監基報600
監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」
出典:日本公認会計士協会『監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」』最終改正 2025年7月17日公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧 ↗本文(要求事項・適用指針)を収録。付録(文例・表)と「適用」の節は載せていません。本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された24か所に線を引いています。
1.本報告書の範囲
1
本報告書は、構成単位の監査人が関与する状況を含む、グループ財務諸表の監査(以下「グループ監査」という。)に関して、特に考慮すべき事項を中心に実務上の指針を提供するものである。本報告書の要求事項及び適用指針は、グループ監査に関連する他の監査基準報告書、特に監査基準報告書220「監査業務における品質管理」、同230「監査調書」、同300「監査計画」、同315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」及び同330「評価したリスクに対応する監査人の手続」を参照又はそれらを拡充させている(A1項及びA2項参照)。
1-2JP
本報告書では、国際監査・保証基準審議会の公表する国際監査基準(ISA)600において規定された、「本報告書の範囲及び目的」、「要求事項」又は「適用指針」には含まれていないが、日本公認会計士協会が本報告書の起草に当たり追加した規定については、項番号に「JP」の文字を付している。また、本報告書には、「監査における不正リスク対応基準」(以下「不正リスク対応基準」という。)に準拠して監査を実施する際に遵守が求められる要求事項と関連する適用指針(項番号の冒頭に「F」が付されている。)が含まれている(監査基準報告書200「財務諸表監査における総括的な目的」第21項(3)参照)。不正リスク対応基準に準拠して監査を実施する際に遵守が求められる要求事項と関連する適用指針は、不正リスク対応基準が適用されない監査業務においても、業務の状況に応じて、参考となることがある。
2
第14項(11)に記載のとおり、グループ財務諸表は、連結プロセスを通じて作成された複数の企業又は事業単位の財務情報を含む財務諸表である。本報告書で用いられる連結プロセスという用語は、適用される財務報告の枠組みに基づく連結財務諸表の作成だけではなく、結合財務諸表の表示や、企業又は事業単位(支店、部門等)の財務情報の集計も含むものである(A3項からA5項及びA27項参照)。
3
監査基準報告書220のA1項で説明されているとおり、本報告書は、グループ監査以外の財務諸表監査において、監査チームに他の監査事務所の者が含まれる場合に、必要に応じて適用されることがある。例えば、本報告書は、遠方にある事業所の棚卸資産の実地棚卸の立会、固定資産の実査又はシェアード・サービス・センターにおける監査手続の実施に他の監査事務所の者を関与させる場合に役立つことがある。
(1)グループ及び構成単位
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グループは様々な方法で組織される。例えば、グループは、法人又はその他の企業(例えば、親会社と1社以上の子会社、共同支配企業又は持分法で会計処理される投資等)によって組織される場合がある。あるいは、グループは所在地やその他の経済的単位(支店又は部門を含む。)又は機能や事業活動によって組織される場合がある。これらの異なる形態の組織は、本報告書において総称して「企業又は事業単位」とする(A6項参照)。
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グループ監査人は、評価したグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応するために、監査手続の計画及び実施のための適切な方法を決定し、職業的専門家としての判断を行使して、監査の作業を実施する構成単位を決定する。この決定は、グループ監査人のグループ及びグループ環境についての理解並びにその他の要素(例えば、集約的な監査手続の実施可能性、シェアード・サービス・センターの有無又は共通の情報システムや内部統制の存在)に基づいて行われる(A7項からA9項参照)。
(2)構成単位の監査人の関与
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監査基準報告書220第25項は、業務を実施するための十分かつ適切な業務運営に関する資源が、監査チームに適時に割り当てられている、又は利用可能であるかについて判断することを監査責任者に要求している。グループ監査では、そのような資源に構成単位の監査人が含まれることがある。そのため、本報告書は、グループ監査人に対して構成単位の監査人の関与の内容、時期及び範囲を決定することを要求している。
7
グループ監査人は、本報告書の要求事項を満たすために、構成単位の監査人に情報を提供させ、又は監査の作業を実施させることがある。構成単位の監査人は、グループ監査人よりも構成単位及びその環境(現地の法令、商慣行、言語、文化等)についての経験が豊富で、深い知識を有している場合がある。したがって、構成単位の監査人は、グループ監査の全ての段階に関与することが可能であり、実際に関与することが多い(A10項及びA11項参照)。
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監査リスクは、重要な虚偽表示リスク及び発見リスクの二つから構成される(監基報200のA31項参照)。グループ監査における発見リスクには、構成単位の監査人がグループ財務諸表の重要な虚偽表示の原因となり得る構成単位の財務情報の虚偽表示を発見できないリスクに加えて、グループ監査人が当該虚偽表示を発見できないリスクが含まれる。したがって、本報告書は、グループ監査責任者又は該当する場合にグループ監査人が、構成単位の監査人の作業に十分かつ適切に関与することを要求し、また、グループ監査人と構成単位の監査人の双方向のコミュニケーションの重要性を強調している。さらに、本報告書は、グループ監査人が構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲を決定するに当たり考慮する事項を記載している(A12項及びA13項参照)。
(3)職業的専門家としての懐疑心
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監査チームは、監査基準報告書200第14項及び第15項に基づいて、職業的懐疑心を保持してグループ監査を計画し実施し、また職業的専門家としての判断を行使することが要求されている。職業的懐疑心を適切に保持することは、監査チームの行動とコミュニケーションを通じて実践されるが、これには個々の監査チームメンバーがグループ監査を通じて職業的懐疑心を保持することの重要性を強調することが含まれる。このような行動とコミュニケーションには、職業的懐疑心を適切に保持することを妨げる障害を緩和するための具体的な手段が含まれることがある(A14項からA18項参照)。
(4)適用の柔軟性
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本報告書は、規模や複雑さを問わず、全てのグループ監査を対象としている。ただし、本報告書の要求事項は、各グループ監査の性質又は状況に照らして適用されることを意図している。例えば、グループ監査の全てがグループ監査人によって実施される場合、本報告書の要求事項の中には構成単位の監査人の関与を条件とする項目もあるため、関連しない項目もある。グループ監査人が監査手続を集約的に実施できる場合や、構成単位の監査人を関与させずに構成単位での監査手続を実施できる場合がこれに該当する。このような状況において本報告書を適用する場合には、A119項及びA120項の指針も有用な場合がある。
(5)グループ監査責任者及びグループ監査人の責任
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グループ監査責任者は、本報告書の要求事項を遵守することについて最終的な責任を有し、それに基づく説明責任を負う。本報告書における「グループ監査責任者は……に関して責任を負わなければならない。」又は「グループ監査人は……に関して責任を負わなければならない。」という表現は、グループ監査責任者又はグループ監査人がそれぞれ、構成単位の監査人を含む適切な能力又は経験を持つ他の監査チームメンバーに、手続又は業務の立案や実施を割り当てることが認められている場合に使用される。その他の要求事項について、本報告書は、グループ監査責任者又は該当する場合にグループ監査人が要求事項又は責任を果たすとともに、グループ監査責任者又はグループ監査人が、監査事務所又は監査チームの他のメンバーから情報を入手する場合があることを明示的に意図している(A29項参照)。
2.適用時期
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本報告書の適用時期は以下のとおりである。・本報告書(2011年12月22日)は、2012年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。・本報告書(2013年6月17日)は、2014年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。・本報告書(2015年5月29日)は、2015年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。・本報告書(2019年6月12日)は、以下の事業年度に係る監査等から適用する。-A9項の改正は、2020年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。-A21項及び付録1第2項の改正は、2020年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。ただし、2019年4月1日以後開始する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から早期適用することができる。・本報告書(2021年1月14日)は、2022年3月31日以後終了する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。・本報告書(2021年6月8日)は、2023年3月31日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査及び2022年9月に終了する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から実施する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から実施することを妨げない。・本報告書(2021年8月19日)は、2021年9月1日から適用する。・本報告書(2022年6月16日)は、2023年7月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。なお、公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。なおその場合、品質管理基準委員会報告書第1号(2022年6月16日)、品質管理基準委員会報告書第2号「監査業務に係る審査」(2022年6月16日)及び監査基準委員会報告書220(2022年6月16日)と同時に適用する。・本報告書(2022年10月13日)のうち、倫理規則に関する事項は、2023年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。ただし、本報告書を、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査から早期適用することを妨げない。なお、品質管理に関する事項は、2022年6月16日付け改正の品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」、品質管理基準委員会報告書第2号「監査業務に係る審査」及び監査基準委員会報告書220「監査業務における品質管理」と同時に適用する。・本報告書(2023年1月12日)は、2024年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。また、公認会計士法上の大規模監査法人以外の監査事務所においては、2024年7月1日以後に開始する事業年度に係る財務諸表の監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用する。ただし、それ以前の決算に係る財務諸表の監査及び中間会計期間に係る中間財務諸表の中間監査から適用することを妨げない。その場合、品質管理基準委員会報告書第1号「監査事務所における品質管理」(2022年6月16日)、品質管理基準委員会報告書第2号「監査業務に係る審査」(2022年6月16日)及び監査基準委員会報告書220「監査業務における品質管理」(2022年6月16日)と同時に適用する。なお、2022年6月16日付けで改正された品質管理基準に関する事項は、品質管理基準委員会報告書第1号(2022年6月16日)、品質管理基準委員会報告書第2号(2022年6月16日)及び監査基準委員会報告書220(2022年6月16日)と同時に適用する。さらに、本報告書(2022年10月13日及び2023年1月12日)のうち、倫理規則に関する事項は、2023年4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表の監査から適用する。ただし、本報告書を、倫理規則(2022年7月25日変更)と併せて2023年4月1日以後終了する事業年度に係る財務諸表の監査から早期適用することを妨げない。
3.本報告書の目的
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本報告書における監査人の目的は、以下のとおりである。(1)グループ監査契約の新規の締結及び更新に関して、グループ財務諸表に対する意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することを合理的に見込めるかどうかを判断すること。(2)不正か誤謬かを問わず、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別して評価し、評価したリスクに適切に対応するためのリスク対応手続を立案し実施すること。(3)構成単位の監査人の作業の範囲及び時期について明確なコミュニケーションを行い、その作業の結果を評価することを含め、グループ監査を通じて構成単位の監査人の作業に十分かつ適切に関与すること。(4)構成単位の監査人が実施した作業を含め、グループ財務諸表に対する意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠が、実施した監査手続から入手されているかどうかを評価すること。
