定する。

(5)サービス・プロバイダー(第16項(22)及び第32項(8)参照)

A105
監査事務所は、特に内部で適切な資源を利用できない場合に、サービス・プロバイダーが提供する資源を利用することがある。監査事務所は、サービス・プロバイダーから提供される資源を利用する場合であっても、品質管理システムに対する責任を負う。サービス・プロバイダーから提供される資源の例・監査事務所のモニタリング活動若しくは審査の実施又は専門的な見解の問合せに従事する者・監査業務の実施において利用される市販のITアプリケーション・監査事務所の業務において手続を実施する者、例えば、構成単位の監査人(監査事務所が所属するネットワーク外の他の監査事務所の場合)又は遠隔地の実地棚卸への立会に従事する者・監査チームが監査証拠を入手するのを支援するために、監査事務所が利用する外部専門家
A106
監査事務所は、品質リスクの識別と評価においては、品質目標の達成を阻害し得る状況、事象、環境及び行動の有無について理解を得ることが要求される。これには、サービス・プロバイダーに関するそれらの理解が含まれる。その際、監査事務所は、サービス・プロバイダーが提供する資源の利用に関連する品質リスクを識別し評価するために、当該資源の内容、監査事務所が利用する方法及び範囲、並びに監査事務所が利用するサービス・プロバイダーの全般的な特徴を考慮することがある。
A107
監査事務所は、サービス・プロバイダーから提供される資源が監査事務所の品質管理システム又は業務の実施において利用するのに適しているのかを判断する際に、サービス・プロバイダー及びサービス・プロバイダーが提供する資源に関する情報を様々な情報源から入手することがある。監査事務所が考慮する事項には以下が含まれる。・関連する品質目標及び品質リスク。例えば、サービス・プロバイダーが提供する手法を利用する場合、サービス・プロバイダーが職業的専門家としての基準及び適用される法令等の変更を反映してその手法を更新していないという品質リスク等、第32項(7)の品質目標に関連する品質リスクがあることがある。・資源の内容と範囲及びサービスの条件(例えば、ITアプリケーションが更新される頻度、ITアプリケーションの利用の制限及びサービス・プロバイダーがデータの機密性にどのように対処するか等)・当該資源が監査事務所全体でどの程度利用されているか、その資源が監査事務所によってどのように利用されるか、及びその利用目的に適しているか。・監査事務所のために資源をカスタマイズした範囲・過去における監査事務所の当該サービス・プロバイダーの利用・サービス・プロバイダーの業界での実績及び市場での評判
A108
監査事務所は、サービス・プロバイダーからの資源の利用に関して、資源が効果的に機能するように、追加的な行動を取る責任を負うことがある。例えば、監査事務所は、資源が効果的に機能するために、サービス・プロバイダーに情報を伝達したり、ITアプリケーションに関連して、基盤となるITインフラとITプロセスを整備することが必要となることがある。

13.情報と伝達(第33項参照)

A109
情報の取得、生成及び伝達は、通常、全ての専門要員に関連し、また監査事務所内外への情報の発信を含む継続的なプロセスである。情報と伝達は、品質管理システムの全ての構成要素に広範に関連する。

(1)監査事務所の情報システム(第33項(1)参照)

A110
信頼性が高く関連性のある情報には、正確、完全、適時で有効な情報が含まれ、監査事務所の品質管理システムが適切に機能することを可能にし、また品質管理システムに関する意思決定を支援する。
A111
情報システムには、情報が識別、捕捉、処理、維持、伝達される方法に影響を与える、手作業又はITの利用が含まれる場合がある。情報を識別、捕捉、処理、維持、伝達する手続はITアプリケーションを通じて実施されることがあり、また場合によっては、他の構成要素に対する監査事務所の対応に組み込まれることもある。さらに、デジタルな記録が、物理的な記録に代わることもあれば補完することもある。複雑でない監査事務所で情報システムがどのようにデザインされるかを示す適用の柔軟性の例専門要員が少なく最高責任者等が直接関与する複雑でない監査事務所では、情報をどのように識別、捕捉、処理、維持すべきかを明示する厳密な方針及び手続を必要としない場合がある。

(2)監査事務所内のコミュニケーション(第33項(2)及び第33項(3)参照)

A112
監査事務所は、事務所全体のコミュニケーションを促進するための伝達経路を確立することにより、専門要員及び監査チームが監査事務所と、及び相互に、情報を交換する責任を認識し強化することがある。監査事務所、専門要員及び監査チームの間でのコミュニケーションの例・監査事務所は、専門要員と監査チームに対して、監査事務所の対応を適用する責任を伝達する。・品質管理システムの変更が専門要員と監査チームの責任に関連する場合、その責任に応じて迅速かつ適切に行動できるように、監査事務所はその変更を専門要員と監査チームに伝達する。・監査事務所は、契約の新規の締結及び更新プロセスにおいて入手した情報のうち、監査チームが業務を計画し実施する上で関連する情報を伝達する。・監査チームは、監査事務所に以下に関する情報を伝達する。-契約の新規の締結又は更新の前に知っていれば、監査事務所が契約の新規の締結又は更新を承認しない原因となった可能性のある、業務の実施において得られた関与先に関する情報-監査事務所の対応の運用に関する情報(例えば、専門要員を業務に割り当てる監査事務所のプロセスに関する懸念)。そのような情報は、場合によっては、監査事務所の品質管理システムの不備を示していることがある。・監査チームは、審査担当者又は専門的な見解の問合せを実施する者に情報を伝達する。・グループ監査人は、監査事務所の方針又は手続に従って、業務レベルでの品質管理に関する事項等を構成単位の監査人に伝達する。・独立性に関する要求事項の遵守について運用責任を割り当てられた者は、関連する専門要員及び監査チームに対して、独立性に関する要求事項の変更、並びにその変更に対処するための監査事務所の方針又は手続を伝達する。

①監査事務所のネットワーク内又は当該ネットワーク及びサービス・プロバイダーに対するコミュニケーション(第33項(4)①参照)

A113
監査事務所は、監査事務所のネットワーク内又は当該ネットワーク及びサービス・プロバイダーに対して情報を伝達することに加えて、ネットワーク、ネットワーク・ファーム又はサービス・プロバイダーから、監査事務所が品質管理システムを整備及び運用するために必要とする情報を入手する場合がある。監査事務所のネットワーク内において監査事務所が入手する情報の例監査事務所は、事務所に影響を与える独立性に関する要求事項が存在する場合には、ネットワーク・ファームの関与先に関する情報を、ネットワーク又はネットワーク・ファームから入手する。

②監査事務所外の他の者とのコミュニケーション(第33項(4)②参照)

A114
法令等又は職業的専門家としての基準により、監査事務所が外部の者への情報の伝達を要求されることがある場合の例・監査事務所が関与先の違法行為に気付いており、かつ職業倫理に関する規定が監査事務所に対して関与先の外部の適切な当局へ当該違法行為を報告すること、又はそのような報告が状況において適切な行為であるかどうかを検討することを要求している場合・法令等が、監査事務所に対して透明性報告書の発行を要求し、また透明性報告書に記載することが要求される情報の内容を明記している場合・証券関連の法令等が監査事務所に対して特定の事項を監査役等へ伝達することを要求している場合
A115
場合によっては、監査事務所は品質管理システムに関連する情報の外部への報告を法令等によって制限されることがある。監査事務所が外部への報告を制限される場合の例・個人情報保護や秘密保持関連の法令等が特定の情報の開示を禁止している場合・法令等又は職業倫理に関する規定が守秘義務に関する規定を含んでいる場合《14.特定の対応》(第34項参照)
A116
特定の対応は、異なる構成要素における複数の品質目標に関連する複数の品質リスクに対処することがある。例えば、不服と疑義の申立てに関する方針又は手続は、資源(例えば、専門要員の品質へのコミットメント)、職業倫理及び独立性並びにガバナンス及びリーダーシップにおける品質目標に関連する品質リスクに対処することがある。しかし、特定の対応のみでは、品質管理システムの目的を達成するには不十分である。

