監基報402
監査基準報告書402「業務を委託している企業の監査上の考慮事項」
出典:日本公認会計士協会『監査基準報告書402「業務を委託している企業の監査上の考慮事項」』最終改正 2023年1月12日公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧 ↗本文(要求事項・適用指針)を収録。付録(文例・表)と「適用」の節は載せていません。本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された6か所に線を引いています。
1.本報告書の範囲
1
本報告書は、委託会社が1社以上の受託会社の提供する業務を利用する場合の、委託会社監査人による十分かつ適切な監査証拠の入手に関する実務上の指針を提供するものである。特に、本報告書は、委託会社監査人が重要な虚偽表示リスクを識別し評価するために、財務諸表の作成に関連する企業の内部統制システムを含め、委託会社を十分に理解するに当たって、監査基準報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」を適用する方法を詳述している。また、識別したリスクに対応するリスク対応手続を立案し実施するに当たって、監査基準報告書330「評価したリスクに対応する監査人の手続」を適用する方法を詳述している。
2
企業は、その事業活動の一部を外部に委託することがあるが、特定の職務を企業の指示に基づいて実施させることもあれば、企業の特定の部署又は機能の全てを代行させることもある。そのような外部に委託している業務の多くは、企業の事業運営にとって必要不可欠であるが、それらの全ての業務が監査に関連しているわけではない。
3
受託会社の提供する業務とそれらに対する内部統制が、委託会社の財務諸表の作成に関連する情報システムの一部を構成している場合には、当該業務は、委託会社の財務諸表監査に関連することになる。受託会社の大部分の内部統制は、財務諸表の作成に関連する委託会社の情報システムの一部である場合、又は資産の保全を対象とする内部統制などのように、監査に関連する内部統制であることが多い。受託会社の業務が、以下のいずれかに影響を与える場合には、委託会社の情報システムの一部を構成する。(1)重要な取引種類、勘定残高又は注記事項に関連する情報の委託会社の情報システムにおける流れ。これは、手作業によるかITを利用しているか、総勘定元帳や補助元帳から入手した情報かそれ以外から入手した情報かに関わらず、受託会社の業務が以下にどのように影響を与えるかを含む。①委託会社の取引の開始から、それに関する情報の記録、処理、必要に応じた修正、総勘定元帳への取り込み、財務諸表での報告に至るまでの情報の流れ②取引以外の事象や状況に関する情報が、委託会社によって把握され、処理され、財務諸表において開示されるまでの情報の流れ(2)会計記録、委託会社の財務諸表の特定の勘定及び第3項(1)の委託会社の情報システムにおける情報の流れに関連する他の裏付けとなる記録(3)第3項(2)に記載された記録により、委託会社の財務諸表を作成するプロセス(重要な取引種類、勘定残高又は注記事項に関連する会計上の見積りや開示を含む。)(4)上記(1)から(3)に関連する企業のIT環境
4
委託会社監査人が受託会社の提供する業務に関して実施する手続の種類及び範囲は、当該業務の内容と委託会社にとっての重要性、及び監査への関連性によって決まる。
5
本報告書は、例えば、銀行による振込処理や、証券会社による有価証券の決済など、金融機関に開設されている企業の口座において企業が個別に承認した取引処理に限定して金融機関が提供する業務には適用されない。また、本報告書は、出資者持分が計算され持分保有者に報告される場合の、組合、法人及び共同支配企業等の他の事業体への出資者持分に関連して発生する取引の監査にも適用されない。
2.本報告書の目的
6
委託会社が受託会社の業務を利用する場合の委託会社監査人の目的は、以下のとおりである。(1)重要な虚偽表示リスクの識別と評価に対する適切な基礎を得るため、受託会社の提供する業務の種類と重要性、及びそれらが委託会社の内部統制システムに与える影響について理解すること(2)当該リスクに対応する監査手続を立案し実施すること《3.定義》
7
本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。(1)「委託会社」-財務諸表の監査を受けている会社で、受託会社の提供する業務を利用する会社をいう。(2)「委託会社監査人」-委託会社の財務諸表の監査を実施する監査人をいう。(3)「委託会社の相補的な内部統制」-受託業務をデザインする段階で、委託会社において整備されることを受託会社が想定する内部統制であり、受託会社のシステムに関する記述書において統制目的の達成に必要な内部統制として識別され、記載されるものをいう。(4)「再受託会社」-委託会社の財務報告に関連する情報システムの一部を構成する業務を委託会社に提供するために、受託会社が受託業務の一部を他の会社に再委託する場合の当該他の会社をいう。(5)「受託会社」-委託会社の財務報告に関連する情報システムの一部を構成する業務を、当該委託会社に提供する第三者組織(又はその一部)をいう。(6)「受託会社監査人」-受託会社からの依頼に基づき、受託会社の内部統制に関して保証報告書を提供する監査人をいう。(7)「受託会社のシステム」-受託会社監査人の保証報告書が対象とする業務を委託会社に提供するために、受託会社がデザインし業務に適用する方針と手続をいう。(8)「受託会社のシステムに関する記述書及び内部統制のデザインに関する報告書」(本報告書では「タイプ1の報告書」と呼称する。)-以下を含む報告書をいう。