4.定義
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本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。(1)合算リスク-未修正の虚偽表示及び未発見の虚偽表示の合計が、財務諸表全体としての重要性の基準値を上回る可能性をいう(A19項参照)。(2)構成単位-グループ監査における監査手続の計画及び実施を目的として、グループ監査人により決定される企業、事業単位、機能若しくは事業活動又はそれらの組合せをいう(A20項参照)。(3)構成単位の監査人-グループ監査の目的で構成単位に関連する監査の作業を実施する監査人をいう。構成単位の監査人は、グループ監査における監査基準報告書220第12項(4)に定める監査チームの一員である(A21項からA23項参照)。(4)構成単位の経営者-構成単位の経営に責任を有する者をいう(A24項参照)。(5)構成単位の手続実施上の重要性-構成単位に関連する監査手続の計画及び実施の目的で、合算リスクを適切な低い水準に抑えるためにグループ監査人が設定する金額をいう。(6)グループ-グループ財務諸表が作成される報告主体をいう。(7)グループ監査-グループ財務諸表の監査をいう。(8)グループ監査人-グループ監査責任者及び監査チームのメンバー(構成単位の監査人を除く。)をいう。グループ監査人は以下の責任を負う。①グループ監査の基本的な方針の策定及び詳細なグループ監査計画の作成②構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲③グループ財務諸表に対する意見形成のための基礎として入手した監査証拠から導かれた結論についての評価(9)グループ財務諸表の監査意見-グループ財務諸表に対する監査意見をいう。(10)グループ監査責任者-グループ監査に責任を負う、監査基準報告書220第12項(1)に定める監査責任者をいう(A25項参照)。(11)グループ財務諸表-複数の企業又は事業単位の財務情報を含む、以下の連結プロセスを通じて作成された財務諸表をいう(A26項からA28項参照)。①連結又は持分法による会計処理②親会社を有しないが共通の支配下にある、又は共通の経営者の下にある企業又は事業単位の財務情報に係る結合財務諸表の表示③企業又は事業単位(例えば、支店又は部門)に関する財務情報の集計(12)グループ経営者-グループ財務諸表の作成に責任を有する経営者をいう。(13)グループ・レベルの手続実施上の重要性-グループ監査人が決定するグループ財務諸表全体における、監査基準報告書320「監査の計画及び実施における重要性」第8項及び第10項に定める手続実施上の重要性をいう。
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本報告書において「適用される財務報告の枠組み」とは、グループ財務諸表に適用される財務報告の枠組みを意味している。
1.グループ監査における品質の管理と達成に対する監査責任者の責任
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監査基準報告書220第13項を適用するに当たり、グループ監査責任者には、グループ監査業務の全体的な品質の管理と達成に対する責任を負うことが要求されている。適用に当たり、グループ監査責任者は、以下を実施しなければならない(A29項及びA30項参照)。(1)監査チームメンバーに期待される行動を強く意識付けるグループ監査業務の環境を整備する責任を負うこと(A31項参照)。(2)重要な判断や到達した結論がグループ監査業務の内容及び状況を踏まえて適切かどうかを判断する根拠が得られるよう、構成単位の監査人の作業を含め、グループ監査業務の全過程を通じて十分かつ適切に関与すること。
2.監査契約の新規の締結及び更新
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グループ監査業務の契約の新規の締結又は更新の前に、グループ監査責任者は、グループ財務諸表に対する意見を形成するための基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できると合理的に見込めるかどうかを判断しなければならない(A32項からA35項参照)。
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グループ監査業務の契約を新規に締結又は更新した後に、十分かつ適切な監査証拠を入手できないとグループ監査責任者が結論付けた場合、グループ監査責任者は、グループ監査に対して発生し得る影響を検討しなければならない(A36項参照)。
(1)監査業務の契約条件
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グループ監査人は、監査基準報告書210「監査業務の契約条件の合意」第4項(2)及び第6項(2)を適用するに当たり、監査チームに以下を提供する責任を認識し理解していることに関するグループ経営者の合意を得なければならない(A37項参照)。(1)グループ経営者が認識しているグループ財務諸表の作成に関連する全ての情報(記録、文書及びその他のもの)へのアクセス(2)監査チームがグループ監査の目的に関連して、グループ経営者又は構成単位の経営者に追加的に依頼する情報(3)監査チームが監査証拠を入手するために必要と判断した、グループ内の者への制限のないアクセス《(2)グループ経営者の管理が及ばない情報又は人へのアクセスに関する制限》
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グループ監査責任者は、グループ経営者の管理が及ばないために、グループ経営者が情報へのアクセス又はグループ内の者への制限のないアクセスを監査チームに提供できないと結論付けた場合、グループ監査に対して発生し得る影響を検討しなければならない(A38項からA46項参照)。
(3)グループ経営者によって課される情報又は人へのアクセスに関する制限
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グループ監査責任者は、グループ経営者によって課される制限によりグループ監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できず、かつ、それによって見込まれる影響がグループ財務諸表に対する意見を表明しないことにつながると判断した場合、以下のいずれかを実施しなければならない(A43項からA46項参照)。(1)初年度監査の場合、当該監査業務を受嘱しないこと。継続監査の場合、適用法令上で解除可能なときは、当該監査契約を解除すること。(2)法令により監査契約の辞退が禁止されている場合又は監査契約の解除が他の理由により不可能な場合、グループ財務諸表の監査を可能な範囲で実施した上で、グループ財務諸表に関する意見を表明しないこと。
3.グループ監査の基本的な方針及び詳細な監査計画
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グループ監査人は、監査基準報告書300第6項から第9A項を適用する際、グループ監査の基本的な方針を策定し、その詳細な監査計画を作成し、また必要に応じて見直さなければならない。その場合、グループ監査人は、以下の事項を決定しなければならない(A47項からA50項参照)。(1)監査の作業を実施する構成単位(A51項参照)(2)構成単位の監査人の関与の内容、時期及び範囲を含むグループ監査の実施に必要な資源(A52項からA56項参照)
(1)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項
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グループ監査責任者は、グループ監査の基本的な方針の策定及び詳細な監査計画の作成に当たって、グループ監査人が構成単位の監査人の作業に十分かつ適切に関与できるかどうかを評価しなければならない(A57項参照)。
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グループ監査人は、第23項の評価の一環として、構成単位の監査人が、依頼された作業を実施するかどうかを含め、グループ監査人に協力することを確認するように、構成単位の監査人に対して要請しなければならない(A58項参照)。
①独立性を含む職業倫理に関する規定
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監査基準報告書220第17項を適用するに当たり、グループ監査責任者は以下の事項について責任を負わなければならない(A59項、A60項及びA87項参照)。(1)グループ監査業務の内容と状況を考慮して、適用される職業倫理に関する規定を構成単位の監査人に認識させること。(2)グループ監査業務に適用される独立性を含む職業倫理に関する規定を構成単位の監査人が理解しており、また遵守しているかどうかについて確認すること(A60-2JP項参照)。
②業務運営に関する資源
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監査基準報告書220第25項及び第26項を適用するに当たり、グループ監査責任者は以下を実施しなければならない(A61項からA68項参照)。(1)構成単位の監査人が、構成単位において監査手続を実施するために割り当てられた十分な時間を含む、適性及び適切な能力を有しているかどうかを判断すること。(2)構成単位の監査人に関するモニタリング及び改善プロセス又は外部検査の結果についての情報が、グループ監査人の監査事務所から提供された場合又は他の方法でグループ監査責任者が利用可能となった場合、当該情報と第26項(1)のグループ監査人の判断との関連性を判断すること。
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グループ監査人は、以下の場合、構成単位の監査人を関与させることなく、構成単位において実施する作業に関する十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならない。(1)構成単位の監査人が、グループ監査業務に適用される独立性を含む職業倫理に関する規定を遵守していない場合(A69項及びA70項参照。監基報200第13項参照)(2)グループ監査責任者が、第23項から第26項の事項について重大な懸念を抱いている場合(A71項参照)
③業務の実施
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監査基準報告書220第29項を適用するに当たり、グループ監査責任者は、以下を考慮して、構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲に対する責任を負わなければならない(A72項からA77項参照)。(1)グループ財務諸表において評価した重要な虚偽表示リスクが高い領域又は監査基準報告書315に従って識別された特別な検討を必要とするリスク(2)グループ財務諸表の監査における重要な判断を含む領域《④構成単位の監査人とのコミュニケーション》
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グループ監査人は、グループ監査人及び構成単位の監査人それぞれの責任並びにグループ監査人の期待(グループ監査人と構成単位の監査人とがグループ監査を通して適時にコミュニケーションを行うことについての期待を含む。)について、構成単位の監査人とコミュニケーションを行わなければならない(A78項からA87項参照)。
4.グループ及びグループ環境、適用される財務報告の枠組み並びにグループの内部統制システムの理解
30
監査基準報告書315第18項から第26項を適用するに当たり、グループ監査人は以下の事項を理解する責任を負わなければならない(A88項からA92項参照)。(1)グループ及びグループ環境。これには以下を含む(A93項からA95項参照)。①以下を含むグループの組織構造及びビジネスモデルア.グループの業務又は活動が行われている場所イ.グループの業務又は活動の性質及びそれらがグループ全体で類似する程度ウ.グループのビジネスモデルが情報技術(IT)を活用している程度②グループの企業及び事業単位に影響を及ぼす規制等の要因③企業又は事業単位の業績を評価するために企業内外で使用される測定指標(2)適用される財務報告の枠組み及びグループ全体における会計方針と実務との一貫性(3)グループの内部統制システム。これには以下を含む。①共通化された内部統制の程度及び範囲(A96項からA99項及びA102項参照)②グループが財務報告に関連する活動を集約化しているかどうか、及び集約化している場合にはその方法(A100項からA102項参照)③グループの連結プロセス(該当する場合にはサブグループの連結プロセスを含む。)及び連結修正④情報システム及びグループの内部統制システムのその他の構成要素において、グループ財務諸表の作成を支援する重要な事項及び関連する財務報告責任について、グループ経営者が企業又は事業単位の経営者に伝達する方法(A103項からA105項参照)
(1)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項
31
グループ監査人は、構成単位の監査人と以下の事項について適時にコミュニケーションを行わなければならない(A106項参照)。(1)構成単位の監査人によるグループ監査目的でのリスク評価手続の立案又は実施に関連するとグループ監査人が決定した事項(2)監査基準報告書550「関連当事者」第16項を適用するに当たり、構成単位の監査人の作業に関連する、グループ経営者によって識別された関連当事者との関係又は取引及びグループ監査人が把握しているその他の関連当事者(A107項参照)(3)監査基準報告書570「継続企業」を適用するに当たり、構成単位の監査人の作業に関連する、グループ経営者又はグループ監査人によって識別された、グループの継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況
F31-2JP
グループ監査人は、監査の過程において、構成単位の監査人の作業に影響を及ぼす、グループ財務諸表に係る不正による重要な虚偽表示を示唆する状況を識別した場合には、構成単位の監査人に適時に伝達しなければならない(FA106-2JP項参照)。
32