(1)我が国における職業倫理に関する規定(第34項(1)参照)

A117
職業倫理に関する規定には、阻害要因の識別と評価及びその対処方法に関する定めが含まれる場合がある。例えば、我が国における職業倫理に関する規定は、この目的に関して概念的枠組みを提供しており、また概念的枠組みを適用する場合には、監査事務所が第三者から入手した合理的なテスト結果を利用することを要求している。
A118
職業倫理に関する規定は、監査事務所が違反にどのように対応することが要求されるかを明記している場合がある。例えば、我が国における倫理規則には、違反が発生した場合の監査事務所に対する要求事項が規定されており、また違反に対処するための具体的な要求事項(外部の者とのコミュニケーションの要求事項を含む。)が含まれている。
A119
我が国における職業倫理に関する規定の違反に関連して、監査事務所は以下の事項を規定することがある。・適切な専門要員に対する職業倫理に関する規定の違反の報告・違反の重要性及び職業倫理に関する規定の遵守への影響の評価・違反がもたらした結果に十分に対処するために講じるべき措置。これには、当該措置を実行可能な限り速やかに講じることを含む。・違反に関連する企業の監査役等又は外部の監督当局等、外部の者に違反を報告するか否かの判断・違反に責任を負う個人に関して、講じるべき適切な措置の決定《(2)不服と疑義の申立て》(第34項(3)参照)
A120
不服と疑義の申立てに対処するための方針又は手続を定めることは、監査事務所が不適切な監査報告書を発行することを防止するのに役立つことがある。また、以下について監査事務所を支援することがある。・品質へのコミットメントを示さず、監査事務所の品質へのコミットメントを支援するような行動を取らない、又は姿勢を示さない者(最高責任者等を含む。)を識別し対処する。・品質管理システムの不備を識別する。
A121
不服と疑義の申立ては、専門要員又は監査事務所の外部の者(例えば、関与先、構成単位の監査人又は監査事務所のネットワーク内の者)が行う可能性がある。

(3)契約の新規の締結又は更新の後に知ることとなった情報(第34項(4)参照)

A122
契約の新規の締結又は更新の後に知ることとなった情報には、以下の二つがある。・契約の新規の締結又は更新に関する監査事務所の判断時に存在したが、監査事務所が気付いていなかった情報・契約の新規の締結又は更新の判断時以降に発生した新しい情報契約の新規の締結又は更新に関する監査事務所の判断に影響を与えた可能性のある情報を、契約の新規の締結又は更新の後に知ることとなった場合に関する、監査事務所の方針又は手続において規定する事項の例・監査事務所内又は法律専門家との専門的な見解の問合せを実施する。・監査事務所が業務を継続することに関する職業的専門家としての基準又は法令等があるかどうかを考慮する。・適切なレベルの関与先の経営者及び監査役等又は契約当事者と、関連する事実及び状況に基づいて監査事務所が取り得る行動について討議する。・契約の解除が適切な行動と判断した場合-関与先の経営者及び監査役等又は契約当事者に対して、当該判断及び解除の理由を伝達する。-監査事務所が契約を解除した旨及びその理由を規制当局に報告することを要求する、職業的専門家としての基準又は法令等があるかどうかを考慮する。
A123
関連する法令等が、契約の新規の締結又は更新を監査事務所に義務付けることがある。

(4)外部とのコミュニケーション(第34項(5)参照)

A124
監査事務所は、品質に対処するために実施した活動とその有効性について、目的適合性があり、信頼性が高く、透明性のあるコミュニケーションを行うことにより、業務の品質に対する利害関係者の信頼を維持し向上させることができる。
A125
監査事務所の品質管理システムに関する情報を利用する可能性がある外部の者及び監査事務所の品質管理システムへの関心の程度は、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況に応じて異なる場合がある。監査事務所の品質管理システムに関する情報を利用する可能性のある外部の者の例・監査事務所の関与先の経営者又は監査役等は、業務を実施する監査事務所を選任するかどうかを判断するためにその情報を利用することがある。・外部の監督当局は、管轄区域全体の業務の品質をモニタリングし、監査事務所の作業を理解する責任を果たすことに役立てるために、その情報を要望することがある。・業務の実施において監査事務所の作業を利用する他の監査事務所は(例えば、グループ監査に関連して)、そのような情報を要求することがある。・監査事務所の監査報告書の他の利用者、例えば意思決定の際に監査報告書を利用する投資家等は、その情報を要望することがある。
A126
外部の者に提供される品質管理システムに関する情報には、品質管理システムがより質の高い監査の一貫した実施をどのように支援しているかについて監査役等に伝達される情報が含まれる。そのような情報には以下の事項を含むことがある。・組織構造、ビジネスモデル、戦略及び業務の環境等、監査事務所の性質及び状況・監査事務所のガバナンス及びリーダーシップ、例えば、組織風土、品質へのコミットメントをどのように示すか、並びに品質管理システムに関して割り当てられた役割、責任及び権限・監査事務所が、独立性に関する要求事項を含む職業倫理に関する規定に従った責任をどのように果たしているか。・より質の高い監査に寄与する要因、例えば、そのような情報は、指標を説明する記載を含め、業務品質の指標の形式で示されることがある。・監査事務所のモニタリング活動及び外部の検証の結果、並びに監査事務所が識別された不備をどのように改善したか、又はその他の方法で対応しているか。・品質管理システムが、当該システムの目的が達成されていることの合理的な保証を監査事務所に提供するかどうかに関して第53項及び第54項に従って実施した評価及びその結論。これには評価し結論を出すに当たっての判断の根拠を含む。・監査事務所は、監査事務所又はその業務の状況の変化に応じてどのように品質管理システムを適応させて対応してきたか。・ネットワークの全体的な構造、その要求事項及び提供するサービスの記述、監査事務所とネットワークの関係及びそれぞれの責任(監査事務所が品質管理システムの最終的な責任を負うことを含む。)、並びにネットワークがネットワーク・ファームを対象として実施するモニタリング活動の全般的な範囲と結果に関する情報《①監査役等とのコミュニケーション》(第34項(5)①参照)
A127
監査役等とのコミュニケーションの方法は、監査事務所の方針又は手続及び業務の状況に依存することがある。
A128
監査基準報告書260は、財務諸表監査において監査役等とのコミュニケーションを行う監査人の責任を扱っている。また、企業のガバナンス構造内のコミュニケーションすべき適切な者に関する監査人の判断及びコミュニケーションのプロセスを規定している。状況によっては、例えば、監査基準報告書260第18-2JP項に記載した企業等以外の企業の監査役等とのコミュニケーションが適切であることがある。
A129
欠番《②外部の者とのコミュニケーションが適切な場合の判断》(第34項(5)②参照)
A130
監査事務所の品質管理システムについて、監査事務所が外部の者とコミュニケーションを取ることが適切であるかの判断は職業的専門家としての判断に係る事項であり、また以下の事項によって影響を受ける可能性がある。・監査事務所が実施する業務の種類及びその業務が対象とする企業の種類・監査事務所の性質及び状況・監査事務所の管轄区域における商慣行及び監査事務所が事業を行っている金融市場の特徴等、監査事務所の事業環境の性質・監査事務所が法令等に従って外部の者と既にコミュニケーションを行っている範囲(すなわち、追加のコミュニケーションが必要かどうか、及びその場合には、コミュニケーションを行う事項)・監査事務所が従事する業務及び業務を実施する際の監査事務所のプロセスについて、外部の者が表明した理解と関心を含む、監査事務所が所在する管轄区域における利害関係者の期待・監査事務所が所在する管轄区域における動向・外部の者が既に入手可能な情報・外部の者がどのように当該情報を利用するか、並びに監査事務所の品質管理システム及び本報告書第1項に記載している業務に関する事項についての全般的な理解・外部とのコミュニケーションによる公共の利益及びその利益がそのようなコミュニケーションのコスト(金銭的又はその他の)を上回ることが合理的に期待されるかどうか。また、上記の事項は、コミュニケーションにおいて監査事務所が提供する情報、並びにコミュニケーションの内容、時期、範囲及び適切な様式に影響を与える可能性がある。