①受託会社のシステム、統制目的、及びそれらに関連して基準日現在でデザインされ業務に適用されている内部統制について、受託会社の経営者が作成した記述書②受託会社のシステム、統制目的及び関連する内部統制の記述並びに特定された統制目的を達成する内部統制のデザインの適切性に関する意見等の合理的な保証を提供する受託会社監査人の保証報告書(9)「受託会社のシステムに関する記述書並びに内部統制のデザイン及び運用状況に関する報告書」(本報告書では「タイプ2の報告書」と呼称する。)-以下を含む報告書をいう。①受託会社のシステム、統制目的及び関連する内部統制、基準日現在又は特定期間にわたるそれらのデザインと業務への適用、並びに、場合によっては、特定期間にわたるそれらの運用状況の有効性について、受託会社の経営者が作成した記述書②以下の事項を含む、合理的な保証を提供する受託会社監査人の保証報告書ア.受託会社のシステム、統制目的及び関連する内部統制に関する記述、特定の統制目的を達成する内部統制のデザインの適切性、並びに内部統制の運用状況の有効性に関する受託会社監査人の意見イ.受託会社監査人の運用評価手続とその結果に関する記述《Ⅱ要求事項》
1.受託会社が提供する業務及び内部統制の理解
8
監査基準報告書315第18項に従って委託会社を理解する場合、委託会社監査人は、委託会社がその事業運営において、以下を含め、受託会社の業務をどのように利用しているかを理解しなければならない(A1項及びA2項参照)。(1)受託会社が提供する業務の内容と委託会社にとっての当該業務の重要性(委託会社の内部統制に与える影響を含む。)(A3項からA5項参照)(2)受託会社が処理する取引、又は影響を与える勘定や財務報告プロセスの内容と重要性(A6項参照)(3)受託会社の活動と委託会社の活動との相互関連の度合い(A7項参照)(4)受託会社が引き受ける活動に関する契約条項を含む、委託会社と受託会社の関係(A8項及びA9項参照)
9
監査基準報告書315に従って企業の内部統制システムを理解する場合、委託会社監査人は、受託会社にて処理される取引に適用する内部統制等を含めて、当該受託会社の提供する業務に関連する委託会社の統制活動における内部統制(監基報315第25項(1)参照)を識別し、デザインを評価し、業務に適用されているかどうかを判断しなければならない(A10項からA12項、監基報315第25項(4)参照)。
10
委託会社監査人は、重要な虚偽表示リスクの識別と評価に対する適切な基礎を得るために、受託会社が提供する業務の内容と重要性、及びそれらが委託会社の内部統制システムに与える影響に関して、十分な理解を得たかどうかを判断しなければならない。
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委託会社監査人は、受託会社が提供する業務に関する十分な理解を委託会社から得られなかった場合、以下の手続を一つ又は複数組み合わせて実施して理解を得なければならない(A13項からA18項参照)。(1)タイプ1又はタイプ2の報告書を入手する(利用可能な場合)。(2)委託会社を通じて受託会社に連絡して特定の情報を入手する。(3)受託会社を往査し、受託会社の提供する業務に関連する内部統制について必要な情報を入手するための手続を実施する。(4)受託会社の内部統制について、必要な情報を入手する手続の実施に他の監査人を利用する。
理解を裏付けるためのタイプ1又はタイプ2の報告書の利用
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委託会社監査人は、タイプ1又はタイプ2の報告書が提供する監査証拠の十分性と適切性の判断に当たり、以下の点について確かめなければならない。(1)受託会社監査人の職業的専門家としての能力と受託会社からの独立性(2)タイプ1又はタイプ2の報告書が準拠している基準の妥当性(A19項参照)
13
委託会社監査人は、受託会社の内部統制のデザインと業務への適用に関する理解を裏付ける監査証拠として、タイプ1又はタイプ2の報告書の利用を計画した場合、以下を行わなければならない(A20項及びA21項参照)。(1)受託会社の記述書と内部統制のデザインの基準日又は対象期間は、委託会社監査人の目的にとって適切であるかどうか評価する。(2)受託会社の内部統制の理解のために、報告書が提供する証拠の十分性と適切性を評価する。(3)受託会社の記述書に含まれている委託会社の相補的な内部統制が、委託会社に該当するかどうか判断する。該当すると判断された場合、委託会社が当該内部統制をデザインして業務に適用しているかどうか理解する。
2.評価した重要な虚偽表示リスクへの対応
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監査基準報告書330に従い評価したリスクへの対応に当たり、委託会社監査人は、以下を行わなければならない(A22項からA26項参照)。(1)関連する財務諸表のアサーションに関する十分かつ適切な監査証拠は、委託会社が保有する記録から入手可能であるかどうか判断する。(2)入手不可能な場合、十分かつ適切な監査証拠を入手するためのリスク対応手続を受託会社において実施する。又は、委託会社監査人のために受託会社で当該手続を実施する他の監査人を利用する。
運用評価手続
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委託会社監査人がリスク評価において受託会社の内部統制が有効に運用されていることを想定している場合、委託会社監査人は、以下の手続を一つ又は複数組み合わせて実施することにより、当該内部統制の運用状況の有効性について監査証拠を入手しなければならない。(1)タイプ2の報告書を入手する(利用可能な場合)。(2)受託会社で適切な運用評価手続を実施する。(3)委託会社監査人のために、受託会社で運用評価手続を実施する他の監査人を利用する(A27項及びA28項参照)。
運用状況に関する監査証拠としてのタイプ2の報告書の利用