グループ監査人は、構成単位の監査人に対して、以下の事項について適時にコミュニケーションを行うよう要請しなければならない。(1)不正か誤謬かを問わず、構成単位の監査人がグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別と評価に関連すると判断した、構成単位の財務情報に関連する事項(2)グループ経営者又はグループ監査人によって従来は識別されていない関連当事者との関係(A107項参照)(3)構成単位の監査人によって識別された、グループの継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況
F32-2JP
グループ監査人は、構成単位の監査人に対して、構成単位の監査人が実施した手続の結果、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況を識別した場合、当該状況の内容をグループ監査人に適時に伝達するよう要請しなければならない(FA106-2JP項参照)。
5.重要な虚偽表示リスクの識別と評価
33
監査基準報告書315第27項から第33項を適用するに当たり、グループ監査人は、第30項により得られた理解に基づき、連結プロセスを含むグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別と評価に責任を負わなければならない(A108項からA113項参照)。
(1)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項
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監査基準報告書315第34項を適用するに当たり、グループ監査人は、グループ監査人及び構成単位の監査人によって実施されたリスク評価手続から得られた監査証拠が、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別及び評価のための適切な基礎を提供しているかどうかを評価しなければならない(A114項及びA115項参照)。
6.重要性
35
監査基準報告書320第10項及び監査基準報告書450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」第4項を適用するに当たり、グループ監査人は、グループ財務諸表の取引種類、勘定残高又は注記事項が構成単位ごとに細分化されている場合、監査手続を計画及び実施するために、以下の事項を決定しなければならない。(1)構成単位の手続実施上の重要性。合算リスクに対応するために、当該金額はグループ・レベルの手続実施上の重要性より低くなければならない(A116項からA120項参照)。(2)構成単位の財務情報において識別された虚偽表示についてグループ監査人とコミュニケーションを行う金額の基準値。当該基準値は、グループ財務諸表にとって明らかに僅少と考えられる金額を超えてはならない(A121項参照)。
(1)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項
36
グループ監査人は、第35項に従って決定された金額について構成単位の監査人とコミュニケーションを行わなければならない(A122項及びA123項参照)。
7.評価した重要な虚偽表示リスクへの対応
37
グループ監査人は、監査基準報告書330第5項及び第6項を適用するに当たり、リスク対応手続を実施する構成単位及びその構成単位で実施する作業の種類、時期及び範囲の決定を含む、実施するリスク対応手続の種類、時期及び範囲に責任を負わなければならない(A124項からA139項参照)。
(1)連結プロセス
38
グループ監査人は、連結プロセスから生じるグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応するためのリスク対応手続を立案し実施する責任を負わなければならない。これには以下を含めなければならない(A140項参照)。(1)適用される財務報告の枠組みの要求事項に従って、また、該当する場合には、サブグループの連結プロセスに対するリスク対応手続の立案と実施のために、全ての企業及び事業単位がグループ財務諸表に含まれているかどうかを評価すること。(2)連結のための修正及び組替の適切性、網羅性及び正確性を評価すること(A141項参照)。(3)連結プロセスにおける経営者の判断が、経営者の偏向が存在する兆候を示していないかどうかを評価すること。(4)連結プロセスから生じる不正による重要な虚偽表示リスクに対応すること。
39
企業又は事業単位の財務情報がグループ財務諸表に適用されている会計方針と同一の会計方針に従って作成されていない場合、グループ監査人は、その財務情報がグループ財務諸表の作成及び表示上で適切に修正されているかどうかを評価しなければならない。
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グループ財務諸表がグループと報告期間の末日が異なる企業又は事業単位の財務情報を含んでいる場合、グループ監査人は、適用される財務報告の枠組みに準拠して、その財務情報に適切な修正が行われたかどうかを評価する責任を負わなければならない。
(2)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項
41
リスク対応手続の立案又は実施に構成単位の監査人を関与させる場合、グループ監査人は、グループ監査人又は構成単位の監査人がグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクへの対応の立案に関連すると判断した事項について、構成単位の監査人とコミュニケーションを行わなければならない。
42
グループ財務諸表における重要な虚偽表示リスクが高いと評価された領域又は監査基準報告書315に基づいて決定された特別な検討を必要とするリスクについて、実施するリスク対応手続を構成単位の監査人が決定している場合、グループ監査人は、そのリスク対応手続の立案及び実施の適切性を評価しなければならない(A142項参照)。
43
構成単位の監査人がサブグループの連結プロセスを含む連結プロセスに関してリスク対応手続を行う場合、グループ監査人は、構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容及び範囲を決定しなければならない(A143項参照)。
44
グループ監査人は、構成単位の監査人とのコミュニケーションにおいて識別された財務情報(第45項(1)参照)がグループ財務諸表に組み込まれている財務情報であるかどうかを判断しなければならない。
8.構成単位の監査人とのコミュニケーション及びその作業の妥当性の評価
45
グループ監査人は、構成単位の監査人に対して、グループ監査に関するグループ監査人の結論に関連する事項についてコミュニケーションを行うよう要請しなければならない。コミュニケーションを行う事項には、以下を含めなければならない(A144項参照)。(1)構成単位の監査人が監査手続の実施を依頼された財務情報の特定(2)構成単位の監査人がグループ監査人に依頼された作業を実施したかどうか。(3)構成単位の監査人が、グループ監査業務に適用される独立性を含む職業倫理に関する規定を遵守したかどうか。(4)違法行為に関する情報(5)構成単位の監査人によって識別された構成単位の財務情報の修正済み及び未修正の虚偽表示で、第36項に従ってグループ監査人がコミュニケーションを行った金額の基準値を上回るもの(A145項参照)(6)経営者の偏向が存在する兆候(7)実施した監査手続において識別された内部統制システムの不備に関する説明(8)以下の不正又は不正の疑い(FA144-2JP項参照)・構成単位の経営者によるもの・構成単位においてグループの内部統制システムに重要な役割を果たしている従業員によるもの・不正が構成単位の財務情報の重要な虚偽表示となる場合には、上記以外の者によるもの(9)構成単位の監査人が、構成単位の経営者又は構成単位のガバナンスに責任を有する者(我が国では、ガバナンスに責任を有する者には監査役若しくは監査役会、監査等委員会若しくは監査委員会又は取締役会が該当すると一般的には解されているが、国によってガバナンスの責任を有する機関等の名称は異なる。本報告書には国外で事業を行う構成単位に関する手続も含まれるため、本報告書においては特定の機関名ではなく「ガバナンスに責任を有する者」という。)に報告した、又は報告を予定しているその他の重要な事項(10)グループ監査に関連する、又は構成単位の監査人がグループ監査人の注意を喚起することが適切であると判断するその他の事項(構成単位の監査人が構成単位の経営者から入手した経営者確認書に記載された事項のうち、特にグループ監査人の注意を喚起したい例外的な事項を含む。)(11)構成単位の監査人の発見事項又は結論(A146項参照)
46
グループ監査人は、以下を実施しなければならない。(1)第45項に従って行われたコミュニケーションを含め、構成単位の監査人とのコミュニケーションにおいて識別した重要な事項について、構成単位の監査人、構成単位の経営者又はグループ経営者と適宜協議する。(2)構成単位の監査人とのコミュニケーションが、グループ監査人の目的に照らして十分かどうかを評価する。コミュニケーションがグループ監査人の目的に対して十分ではない場合、グループ監査人はグループ監査への影響を考慮しなければならない(A147項参照)。
47
グループ監査人は、追加的に構成単位の監査人の監査調書を査閲する必要があるかどうか、及びその範囲を判断しなければならない。この判断に当たり、グループ監査人は以下を考慮しなければならない(A148項及びA149項参照)。(1)構成単位の監査人が実施する作業の種類、時期及び範囲(2)第26項に従って判断した構成単位の監査人の適性及び能力(3)構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲
48
グループ監査人は、構成単位の監査人の作業がグループ監査人の目的に照らして十分ではないと結論付けた場合、どのような追加的な監査手続を実施すべきか、及びその追加的な監査手続を構成単位の監査人又はグループ監査人のいずれが実施すべきかを決定しなければならない。
9.後発事象
49
監査基準報告書560「後発事象」第5項及び第6項を適用するに当たり、グループ監査人は、必要に応じて構成単位の監査人に手続の実施を依頼することを含め、グループ財務諸表における修正又は開示が要求される可能性のある事象を識別するために立案された手続を実施する責任を負わなければならない(A150項参照)。
(1)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項
50
グループ監査人は、構成単位の監査人に対して、グループ財務諸表における修正又は開示が要求される可能性のある後発事象に気付いた場合にはグループ監査人へ通知するよう要請しなければならない(A150項参照)。
10.入手した監査証拠の十分性及び適切性の評価
51
監査基準報告書330第25項を適用するに当たり、グループ監査人は、構成単位の監査人が実施した作業を含め、実施した監査手続からグループ財務諸表の監査意見の基礎となる十分かつ適切な監査証拠が入手されたかどうかを評価しなければならない(A151項からA155項参照)。
52
グループ監査責任者は、未修正の虚偽表示(グループ監査人が自ら発見した場合又は構成単位の監査人からコミュニケーションが行われた場合のいずれも含む。)及び十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった状況が、グループ財務諸表の監査意見に与える影響を評価しなければならない(A156項参照)。
11.監査報告書
53
グループ財務諸表に対する監査報告書は、法令により義務付けられていない限り、構成単位の監査人の利用に関して言及してはならない。法令により言及が義務付けられている場合、監査報告書において、当該言及がグループ監査責任者又はグループ監査責任者の監査事務所のグループ財務諸表の監査意見に対する責任を軽減しない旨を記載しなければならない(A157項及びA158項参照)。
(1)グループ経営者とのコミュニケーション
54
グループ監査人は、グループの構成単位で実施される作業の概要を含む、計画した監査の範囲とその実施時期の概要について、グループ経営者とコミュニケーションを行わなければならない(A159項参照)。
55
グループ監査人は、不正を識別した場合、構成単位の監査人から不正について報告された場合(第45項(8)参照)又は不正が存在する可能性があることを示す情報を入手した場合、不正の防止及び発見に対する責任を有する者に知らせるため、適時に適切な階層のグループ経営者とこれらの事項についてコミュニケーションを行わなければならない(A160項参照)。
56
構成単位の監査人は、法令又はその他の理由によって、グループの一部を構成する企業又は事業単位の財務諸表に対して監査意見を表明することを要求される場合がある。企業又は事業単位の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある事項で、企業又は事業単位の経営者が把握していない可能性がある事項にグループ監査人が気付いた場合、グループ監査人は、当該事項を企業又は事業単位の経営者に伝達するようグループ経営者に依頼しなければならない。グループ経営者が当該事項を企業又は事業単位の経営者に伝達することを拒否した場合、グループ監査人は、グループ・ガバナンスに責任を有する者と当該事項について協議しなければならない。これらによっても解決しない場合、グループ監査人は、法律上の、及び専門家としての秘密保持に従った上で、構成単位の監査人に対して当該事項が解決するまでは企業又は事業単位の財務諸表に対する監査報告書を発行しないように助言するかどうかを検討しなければならない(A161項及びA162項参照)。
(2)グループ・ガバナンスに責任を有する者とのコミュニケーション
57
グループ監査人は、監査基準報告書260「監査役等とのコミュニケーション」及び他の監査基準報告書によって要求されるものに加えて、以下の事項についてグループ・ガバナンスに責任を有する者とコミュニケーションを行わなければならない(A163項参照)。(1)グループの構成単位において実施する作業及び構成単位の監査人が実施する作業に関してグループ監査人が予定している関与の内容の概要(A164項参照)(2)グループ監査人が構成単位の監査人の作業を査閲したことによって判明した作業の品質に関する懸念事項及びグループ監査人による当該懸念への対処方法(3)グループ監査の範囲に関する制約(例えば、人や情報へのアクセス制限に関する重要な事項)(4)以下の不正又は不正の疑い(FA163-2JP項参照)・グループ経営者による不正又は不正の疑い・構成単位の経営者による不正又は不正の疑い・グループの内部統制システムに重要な役割を担っている従業員による不正又は不正の疑い・不正がグループ財務諸表の重要な虚偽表示となる場合における上記以外の者による不正又は不正の疑い《(3)識別された内部統制の不備に関するコミュニケーション》
58