③外部の者とのコミュニケーションの内容、時期及び範囲並びに適切な様式(第34項(5)③参照)

A131
監査事務所は、外部に報告する情報を作成する際に、以下の属性を考慮することがある。・情報は、監査事務所の状況に固有のものである。コミュニケーションの内容を監査事務所の固有の状況に応じたものとすることで、情報が過度に標準化され、時間の経過とともに有用性が低下する可能性を最小限に抑えることができることがある。・情報は、明確で理解しやすい形で提示され、また提示方法が誤解を招くものではなく、コミュニケーションの利用者に不適切な影響を与えるものでもない(例えば、伝達される事項が肯定的側面と否定的側面に関して適切にバランスの取れた形で提示される。)。・情報は、全ての重要な点において正確かつ完全であり、また誤解を招くような情報は含まれていない。・情報は、意図した利用者の要求を考慮したものである。監査事務所は、利用者の要求を考慮するに当たって、利用者が有意義と考えるレベルの詳細さ及び利用者がその他の情報源を通じて関連情報にアクセスできるか(例えば、監査事務所のウェブサイト)といった事項を考慮することがある。
A132
監査事務所は、口頭又は書面で行われる、企業の財務諸表監査を実施する際の監査役等とのコミュニケーションを含め、状況に応じた外部の者との適切なコミュニケーションの様式を決定する際には、職業的専門家としての判断を行使する。したがって、コミュニケーションの様式は異なることがある。外部の者とのコミュニケーションの様式の例・透明性報告書や監査品質報告書等の発行・特定の利害関係者に対する書面によるコミュニケーション(監査事務所のモニタリング及び改善プロセスの結果に関する情報等)・外部の者との直接的な会話やその他のやり取り(例えば、監査チームと監査役等とのディスカッション)・ウェブページ・ソーシャルメディアのようなその他の様式のデジタルメディア又はウェブキャストやビデオによるインタビューやプレゼンテーション《(5)審査の対象となる業務》(第34項(6)参照)
A133
欠番
A134
欠番
A135
監査事務所の品質リスクへの対応には、審査ではない他の形式の業務のレビューが含まれることがある。例えば、財務諸表監査の場合、監査事務所の対応には特別な専門技能を有する専門要員による、特別な検討を必要とするリスクに関する監査チームの手続のレビュー又は特定の重要な判断のレビューが含まれることがある。状況によっては、審査に加えて、このようなレビューを行うことがある。
A135-2JP
審査を実施しない監査業務に関して、監査意見が適切に形成されていることを確認できる方法には、監査責任者が意見表明前に実施し、文書化した自己点検が含まれる。
A136
欠番
A137
欠番《15.モニタリング及び改善プロセス》(第35項から第47項参照)
A138
モニタリング及び改善プロセスは、品質管理システムの評価を可能にするだけでなく、業務の品質及び品質管理システムの積極的かつ継続的な改善を促進する。例えば、以下が挙げられる。・品質管理システムには固有の限界があることから、不備が識別されることはまれではなく、また不備の迅速な識別は監査事務所が不備を適時にかつ効果的に改善することを可能にし、継続的改善の組織風土の醸成につながるため、品質管理システムの重要な側面である。・モニタリング活動は、いずれ不備につながりかねない発見事項に対処することにより、監査事務所が不備の発生を予防できるような情報を提供することがある。

(1)モニタリング活動のデザインと適用(第37項及び第38項参照)

A139
監査事務所のモニタリング活動は、日常的モニタリング活動と定期的なモニタリング活動の組合せにより構成される。日常的モニタリング活動は、通常、日常的な活動であり、監査事務所のプロセスに組み込まれて、状況の変化に対応して即時に実施される。定期的なモニタリング活動は、監査事務所によって一定の間隔で実施される。ほとんどの場合、日常的モニタリング活動は、品質管理システムに関する情報をより適時に提供する。
A140
モニタリング活動には、進行中の監査業務の検証が含まれる場合がある。監査業務の検証は、品質管理システムのある側面が意図した方法で整備及び運用されていることをモニタリングするために実施される。状況によっては、品質管理システムには、実施中の監査業務をレビューするようにデザインされた対応が含まれる場合がある(例えば、品質リスクの発生を防止するために、品質管理システムの不具合や欠陥を発見するようにデザインされたレビューなど。)。それらは、進行中の監査業務の検証と性質上類似するように見える。その活動の目的によって、そのデザイン及び適用並びに品質管理システムにおける位置付けが明らかになる(すなわち、それがモニタリング活動である進行中の監査業務の検証であるのか、又は品質リスクに対処するための対応である監査業務のレビューであるのか。)。
A141
モニタリング活動の内容、時期及び範囲は、以下のような事項によって影響を受けることがある。・監査事務所の規模、構造及び組織・モニタリング活動における監査事務所のネットワークの関与・ITアプリケーション等の、モニタリング活動を可能にする監査事務所が利用しようとしている資源
A142
監査事務所は、モニタリング活動を実施する過程で、発見事項がより広範なモニタリング活動の必要性を示した場合など、モニタリング活動の内容、時期及び範囲の変更が必要であると判断することがある。

①監査事務所のリスク評価プロセス、並びにモニタリング及び改善プロセスのデザイン(第37項(3)参照)

A143
監査事務所のリスク評価プロセスがどのようにデザインされているか(例えば、集中的なプロセスか分散的なプロセスか、レビューの頻度)は、監査事務所のリスク評価プロセスに係るモニタリング活動を含む、モニタリング活動の内容、時期及び範囲に影響を与えることがある。
A144
監査事務所のモニタリング及び改善プロセスがどのようにデザインされているか(すなわち、監査事務所の性質及び状況を考慮した、モニタリング及び改善活動の内容、時期及び範囲)は、モニタリング及び改善プロセス自体が第35項に規定されている目的を達成しているかどうかを判断するために実施するモニタリング活動に影響を与えることがある。モニタリング及び改善プロセスに対するモニタリング活動を示す適用の柔軟性の例・複雑でない監査事務所では、実施されるモニタリング活動の内容、時期及び範囲、モニタリング活動の結果、並びに当該結果に対処するための監査事務所の行動といったモニタリング及び改善プロセスに関する情報を、最高責任者等が品質管理システムに主体的に関わることによって容易に入手可能であるため、モニタリング及び改善プロセスに対するモニタリング活動は単純であるかもしれない。・より複雑な監査事務所においては、モニタリング及び改善プロセスが品質管理システムに関する目的適合的で信頼性が高く適時な情報を提供していること、また識別された不備に適切に対応していることが判断できるように、モニタリング及び改善プロセスに対するモニタリング活動が個別にデザインされるかもしれない。

②品質管理システムの変更(第37項(4)参照)

A145
品質管理システムの変更には、以下が含まれる。・品質管理システムの識別された不備に対処するための変更・監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況の変化の結果としての、品質目標、品質リスク又は対応の変更変更が生じた場合、監査事務所が過去に行ったモニタリング活動は、もはや品質管理システムの評価に資する情報を提供しないことがあり、したがって監査事務所のモニタリング活動は、この変更があった領域のモニタリングを含むことがある。

③過去のモニタリング活動(第37項(5)参照)