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委託会社監査人は、第15項(1)に従って受託会社の内部統制が有効に運用されていることの監査証拠としてタイプ2の報告書の利用を計画する場合、以下の手続を実施することにより、委託会社監査人のリスク評価を裏付ける内部統制の運用状況の有効性について、受託会社監査人の保証報告書が十分かつ適切な監査証拠を提供するかどうかを判断しなければならない。(1)受託会社の記述書、内部統制のデザイン及び運用状況の有効性の基準日又は対象期間が、委託会社監査人の目的にとって適切であるかどうか評価する。(2)受託会社の記述書に含まれている委託会社の相補的な内部統制が、委託会社に該当するかどうか判断する。該当すると判断された場合、委託会社が当該内部統制をデザインして業務に適用しているかどうかを理解する。委託会社がデザインして業務に適用している場合には、それらの運用状況の有効性について評価手続を実施する。(3)運用評価手続の対象期間と、当該運用評価手続の実施以後の経過期間が適切かどうか評価する。(4)受託会社監査人の保証報告書に記載されている実施された運用評価手続及びその結果が、委託会社の財務諸表のアサーションに関連しているかどうか、及び委託会社監査人のリスク評価を裏付ける十分かつ適切な監査証拠を提供しているかどうかを評価する(A29項からA37項参照)。
3.再受託会社の業務を報告対象から除外したタイプ1とタイプ2の報告書
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委託会社監査人が、再受託会社の提供する業務を報告対象から除外したタイプ1とタイプ2の報告書を利用する計画であり、当該業務が委託会社の財務諸表監査に関連している場合、委託会社監査人は、再受託会社の提供する業務に関して、本報告書の要求事項を適用しなければならない(A38項参照)。
4.受託会社の活動に関連した不正、違法行為及び未修正の虚偽表示
18
委託会社監査人は、受託会社における不正、違法行為や未修正の虚偽表示のうち委託会社の財務諸表に影響を与えるものについて、受託会社から委託会社に報告があったかどうか、又は報告がない場合であっても、委託会社が気付いているそれらの事項があるかどうかを、委託会社の経営者に質問しなければならない。委託会社監査人は、当該事項が、委託会社監査人の結論及び監査報告書に与える影響を含め、委託会社監査人のリスク対応手続の種類、時期及び範囲に与える影響を評価しなければならない(A39項参照)。
5.委託会社監査人の監査報告書
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委託会社監査人は、委託会社の財務諸表監査に関連する受託会社が提供する業務に関して、十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった場合、監査基準報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」第5項に従って委託会社監査人の監査報告書において除外事項付意見を表明しなければならない(A40項参照)。
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監査人は表明した監査意見について単独で責任を負うものであるため、無限定意見を表明する場合は、委託会社監査人の監査報告書において受託会社監査人の業務を利用したことを記載してはならない。
21
委託会社監査人は、無限定意見を表明できない場合において、限定意見、否定的意見又は意見不表明の理由として受託会社監査人の業務に言及する場合、監査報告書において当該記載が監査意見に対する委託会社監査人の責任を軽減しないことを示さなければならない(A41項参照)。
(1)受託会社が提供する業務内容に関する情報の情報源(第8項参照)
A1
受託会社が提供する業務内容に関する情報は、以下のような様々な情報源から入手可能な場合がある。・ユーザマニュアル・システム概要書・技術マニュアル・委託会社と受託会社の間の契約書又は業務内容合意書(サービス・レベル・アグリーメント)・受託会社における内部統制についての、受託会社、内部監査人又は規制当局の報告書・入手可能な場合には、受託会社監査人の報告書(マネジメントレターを含む。)
A2
委託会社監査人が、例えば、他の監査業務での経験等を通じて得た受託会社に関する知識は、受託会社が提供する業務内容を理解するのに役立つこともある。こうした知識は、業務及び当該業務を対象とする受託会社における内部統制が標準化されている場合に、特に役立つことがある。
(2)受託会社が提供する業務の内容(第8項(1)参照)
A3
委託会社は、取引を処理し、報告するため、又は取引を記録しデータを処理するために、受託会社を利用することがある。当該業務を提供する受託会社には、例えば、年金資産等を運用管理する信託銀行、不動産担保貸付けの回収代行業者、並びに顧客の財務取引及び営業取引の処理を可能にするパッケージ化されたソフトウェア・アプリケーションやテクノロジーの環境を提供するアプリケーション・サービス・プロバイダー(ASP)などが含まれる。
A4
監査に関連する受託会社の業務には、例えば、以下がある。・委託会社の会計記録の記帳・資産の管理・委託会社の代理人として行う取引の開始、記録又は処理《小規模企業に特有の考慮事項》
A5
小規模企業は、取引の処理(例えば、給与の源泉所得税の支払など)と会計記録の記帳から財務諸表の作成にわたって外部の記帳代行業務を利用することがある。財務諸表作成のために受託会社を利用している場合であっても、小規模企業の経営者や監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会を「監査役等」という。)の財務諸表に対する責任が軽減されることはない(監査基準報告書200「財務諸表監査における総括的な目的」第4項、A2項及びA3項参照)。