監査基準報告書265「内部統制の不備に関するコミュニケーション」を適用するに当たり、グループ監査人は、識別されたグループの内部統制システムの不備をグループ・ガバナンスに責任を有する者又はグループ経営者に報告する必要があるかどうかを判断しなければならない。この判断に当たり、グループ監査人は、構成単位の監査人によって識別され、第45項(7)に従ってグループ監査人とコミュニケーションが行われた内部統制の不備を考慮しなければならない(A165項参照)。
13.監査調書
59
監査基準報告書230第7項に従い、グループ監査業務の監査調書は、経験豊富な監査人が、以前に当該監査に関与していなくとも実施した監査手続の種類、時期及び範囲、入手した監査証拠並びにグループ監査において生じた重要な事項について、到達した結論を理解するのに十分である必要がある。監査基準報告書230第1項から第3項、第8項から第10項、A6項、A7項及び付録を適用するに当たり、グループ監査人は、以下の事項を監査調書に記載しなければならない(A166項からA169項及びA179項からA182項参照)。(1)契約の新規の締結若しくは更新を決定する前に検討された、又は締結若しくは更新の後に生じた、グループ内の人や情報へのアクセス制限に関する重要な事項及びそのような事項への対処方法(2)グループ監査の計画及び実施を目的としたグループ監査人による構成単位の決定の根拠(A170項参照)(3)構成単位における手続実施上の重要性の決定の根拠及び構成単位の財務情報における虚偽表示についてグループ監査人とコミュニケーションを行う際の金額の基準値(4)構成単位の監査人が、構成単位に割り当てられた監査手続を実施するための適性及び適切な能力(十分な時間を含む。)を有しているかどうかについてのグループ監査人の判断の根拠(A171項参照)(5)第30項(3)に従ったグループの内部統制システムの理解における重要な要素(6)グループ監査人による構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲(必要な場合には、第47項に従った追加的な構成単位の監査人の監査調書の査閲を含む。)について、それぞれの内容、時期及び範囲(A172項からA178項参照)(7)以下を含む、構成単位の監査人とのコミュニケーションに関する事項①第32項に従って伝達された不正、関連当事者又は継続企業に関する事項②第45項に従ったグループ監査に関するグループ監査人の結論に関連する事項。これには、構成単位の監査人、構成単位の経営者又はグループ経営者と討議した重要な事項にグループ監査人がどのように対処したかが含まれる。(8)グループ財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性のある事項に関する構成単位の監査人による発見事項又は結論に対する、グループ監査人の評価及び対応《Ⅲ適用指針》
1.本報告書の範囲(第1項及び第2項参照)
A1
本報告書は、グループ監査責任者又は該当する場合にグループ監査人が、監査基準報告書220の要求事項と適用指針を適用する際の特に考慮すべき指針を提供しており、これには構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲が含まれる。
A2
品質管理基準報告書第1号「監査事務所における品質管理」は、審査を実施することが要求される業務を扱っている。品質管理基準報告書第2号「監査業務に係る審査」は、グループ監査を含む、審査担当者の選任及び適格性並びに審査の実施及び文書化に関する審査担当者の責任を扱っている。
A3
グループの中の一つの企業又は事業単位が、包含する企業又は事業単位の財務情報を含めた自身のグループ(すなわち、サブグループ)の財務諸表を作成することもある。本報告書は、法令又はその他の理由により作成される当該サブグループのグループ財務諸表の監査に適用される。
A4
例えば、複数の支店を有する銀行等、複数の拠点で業務を展開している会社のように、単一の法人が複数の事業単位で組織されている場合がある。これらの事業単位が、別個の所在地、別個の経営者又は別個の情報システム(別個の総勘定元帳を含む。)といった特性を有し、単一の法人の財務諸表の作成に際して財務情報が集計されている場合、そのような財務諸表は連結プロセスを通じて複数の企業又は事業単位の財務情報を含むため、グループ財務諸表の定義を満たすものとなる。
A5
場合によっては、法令上の報告又はその他の経営上の目的のために、単一の法人が、複数の製品やサービスラインの財務情報を得られるように情報システムを構築することがある。このような状況における企業の財務諸表は、連結プロセスを通じて複数の企業又は事業単位の財務情報を集計していないため、グループ財務諸表ではない。さらに、法令上の報告又はその他の経営上の目的のために、例えば補助元帳などで、個別の情報を得ることは、本報告書の目的において、個別の企業又は事業単位(例えば、部門等)を設けることにはならない。
(1)グループ及び構成単位(第4項及び第5項参照)
A6
財務報告プロセスを含むグループの情報システムは、グループの組織構造と整合している場合もあれば、整合していない場合もある。例えば、グループはその法的構造に従って組織される場合があるが、その情報システムは、管理又は報告目的のために、機能、プロセス、製品やサービス(又は製品群やサービス群)又は所在地域別に構築されることがある。
A7
グループ監査人は、グループの組織構造及び情報システムの理解に基づき、監査手続を計画及び実施する目的において、特定の企業又は事業単位の財務情報を一体とみなす場合がある。例えば、あるグループが、類似する事業特性を有しており、同一の所在地域において、同一の経営者の下で事業を行い、情報システムを含む共通の内部統制システムを利用している三つの法人を有しているとする。このような状況において、グループ監査人は、これらの三つの法人を一つの構成単位として取り扱うと判断する場合がある。
A8
また、グループは、例えば、シェアード・サービス・センターの利用を通じて、グループ内の複数の企業又は事業単位に適用される活動又はプロセスを集約化することがある。このような集約化された活動がグループの財務報告プロセスに関連している場合、グループ監査人は、シェアード・サービス・センターを構成単位であると決定する場合がある。
A9
グループ監査人による構成単位の決定に関連する他の考慮事項として、適用される財務報告の枠組みの開示の要求事項に従って経営者がどのように事業セグメントを決定しているかが挙げられる。
(2)構成単位の監査人の関与(第7項及び第8項参照)
A10
構成単位の監査人は、特に構成単位が法人である場合、法令又はその他の理由により、財務諸表の監査を実施することがある。構成単位の監査人が構成単位の財務諸表の監査を実施している、又は完了した際に、グループ監査人は、グループ監査の目的に照らして適切であると判断していることを条件に、構成単位の財務諸表に対して実施された監査の作業をグループ監査に利用できる場合がある。また、構成単位の監査人は、構成単位の財務諸表の監査で実施する作業をグループ監査人の要求も満たすように変更することがある。いずれの場合においても、構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲に関する事項を含め、本報告書の要求事項が適用される。
A11
監査基準報告書220第30項に基づいて、監査責任者は、指揮、監督及び査閲が監査業務の内容及び状況に対応していることを判断することが求められている。A76項では、グループ監査責任者が構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲に対して責任を果たす様々な方法を例示しており、これらの例は、既に完了した構成単位の財務諸表に対する監査の作業の利用をグループ監査人が計画している際にも役立つ場合がある。
A12
発見リスクは、監査リスクを許容可能な低い水準に抑えるために監査人が実施する監査手続の種類、時期及び範囲に関係する(監基報200のA42項参照)。発見リスクは、監査手続の有効性のみならず、監査人による監査手続の適用により影響を受ける。したがって、発見リスクは、適切な計画、適切な資源の割当て、職業的懐疑心の保持、実施する監査の作業の監督及び査閲等によって影響を受ける。
A13
発見リスクは、第14項(1)及びA19項に記載されている合算リスクよりも広範な概念である。グループ監査では、グループ内の構成単位の財務情報に対して個別に監査手続を実施することがあるため、未修正の虚偽表示及び未発見の虚偽表示の合計が、グループ財務諸表全体としての重要性の基準値を上回る可能性が高くなる。そのため、構成単位の手続実施上の重要性は、合算リスクを適切な低い水準に抑えるためにグループ監査人によって設定される。
(3)職業的専門家としての懐疑心(第9項参照)
A14
監査基準報告書220のA34項からA36項は、監査手続の立案及び実施や監査証拠の評価等において、職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮を妨げ得る無意識の監査人の偏向を含む、業務レベルでの職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮に対する障害の例を示している。監査基準報告書220はまた、業務レベルでの職業的専門家としての懐疑心の保持及び発揮に対する障害を緩和するために監査チームがとり得る行動の例を示している。
A15
監査基準報告書315のA223項及び監査基準報告書540「会計上の見積りの監査」のA11項並びに他の監査基準報告書の要求事項及び適用指針は、職業的専門家としての懐疑心を保持することについて扱っており、監査人による職業的専門家としての懐疑心を保持していたことを立証するために監査調書がいかに有用であるかの事例が盛り込まれている。
A16
監査チームの全てのメンバーには、グループ監査全体を通じて職業的専門家としての懐疑心を保持することが求められる。構成単位の監査人を含む監査チームメンバーへの指揮、監督及びその作業の査閲によって、グループ監査人は、監査チームが適切に職業的専門家としての懐疑心を保持していたかどうかを確かめる場合がある。
A17
グループ監査における職業的専門家としての懐疑心を保持することは、以下のような事項によって影響を受けることがある。・異なる所在地の構成単位の監査人は異なる文化的影響を受け、それが当該監査人の受ける偏向の性質に影響を与える場合がある。・複雑なグループ構造は、重要な虚偽表示リスクが生じやすくなる要因となる場合がある。また、極めて複雑な組織構造は、監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」付録1に記載されている不正リスクの要因となる可能性があるため、特定の企業又は事業単位の事業目的及び活動の理解に更なる時間や専門知識が必要となる場合がある。・グループ内における取引(例えば、グループ内の複数の企業及び事業単位又は複数の関連当事者が関与する取引)やキャッシュ・フロー又は移転価格契約の内容及び範囲は、更なる複雑さを生じさせる場合がある。状況によって、そのような事項は不正リスク要因につながることがある。・グループ監査にグループ経営者による厳しい報告期限が課されている場合、割り当てられた作業を完了させようとしている監査チームにプレッシャーを与える可能性がある。このような状況において、監査チームは、経営者のアサーションに対する適切な質問、適切な判断又は実施された監査作業の適切な査閲のために追加の時間を必要とする場合がある。
A18
グループ監査人による職業的専門家としての懐疑心を保持することには、グループ財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある事項に関する構成単位の監査人、構成単位の経営者及びグループ経営者からの矛盾する情報に対してグループ監査人が常に注意を払うことが含まれる。
(1)合算リスク(第14項(1)参照)
A19
合算リスクは、全ての財務諸表監査に存在するが、グループ監査においては、構成単位ごとに細分化された取引種類、勘定残高又は注記事項に対して監査手続が実施される可能性が高いため、合算リスクを理解し対応することが特に重要である。構成単位の監査人によるか監査チームの他のメンバーによるかにかかわらず、一般的に、個別に監査手続が実施される構成単位が増加するほど合算リスクは高まる。
(2)構成単位(第14項(2)参照)
A20
グループ監査人は、監査の作業を実施する構成単位を決定する際に、職業的専門家としての判断を行使する。A7項は、監査手続を計画及び実施する目的において、特定の企業又は事業単位の財務情報を一体とみなす場合があると説明している。ただし、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別と評価に対するグループ監査人の責任は、その財務情報がグループ財務諸表に含まれている全ての企業及び事業単位に及ぶ。
(3)構成単位の監査人(第14項(3)参照)
A21
本報告書において、監査チームにはグループ監査人と構成単位の監査人が含まれている。構成単位の監査人は、ネットワーク・ファーム、ネットワーク・ファームではない監査事務所又はグループ監査人の監査事務所(例えば、グループ監査人の監査事務所内の別の事業所)の者である場合がある。
A22
状況により、グループ監査人は、グループ監査人に集約して取引種類、勘定残高又は注記事項に関するテストを実施することもあれば、自らが構成単位に関連した監査手続を実施することもある。このような状況において、グループ監査人は構成単位の監査人とはみなされない。
A23
第24項では、構成単位の監査人が、グループ監査人から依頼された作業を実施するかどうかを含めて、グループ監査人と協力することの確認を、グループ監査人が構成単位の監査人に要請することを求めている。A58項は、構成単位の監査人がそのような確認を提供できない状況における指針を提供している。
(4)構成単位の経営者(第14項(4)参照)
A24
構成単位の経営者とは、グループの一部である企業又は事業単位の財務情報や他の活動(例えば、シェアード・サービス・センターでの取引の処理)に責任を有する経営者を指している。グループ監査人が特定の企業若しくは事業単位を一つの構成単位とみなす場合又はシェアード・サービス・センターを構成単位と判断する場合(A7項及びA8項参照)、構成単位の経営者は、その構成単位に関連して実施される監査手続の対象となる財務情報又は取引の処理に責任を有する経営者を指す。状況によっては、個別の構成単位の経営者が存在しておらず、グループ経営者が構成単位の財務情報又は他の活動に直接的な責任を有している場合がある。
(5)グループ監査責任者(第14項(10)参照)
A25
本報告書の目的上、共同監査の場合には、各共同監査の監査責任者及びその監査チームが一体として「グループ監査責任者」及び「監査チーム」となる。ただし、本報告書は、共同監査人間の関係や、他の共同監査人の作業に関して各共同監査人が実施する作業について取り扱わない。
(6)グループ財務諸表(第2項及び第14項(11)参照)
A26