A146
監査事務所の過去のモニタリング活動の結果は、過去に不備が識別されたことがある領域等の、不備が生じる可能性のある品質管理システムの領域を示すことがある。
A147
監査事務所が実施した過去のモニタリング活動は、特にその実施から時間が経過している場合には、品質管理システムの変更されていない領域であっても、システムの評価に資する情報を提供しないことがある。

④その他の関連情報(第37項(6)参照)

A148
その他の関連情報には、第37項(6)に記載されている情報源に加えて、以下が含まれる。・監査事務所の品質管理システムに関して、第50項(3)及び第51項(2)に従って、監査事務所のネットワークにより伝達された情報これには、監査事務所の品質管理システムに組み込まれたネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスが含まれる。・サービス・プロバイダーにより伝達された、監査事務所の品質管理システムにおいて利用している資源に関する情報・規制当局からの監査事務所に提供された、監査事務所が業務を実施する対象の企業に関する情報。例えば、監査事務所が業務を実施する対象の企業に関する証券監督当局からの情報(例えば、企業の財務諸表における非違行為等)
A149
外部の検証の結果又は社内外のその他の関連する情報は、過去に実施した監査事務所のモニタリング活動が、品質管理システムの不備を識別できなかったことを示すことがある。これらの情報は、モニタリング活動の内容、時期及び範囲に関する、監査事務所の考慮事項に影響を与えることがある。
A150
外部の検証は、監査事務所のモニタリング活動を代替するものではない。しかしながら、外部の検証の結果は、モニタリング活動の内容、時期及び範囲に関する情報を提供する。

(2)監査業務の検証(第38項参照)

A151
完了した監査業務を検証のために選定する際に、監査事務所が考慮することがある第37項の例・品質リスクを生じさせる状況、事象、環境及び行動の有無に関する事項-監査事務所が実施する監査業務の種類及びその種類の監査業務を実施する上での監査事務所の経験の程度-監査業務の実施対象の企業の種類、例えば、以下のとおりである。・大会社等・新興業界に属する企業・高い水準の複雑さ又は判断を必要とする業界に属する企業・監査事務所にとって新しい業界で事業を展開する企業-・監査責任者の在任期間と経験監査責任者に関するものを含む、完了した業務に対する過去の検証結果・その他の関連する情報-監査責任者に対する不服と疑義の申立て-各監査責任者に関するものを含む、外部の検証の結果-監査責任者ごとの品質へのコミットメントを監査事務所が評価した結果
A152
監査事務所は、完了した監査業務の検証だけでなく、監査業務が方針又は手続を遵守して実施されているかどうかを判断することに焦点を当てた、幾つかのモニタリング活動を実施することがある。このモニタリング活動は、特定の監査業務又は監査責任者を対象として行われることがある。このモニタリング活動の内容及び範囲、並びにその結果は、監査事務所が以下を決定する際に用いることができる。・完了したいずれの監査業務を検証対象として選定するか。・いずれの監査責任者を検証対象として選定するか。・どのくらいのサイクルで監査責任者を検証対象として選定するか。・完了した監査業務の検証を実施する際に、監査業務のいずれの側面を考慮すべきか。
A153
完了した監査業務を監査責任者ごとに一定のサイクルで検証することは、担当業務の品質を管理し達成する全体的な責任を監査責任者が果たしているかどうかを、監査事務所がモニタリングする際に役立つことがある。監査事務所が完了した監査業務を監査責任者ごとに検証する際のサイクルの例監査事務所は、完了した監査業務の検証に関して方針又は手続を定めることがある。・完了した監査業務について、監査責任者は3年に1回等、検証に関する標準サイクルを定める。・予測不可能な方法で監査責任者を選定する。・必要な場合又は適切な場合には、方針で定めた標準サイクルよりも長い、又は短いサイクルで、監査責任者を選定する。例えば、以下が挙げられる。-監査事務所は、以下の場合には、監査事務所の方針で定めた標準サイクルよりも短いサイクルで監査責任者を選定することがある。・監査事務所が重大であると評価する複数の不備が識別され、監査事務所が、全ての監査責任者についてより短いサイクルでの検証が必要であると判断する場合・監査責任者が、複雑性の高い、又は難しい判断を要する特定の業種に属する企業に対して業務を行う場合・監査責任者の実施した監査業務が他のモニタリング活動の対象となっており、当該他のモニタリング活動の結果、求められる水準に達していなかった場合・監査責任者が、自身の経験に乏しい業界で事業活動を行う企業に対して監査業務を実施した場合・監査責任者が、新たに選任された監査責任者である場合又は最近他の監査事務所若しくは他の管轄区域から事務所に加入した者である場合-監査事務所は、以下の場合には、監査責任者の選定を延期することができる(例えば、監査事務所の方針に規定されたサイクルよりも1年間延期する等)。・監査責任者によって実施された監査業務が、監査事務所の方針に規定されている標準サイクルの間に、既に他のモニタリング活動の対象となっている場合・他のモニタリング活動の結果が、監査責任者に関する十分な情報を提供している場合(すなわち、完了した監査業務の検証を実施することにより、監査責任者に関するさらなる情報を監査事務所が得られる可能性が低い場合)
A154
監査業務の検証において考慮される事項は、品質管理システムをモニタリングするために検証がどのように利用されるかによる。通常、監査業務の検証には、業務レベルで実施される対応(例えば、業務の実施に関する監査事務所の方針及び手続)が整備され、また効果的に運用されているかどうかの判断が含まれる。

(3)モニタリング活動を実施する者(第39項(2)参照)

A155
職業倫理に関する規定は、モニタリング活動を実施する者の客観性に関する方針又は手続のデザインに関連している。自己レビューの脅威は、以下の場合に発生する可能性がある。・監査業務の検証を実施する者が、検証の対象となる会計期間又はその次の会計期間の監査チームのメンバー又は審査担当者の場合・その他の種類のモニタリング活動を実施する者が、モニタリング対象となっている対応のデザイン、実行及び運用に関与した場合
A156
例えば、規模が小さく組織構造も複雑でない監査事務所の場合、モニタリング活動を実施する適性、能力、時間及び客観性を持った専門要員がいない場合がある。このような状況では、監査事務所は、モニタリング活動を実施するためにネットワーク・サービス又はサービス・プロバイダーを利用することがある。

(4)発見事項の評価と不備の識別(第16項(1)、第40項及び第41項参照)