(3)受託会社が処理する取引の内容と重要性(第8項(2)参照)
A6
受託会社が策定する方針と手続は、委託会社の内部統制に影響を与えることがある。これらの方針と手続は、物理的に及び業務運営上、少なくとも一部については委託会社の方針と手続とは別に定められている。委託会社の内部統制に対する受託会社の内部統制の重要性は、委託会社のために処理する取引の内容と重要性等、受託会社が提供する業務の内容によって影響を受ける。受託会社の処理する取引と関連する勘定は、委託会社の財務諸表にとって重要であるように見えないことがあるが、処理される取引の内容が重要であり、委託会社監査人が、関連する内部統制を理解することが必要であると判断することがある。
(4)受託会社と委託会社との間の相互関連の度合い(第8項(3)参照)
A7
委託会社の内部統制に対する受託会社の内部統制の重要性は、受託会社と委託会社との相互関連の度合いによっても影響を受ける。相互関連の度合いとは、委託会社が、受託会社が実施する処理に対して有効な内部統制を適用可能であり、かつ、適用している度合いをいう。例えば、委託会社が取引を承認し、受託会社が当該取引を処理して計上する場合、委託会社の活動と受託会社の活動との間の相互関連の度合いが高い。これらの状況では、委託会社が当該取引を対象とする有効な内部統制を業務に適用することができることがある。他方、受託会社が、委託会社の取引を開始するか最初に認識して記録し、処理し、計上する場合、両社間の相互関連の度合いは低い。これらの状況では、委託会社は、当該取引を対象とする有効な内部統制を適用できないか、又は適用しないことを選択し、受託会社の内部統制に依拠することがある。
(5)委託会社と受託会社の関係(第8項(4)参照)
A8
委託会社と受託会社の間の契約書又は業務内容合意書(サービス・レベル・アグリーメント)には、以下の事項が含まれることがある。・委託会社に報告されるべき情報と、受託会社が引き受ける活動に関連して取引を開始する責任・規制当局の要求に対応する記録の様式、又は記録へのアクセス・業務不履行時に委託会社に提供される補償がある場合には、その内容・受託会社がその内部統制に関する報告書を提供するかどうか、提供する場合、当該報告書はタイプ1の報告書とタイプ2の報告書のいずれであるか。・委託会社監査人が、受託会社の記帳する委託会社の会計記録と監査の実施に必要なその他の情報にアクセス権を有しているかどうか。・委託会社監査人と受託会社監査人の間の直接のコミュニケーションを許容しているかどうか。
A9
受託会社と委託会社の間、及び受託会社と受託会社監査人の間には、契約による直接的な関係がある。これらの関係は、必ずしも、委託会社監査人と受託会社監査人の間に直接的な関係をもたらすものではない。委託会社監査人と受託会社監査人の間に直接的な関係がない場合、両者の間のコミュニケーションは、通常、委託会社と受託会社を通じて実施される。直接的な関係は、倫理及び秘密保持に関する事項を考慮した取決めにより、委託会社監査人と受託会社監査人の間に構築されることもある。委託会社監査人は、例えば、以下のような手続の実施について、自らの実施に代えて、受託会社監査人を利用することがある。(1)受託会社における運用評価手続(2)受託会社が記帳する、委託会社の財務諸表を構成する取引と残高に対する実証手続《(6)受託会社の提供する業務に関連する内部統制の理解》(第9項参照)
A10
委託会社は、受託会社の提供する業務を対象とした内部統制を整備及び運用することがあり、委託会社監査人はそれらについて運用評価手続を実施できることがある。その結果、委託会社監査人は、受託会社で運用される内部統制に関係なく、関連するアサーションの一部又は全部に対して、委託会社の内部統制が有効に運用されていると結論付けることがある。委託会社は、例えば、その給与計算の処理に受託会社を利用した場合、給与情報の提出と受領に関連して、重要な虚偽表示を防止又は発見する内部統制を整備及び運用することがある。これらの内部統制は、以下を含むことがある。・受託会社に提出したデータと、そのデータの処理後に受託会社から受領した報告書を比較する。・事務処理の正確性を確かめるためにサンプルを抽出し、給与計算を再実施する。さらに源泉控除後の支払合計額の妥当性を検討する。
A11
このような状況において、委託会社監査人は、委託会社の給与計算の内部統制を対象として、運用評価手続を実施することがある。その結果、委託会社監査人は、給与取引に関連するアサーションに対して、委託会社の内部統制が有効に運用されていると結論付けるための基礎を得ることがある。
A12
監査基準報告書315第32項に記載のとおり、委託会社監査人は、一部のリスクについて、実証手続のみでは十分かつ適切な監査証拠を入手することが不可能又は実務的ではないと判断することがある。このようなリスクは、定型的で重要な取引種類又は勘定残高が正確に又は網羅的に記録されないことに関係していることがある。それらは手作業がほとんど又は全く介在しない高度に自動化された処理の特性を持つことが多い。そのような自動化された処理の特性は、特に、委託会社が受託会社を利用する場合に現れることがある。この場合には、これらのリスクに対応する委託会社の内部統制は監査に関連するものであるため、委託会社監査人は第8項及び第9項に従い、当該内部統制を理解し、評価することが求められている。
(7)委託会社から十分な理解が得られない場合の追加手続(第11項参照)
A13
委託会社監査人は、委託会社による受託会社の利用に関して重要な虚偽表示リスクの識別と評価の基礎となる必要な情報を入手するために、第11項の手続を単独で又は他のいくつかとの組合せで実施することが求められている。どの手続を実施するかの決定に当たり、委託会社監査人は以下の諸事項を考慮することがある。・委託会社と受託会社双方の規模・委託会社での取引の複雑性と、受託会社が提供する業務の複雑性・受託会社の所在地(例えば、委託会社監査人は、受託会社が遠隔地にある場合、自身に代わって受託会社で手続を実施する他の監査人の利用を決定することがある。)・当該手続により、十分かつ適切な監査証拠を効果的に委託会社監査人が入手できるかどうか。・委託会社と受託会社の関係