グループ財務諸表の作成及び表示に関する要求事項は、適用される財務報告の枠組みに明記されることがあり、グループ財務諸表に含めるべき企業又は事業単位の財務情報の決定に影響を与える場合がある。例えば、ある企業(親会社)が過半数の持分を所有する等によって他の企業(子会社等)を支配している場合、財務報告の枠組みが連結財務諸表の作成を要求していることがある。場合によっては、適用される財務報告の枠組みが、結合財務諸表の表示に関する別個の要求事項を含んでいる、又は認めていることがある。結合財務諸表の表示が認められる状況の例には、親会社を有しないが共通の支配下にある企業又は共通の経営者の下にある企業が含まれる。
A27
本報告書で用いられる「連結プロセス」という用語は、財務報告の枠組みで定義又は記述がなされている「連結」又は「連結財務諸表」と同義であることを意図していない。むしろ「連結プロセス」という用語は、グループ財務諸表を作成するために用いられる、より広範なプロセスを指している。
A28
連結プロセスの詳細は、財務報告プロセスを含むグループの構造や情報システムに依存しており、グループごとに異なる様相を呈している。ただし、連結プロセスには、グループ内取引及び残高の消去、グループ財務諸表に含まれる企業又は事業単位の異なる報告期間の影響などの考慮が含まれる。
3.グループ監査における品質の管理と達成に対する監査責任者の責任(第11項及び第16項参照)
A29
特に監査チームが複数の拠点における多数の構成単位の監査人を含む場合、監査基準報告書220の全ての要求事項にグループ監査責任者が単独で対処することは、不可能又は現実的ではないことがある。監査基準報告書220第15項は、個々の監査業務の品質管理において、監査責任者を支援するために、監査責任者が手続又は業務の立案や実施を監査チームの他のメンバーに割り当てることを認めている。したがって、グループ監査責任者は、監査チームの他のメンバーに手続又は業務を割り当てることができ、また当該メンバーは、更に別のメンバーに手続又は業務を割り当てることができる。監査基準報告書220は、このような状況において、監査責任者が監査業務の品質の管理と達成に対する全体的な責任を依然として負うことを要求している。
A30
監査事務所又はネットワークが定めた、ネットワークの要求事項若しくはネットワーク・サービスを含む方針又は手続は、グループ監査人と構成単位の監査人のコミュニケーションを促進すること、及びグループ監査人によるその構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲を支援することにより、グループ監査責任者に役立つ場合がある(品基報第1号第48項から第52項参照)。
A31
監査基準報告書220のA28項は、品質へのコミットメントを示す組織風土は、監査チームのメンバーが業務を実施するに当たり期待される行動を示すことで更に醸成、強化されると説明している。グループ監査責任者は、第16項(1)の要求事項に対処する際、構成単位の監査人を含む監査チームの他のメンバーに直接伝達するほか、範を示すなどの自らの行動を通じてコミュニケーションを強化することがある。
(1)十分かつ適切な監査証拠を入手できると合理的に見込めるかどうかの判断(第17項及び第18項参照)
A32
グループ監査責任者は、十分かつ適切な監査証拠を入手できると合理的に見込めるかどうかを判断する際に、以下についての理解を得る場合がある。・グループの法的な構造又は組織構造の両方を含むグループ構造・グループにとって重要な活動(当該活動が属する産業及び規制並びに経済的及び政治的な環境を含む。)・受託会社の利用・シェアード・サービス・センターの利用・連結プロセス・グループ監査人は、グループ・ガバナンスに責任を有する者、グループ経営者、構成単位のガバナンスに責任を有する者、構成単位の経営者及び持分法で会計処理されている構成単位を含む構成単位の情報に制約を受けずにアクセスすることができ、かつ、該当する場合、構成単位の財務情報に対して必要な作業を行うことができるか。・十分かつ適切な資源が割り当てられている、又は利用可能になっているか。
A33
監査契約の新規の締結の場合、A32項におけるグループ監査人の理解は、以下から得られることがある。・グループ経営者から提供される情報・グループ経営者とのコミュニケーション・グループ・ガバナンスに責任を有する者とのコミュニケーション・該当する場合、構成単位の経営者又は前任のグループ監査人とのコミュニケーション
A34
既存の監査契約の更新の場合、十分かつ適切な監査証拠の入手可能性は、例えば、以下における重要な変更によって影響を受けることがある。・グループの組織構造(例えば、買収、処分、共同支配企業、組織再編又は構築されたグループの財務報告システムの変更等)・グループにとって重要な、構成単位の活動・グループ・ガバナンスに責任を有する者、グループ経営者又は監査手続が実施されることが予想される構成単位の主要な経営者の構成・グループ又は構成単位の経営者の誠実性と適性についてのグループ監査人の理解・適用される財務報告の枠組み
A35
グループ監査人が所在する国又は地域以外に構成単位が所在する場合、文化や言語及び法令の違いにより、グループ監査における十分かつ適切な監査証拠の入手に更なる複雑さが生じることがある。例えば、構成単位の監査人が法令により、その所在する国又は地域以外へ文書を提供することを制限される場合がある。また、戦争、内乱又は感染症の流行によって、グループ監査人が、関連する構成単位の監査人の監査調書にアクセスすることを制限される場合がある。A180項では、これらの状況に対処するために採り得る方法を挙げている。
A36
グループ監査責任者がグループ監査業務の契約を新規に締結した後に、監査チームの十分かつ適切な監査証拠の入手可能性に影響を与え得る制限が課される場合がある。このような制限には、以下に影響を与えるものが含まれることがある。・構成単位の情報、構成単位の経営者やガバナンスに責任を有する者又は構成単位の監査人(グループ監査人が求める関連する監査調書を含む。)へのグループ監査人のアクセス(第20項及び第21項参照)・構成単位の財務情報に対して実施する作業A45項及びA46項は、このような制限がグループ財務諸表の監査報告書に与える可能性のある影響について説明している。
(2)監査業務の契約条件の合意(第19項参照)
A37
監査基準報告書210第7項及び第8項(4)は、経営者又は適切な場合にはガバナンスに責任を有する者と監査業務の契約条件について合意することを、監査人に要求している。契約条件には適用される財務報告の枠組みが記載され、さらに、以下のような事項を含む場合がある。・グループ監査人と構成単位の監査人との間のコミュニケーションは、法令に基づき可能な範囲で、制約されないこと。・構成単位の監査人と構成単位の経営者又は構成単位のガバナンスに責任を有する者との間の重要なコミュニケーションに関する事項は、内部統制の重要な不備に関するコミュニケーションを含め、グループ監査人に対して伝達されること。・グループ監査に関連する可能性のある、財務報告事項に関係する規制当局と企業又は事業単位との間で行われるコミュニケーションが、グループ監査人に伝達されること。・グループ監査人が構成単位において作業を実施すること、又は構成単位の監査人に作業を実施するよう要請することが許容されること。
(3)情報又は人へのアクセスに関する制限(第20項及び第21項参照)
A38
情報又は人へのアクセスに関する制限が存在したとしても、グループ監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手するという要求事項がなくなるわけではない。
A39
構成単位の経営者により課される制限、法令又はその他の状況(例えば、戦争、内乱又は感染症の流行)等の様々な理由により、情報又は人へのアクセスが制限されることがある。A180項は、どのようにして構成単位の監査人の監査調書へのアクセスに関する制限をグループ監査人が克服できるかについて記載している。
A40
状況によって、グループ監査人は、例えば以下により、情報又は人へのアクセスに関する制限を克服できる場合がある。・構成単位の経営者又は構成単位のガバナンスに責任を有する者へのアクセスが制限されている場合、グループ経営者若しくはグループ・ガバナンスに責任を有する者に対して制限の解除を支援するよう要請すること、又はグループ経営者若しくはグループ・ガバナンスに責任を有する者に対して直接情報の提供を要請すること。・持分法適用企業に対してグループが非支配持分を有している場合、グループによる当該企業の財務情報へのアクセスに関する規定(例えば、共同支配企業の契約又は他の投資契約の条件)の有無を判断し、当該権利の行使をグループ経営者に要請すること。・持分法適用企業に対してグループが非支配持分を有しており、グループの代理人が当該企業の経営会議等のメンバー又はガバナンスに責任を有する者である場合、これらの役割に就いているメンバーが入手可能な財務及びその他の情報を提供できるか照会すること。
A41
持分法適用企業に対してグループが非支配持分を有しており、グループ監査人による当該企業の情報又は人へのアクセスが制限されている場合、グループ監査人は、企業の財務情報に関する監査証拠として利用される情報として、例えば、以下の情報を入手できることがある。・グループ財務諸表を作成するためにグループ経営者が入手した当該企業の財務情報・当該企業の監査済み財務諸表、開示文書又は資本性金融商品の公表価格等の公開情報監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できるか否かは、特にグループ財務諸表における重要な虚偽表示リスクの評価からの、また、入手した監査証拠の裏付けとなる、又は役立つ可能性がある他の情報源を考慮した上での、職業的専門家としての判断に関する事項である(監基報330第6項(2)参照)。
A42
持分法適用企業に対してグループが非支配持分を有しており、当該企業の情報又は人へのアクセスが制限されている場合、グループ監査人は、そのような制限が持分法の適用の適切性に関するグループ経営者のアサーションと矛盾していないかどうかを検討することがある。
A43
情報又は人へのアクセスに関する制限によって十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合、グループ監査人は、以下を実施することがある。・当該制限についてグループ監査人の監査事務所に伝達すること。これにより、グループ監査人が適切な行動をとれるよう判断することを監査事務所が支援できるようになる。例えば、グループ監査人の監査事務所が、当該制限についてグループ経営者とコミュニケーションを行う場合がある。また、グループ経営者が規制当局とコミュニケーションを行うように促す場合もある。これは、主要な経済圏における戦争、内乱又は感染症の流行のために、当該制限がその国又は地域の監査又はグループ監査人と同じ監査事務所による複数の監査に影響を与える場合に有益なことがある。・法令による要求事項に基づいて、規制当局等と当該制限についてコミュニケーションを行うこと。
A44
アクセスに関する制限は、グループ監査に対して他の影響を与えることがある。例えば、グループ監査人は、グループ経営者によって制限が課された場合、グループ監査人の質問に対するグループ経営者の回答の信頼性やグループ経営者の誠実性に疑問を生じさせるかどうかについて、再検討しなければならない場合がある。
(4)情報又は人へのアクセスに関する制限がグループ財務諸表の監査報告書に与える影響(第20項及び第21項参照)
A45
監査基準報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」には、グループ監査人により十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合への対応に関する要求事項と指針が記載されている。本報告書の付録1には、持分法で会計処理される構成単位に関してグループ監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったことに基づく、グループ財務諸表に対する限定付適正意見が記載された監査報告書が例示されている。
(5)グループ監査責任者が監査契約を辞退する、又は解除することを禁止する法令(第20項及び第21項参照)
A46
グループ監査責任者が監査契約を辞退する、又は解除することが、法令により禁止されている場合がある。例えば、幾つかの国又は地域では、監査人が特定の期間にわたって任命され、その期間の終了まで契約の解除が禁止されている。また、公的部門においては、委任の性質及び公共の利益の考慮により、監査人が契約を辞退する、又は解除する選択肢をとれないことがある。このような状況においても、本報告書の要求事項は依然としてグループ監査に適用され、グループ監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合は、監査基準報告書705に従って対応する。
(1)グループ監査の計画及び実施の連続的かつ反復的性質(第22項参照)
A47
監査基準報告書300のA2項で説明されているとおり、監査計画の策定は、前年度の監査の終了直後又は前年度の監査の最終段階から始まり、当年度の監査の終了まで継続する連続的かつ反復的なプロセスである。例えば、グループ監査人は、予期しない出来事が生じた場合、状況が変化した場合又はリスク評価やリスク対応手続の実施結果が想定した結果と異なった場合には、変更されたリスク評価の結果に基づき、グループ監査の基本的な方針及び詳細な監査計画並びにこれらに基づき計画したリスク対応手続の種類、時期及び範囲を修正することが必要となる場合がある。グループ監査人は、構成単位の監査人の関与の内容、時期及び範囲も修正することや、監査の作業を実施すると決定した構成単位を修正することがある。監査基準報告書300第9項は、監査人が、監査期間中必要に応じて、監査の基本的な方針及び詳細な監査計画を見直し修正することを要求している。
(2)グループ監査の基本的な方針の策定及び詳細な監査計画の作成(第22項参照)
A48
初年度監査において、グループ監査人は、グループ経営者、グループ・ガバナンスに責任を有する者及び該当する場合には、構成単位の経営者又は前任監査人とのコミュニケーションから入手した情報に基づき、グループ及びグループ環境、適用される財務報告の枠組み並びに企業の内部統制システムについての予備的な理解を有している場合がある。継続監査において、グループ監査人の予備的な理解は、過年度の監査を通じて得られる場合がある。この予備的な理解を行うことは、グループ監査人が重要な取引種類、勘定残高又は注記事項を暫定的に識別するのに役立つことがある。
A49
グループ監査人は、監査契約の新規の締結及び更新の過程で入手した情報を、例えば、グループ監査の実施に必要な資源に関するグループ監査の基本的な方針の策定及び詳細な監査計画の作成に利用する場合がある。
A50