A157
監査事務所は、モニタリング活動の実施、外部の検証及び他の関連する情報源から得られた発見事項を集約する。
A158
モニタリング活動、外部の検証及び他の関連する情報源から監査事務所が集約した情報は、監査事務所の品質管理システムに関して、発見事項以外の所見をもたらすことがある。・品質又は品質管理システムの有効性の観点から、好事例をもたらした行動、姿勢又は状態・類似の状況での発見事項の有無(例えば、発見事項があった監査業務と性質が類似しているものの発見事項がなかった監査業務)そのような所見は、識別された不備の根本原因を監査事務所が調査するのに役立ったり、監査事務所がより広範囲に(例えば、全ての業務にわたって)適用を推進できる実務を示したり、又は監査事務所が品質管理システムを強化する機会を明らかにすることがあるため、監査事務所にとって有益なことがある。
A159
発見事項が単独で、又は他の発見事項との組み合わせで、品質管理システムに不備が存在することを示しているか判断する際、監査事務所は職業的専門家としての判断を行使する。当該判断を行うに当たり、発見事項が関連する品質目標、品質リスク、対応又は品質管理システムの他の側面の観点から、当該発見事項の相対的な重要性を考慮すべき場合がある。監査事務所の判断は、発見事項に関する定量的及び定性的な要因によって影響を受けることがある。状況によっては、監査事務所は、不備が存在するかどうか判断するために、その発見事項についてより多くの情報を入手することが適切であると判断することがある。個別監査業務に関する発見事項を含め、全ての発見事項が不備になる訳ではない。
A160
発見事項が不備の存在を示しているかどうかを判断する際に、監査事務所が考慮することがある定量的及び定性的な要因の例品質リスク及び対応・発見事項が対応に関連する場合-対応がどのようにデザインされているか、例えば、対応の内容、実施の頻度(該当する場合)及び品質リスクへの対処と関連する品質目標の達成における、当該対応の相対的な重要性-対応が関連する品質リスクの内容及び当該発見事項が示す、品質リスクが対処されていない程度-同じ品質リスクに対処する他の対応があるか、及びそれらの対応に関する発見事項があるか。発見事項の内容及びその広範性・発見事項の内容。例えば、最高責任者等の行動や姿勢に関する発見事項は、品質管理システム全体に広範な影響を及ぼす可能性があるため、定性的に重要なことがある。・発見事項が、他の発見事項との組合せで、一定の傾向を示す、又はシステム全体に関する問題を示しているか。例えば、複数の監査業務において同様の発見事項が見られることは、システム全体に関する問題を示しているかもしれない。モニタリング活動の範囲及び発見事項の範囲・選定された項目の数を含む、発見事項を識別したモニタリング活動の範囲・モニタリング活動の対象とされた選定項目及び予想逸脱率に照らした場合の発見事項の範囲。例えば、監査業務の検証の場合、選定された業務の総数及び監査事務所が設定した予想逸脱率に対する、発見事項が識別された業務の数
A161
発見事項の評価と不備の識別及び識別された不備の根本原因の調査を含む識別された不備の重大性と広範性の評価は、一方向に直線的ではなく反復的なプロセスの一部である。発見事項の評価と不備の識別及び識別された不備の根本原因の調査を含む識別された不備の評価のプロセスが、一方向に直線的ではなく反復的であることの例示・監査事務所は、識別された不備の根本原因を調査する際に、不備とは判断されなかった発見事項があった他の状況と類似する状況を識別することがある。その結果、監査事務所は当該他の発見事項の評価を変更し、不備に分類する。・監査事務所は、識別された不備の重大性と広範性を評価する際に、不備ではないと判断されていた他の発見事項と相互に関連する一定の傾向を示す、又はシステム全体に関する問題を識別することがある。その結果、監査事務所は当該他の発見事項の評価を変更し、不備に分類する。
A162
モニタリング活動の結果、外部の検証の結果及び他の関連情報(例えば、ネットワークのモニタリング活動又は不服と疑義の申立て)は、モニタリング及び改善プロセスの有効性に関する情報をもたらすことがある。例えば、外部の検証の結果は、監査事務所のモニタリング及び改善プロセスによっては識別されていなかった、品質管理システムに関する情報を提供することがあり、それは当該プロセスにおける不備を明らかにする場合がある。

(5)識別された不備の評価(第41項参照)

A163
識別された不備の重大性及び広範性を評価する際に監査事務所が考慮する要因には、以下が含まれる。・識別された不備の内容。これには、品質管理システムのどの側面に関係する不備であるか、及び品質管理システムのデザイン、適用又は運用のいずれに係る不備であるかを含む。・対応に関連して識別された不備の場合、当該対応が関係する品質リスクに対処するための補完的な対応があるか。・識別された不備の根本原因・識別された不備を生じさせた事項が発生した頻度・識別された不備の影響の度合い、どれくらいの期間で発生したか、及び不備が存在し品質管理システムに影響を及ぼした期間
A164
識別された不備の重大性と広範性は、品質管理システムに関する最高責任者により行われる、品質管理システムの評価に影響する。

①識別された不備の根本原因(第41項(1)参照)

A165
識別された不備の根本原因を調査する目的は、不備の原因となった状況を理解し、監査事務所が以下を実施できるようにすることである。・識別された不備の重大性と広範性を評価する。・識別された不備を適切に改善する。根本原因分析を実施する際、その実施者は、利用可能な証拠に基づいて、職業的専門家としての判断を行使する。
A166
識別された不備の根本原因を理解するために実施する手続の内容、時期及び範囲は、以下のような監査事務所の性質及び状況にも影響を受けることがある。・監査事務所の複雑さ及び運営上の特徴・監査事務所の規模・監査事務所の地理的な分散度合・監査事務所の組織構造又は監査事務所がそのプロセスや活動を集中若しくは集権化している程度識別された不備の内容と想定される重大性、並びに監査事務所の性質及び状況が、識別された不備の根本原因を理解するための手続の内容、時期及び範囲にどのように影響を与えるかに関する例・識別された不備の内容上場企業の財務諸表監査に関して不適切な監査報告書が発行された場合又は識別された不備が最高責任者等の品質に関する行動や姿勢に関係していた場合、識別された不備の根本原因を理解するための監査事務所の手続は、より厳密になることがある。・識別された不備の想定される重大性不備が複数の監査業務において識別された場合、あるいは、方針又は手続が高い割合で遵守されていないことを示す兆候がある場合、識別された不備の根本原因を理解するための監査事務所の手続は、より厳密になることがある。・監査事務所の性質及び状況-拠点が単一である複雑でない監査事務所の場合、理解するための情報が容易に入手可能で集約されており、また根本原因がより明らかであるため、識別された不備の根本原因を理解するための監査事務所の手続は簡素なことがある。-複数の拠点を有するより複雑な監査事務所の場合、識別された不備の根本原因を理解するための手続には、識別された不備の根本原因の調査について特定の訓練を受けた者を利用すること、及び根本原因を識別するためのより正式な手続を備えた手法を開発すること、が含まれる場合がある。
A167
監査事務所は、識別された不備の根本原因を調査する際に、識別された不備が関連する事項と類似の性質を有する他の状況において不備が生じなかった理由を検討することがある。このような情報は、識別された不備をどのように改善すべきかを決定する際にも有用なことがある。類似した性質の他の状況において不備が発生しなかった場合、監査事務所による識別された不備の根本原因の調査においてこのような情報がどのように役立つかに関する例監査事務所は、複数の業務において同様の発見事項が生じていることから、不備が存在すると判断する場合がある。しかしながら、この発見事項は、対象となった同じ母集団の他の幾つかの業務では生じていない。監査事務所は、業務を比較することにより、識別された不備の根本原因は、業務の主要な段階における監査責任者の適切な関与の欠如であると結論付ける。
A168
適切に具体化された根本原因を識別することは、識別された不備を改善する監査事務所のプロセスに役立つことがある。適切に具体化された根本原因の識別の例監査事務所は、財務諸表監査を実施する監査チームが、経営者による仮定の主観性が非常に高い会計上の見積りに関して、十分かつ適切な監査証拠を入手できていないことを識別することがある。監査事務所は、これらの監査チームが適切に職業的専門家としての懐疑心を保持及び発揮していないと認識しているが、この問題の根本的な原因は別の事項に関係していることがある。例えば、より強力な権限のある者に疑問を持つことを監査チームのメンバーに奨励しない組織風土又は監査業務における指揮、監督及び査閲が不十分であること、等である。
A169
監査事務所は、識別された不備の根本原因を調査することに加えて、監査事務所が品質管理システムを改善する、又は更に強化する機会を明らかにする可能性があるため、好事例の根本原因も調査することがある。

(6)識別された不備への対処(第42項参照)