A14
受託会社は、受託会社のシステムに関する記述書及び内部統制のデザインに関する報告書(タイプ1の報告書)、又は受託会社のシステムに関する記述書並びに内部統制のデザイン及び運用状況に関する報告書(タイプ2の報告書)の発行を受託会社監査人に依頼することがある。タイプ1又はタイプ2の報告書は、保証業務実務指針3402「受託業務に係る内部統制の保証報告書に関する実務指針」、又は認知されている基準設定機関が制定した他の基準に基づいて発行されることがある(後者の基準の場合は、タイプA又はタイプBの報告書などの異なる名称を付していることがある。)。
A15
タイプ1又はタイプ2の報告書が利用可能か否かは、一般的に、受託会社と委託会社間の契約に受託会社による当該報告書の提供に関する条項が含まれているかどうかにも依存する。受託会社は、実務上の理由から、委託会社にタイプ1又はタイプ2の報告書を提供するという選択を行うこともある。また一方、場合によっては、タイプ1又はタイプ2の報告書を委託会社に提供しないこともある。
A16
委託会社は、例えば財務・会計機能など、一つ以上の重要な部署又は機能の全てを1社以上の受託会社に外部委託することがある。そのような状況において、受託会社の内部統制に関する報告書が入手できない場合、委託会社と受託会社間の契約関係を前提として、委託会社監査人が受託会社へ往査することは、受託会社の内部統制の理解を得るために最も有効な手続となることがある。
A17
他の監査人は、委託会社に提供される業務に関連する内部統制について、必要な情報を入手するための手続の実施に利用されることがある。タイプ1又はタイプ2の報告書が発行されているが、更に必要な情報を入手するための手続を実施する場合、受託会社監査人は受託会社と既存の関係があるので、委託会社監査人は、受託会社監査人を利用することがある。委託会社監査人が他の監査人の作業を利用する場合、以下の事項に関して、監査基準報告書220「監査業務における品質管理」の指針が有益なことがある。・他の監査人の適性及び能力の判断(当該監査人の独立性を含む。)・他の監査人への指揮及び監督・他の監査人に割り当てられた作業の種類、時期及び範囲・他の監査人が入手する監査証拠の十分性と適切性の評価
A18
委託会社は、再受託会社を利用している受託会社を利用することがある。再受託会社とは、委託会社の財務報告に関連する情報システムの一部を構成する業務を委託会社に提供するために、受託会社が受託業務の一部を他の会社に再委託する場合の当該他の会社をいう。再受託会社は、受託会社とは第三者の別会社であることもあれば、受託会社の関係会社であることもある。委託会社監査人は、再受託会社の提供する業務に関連する内部統制の検討が必要となることがある。1社以上の再受託会社が利用される状況では、委託会社の活動と受託会社の活動との相互関連は、委託会社、受託会社及び再受託会社の相互作用を含むように拡張される。この相互関連の度合いは、受託会社と再受託会社が処理する取引の内容や重要性とともに、委託会社監査人が委託会社の内部統制に対する受託会社と再受託会社の内部統制の重要性を判断する際に検討すべき最も重要な要素である。
(8)理解を裏付けるためのタイプ1又はタイプ2の報告書の利用(第12項及び第13項参照)
A19
委託会社監査人は、受託会社監査人が属する職業的専門家団体又は他の業務実施者に受託会社監査人について質問を行い、受託会社監査人を適切に監督する規制環境の下で業務が行われているかどうかを質問することがある。受託会社監査人は、受託会社の提供する業務に関する内部統制の報告書について、委託会社の財務諸表の監査の基準と異なる国又は地域の基準に準拠して業務を行っていることがある。その場合、委託会社監査人は、受託会社監査人が準拠する基準について、その基準設定機構から情報を入手することがある。
A20
タイプ1又はタイプ2の報告書は、委託会社に関して入手した情報と併せて利用することで、以下の事項に役立つことがある。(1)委託会社の取引の処理に影響を与える可能性がある、受託会社の内部統制の諸側面(再受託会社の利用を含む。)を理解する。(2)委託会社の財務諸表に関する重要な虚偽表示が取引の流れの中のどの箇所で発生する可能性があるのかを判断するために、受託会社における重要な取引の流れを理解する。(3)受託会社の統制目的が委託会社の財務諸表のアサーションに関連しているのかを理解する。(4)受託会社の内部統制が、委託会社の財務諸表に重要な虚偽表示を生じさせる可能性がある誤謬を防止又は発見するために、適切にデザインされ業務に適用されているかどうかを理解する。タイプ1又はタイプ2の報告書は、重要な虚偽表示リスクを識別し評価するための十分な理解を得るに当たり、委託会社監査人に役立つことがあるが、タイプ1の報告書は、内部統制の運用状況の有効性に関しては何も証拠を提供しない。
A21
タイプ1又はタイプ2の報告書の基準日又は対象期間が、委託会社の会計期間外であっても、当該会計期間に関して追加的に報告書以外から得た情報によって補完される場合、それらの報告書は、受託会社の提供する業務に適用された内部統制に関する予備的な理解を得るに当たり、委託会社監査人に役立つことがある。受託会社の内部統制の記述の基準日又は対象期間が委託会社の会計期間の期首より前の場合、委託会社監査人は、以下のいずれかにより、タイプ1又はタイプ2の報告書上の情報を更新する手続を実施することがある。・受託会社での変更を知り得る立場にある委託会社の担当者との変更に関する協議・受託会社が発行した現状に関する文書や回答の検討・受託会社の担当者との変更に関する協議《2.評価した重要な虚偽表示リスクへの対応》(第14項参照)