グループ監査の基本的な方針の策定及び詳細な監査計画の作成のプロセス並びにグループ財務諸表における重要な取引種類、勘定残高又は注記事項の暫定的な識別は、以下のような事項に関するグループ監査人の予備的な決定に役立つ場合がある。・監査の作業を集約的に実施するか、構成単位で実施するか、又はそれらの組合せで実施するか。・構成単位の財務情報に対して実施する監査の作業の種類、時期及び範囲(例えば、リスク評価手続、リスク対応手続又はそれらの組合せに関する立案及び実施)
(3)監査の作業を実施する構成単位(第22項(1)参照)
A51
監査の作業を実施する構成単位の決定は、職業的専門家としての判断に係る事項である。グループ監査人の決定に影響を与える事項には、例えば、以下が含まれる。・構成単位に関連してグループ財務諸表におけるアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクを生じさせる可能性のある、例えば、以下のような事象や状況の内容-新しく設立された、又は買収された企業又は事業単位-重要な変化が生じた企業又は事業単位-関連当事者との重要な取引-通常の取引過程から外れた重要な取引-監査基準報告書315第13項(2)に従ってグループ・レベルで実施した分析的手続において発見された異常な変動・グループ財務諸表における重要な取引種類、勘定残高又は注記事項の構成単位にわたる分散の程度。グループ財務諸表に対する企業又は事業単位における資産、負債及び取引の規模並びに内容についても考慮する。・グループ財務諸表における全ての重要な取引種類、勘定残高又は注記事項に関する十分かつ適切な監査証拠が、識別された構成単位の財務情報について計画された監査の作業から入手されると見込めるかどうか。・過年度の監査において構成単位で発見された虚偽表示又は内部統制の不備の内容及び範囲・グループにわたり共通化された内部統制の内容及び範囲、並びにグループにおける財務報告に関連する活動の集約化の程度及びその方法《(4)資源》(第22項(2)参照)
A52
グループ監査の実施に必要な資源並びに構成単位の監査人の関与の内容、時期及び範囲に関するグループ監査人の決定に影響を与える事項は、職業的専門家としての判断に係る事項であり、例えば、以下を含む場合がある。・グループ及び監査の作業が実施される構成単位の理解、並びに作業を集約的に実施するか、構成単位で実施するか、又はそれらの組合せで実施するか。・監査チームの知識及び経験。例えば、構成単位の監査人は、構成単位が事業活動を行っている現地の業界、現地の法令、ビジネス慣行、言語及び文化についてグループ監査人よりも経験が豊富で、深い知識を有していることがある。また、複雑な事項への専門家の関与が必要となることがある。・重要な虚偽表示リスクの暫定的な識別・特定の監査領域に配分する資源の量又は配置。例えば、構成単位が複数の拠点にどの程度分散しているかによって、特定の拠点に構成単位の監査人を関与させる必要性が生じることがある。・アクセスに関する取決め。例えば、特定の国又は地域の構成単位に対するグループ監査人からのアクセスが制限されている場合、構成単位の監査人の関与が必要となることがある。・業務の複雑性や専門性を含む、構成単位の活動の内容・構築された情報システムを含むグループの内部統制システム及びその集約化の程度。例えば、内部統制システムが分散化されている場合、構成単位の監査人が関与する可能性が高くなる。・構成単位の監査人に関する過去の経験
A53
構成単位の監査人は、監査の各段階に関与する場合がある。例えば、構成単位の監査人は、以下を立案又は実施することがある。・リスク評価手続・評価した重要な虚偽表示リスクに対応する手続
A54
構成単位の監査人の関与の内容、時期及び範囲は、グループ監査業務の事実及び状況によって異なる。構成単位の監査人が監査の全ての段階に関与することも多いが、グループ監査人は、特定の段階のみに構成単位の監査人を関与させることを選択する場合がある。グループ監査人が構成単位の監査人のリスク評価手続への関与を意図しない場合でも、グループ監査人は、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに影響を及ぼす可能性のある、構成単位の事業又は内部統制システムの重要な変更があるかどうかについて、構成単位の監査人と討議することがある。
A55
監査基準報告書300第4項は、監査責任者と監査チームの主要メンバーが、監査計画の策定に参画することを要求している。構成単位の監査人が関与する場合、構成単位の監査人のうち一人又は複数のメンバーは監査チームの主要メンバーとなり、したがってグループ監査計画に参画することがある。十分な監査経験や洞察力を有する構成単位の監査人が監査計画の策定に参画することによって、監査計画のプロセスの有効性と効率性を高めることができる。グループ監査責任者は、職業的専門家としての判断を行使し、どの構成単位の監査人を監査計画に参画させるかを決定する。この決定は、構成単位の監査人に期待されるリスク評価又はリスク対応手続への関与の内容、時期及び範囲によって影響を受ける場合がある。
A56
品質管理基準報告書第1号のA74項に記載されているとおり、業務の内容及び状況を考慮すると、業務に関して提示及び請求する報酬額が低廉な場合もあり、監査事務所が職業的専門家としての基準及び適用される法令等に従って業務を実施できないことがある。構成単位の監査人への配分を含む報酬の水準及び必要とされる資源との関係の程度は、グループ監査業務において特に考慮すべき事項である場合がある。例えば、グループ監査においては、監査事務所の財務上及び業務上の優先事項が、構成単位の監査人の関与を含めた必要とする資源や、監査の作業を実施する構成単位の決定に制約を加えることがある。このような状況でも、これらの制約は、個々の監査業務での品質の達成に対するグループ監査責任者の責任、又はグループ財務諸表の監査意見の基礎となる十分かつ適切な監査証拠の入手に関するグループ監査人への要求事項を軽減するものではない。
①構成単位の監査人の作業への十分かつ適切な関与(第23項及び第24項参照)
A57
グループ監査人が構成単位の監査人の作業に十分かつ適切に関与することができるかどうかを評価するに際し、グループ監査人は、構成単位の監査人に、グループ監査人への監査調書の共有を含む、グループ監査人とのコミュニケーションに関して制約が課されていないかについて理解する場合がある。また、グループ監査人は、異なる国又は地域の構成単位に関する監査証拠が異なる言語で記載されているかどうか、及びグループ監査人が利用するために翻訳が必要かどうかについて理解する場合がある。
A58
構成単位の監査人がグループ監査人に協力できない場合、グループ監査人は、以下を実施する場合がある。・構成単位の監査人にその根拠を提示するよう要請すること。・実施を依頼する作業の内容の調整を含め、当該事項に対処するための適切な措置を講じること。なお、第27項に従って、グループ監査人は構成単位の監査人を関与させずに、構成単位において実施する作業に関する十分かつ適切な監査証拠を入手することが必要となる場合がある。
②独立性を含む職業倫理に関する規定(第25項参照)
A59
グループ監査業務のために構成単位において作業を実施する場合、構成単位の監査人は、グループ監査業務に適用される独立性を含む職業倫理に関する規定に従う。これらの規定は、構成単位の監査人の国又は地域における法令又はその他の理由により、グループの一部である企業又は事業単位の財務諸表に対して監査を実施する際に構成単位の監査人に適用される規定とは異なっているか、追加されている場合がある。
A60
構成単位の監査人に職業倫理に関する規定を認識させるに当たり、グループ監査人は、グループ監査業務に関連する職業倫理に関する規定について、構成単位の監査人に対する追加の情報又は研修が必要かどうかを検討する場合がある。
A60-2JP
監査基準報告書610「内部監査人の作業の利用」のA4-1項のとおり、我が国においては、法令により、監査人がその職務を行うに当たり、被監査会社の使用人等を補助者として使用することが禁じられていることから、監査人が監査手続を実施するに当たり、内部監査人が監査人を直接補助する場合を取り扱わないこととしている。このため、第25項(2)の確認に当たり、構成単位における監査の作業においても内部監査人が構成単位の監査人を直接補助することがないようにするため、海外の構成単位の監査人とコミュニケーションを行うことが必要になる場合がある。
③業務運営に関する資源(第26項参照)
A61
監査基準報告書220第25項は、監査責任者に対し、業務を実施するための十分かつ適切な業務運営に関する資源が、監査チームに適時に割り当てられている、又は利用可能であるかを判断することを要求している。構成単位の監査人が実施する作業に関して十分かつ適切な資源が提供されていない場合、グループ監査責任者は、当該事項について構成単位の監査人、グループ経営者又はグループ監査人の監査事務所と討議し、構成単位の監査人又はグループ監査人の監査事務所に対して、十分かつ適切な資源を利用可能にするよう要請することがある。
④構成単位の監査人の適性及び能力
A62
監査基準報告書220のA71項は、監査チームが適性及び適切な能力を有しているかを判断する際に、監査責任者が考慮する場合があるとされる事項に関して指針を提供している。この判断は、特にグループ監査の監査チームに構成単位の監査人が含まれる場合に重要である。監査基準報告書220のA24項は、監査事務所又は監査責任者が、他の監査事務所の構成単位の監査人が監査業務を実施するための適性及び適切な能力を有しているかを理解する際に、監査事務所の方針又は手続において、専門要員に適用するものとは異なる措置を講じることが要求される場合があることを示している。
A63
構成単位の監査人が適性及び適切な能力を有しているかどうかの判断は、職業的専門家としての判断に係る事項であり、グループ監査業務の内容及び状況の影響を受ける。この判断は、グループ監査責任者による構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲に影響を与える。
A64
構成単位の監査人が、割り当てられた監査手続を構成単位において実施するための適性及び適切な能力を有しているかどうかを判断するに際し、グループ監査責任者は、以下のような事項を考慮する場合がある。・構成単位の監査人に関する過去の経験又は知識・構成単位の監査人の専門的な技能(業種特有の知識等)・グループ監査人と構成単位の監査人が共通の品質管理システムの対象となる程度。これには、例えば、グループ監査人と構成単位の監査人とが以下の状況であるかどうかを含む。-作業を実施するために共通の資源(例えば、監査手法又はITアプリケーション)を利用している。-業務の実施に影響を与える共通の方針や手続(例えば、業務の指揮、監督及び作業の査閲又は専門的な見解の問合せ)を共有している。-共通のモニタリング活動の対象となっている。-共通のリーダーシップや共通の組織風土を含む、その他の共通性を有している。・-以下の一貫性又は類似性法令又は法制度-言語及び文化-教育及び研修-職業的専門家に対するモニタリング、規律及び外部からの品質保証に係る制度-職業的専門家団体及び職業的専門家としての基準・構成単位の経営者、ガバナンスに責任を有する者及びその他の主要な担当者(内部監査人等)とのやりとりで得た構成単位の監査人についての情報
A65
構成単位の監査人の適性及び能力を判断する手続には、例えば、以下が含まれる。・-グループ監査人の監査事務所がグループ監査人に伝達した、以下を含む情報を評価すること。グループ監査人と構成単位の監査人が同じ監査事務所である場合、モニタリング及び改善に関する監査事務所の継続的なコミュニケーション(品基報第1号第47項参照)-ネットワークがネットワーク・ファームを対象として実施するモニタリング活動の全体的な結果に関するネットワークからの情報(品基報第1号第51項(2)参照)-構成単位の監査人が属する職業的専門家団体、構成単位の監査人が登録や届出等を行う当局又は他の第三者から入手した情報・評価した重要な虚偽表示リスクについて構成単位の監査人と討議すること。・第25項に記載する事項についての理解を書面又は電磁的記録で確認するよう構成単位の監査人に依頼すること。・構成単位の監査人と直接働いたことのあるグループ監査責任者の監査事務所内の者と、構成単位の監査人の適性及び能力について討議すること。・公表された外部検査報告書を入手すること。
A66
グループ監査責任者の監査事務所と構成単位の監査人が、同一ネットワークのメンバーであり、共通のネットワークの要求事項の対象となる、又は共通のネットワークのサービスを利用する場合がある(品基報第1号のA19項及びA175項参照)。構成単位の監査人がグループ監査業務を支援するための作業を実施する適性及び適切な能力を有しているかどうかを判断するに当たり、グループ監査責任者は、そのようなネットワークの要求事項(例えば、専門的な研修、採用又は監査手法や関連するツールの利用に関する要求事項)に依拠することができる場合がある。品質管理基準報告書第1号第48項及び第49項に従って、監査事務所は、品質管理システムをデザイン、適用及び運用する責任を負い、また、品質管理システムにおいて適切に利用するために、ネットワークの要求事項又はネットワーク・サービスを適合させる、又は補完することが必要となる場合がある。
⑤専門家の業務の利用
A67
監査基準報告書220第26項は、監査責任者に対し、監査チームのメンバー及び監査人が利用する外部の専門家が、全体として監査業務を実施するための十分な時間を含む、適性及び適切な能力を有しているかを判断するよう要求している。構成単位の監査人が専門家を利用する場合、グループ監査責任者は、構成単位の監査人から情報を入手することが必要となることがある。例えば、グループ監査人は、構成単位の監査人による当該専門家の適性及び能力の評価について、構成単位の監査人と討議する場合がある。
⑥自動化されたツール及び技法
A68
適性及び適切な能力を監査チームが有しているかどうかを判断する際に、グループ監査責任者は、自動化されたツール及び技法の利用に関する構成単位の監査人の専門知識等を考慮する場合がある。例えば、監査基準報告書220のA65項に記載されているとおり、監査手続を実施する際にグループ監査人が構成単位の監査人に特定の自動化されたツール及び技法の利用を要求する場合、当該ツール及び技法の利用に当たりグループ監査人の指示に従う必要があることを、構成単位の監査人とのコミュニケーションにおいて示す場合がある。
⑦構成単位の監査人に関するグループ監査人の理解(第27項参照)
A69
監査基準報告書220第17項は、監査責任者に対し、監査業務の内容と状況を考慮して、適用される我が国における職業倫理に関する規定及び監査事務所の関連する方針又は手続を、監査チームの他のメンバーに認識させることに対する責任を負うことを要求している。これには、独立性を含む我が国における職業倫理に関する規定への違反を引き起こす状況に対処するための方針又は手続及び監査チームメンバーが当該違反に気付いた場合の責任が含まれている。構成単位の監査人による独立性に関する規定への違反及びそのような状況においてグループ監査人が関連する職業倫理に関する規定に従って講じる措置についても、監査事務所の方針又は手続が対処している場合がある。さらに、関連する職業倫理に関する規定又は法令は、独立性に関する規定への違反が識別された状況における、ガバナンスに責任を有する者との特定のコミュニケーションを定めている場合がある(監基報260のA31項参照)。