A170
是正措置の内容、時期及び範囲は、以下を含む他の様々な要因に基づき決定されることがある。・根本原因・識別された不備の重大性と広範性及びどの程度緊急に対処する必要があるか。・根本原因への対処における是正措置の有効性。例えば、監査事務所が、根本原因に効果的に対処するために複数の是正措置を適用する必要があるか、より効果的な是正措置を適用できるまでの暫定措置を適用する必要があるか等。
A171
状況によっては、是正措置には、追加の品質目標を設定すること、又は品質リスクや対応が適切でないとの判断に基づきそれらを追加又は修正することが含まれる場合がある。
A172
識別された不備の根本原因がサービス・プロバイダーから提供された資源に関連していると判断した場合、監査事務所は以下を実施することがある。・サービス・プロバイダーから提供される資源の使用を継続するかどうか検討する。・当該事項をサービス・プロバイダーに伝達する。監査事務所は、サービス・プロバイダーから提供された資源に関連して識別された不備が品質管理システムに与える影響に対処し、また監査事務所の品質管理システムにおける不備の再発を防止するための措置を講ずる責任を負う。しかしながら、監査事務所は通常、サービス・プロバイダーのために識別された不備を改善する、又は識別された不備の根本原因をサービス・プロバイダーにおいて更に調査する責任は負わない。

①特定の業務に関する発見事項(第45項参照)

A173
要求される手続が実施されていなかった、又は不適切な監査報告書が発行された場合、監査事務所が講じる措置には、以下が含まれることがある。・適切な措置について、適切な担当者へ専門的な見解の問合せを実施する。・企業の経営者又は監査役等と当該事項について協議する。・実施されていなかった手続を実施する。状況に対処するための措置を講じることによって、発見事項に関して品質管理システムの観点から更なる措置(不備を識別するために発見事項を評価し、不備が存在する場合にはその根本原因を調査することを含む。)を講じる監査事務所の責任がなくなる訳ではない。

(7)モニタリング及び改善に関する継続的なコミュニケーション(第46項参照)

A174
モニタリング及び改善に関する情報の品質管理システムに関する最高責任者への報告は、随時実施されることもあれば、定期的に実施されることもある。品質管理システムに関する最高責任者は、例えば以下のように、当該情報を複数の方法で利用することがある。・品質の重要性に関する専門要員への更なるコミュニケーションの基礎として利用する。・各担当者に割り当てられた役割について説明責任を負わせる。・品質管理システムに関する主要な懸念を適時に識別する。当該情報はまた、第53項及び第54項により要求される品質管理システムの評価及びその結論に対して、基礎を提供する。

16.ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス(第48項参照)

A175
監査事務所は、ネットワークに所属することがある。ネットワークは、監査事務所の品質管理システムに関する要求事項を定め、又は監査事務所が品質管理システムを整備及び運用する際に適用又は利用することを選択できるサービス又は資源を提供することがある。このような要求事項又はサービスは、ネットワークに所属する監査事務所全体がより質の高い監査を実施することを促進するという意図で設定又は提供される場合がある。ネットワークが、ネットワーク全体に共通する品質目標、品質リスク及び対応を、監査事務所にどの程度提供するかは、ネットワークと監査事務所との取決めによる。ネットワークの要求事項の例・全てのネットワーク・ファームに共通する追加的な品質目標又は品質リスクを、監査事務所の品質管理システムに含めるという要求事項・監査事務所が、監査事務所の品質管理システムに含める、全てのネットワーク・ファームに共通した対応に係る要求事項。このネットワークによってデザインされた対応には、監査事務所が、監査事務所においてどのように権限と責任を割り当てることが期待されているかを含む、最高責任者等の役割と責任を規定するネットワークの方針又は手続、あるいは、業務の実施のためにネットワークが開発した手法やITアプリケーションなどの資源が含まれることがある。・監査事務所がネットワークのモニタリング活動の対象となるという要求事項。このモニタリング活動は、ネットワークの要求事項に関係することもあれば(例えば、監査事務所がネットワークの手法を適切に適用したことのモニタリング)、監査事務所の品質管理システム全般に関係することもある。ネットワーク・サービスの例・監査事務所が、監査事務所の品質管理システム又は業務の実施において任意に利用することができるサービス又は資源。これには、任意の研修プログラム、ネットワーク内の構成単位の監査人や専門家の利用又はネットワークレベル若しくはネットワーク・ファームや複数のネットワーク・ファームにより設置されたサービス・デリバリー・センターの利用等がある。
A176
ネットワークは、ネットワークの要求事項又はサービスの適用に際して、監査事務所の責任を規定することがある。ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの適用における監査事務所の責任の例・監査事務所は、品質管理システムにおいて利用する、ネットワークが提供するITアプリケーションを支えるための、一定のITインフラ及びITプロセスを備えていることが要求される。・監査事務所は、ネットワークが提供する手法について、更新された場合も含め、監査事務所全体での研修を提供することが要求される。
A177
ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスに関する監査事務所の理解及びその適用に関する監査事務所の責任は、以下の事項に関するネットワークへの質問又は提供された文書を通じて得ることができる。・ネットワークのガバナンス及びリーダーシップ・ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスを整備及び運用(該当する場合)する際にネットワークが行う手続・職業的専門家としての基準の変更やネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの不備を示す情報等、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス、若しくはその他の情報に影響を与える変化について、ネットワークがどのように識別し、対応するのか。・ネットワークが、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの適切性をどのようにモニタリングするのか。これには、ネットワーク・ファームのモニタリング活動及び識別された不備を改善するネットワークのプロセスが含まれる場合がある。

(1)監査事務所の品質管理システムにおけるネットワークの要求事項又はネットワーク・サービス(第49項参照)

A178
ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの特性は、品質リスクの識別と評価に際して考慮する状況、事象、環境又は行動の有無が該当する。品質リスクをもたらすネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの例ネットワークは、契約の新規の締結及び更新について、ネットワーク全体で標準化されたITアプリケーションの利用を監査事務所に要求する場合がある。これは、ITアプリケーションが、契約の新規の締結及び更新において監査事務所が考慮すべき現地の法令等に関する事項に対処できていないという品質リスクを生じさせる可能性がある。
A179
ネットワークの要求事項には、全てのネットワーク・ファームがより質の高い監査を一貫して実施することを促進するという目的が含まれていることがある。監査事務所は、ネットワークの要求事項を適用することをネットワークから求められることがあるが、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況に適したものとなるように、ネットワークの要求事項を適応させる、又は補完することが必要となる場合がある。ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスがどのように適応又は補完される必要があるかに関する例ネットワークの要求事項又はネットワーク・サ監査事務所がネットワークの要求事項又はネービスットワーク・サービスをどのように適応させる又は補完するか。ネットワークは、ネットワーク内の全ての監査監査事務所は、品質リスクの識別と評価の一環事務所が対処するように、品質管理システムにとして、ネットワークが要求する特定の品質リ特定の品質リスクを含めることを監査事務所スクを含め、当該品質リスクに対処するためのに要求する。対応をデザインし、適用する。ネットワークは、監査事務所が一定の対応をデ監査事務所は、対応のデザイン及び適用の一環ザインし適用することを要求する。として、以下の事項を決定する。•対応がどの品質リスクの対処となるか。•監査事務所の性質と状況を考慮した上で、ネットワークが要求する対応を監査事務所の品質管理システムにどのように組み込むか。これには、監査事務所の性質及び状況並びに監査事務所が実施する業務の内容及び状況を反映するように対応を適応させることも含まれる(例えば、法令等に関連する事項を含めるための手法の調整)。監査事務所は、構成単位の監査人としてネット監査事務所は、構成単位において作業を割り当ワーク・ファームの者を利用する。ネットワーてられた者がネットワークの要求事項に規定クの要求事項は、ネットワーク・ファーム全体された具体的な規準を満たすことを、構成単位の品質管理システムが高度な共通性を推進すの監査人(すなわち、ネットワーク・ファーム)るように整備されている。ネットワークの要求に確認することを、監査チームに要求する方針事項には、グループ監査の構成単位において作又は手続を定める。業を割り当てられた者に適用される具体的な規準が含まれる。
A180
監査事務所は、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスを適応させる、又は補完する際に、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスに関する改善可能な点を識別し、それらをネットワークに報告することがある。

(2)監査事務所の品質管理システムに関するネットワークのモニタリング活動(第50項(3)参照)