A22
受託会社の利用が委託会社の重要な虚偽表示リスクに影響を与えるかどうかは、提供される業務の内容とそれらの業務を対象とする内部統制によって決まる。例えば、委託会社自体が、取引の開始、処理及び記録などのような、特定の活動を実施するために必要な専門知識又は十分な経営資源(例えば、ITシステム)を保有していない場合に、受託会社の利用は、委託会社の重要な虚偽表示リスクを減少させることがある。
A23
受託会社が委託会社の会計記録の重要な内容を保持している場合、委託会社監査人が、当該記録を対象とする内部統制の運用状況に関して十分かつ適切な監査証拠を入手するために、若しくはそれらに記録された取引と残高に対して実証手続を実施するために、又はそれらの両方のために、当該記録への直接のアクセスが必要になることがある。そのような記録へ直接アクセスする方法には、受託会社内における記録の閲覧、若しくは電子的に保存された記録に対する委託会社や他の場所からの調査、又はそれらの両方が含まれる。当該記録へ電子的に直接アクセスできる場合、委託会社監査人は、それによって、受託会社が責任を負う委託会社のデータの正確性と網羅性を対象とする受託会社の内部統制の十分性に関する証拠を入手することがある。
A24
委託会社監査人は、委託会社のために受託会社が保管する資産残高や実施する取引に関して入手すべき監査証拠の種類及び範囲を決定する際に、以下の手続を検討することがある。(1)委託会社が保有する記録と文書の閲覧この証拠の証明力は、委託会社が保存している会計記録と証憑書類の種類と範囲によって判断される。場合によっては、委託会社は、自身のために実施した特定の取引に関する独自の詳細な記録や文書を保持していないことがある。(2)受託会社が保有する記録と文書の閲覧委託会社監査人による受託会社の記録の入手は、委託会社と受託会社の間の契約の一部として規定されることがある。委託会社監査人は、受託会社が保持する委託会社の記録を入手するために、自ら手続を実施することに代えて、他の監査人を利用することもある。(3)残高と取引に関する受託会社からの確認状の入手委託会社が残高と取引の記録を独自に保持している場合、委託会社の記録を裏付ける受託会社からの確認状は、取引と資産の実在性に関して、証明力のある監査証拠となることがある。例えば、投資顧問や証券保管機関などの複数の受託会社が利用され、それらの受託会社が独自の記録を保持している場合、委託会社監査人は、この情報と委託会社の独自の記録を比較するために、当該受託会社より残高確認状を入手することがある。委託会社が独自の記録を保持していない場合、受託会社からの確認状で入手した情報は、ただ単に、何が当該受託会社によって記録として保持されているのかを示すものでしかない。したがって、そのような確認状は、それだけでは、証明力のある監査証拠とはならない。これらの状況では、委託会社監査人は、代替する独自の証拠を識別できるかどうかを検討することがある。(4)委託会社が保持する記録、又は受託会社から受領する報告書への分析的手続の実施分析的手続の有効性は、アサーションによって変わることが多く、入手可能な情報の範囲とその詳細さによって影響を受けることになる。
A25
委託会社監査人のために、他の監査人が実証手続に相当する手続を実施することがある。例えば、委託会社と委託会社監査人及び受託会社と受託会社監査人によって合意された手続を他の監査人が実施することがある。委託会社監査人は、他の監査人の実施した手続の結果発見した事項が、十分かつ適切な監査証拠となるかどうかを判断するため、当該発見事項を検討する。また、政府当局によって、又は契約によって、受託会社監査人が、指定された実証手続に相当する手続の実施を要求されることがある。要求される手続を受託会社の処理した残高と取引に対して適用した結果は、監査意見の裏付けに必要な証拠の一部として、委託会社監査人により利用されることがある。これらの状況では、委託会社監査人が閲覧する監査調書の内容又はその方法に関して、手続の実施前に委託会社監査人と受託会社監査人が合意することが有用となることがある。
A26
委託会社がその財務機能の一部又は全部を受託会社に委託する場合などの特定の状況では、委託会社監査人は、監査証拠の重要な部分が受託会社に存在する状況に直面することがある。委託会社監査人又は当該監査人のために手続を実施する他の監査人は、実証手続を受託会社で実施する必要があることがある。受託会社監査人は、タイプ2の報告書を提供するとともに、さらに、委託会社監査人のために実証手続を実施することもある。他の監査人の利用により、委託会社監査人がその意見を裏付ける合理的な基礎を得る十分かつ適切な監査証拠を入手するという委託会社監査人の責任は軽減されるものではない。検討に際しては、他の監査人が実施する実証手続の指示、監督及び実施における委託会社監査人の関与の程度、又は他の監査人による実証手続の指示、監督及び実施状況を確かめることが含まれる。
運用評価手続(第15項参照)
A27
委託会社監査人は、監査基準報告書330第7項により、一定の状況においては、内部統制の運用状況の有効性に関して十分かつ適切な監査証拠を入手するための運用評価手続を立案し実施することが求められている。受託会社との関連では、この要求事項は、以下のいずれかの場合に適用される。(1)委託会社監査人が重要な虚偽表示リスクの評価において受託会社の内部統制が有効に運用されていることを想定している場合(すなわち、委託会社監査人が、実証手続の種類、時期及び範囲の決定に当たって、有効に運用されている受託会社の内部統制に依拠する予定である場合)(2)実証手続のみか、又は委託会社の内部統制に係る運用状況の有効性の評価手続と組み合わせた実証手続では、アサーション・レベルでの十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合
A28