A70
構成単位の監査人による、グループ監査業務に適用される独立性を含む職業倫理に関する規定への違反があり、当該違反が関連する職業倫理に関する規定に従って十分に対処されていない場合、グループ監査人はその構成単位の監査人の作業を利用できない。
A71
重大な懸念とは、グループ監査人の職業的専門家としての判断において克服できない懸念をいう。グループ監査責任者は、構成単位の監査人の職業的専門家としての能力(例えば、業界特有の知識の不足)や、構成単位の監査人が、監査人が十分に監督される環境下で業務を実施しているわけではないという事実に関する重大ではない懸念については、グループ監査人が構成単位の監査人の作業への関与を増やしたり、構成単位の財務情報についてリスク対応手続を直接実施したりすることによって、克服できる場合がある。
⑧業務の実施(第28項参照)
A72
監査基準報告書220第30項は、指揮、監督及び査閲の内容、時期及び範囲が、監査事務所の方針又は手続、職業的専門家としての基準並びに適用される法令等に従って計画され、実施されているかどうか、また、監査業務の内容及び状況並びに監査チームに割り当てられた、又は監査チームが利用可能な業務運営に関する資源に対応しているかどうかについて判断するよう、監査責任者に対して要求している。グループ監査において、指揮、監督及び査閲のアプローチには、一般的に、グループ監査人の監査事務所の方針又は手続及びグループ監査業務特有の対応への対処を組み合わせたものが含まれる。
A73
グループ監査において、特に複数の拠点に所在することがある多数の構成単位の監査人が監査チームに含まれる場合、グループ監査責任者は、構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲に対する自らの責任を果たすため、手続又は業務に関する立案又は実施を監査チームの他のメンバーに割り当てることがある(第11項参照)。
A74
構成単位の監査人がグループ監査人の監査事務所以外の監査事務所の者である場合、監査チームのメンバーへの指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲に関連して、監査事務所の方針や手続が相違することや異なる措置が必要となることがある。特に、監査事務所の方針や手続において、例えば、構成単位の監査人に対するグループ監査人の指示書の使用を含む、構成単位の監査人とのコミュニケーションの方法、内容及び時期に関して、グループ監査人の監査事務所又はグループ監査責任者に、グループ監査人の監査事務所又はネットワーク内の監査チームのメンバーに適用されるものとは異なる措置を講じることを要求している場合がある。監査基準報告書220のA24項及びA25項は、このような状況下で講じる必要がある措置の例を示している。
A75
構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲は、業務の内容及び状況に基づいて調整されることがある。例えば、以下の要因により調整されることがある。・評価した重要な虚偽表示リスク。例えば、グループ監査人が特別な検討を必要とするリスクを含む構成単位を識別した場合、構成単位の監査人への指揮及び監督の範囲の拡大と、構成単位の監査人の監査調書のより詳細な査閲が適切となることがある。・監査の作業を実施する構成単位の監査人の適性及び能力。例えば、グループ監査人に構成単位の監査人との業務経験がない場合、グループ監査人は、作業の実施の過程で、より詳細な指示についてのコミュニケーションを行ったり、構成単位の監査人との討議その他のコミュニケーションの頻度を増やしたり、又は構成単位の監査人を監督するために、より経験豊富な者を割り当てたりすることがある。・監査チームメンバーの所在地。サービス・デリバリー・センターを利用する場合を含め、複数の拠点に監査チームメンバーが分散している程度を含む。・構成単位の監査人の監査調書へのアクセス。例えば、法令により構成単位の監査人の監査調書を構成単位の監査人の管轄区域外に持ち出すことができない場合、グループ監査人は、法令で禁止されていない限り、当該監査調書を構成単位の監査人の所在地で、又はテクノロジーの利用を通じて遠隔で査閲できることがある(A179項及びA180項参照)。
A76
グループ監査責任者が構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲に対する責任を果たす方法は、例えば、以下のとおり様々である。・本報告書で要求されるコミュニケーションを含む、グループ監査の全過程を通じての構成単位の監査人とのコミュニケーション・識別し評価されたリスク、論点、発見事項及び結論を討議するための構成単位の監査人との会議又は電話・法令により許容されている場合、構成単位の監査人の監査調書を直接に、又は遠隔で査閲すること。・構成単位の監査人と構成単位の経営者との監査の最終段階やその他の重要な協議に参加すること。
A77
監査基準報告書220第31項、A92項及びA93項を適用するに当たり、グループ監査責任者には、監査業務の適切な時点で監査調書を査閲することが要求されている。これには、グループ監査に関連する以下の監査調書が含まれる。・重要な事項・監査の実施中に識別された、専門性が高く、判断に困難が伴う事項や見解が定まっていない事項を含む重要な判断並びに到達した結論・監査責任者が職業的専門家として監査責任者の責任に関連すると判断したその他の事項関連する構成単位の監査人の監査調書の査閲を含め、グループ監査責任者による監査調書の査閲は、グループ監査期間を通じて行われることが多い(A148項参照)。
⑨構成単位の監査人とのコミュニケーション(第29項参照)
A78
実施する作業の種類、時期及び範囲並びにグループ監査人とのコミュニケーションが想定される事項に関する構成単位の監査人への明確な指揮とともに、グループ監査人と構成単位の監査人との間で、それぞれの責任について明確かつ適時にコミュニケーションを行うことは、有効な双方向のコミュニケーションの基礎を確立するのに役立つ。グループ監査人と構成単位の監査人との間での有効な双方向のコミュニケーションは、構成単位の監査人に対する期待の設定に有用であり、グループ監査人による指揮、監督及びその作業の査閲を促進する。また、そのようなコミュニケーションは、グループ監査目的で実施した作業において構成単位の監査人が職業的専門家としての懐疑心を保持する必要性を、グループ監査責任者が強調する機会を提供する。
A79
有効な双方向のコミュニケーションに資すると考えられる他の要因には、以下のものが含まれる。・構成単位の監査人への指示書の分かりやすさ。特に、構成単位の監査人が他の監査事務所の者である場合、グループ監査人の監査事務所の方針又は手続に精通していないことがある。・構成単位の監査人の構成単位に関する知識及び理解に基づき、実施を依頼された監査作業について構成単位の監査人が討議を求める場合があることへの相互理解・コミュニケーションに関する問題とその解決策についての相互理解・コミュニケーションの方法。例えば、適時な注意喚起が必要な事項については、電子メールのやり取りよりも会議の方が、より適切に討議できる場合がある。・特定の事項に関するコミュニケーションに管理責任を有する、グループ監査人及び構成単位の監査人の担当者についての相互理解・グループ監査人がコミュニケーションを行った事項に関して、構成単位の監査人が対応を実施して報告を行うプロセス
A80
グループ監査人と構成単位の監査人とのコミュニケーションは、グループ監査業務の事実及び状況によって異なる。そのような事実及び状況には、構成単位の監査人の関与の内容及び範囲、並びにグループ監査人と構成単位の監査人が共通の品質管理システム又は共通のネットワークの要求事項若しくはネットワーク・サービスの対象となる程度が含まれる。
⑩コミュニケーションの方法
A81
グループ監査人と構成単位の監査人とのコミュニケーションの方法は、構成単位の監査人が実施を依頼された監査作業の種類や、グループ監査で使用される監査ツールに組み込まれているコミュニケーション機能の程度等の要因によって異なる場合がある。
A82
コミュニケーションの方法は、以下のような要因によっても影響を受ける場合がある。・当該事項の重要性、複雑性及び緊急性・当該事項について、グループ経営者及びグループ・ガバナンスに責任を有する者とのコミュニケーションが行われている、又は行われることが想定されているかどうか。
A83
グループ監査人と構成単位の監査人とのコミュニケーションは、必ずしも書面又は電磁的記録によるとは限らない。ただし、グループ監査人が特定の事項に特に注意を払うこと又は相互に理解を促進することを望んでいる場合、実施される作業に関する一連の指示書等の書面又は電磁的記録によるコミュニケーションにより、グループ監査人と構成単位の監査人との口頭でのコミュニケーションが補完される場合がある。また、グループ監査人は、重要な事項について討議する、又は構成単位の監査人の監査調書の関連する部分を査閲するために、構成単位の監査人との面談を実施する場合がある。
A84
第45項は、グループ監査人に、構成単位の監査人に対して、グループ監査に関する結論に関連する事項についてコミュニケーションを行うよう要請することを要求している。A146項で説明されているとおり、構成単位の監査人による成果物の形式及び内容は、構成単位の監査人が実施するよう要請された監査作業の種類及び範囲によって影響を受ける。
A85
コミュニケーションの方法にかかわらず、本報告書及びその他の監査基準報告書における文書化に関する要求事項が適用される。
⑪コミュニケーションの実施時期
A86
コミュニケーションの適切な実施時期は、業務の状況によって様々である。関連する状況には、構成単位の監査人が実施する作業の種類、時期及び範囲並びに構成単位の監査人が実施することが望まれる対応が含まれる場合がある。例えば、監査計画に関する事項についてのコミュニケーションは、監査業務の初期の段階で行われることが多く、初年度グループ監査においては契約条件の合意の一環として行われることがある。
⑫違法行為(第25項及び第29項参照)
A87
監査基準報告書250「財務諸表監査における法令の検討」を適用するに当たり、グループ監査責任者が、違法行為又はその疑いに気付くことがある。このような状況において、グループ監査責任者は、職業倫理に関する規定(例えば、倫理規則R360.17項及びR360.18項)又は法令に基づいて、構成単位の監査人と当該事項についてコミュニケーションを行う義務を負うことがある。グループ監査責任者が違法行為又はその疑いについてコミュニケーションを行う義務は、グループ監査目的での監査の作業は行われないが法令又は別の理由により監査が要求される企業又は事業単位の財務諸表の監査人に及ぶ場合がある。
6.グループ及びグループ環境、適用される財務報告の枠組み並びにグループの内部統制システムの理解(第30項参照)
A88
監査基準報告書315には、企業及び企業環境、適用される財務報告の枠組み並びに企業の内部統制システムについて理解することに対する監査人の責任に関する要求事項及び実務上の指針が記載されている(監基報315第18項から第26項及びA45項からA171項参照)。本報告書の付録2は、グループ環境における内部統制システムを理解するのに役立つ内部統制に関連する事項を例示しており、監査基準報告書315がグループ財務諸表の監査にどのように適用されるかについて記載している。
A89
グループ及びグループ環境、適用される財務報告の枠組み並びにグループの内部統制システムについての理解は、以下の者とのコミュニケーションを通じて得られる場合がある。・グループ経営者、構成単位の経営者又は企業内のその他の適切な者(内部監査機能が存在する場合における内部監査に従事する者や、グループの内部統制システム、会計方針及び実務並びに連結プロセスの知識を有する者を含む。)・構成単位の監査人・法令又はその他の理由により、グループの一部である企業又は事業単位の財務諸表について監査を実施する監査人
A90
グループについての理解、重要な虚偽表示リスクの識別並びに固有リスク及び統制リスクの評価は、望ましい監査技法又は手法に応じて様々な方法で実施され、また様々な方法で表現されることがある。したがって、構成単位の監査人がリスク評価手続の立案及び実施に関与する場合、グループ監査人は、適切なアプローチについて構成単位の監査人とコミュニケーションを行う、又は指示することが必要となる場合がある。
(1)監査チーム内の討議(第30項参照)
A91
監査基準報告書315第16項を適用するに当たり、グループ監査責任者と監査チームの主要メンバーは、適用される財務報告の枠組みの適用状況及びグループ財務諸表の重要な虚偽表示の生じやすさについて討議しなければならない。討議に含める監査チームのメンバー及び討議すべき項目に関するグループ監査責任者の判断は、重要な虚偽表示リスクに関する当初の認識や構成単位の監査人を関与させるかについての暫定的な想定等の事項に影響される。
A92
A91項の討議は、以下を実施する機会になる。・どの構成単位の活動が集約化されているかを含め、構成単位とその環境に関する知識を共有すること。・構成単位又はグループの事業上のリスクについて、また、固有リスク要因が取引種類、勘定残高及び注記事項における虚偽表示の生じやすさにどのように影響する可能性があるのかについて情報交換すること。・グループ財務諸表のどこにどのように、不正又は誤謬による重要な虚偽表示が生じる可能性があるのかについて意見交換すること。監査基準報告書240第14項は、監査チーム内の討議では、不正がどのように発生するのかも含め、不正による重要な虚偽表示がどこにどのように行われる可能性があるのかについて、特に重点を置くよう要求している。・利益調整を目的とする不正な財務報告につながる可能性のある、グループ経営者又は構成単位の経営者が採用する方針を識別すること。・グループ経営者、構成単位の経営者又はその他の者が不正を実行する「動機・プレッシャー」、「機会」、「姿勢・正当化」に関するグループの外部及び内部要因を検討すること。・グループ経営者又は構成単位の経営者が内部統制を無効化するリスクについて検討すること。・識別された不正又は不正の存在を示唆する情報について討議すること。・職業的専門家としての懐疑心を保持することに対する障害が存在する可能性のある構成単位について、重要な虚偽表示リスクを識別すること。・グループ財務諸表に含まれる構成単位の財務情報の作成に当たって、統一された会計方針が使用されているかどうかを検討すること。構成単位で統一された会計方針が使用されていない場合で、適用される財務報告の枠組みにおいて会計方針の相違を修正することが要求されている場合は、会計方針の相違がどのように識別され修正されているのかを検討すること。・他の構成単位の一部又は全部により広く当てはまる可能性があれば、その構成単位の財務情報における重要な虚偽表示リスクに関する情報を共有すること。・各国における違法行為(例えば、賄賂の支払や不適切な移転価格の処理)を示唆する情報を共有すること。・グループ経営者、構成単位の経営者又は監査チームによって識別された、グループの継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況について討議すること。・グループ経営者又は構成単位の経営者が識別した関連当事者との関係又は取引及び監査チームが把握しているその他の関連当事者について討議すること。