A181
監査事務所の品質管理システムに対する、ネットワークのモニタリング活動の結果には、以下のような情報が含まれることがある。・内容、時期及び範囲を含む、モニタリング活動に関する説明・発見事項、識別された不備及び監査事務所の品質管理システムに関するその他の所見(例えば、好事例や監査事務所が品質管理システムを改善又は更に強化するための機会)・識別された不備の根本原因に関するネットワークの評価、識別された不備の想定される影響及び提言された是正措置《(3)ネットワークがネットワーク・ファームを対象として実施するモニタリング活動》(第51項(2)参照)
A182
ネットワーク・ファームの品質管理システムに対して実施された、ネットワークのモニタリング活動の全体的な結果に関するネットワークからの情報は、A181項に記載された情報を集約又は要約したものである場合がある。これには、ネットワーク全体を通じて識別された不備の傾向と共通領域又はネットワーク全体を通じて展開される可能性のある好事例が含まれる。このような情報は、・以下のために監査事務所が利用する場合がある。-品質リスクの識別と評価-監査事務所が、品質管理システムにおいて利用するネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスに、不備が存在するかどうかを判断する際に検討するその他の関連情報の一部・共通のネットワークの要求事項(例えば、共通の品質目標、品質リスク及び対応)の対象となる、ネットワーク・ファームの構成単位の監査人の適性及び能力を考慮する観点から、グループ監査責任者に報告する。
A183
状況によっては、監査事務所は、監査事務所に影響を与えるネットワーク・ファームの品質管理システムで識別された不備についての情報をネットワークから入手することがある。また、ネットワークは、ネットワーク・ファームの品質管理システムに関する外部の検証の結果について、ネットワーク・ファームから情報を収集することがある。場合によっては、特定の区域における法令等により、ネットワークがネットワーク・ファームと情報を共有することを妨げられる、又は特定の情報が制限されることがある。
A184
監査事務所は、ネットワーク・ファームに対するネットワークのモニタリング活動の結果に関する情報をネットワークが提供しない状況では、以下のような追加的な措置を行うことがある。・ネットワークと当該事項について討議する。・監査事務所の監査業務への影響を判断し、またその影響を監査チームに伝える。

(4)監査事務所が識別したネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスの不備(第52項参照)

A185
監査事務所が利用するネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスは、監査事務所の品質管理システムの一部を構成するため、モニタリング及び改善に関する本報告書の要求事項の適用対象となる。ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスは、ネットワーク、監査事務所又はその双方によってモニタリングされる場合がある。ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスが、ネットワークと監査事務所の双方によってモニタリングされる場合の例ネットワークは、共通の手法について、ネットワークレベルでモニタリング活動を実施する場合がある。監査事務所もまた、監査業務の定期的な検証を通じて、監査チームのメンバーによる手法の適用状況をモニタリングする。
A186
ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスにおいて識別された不備の影響に対処するための是正措置をデザインし適用するに当たって、監査事務所は以下を行うことがある。・監査事務所が是正措置を適用する責任があるかどうかを含め、ネットワークが計画した是正措置を理解する。・以下のような場合、監査事務所が、識別された不備や関連する根本原因に対処するために、追加の是正措置を講じる必要があるかどうかを検討する。-ネットワークが適切な是正措置を講じていない場合、又は-ネットワークの講じた是正措置が、識別された不備に効果的に対処するまで時間を要する場合《17.品質管理システムの評価》(第53項参照)
A187
品質管理システムに関する最高責任者は、評価を行うに当たり、他の者の支援を受けることができるが、その場合でも評価に対する説明責任を含む責任は、品質管理システムに関する最高責任者が負う。
A188
品質管理システムの評価が行われる時点は、監査事務所の状況によるが、監査事務所の会計年度末又は年次のモニタリングの対象期間の終了時点と一致することがある。
A189
品質管理システムの評価の基礎となる情報には、第46項に従って品質管理システムに関する最高責任者に伝達された情報が含まれる。規模等によって品質管理システムの評価の基礎となる情報がどのようにして異なり得るかを示す適用の柔軟性の例・複雑でない監査事務所では、品質管理システムに関する最高責任者が、モニタリング及び改善に直接関与することがあり、それにより品質管理システムの評価の裏付けとなる情報を認識することがある。・より複雑な監査事務所では、品質管理システムに関する最高責任者は、当該システムを評価するために必要な情報を収集、要約し、伝達するプロセスを確立することがある。

(1)品質管理システムについての結論付け(第54項参照)

A190
本報告書では、品質管理システム全体の運用により、当該システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供することが意図されている。品質管理システムに対する結論を導く際、品質管理システムに関する最高責任者は、モニタリング及び改善プロセスの結果を利用するに当たって、以下の事項を考慮することがある。・識別された不備の重大性及び広範性、並びに品質管理システムの目的達成への影響・是正措置が監査事務所によってデザインされ適用されているか、また評価時点までに講じられた是正措置が効果的であるか。・第45項に従った更なる措置が行われているか等、識別された不備の品質管理システムに及ぼす影響について、適切に是正されているか。
A191
重大な識別された不備(重大かつ広範な識別された不備を含む。)が適切に改善され、その影響が評価時点で是正されていることがある。このような場合、品質管理システムに関する最高責任者は、当該システムの目的を達成しているという合理的な保証を監査事務所に提供すると結論付けることがある。
A192
例えば、以下のような場合、識別された不備は、品質管理システムの整備及び運用状況に広範な影響を及ぼすことがある。・不備が品質管理システムの複数の構成要素又は側面に影響を与える場合・不備は品質管理システムの一つの構成要素又は側面に限定されているが、それが品質管理システムの根幹となる構成要素若しくは側面である場合・不備が監査事務所の複数の事業単位又は所在地に影響を及ぼす場合・不備は一つの事業単位又は所在地に限定されているが、当該事業単位又は所在地が、監査事務所全体にとって根幹となる場合・不備が特定の種類又は内容の業務の相当な部分に影響を与える場合重大ではあるが広範ではないと考えられる識別された不備の例監査事務所は、小規模な地域事務所における不備を識別した。識別された不備は、監査事務所の方針又は手続の多くが遵守されていないことに関係している。監査事務所は、その地域事務所の組織風土、特に財務上の優先事項に過度に着目した当該事務所の責任者の行動と姿勢が、識別された不備の根本原因であると判断している。監査事務所は、識別された不備の影響は以下のとおりであると判断している。・当該地域事務所の組織風土及び監査事務所の方針又は手続の全体的な遵守に関係したものであるため、重大である。・小規模な地域事務所に限定されているため、広範ではない。
A193
識別された不備が重大かつ広範であり、当該不備を改善するための措置が適切でなく、その影響が適切に是正されていない場合、品質管理システムに関する最高責任者は、品質管理システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供していないと結論付けることがある。重大かつ広範であると考えられる識別された不備の例監査事務所は、その事務所における最大の事務所であり、また地域全体の財務上、業務上及び技術上の支援を行う地域事務所における不備を識別した。識別された不備は、監査事務所の方針又は手続の多くが遵守されていないこと関係している。監査事務所は、その地域事務所の組織風土、特に財務上の優先事項に過度に着目した当該事務所の責任者の行動と姿勢が、識別された不備の根本原因であると判断している。監査事務所は、識別された不備の影響は以下のとおりであると判断している。・当該地域事務所の組織風土及び監査事務所の方針又は手続への全体的な遵守状況に関連したものであるため、重大である。・当該地域事務所は最大の事務所であり、多くの他の事務所に支援を行っており、監査事務所の方針又は手続が遵守されていないことがそれらの他の事務所にも広く影響を及ぼすことがあるため、広範である。
A194
監査事務所が、重大かつ広範な識別された不備を改善するには時間を要することがある。監査事務所が当該不備の是正措置を継続して講じるにつれ、その不備が影響を及ぼす範囲が縮小し、当該不備は重大ではあるが重大かつ広範でないと判断されることがある。このような場合、品質管理システムに関する最高責任者は、重大ではあるが広範ではない不備に関係する事項を除き、品質管理システムの目的が達成されているという合理的な保証を監査事務所に提供していると結論付けることがある。
A195
本報告書は、監査事務所がその品質管理システムについて、独立した第三者による保証報告書を取得することを要求するものではないが、妨げるものではない。