タイプ2の報告書がない場合、委託会社監査人は、委託会社を通じて受託会社に連絡し、受託会社監査人が受託会社の内部統制の運用状況の有効性の評価手続を実施してタイプ2の報告書を提供するように要請することがある。又は、委託会社監査人は、受託会社の内部統制の運用状況の有効性の評価手続を実施する、他の監査人を利用することがある。委託会社監査人は、受託会社が同意した場合、受託会社を往査して、内部統制の運用評価手続を実施することもある。委託会社監査人のリスク評価は、他の監査人の作業と委託会社監査人自身の手続から入手する、一体となった証拠に基づいている。
運用状況に関する監査証拠としてのタイプ2の報告書の利用(第16項参照)
A29
タイプ2の報告書は、様々な異なる委託会社監査人のニーズを満たすことを意図していることがあり、したがって、受託会社監査人の報告書に記載された運用評価手続とその結果が、委託会社の財務諸表において重要なアサーションに関連していないことがある。委託会社監査人は、委託会社監査人のリスク評価を裏付ける内部統制の有効性について、受託会社監査人の報告書が十分かつ適切な監査証拠を提供しているかどうかを、関連する運用評価手続とその結果を評価して判断することになる。その際、委託会社監査人は、以下を検討することがある。(1)運用評価手続の対象期間及び運用評価手続の実施後の経過期間(2)受託会社監査人の業務の範囲及び対象になる業務とプロセス、運用評価手続を実施した内部統制及び実施された運用評価手続、並びに運用評価手続を実施した内部統制と委託会社の内部統制の関係(3)当該運用評価手続の結果、及び内部統制の運用状況の有効性に関する受託会社監査人の意見
A30
一般に、一定のアサーションに対して、特定の運用評価手続の対象期間が短ければ短いほど、また、運用評価手続の実施以後の経過期間が長ければ長いほど、運用評価手続から入手できる監査証拠は少なくなる。タイプ2の報告書の対象期間を委託会社の会計期間と比較するに当たり、委託会社監査人は、タイプ2の報告書の対象期間と委託会社監査人がその報告書への依拠を予定する期間の間に僅かな重なりしかなかった場合には、タイプ2の報告書がより少ない監査証拠しか提供しないと結論付けることがある。この場合、当該タイプ2の報告書よりも前の期間又はそれよりも後の期間を対象期間とするタイプ2の報告書が、追加的な監査証拠を提供することがある。また、委託会社監査人は、当該内部統制の運用状況の有効性について十分かつ適切な監査証拠を入手するために、受託会社で運用評価手続を実施するか、それを実施する他の監査人を利用することが必要であると判断することもある。
A31
委託会社監査人が、タイプ2の報告書の対象期間外に発生した受託会社の内部統制の重要な変更について、追加的な証拠を入手するか、又は追加の監査手続の実施を決定することが必要になることもある。受託会社監査人の報告書の対象期間外に運用されていた受託会社の内部統制について、どのような追加的な監査証拠を入手するかの決定に関連する要因には、以下が含まれることがある。・評価したアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクの程度・運用評価手続を実施した特定の内部統制、及び、運用評価手続を実施した後の当該内部統制の重要な変更の有無(変更には情報システム、プロセス及び担当者の変更を含む。)・これらの内部統制の運用状況の有効性について入手した監査証拠の程度・タイプ2の報告書の対象外の期間の長さ・委託会社監査人が内部統制に依拠することにより削減しようとする実証手続の範囲・委託会社の内部統制システムを監視するプロセスと統制環境の有効性
A32
追加的な監査証拠は、例えば、タイプ2の報告書の対象外の期間を含めるように運用評価手続の対象期間を広げることや、受託会社の内部統制システムを監視する委託会社のプロセスをテストすることにより、入手されることがある。
A33
受託会社監査人の運用評価手続の対象期間が完全に委託会社の会計期間外である場合、他の手続が実施されない限り、委託会社監査人は、委託会社の監査に関連する内部統制が有効に運用されていると結論付けるに当たって、当該運用評価手続に依拠することはできない。これは、受託会社監査人が実施した運用評価手続が、内部統制の有効性に関して当期の監査証拠を提供していないことによる。
A34
ある状況では、受託会社が提供する業務は、委託会社が一定の内部統制を業務に適用しているという想定の下でデザインされていることがある。例えば、受託会社に取引処理のための情報が送られる前に、委託会社が取引を承認する内部統制を整備しているという想定の下で、受託会社が提供する業務がデザインされていることがある。そのような状況では、受託会社の内部統制の記述には、当該委託会社の相補的な内部統制に関する記述が含まれていることがある。委託会社監査人は、受託会社の記述書に含まれている委託会社の相補的な内部統制が、受託会社から監査対象の委託会社に提供される業務に関連しているかどうかを検討する。
A35
受託会社監査人の報告書が十分かつ適切な監査証拠を提供しないかもしれないと委託会社監査人が考えた場合、例えば、受託会社監査人の報告書に当該監査人の運用評価手続とその結果に関する記述が含まれていない場合には、委託会社監査人は、委託会社を通じて、受託会社に連絡し、受託会社監査人の作業の範囲と結果に関する受託会社監査人との協議を要請することにより、受託会社監査人の手続の範囲と結論についての理解を補完することがある。また、委託会社監査人は、必要と考えた場合、受託会社監査人に受託会社で手続を実施することを要請するため、委託会社を通じて、受託会社に連絡することがある。若しくは、委託会社監査人、又は委託会社監査人の要請による他の監査人が、委託会社監査人が必要と考える手続を受託会社で実施することもある。
A36