(2)迅速かつ適切な措置及び追加的なコミュニケーション(第55項参照)

A196
品質管理システムに関する最高責任者が、第54項(2)又は第54項(3)の結論に達した場合、監査事務所が講じる迅速かつ適切な措置には以下の事項が含まれることがある。・識別された不備が改善されるまで、追加の資源を割り当てるか、追加の指針を作成することによって業務の実施を支援し、監査事務所の発行した監査報告書が状況に応じて適切であることを確かめる措置を講じ、監査チームに当該措置を伝達する。・法律専門家の助言を得る。
A197
監査事務所が、業務執行に関与せずに事務所の監督を行う独立したガバナンス機関を有する場合、第55項(2)①において伝達する者には当該ガバナンス機関を含むことがある。
A198
監査事務所が品質管理システムの評価について外部の者に伝達することが適切な場合の例・監査事務所がネットワークに属する場合・例えば、グループ監査の際に、ネットワーク・ファームが、監査事務所が実施した作業を利用する場合・品質管理システムが適切に機能していない結果として不適切な監査報告書が発行されたと監査事務所が判断し、その企業の経営者又は監査役等に報告する必要がある場合・法令等により監査事務所が監督当局又は規制機関に伝達することが要求される場合《(3)業績評価》(第56項参照)
A199
品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者に対する定期的な業績評価は、その説明責任を促す。当該業績評価を実施する際、監査事務所は以下の事項を考慮することがある。・個人の責任に関係する、品質管理システムの側面についてのモニタリング活動の結果。状況によっては、監査事務所は個人の目標を設定し、その目標に照らしてモニタリング活動の結果を測定することがある。・個人の責任に関係する、識別された不備に対して個人が講じる措置。当該措置には適時性及び有効性が含まれる。規模等によって監査事務所が行う業績評価がどのように異なるかを示す適用の柔軟性の例・複雑でない監査事務所では、監査事務所がサービス・プロバイダーに評価を依頼する場合があり、また監査事務所のモニタリング活動の結果が個人の業績の指標となることがある。・より複雑な監査事務所では、監査事務所のガバナンス機関の業務執行に関与しない独立したメンバー又は監査事務所のガバナンス機関が監督する特別な委員会によって業績評価が行われることがある。
A200
品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者に対する高評価は、報酬、昇進及びその他のインセンティブを通じて報われることがある。これらは、個人の品質へのコミットメントを促し、説明責任を強化する。一方、監査事務所は、品質目標の達成に影響を及ぼすような品質管理システムに関する最高責任者、品質管理システムの整備及び運用に関する責任者に対する低評価に対処するために是正措置を講じることがある。
A201
欠番《18.文書化》(第57項から第59項)
A202
品質管理システムの文書化は、監査事務所が本報告書や法令等及び職業倫理に関する規定を遵守していることを示す証拠を提供する。また、文書化は、専門要員や監査チームに対する研修に役立ち、組織的な知識の保持を確実にし、また品質管理システムに関する判断の根拠を提供する。監査事務所は、品質管理システムに関する全ての検討事項や判断を文書化する必要はなく、またそれは実務的ではない。監査事務所は、その情報と伝達の構成要素、文書や他の書面による資料、又は品質管理システムの構成要素に不可欠なITアプリケーションにより、本報告書への遵守を証明することができる。
A203
文書は、正式に書面化されたマニュアル、チェックリストや様式の形をとる場合もあるが、決められた形式でない文書(例えば、電子メールやウェブサイトへの掲示)として記録されたり、ITアプリケーションや他のデジタル形式(例えば、データベース)で保管されることもある。更新の頻度を含む、文書化の様式、内容及び範囲に関する判断に影響を与える可能性のある要因には、以下の事項が含まれることがある。・監査事務所の複雑性と拠点数・監査事務所の業務と組織の性質と複雑性・監査事務所が実施する業務の内容及び業務の対象となる企業の性質・品質管理システムの変更された側面や品質リスクの高い領域に関連するか等、文書化されている事項の内容や複雑性及び当該事項に関する判断の複雑性・品質管理システムの変更の頻度及び範囲複雑でない監査事務所では、決められた形式でないコミュニケーション方法が有効な場合もあり、文書化が必要でないこともあるが、コミュニケーションが行われたという証拠を提供するために、当該コミュニケーションについて文書化することが適切であると判断することがある。
A204
場合によっては、外部の監督当局が、外部の検証における発見事項の結果として、正式又は決められた形式でない文書化に関する要求事項を定めることがある。職業倫理に関する規定では、文書化に対する具体的な要求事項がある。例えば、倫理規則は、利益相反、法令違反及び独立性に関する特定の状況を含む、特定の事項の文書化を要求している。
A205
監査事務所は、品質目標ごとに、又は品質リスクを生じさせる可能性のあるリスクごとに、全ての状況、事象、環境又は行動の有無に関する検討を文書化することは要求されていない。しかしながら、監査事務所は、品質リスク及び監査事務所の対応が品質リスクにどのように対処しているかを文書化するに当たり、対応の一貫した適用及び運用を支援するために、品質リスクの評価の根拠(すなわち、発生可能性及び発生した場合の一つ又は複数の品質目標の達成への影響)を文書化することがある。
A206
文書化は、ネットワーク、ネットワーク・ファーム又はネットワーク内の他の組織により提供されることがある。

19JP.監査事務所間の引継(第61JP項参照)

A207JP
監査事務所は、監査人の交代に関する監査業務の引継についての方針又は手続を定める場合、《5.契約の新規の締結及び更新》の項の記載に留意するとともに、監査基準報告書900を参照する。
A208JP
後任の監査事務所は、監査業務の引継を行う時点で、監査責任者がまだ決まっていない場合には、その引継を実施する責任者を選任する。

20JP.共同監査(第63JP項参照)

A209JP
共同監査に関する方針又は手続には、例えば、以下の事項が含まれる。(1)共同監査契約の新規の締結及び更新の承認手続(2)各々の監査事務所相互間の監査業務の分担方法(3)監査調書の相互査閲及び監査業務内容の評価の方法(4)監査業務に係る審査に関する事項(5)各々の監査事務所相互間で取り交わすべき書類(6)他の監査事務所の品質管理システムに関して評価し、対応した内容及び結論の記録及び保存以・上本報告書(2022年10月13日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。-倫理規則(2022年7月25日変更)(修正箇所:第16項及びA118項)-監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022年7月21日改正)(上記以外の修正箇所)・本報告書(2023年1月12日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。-・監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023年1月12日改正)本報告書(2024年9月26日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。-企業会計審議会「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂に係る意見書」(2024年3月27日公表)(修正箇所:第1項)-保証業務実務指針(序)「レビュー業務実務指針、保証業務実務指針及び専門業務実務指針並びに関連する公表物の体系及び用語」(2024年9月26日改正)(修正箇所:A1項)-監査基準報告書260「監査役等とのコミュニケーション」(2024年9月26日改正)(上記以外の修正箇所)

本文の出典:日本公認会計士協会『品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」』(最終改正 2024年9月26日)。公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧(https://jicpa.or.jp/specialized_field/publication/kansa/#hnk1)。

過去問:公認会計士・監査審査会ウェブサイト(論文式試験 監査論の試験問題、公共データ利用規約1.0)。「何を問われているか」とメモはほしゅが作成したもので、公式の解答ではありません。基準との対応づけは、ほしゅの独自の分析です。

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