受託会社監査人のタイプ2の報告書は、委託会社監査人の結論に影響を与える可能性がある例外事項やその他の情報を含む、運用評価手続の結果を特定している。受託会社監査人が例外事項を指摘している場合、又は受託会社監査人のタイプ2の報告書に除外事項が付されていたり、有効でないという結論が表明されていたり、不表明である場合、受託会社監査人のタイプ2の報告書が、委託会社の財務諸表の監査において重要な虚偽表示リスクを評価する際に有用でなくなることを自動的に意味しているわけではない。より正確に言えば、受託会社監査人のタイプ2の報告書の例外事項や除外事項付意見を生じさせた事項は、受託会社監査人が実施した運用評価手続に関する委託会社監査人の評価において検討される。委託会社監査人は、例外事項や除外事項付意見を生じさせた事項の検討に当たり、受託会社監査人と当該諸事項を協議することがある。そのようなコミュニケーションが実施できるかどうかは、委託会社を通じて受託会社に連絡し、コミュニケーションをとることについて受託会社の了解が得られるかどうかに依存している。
監査の過程で識別された内部統制の不備のコミュニケーション
A37
委託会社監査人は、監査の過程で識別された重要な不備について、経営者及び監査役等に、適時に書面又は電磁的記録により報告することが要求されている(監査基準報告書265「内部統制の不備に関するコミュニケーション」第8項及び第9項参照)。委託会社監査人はまた、監査の過程で識別した他の内部統制の不備のうち、職業的専門家として、経営者の注意を促すに値すると判断した不備を、適切な階層の経営者に適時に報告することも要求されている(監基報265第9項参照)。委託会社監査人が監査の過程で識別し、委託会社の経営者及び監査役等に報告することがある事項には、以下のものが含まれる。・委託会社が整備可能な、受託会社の内部統制システムを監視する委託会社のプロセスにおける内部統制(タイプ1又はタイプ2の報告書の入手を受けて識別されたものを含む。)・委託会社の相補的な内部統制が、タイプ1又はタイプ2の報告書で言及されているが、委託会社で整備されていない場合には、その旨・受託会社で必要な可能性があるものの、整備されているかどうかが明らかでないか、又はタイプ2の報告書が明確に特定していない内部統制《3.再受託会社の業務を報告対象から除外したタイプ1とタイプ2の報告書》(第17項参照)
A38
受託会社が再受託会社を利用した場合、受託会社監査人の報告書は、再受託会社の関連する統制目的と内部統制を、受託会社のシステムに関する記述書と受託会社監査人の業務の範囲に含めている場合(一体方式)もあるが、除外している場合(除外方式)もある。タイプ1とタイプ2の報告書が再受託会社の内部統制を除外し、再受託会社の提供する業務が委託会社の財務諸表の監査に関連していた場合、委託会社監査人は、再受託会社に関して本報告書の要求事項を適用することが要求される。再受託会社の提供する業務に関して委託会社監査人が実施すべき業務の種類と範囲は、当該業務の内容と委託会社にとっての重要性、及び監査への関連性によって決まる。委託会社監査人が再受託会社の影響と、実施すべき作業の種類及び範囲を決定する際に、第8項の要求事項を適用することは有用である。
4.受託会社の活動に関連した不正、違法行為及び未修正の虚偽表示(第18項参照)
A39
受託会社は、受託会社の経営者又は従業員による全ての不正、違法行為、又は未修正の虚偽表示について、影響を受ける委託会社に開示することを、委託会社との契約に基づいて要求されていることがある。第18項の要求に応じて、委託会社監査人は、受託会社がそのような事項を報告したかどうかに関して委託会社の経営者に質問を行うとともに、受託会社が報告した全ての事項が、委託会社監査人のリスク対応手続の種類、時期及び範囲に影響を与えるかどうかを評価する。状況によっては、委託会社監査人は、この評価を実施するために追加の情報が必要なこともあり、必要な情報を入手するため受託会社に連絡することを委託会社に要請することがある。
5.委託会社監査人の監査報告書(第19項参照)
A40
委託会社監査人が、委託会社の財務諸表の監査に関連した受託会社の提供する業務に関して、十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合、監査範囲の制約が存在することになる。これには、以下の場合が含まれる。・委託会社監査人が、受託会社の提供する業務に関して十分な理解を得ることができず、重要な虚偽表示リスクの識別と評価のための基礎を得ていない場合・委託会社監査人のリスク評価において、受託会社の内部統制が有効に運用されていることが想定されているものの、当該内部統制の運用状況の有効性について、委託会社監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合・十分かつ適切な監査証拠が、受託会社で保有されている記録からのみ入手可能であり、委託会社監査人が、これらの記録に直接アクセスすることができない場合委託会社監査人が、監査範囲に関する限定意見を表明するか又は意見を不表明にするかは、財務諸表に見込まれる影響が重要であるか又は広範であるかに関する、委託会社監査人の結論によって決まる。
受託会社監査人の作業への言及(第20項及び第21項参照)
A41
委託会社が受託会社を利用するという事実は、委託会社監査人の監査意見を裏付ける基礎を提供するために十分かつ適切な監査証拠を入手するという、一般に公正妥当と認められる監査の基準における委託会社監査人の責任を軽減しない。したがって、委託会社監査人は、委託会社の財務諸表に対する委託会社監査人の監査意見の部分的な基礎として、受託会社監査人の報告書を利用したことを記載しない。しかし、受託会社監査人の報告書における除外事項付意見を理由として、委託会社監査人が無限定意見を表明できない場合、その理由を説明するのに役立つのであれば、委託会社監査人は受託会社監査人の報告書へ言及することができる。そのような状況では、委託会社監査人は、当該言及を行う前に、受託会社監査人の同意を必要とすることがある。