(2)グループ及びグループ環境(第30項(1)参照)
A93
グループの組織構造及びビジネスモデルを理解することにより、グループ監査人は、以下の事項を理解できることがある。・グループの組織構造の複雑性。グループは、複数の拠点を含む、幾つかの子会社、部門又はその他の事業単位を有することがあり、単一の企業よりも複雑な場合がある。また、グループの法的な組織構造は、例えば税務目的で、事業上の組織構造とは異なっている場合がある。複雑な組織構造は、重要な虚偽表示を生じさせる要因となることが多い。これには、のれん、共同支配企業又は特別目的事業体が適切に会計処理されているかどうか、及び適切に注記されているかどうかが含まれる。・グループの事業の所在地。多数の所在地で事業を行っているグループでは、重要な虚偽表示が生じやすくなる場合がある。例えば、所在地が異なれば、言語、文化及び商慣行が異なることがある。・グループのIT環境の構造と複雑性。複雑なIT環境は、重要な虚偽表示を生じさせる要因となることが多い。例えば、最近実行された買収や合併により、統合されていない複数のITシステムを保有することで、グループのIT環境が複雑となる場合がある。このような場合、ITアプリケーション、データベース及びその他のIT環境に係る脆弱性を含む、IT環境のセキュリティの複雑性を理解することが特に重要な場合がある。また、グループは、IT環境の一部について外部のサービス・プロバイダーを利用する場合もある。・規制環境を含む規制上の要因。法令の相違は、重要な虚偽表示を生じさせる要因となる。グループには、様々な国又は地域において高度に複雑な法令の対象となる業務が存在する場合や、異なる種類の法令の対象となる様々な事業を展開するグループ内の企業又は事業単位が存在する場合がある。・所有構造及び所有者と関連当事者を含む他の者又は企業との関係。複数の国又は地域において活動しているグループで、設立、買収、売却又は共同支配企業による所有権の変更がある場合には、所有権及びその関係性を理解することがより複雑になり得る。これらの要因により、重要な虚偽表示が生じやすくなることがある。
A94
グループの事業や活動がどの程度類似しているかを理解することは、構成単位に共通する類似した重要な虚偽表示リスクを識別し、適切な対応を立案することに役立つ場合がある。
A95
企業又は事業単位の財務業績は、通常、グループ経営者によって測定され、検討される。グループ経営者への質問によって、グループの企業及び事業単位の業績を評価して対応を図るために、グループ経営者が特定の主要な指標に依拠していることが明らかになる場合がある。そのような業績評価の指標を理解することにより、以下を識別できる場合がある。・重要な虚偽表示が生じやすい領域(例えば、一定の業績評価の指標を達成するという構成単位の経営者へのプレッシャーによるもの)・グループの財務報告プロセスに係る内部統制《(3)グループの内部統制システム》
①共通化された内部統制の内容及び範囲(第30項(3)①参照)
A96
グループ経営者は、複数の企業又は事業単位において共通の方法で運用することを意図した内部統制(すなわち、共通化された内部統制)をデザインする場合がある。例えば、グループ経営者は、グループ内の全ての企業又は事業単位に導入した同一のITシステムを利用して、在庫管理のための共通化された内部統制をデザインする場合がある。共通化された内部統制は、グループの内部統制システムの各構成要素に存在する場合があり、また、グループ内の様々なレベル(例えば、連結グループ全体レベル又はグループ内の他の集計レベル)で適用される場合がある。共通化された内部統制には、直接的な内部統制と間接的な内部統制がある。直接的な内部統制は、アサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクに対応するのに十分な精度を有した内部統制であり、間接的な内部統制は、直接的な内部統制を支援する内部統制である(監基報315のA10項参照)。
A97
グループの内部統制システムの構成要素を理解することには、これらの構成要素におけるグループ内での内部統制の共通性を理解することが含まれる。グループ内で共通化された内部統制を理解するに当たり、関連する可能性のある考慮事項には以下が含まれる。・内部統制が集約的にデザインされ、一部又は全ての構成単位においてデザインされたとおりに(すなわち、変更することなく)業務に適用することが要求されているかどうか。・内部統制が、その内部統制が適用される全ての構成単位において、同様の責任と能力を有する者によって、業務に適用され、また該当する場合には、モニタリングされているかどうか。・内部統制がITアプリケーションからの情報を利用している場合、情報を生成するITアプリケーション及びその他のIT環境は、各構成単位又は各拠点で同一であるかどうか。・内部統制が自動化されている場合、各構成単位の各ITアプリケーションが同様に設定されているかどうか。
A98
共通化された内部統制であるかどうかを決定するには、判断を伴う場合が多い。例えば、グループ経営者は、特定のITアプリケーションから生成される売掛金の年齢表について、全ての企業及び事業単位に対して月次で評価を実施するよう要求する場合がある。この場合、異なるITアプリケーションから年齢表が生成されたり、ITアプリケーションの運用が企業又は事業単位で異なっていたりするなど、当該内部統制が共通化されていると決定できるかどうかの検討が必要なときがある(例えば、ITアプリケーションが各構成単位で同一の方法で設定されているかどうか、また、異なるITアプリケーションに対して有効なIT全般統制が存在するかどうか。)。これは、異なるITアプリケーションの存在によって内部統制のデザインが相違する場合があるためである。
A99
グループ内で内部統制が実施されるレベル(例えば、連結グループ全体レベル又はグループ内の他の集計レベル)並びに集約化及び共通性の程度を検討することは、情報がどのように処理され、管理されているかを理解するために重要な場合がある。状況によっては、内部統制が集約的に実施される場合(例えば、単一の企業又は事業単位でのみ実施される場合)であっても、他の企業又は事業単位に広範な影響を与えることがある(例えば、グループ内の他の企業又は事業単位の代わりに取引を処理するシェアード・サービス・センター)。シェアード・サービス・センターにおける取引の処理及び関連する内部統制は、企業又は事業単位に関係なく、同一の方法で運用される場合がある(例えば、取引の発生源にかかわらず、プロセス、リスク及び内部統制が同一である場合)。このような場合、それを単一の母集団として内部統制を識別し、整備状況を評価し、該当する場合には、運用状況の有効性を評価することが適切なことがある。
②集約化された活動(第30項(3)①及び②参照)
A100
グループ経営者は、その活動の一部を集約化することができる。例えば、特定のグループに共通する取引又は他の財務情報について、複数の企業又は事業単位に対して一貫した集約的な方法で、財務報告又は会計上の機能が実行される場合がある(例えば、収益取引の開始、承認、記録、処理又は報告がシェアード・サービス・センターで行われる場合)。
A101
集約化された活動をグループ構造全体に適合させる方法及び実施される活動の内容を理解することは、重要な虚偽表示リスクを識別及び評価し、適切に対応することに役立つ場合がある。例えば、シェアード・サービス・センターの内部統制は、他の内部統制とは独立して運用される場合や、処理の対象となる財務情報を提供する企業又は事業単位の内部統制に依存する場合がある。例えば、売上取引の開始及び承認は企業又は事業単位で実施されるが、その処理はシェアード・サービス・センターで実施されることがある。
A102
グループ監査人は、共通化された内部統制又は集約化された活動に関連する内部統制の運用状況の有効性の評価について、構成単位の監査人を関与させる場合がある。このような状況では、共通化された内部統制又は集約化された活動に関連する内部統制の運用状況の有効性の評価を通じて入手した監査証拠が、グループに共通して実施すべき実証手続の種類、時期及び範囲を決定する裏付けとなるため、グループ監査人と構成単位の監査人とが効果的に連携することが重要となる。
③グループ財務諸表の作成を支援する重要な事項についてのコミュニケーション(第30項(3)④参照)
A103
グループ内の企業又は事業単位が、法令又はその他の理由により、グループ財務諸表に適用される財務報告の枠組みとは異なる財務報告の枠組みを適用する場合がある。そのような状況において、グループ監査人は、会計方針の統一及び該当する場合にはグループと異なる報告期間の末日の統一のためのグループ経営者の財務報告プロセスを理解することにより、どのように修正、調整及び組替が行われるか、また、それらがグループ経営者によって集約して実施されるのか、又は企業若しくは事業単位によって実施されるのかを理解することができる。
④企業又は事業単位に対するグループ経営者の決算指示
A104
監査基準報告書315第24項(2)を適用するに当たり、グループ監査人は、グループ財務諸表の作成を支援する重要な事項をグループ経営者がどのように伝達しているのかを理解することが要求されている。グループ経営者は、財務情報の統一性と比較可能性を達成するため、企業又は事業単位に対して財務報告プロセスに関する詳細を含む決算指示書を送付する(例えば、財務報告方針を伝達する。)、又はグループ全体に共通する方針を定めている場合がある。グループ経営者の決算指示を理解することが、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別及び評価に影響を与える場合がある。例えば、不適切な決算指示は、取引が誤って記録又は処理されたり、会計方針が誤って適用されたりするリスクによって、虚偽表示の発生可能性を高める場合がある。
A105
決算指示又は方針についてのグループ監査人の理解には、例えば、以下が含まれる。・報告パッケージを作成するための決算指示が、明瞭かつ実行可能であること。・決算指示が、以下の事項を満たしているかどうか。-適用される財務報告の枠組み及び会計方針を適切に記述していること。-適用される財務報告の枠組みの要求事項を遵守するための十分な注記(例えば、関連当事者との関係及び関連当事者との取引並びにセグメント情報の注記)を行うために必要な情報に対応していること。-連結修正のために必要な情報(例えば、グループ内取引及び未実現利益並びにグループ内勘定残高)に対応していること。-報告日程が含まれていること。
(4)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項(第31項及び第32項参照)
A106
グループ監査の過程で、第31項の事項が他の構成単位の監査人の作業に関連する場合、グループ監査人は、これらの事項を当該構成単位の監査人に伝達することがある。A144項は、構成単位の監査人の作業の過程で適時に伝達する必要があるその他の事項を例示している。
FA106-2JP
監査基準報告書240には、不正による重要な虚偽表示を示唆する状況に関する要求事項(監基報240第F35-2項から第F35-4項及びF付録4)と関連する指針が含まれている(第F312JP項及び第F32-2JP項参照)。
A107
ある状況においては、関連当事者との関係及び取引の内容によって、財務諸表の重要な虚偽表示リスクが関連当事者以外の第三者との取引の場合よりも高くなることがある(監基報550第2項参照)。グループ監査では、以下の場合、不正に起因するものを含め、関連当事者との関係に伴うグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクが高くなることがある。・グループ構造が複雑である。・グループの情報システムが統合されておらず、関連当事者との関係や取引の識別及び記録において十分に効果的でない。・企業及び事業単位の間で、多数の、又は頻繁に行われる関連当事者との取引が存在する。したがって、監査基準報告書200第14項で要求されているとおり、職業的専門家としての懐疑心を保持して監査を計画し実施することは、このような状況が存在する場合に特に重要である。
7.重要な虚偽表示リスクの識別と評価(第33項参照)
A108
グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別し評価するプロセスは、反復的かつ累積的であり、特に構成単位の事業活動が複雑若しくは専門化している場合又は複数拠点にわたって多数の構成単位が存在している場合に、難しくなることがある。監査基準報告書315のA114項を適用するに当たり、グループ監査人は、潜在的な重要な虚偽表示リスクに関して暫定的な識別を行い、グループ及びグループ環境並びに適用される財務報告の枠組み及びグループの内部統制システムに対する理解に基づいて、グループ財務諸表の重要な取引種類、勘定残高又は注記事項を暫定的に識別する。
A109
潜在的な重要な虚偽表示リスクの暫定的な識別においては、その企業又は事業単位を含むグループ及び事業活動を行っている環境や業界に関する、監査人の理解を考慮する。グループ監査人は、暫定的な識別に基づいて構成単位の監査人をリスク評価手続に関与させることがあり、また関与させることが多い。これは、構成単位の監査人には企業又は事業単位に関する直接的な知識及び経験があり、事業活動とそれに関連するリスク及び企業又は事業単位でグループ財務諸表における重要な虚偽表示リスクが生じ得る領域を理解する上で役立つことが多いからである。
A110
識別したアサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクについて、グループ監査人は、固有リスクの評価に対する責任を負うことが要求されている。この評価には、以下の事項を考慮して、虚偽表示の発生可能性と影響の度合いを評価することが含まれる(監基報315第30項参照)。・固有リスク要因が、どのように、そしてどの程度、関連するアサーションにおける虚偽表示の生じやすさに影響するのか。・グループ財務諸表全体レベルの重要な虚偽表示リスクが、どのように、そしてどの程度、アサーション・レベルの重要な虚偽表示リスクに関する固有リスクの評価に影響するのか。
A111
グループ監査人は、実施したリスク評価手続に基づいて、評価したグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクが特定の構成単位の財務情報に関してのみ生じると判断する場合がある。例えば、訴訟に関する重要な虚偽表示リスクは、特定の国又は地域において活動する企業若しくは事業単位、又は類似の事業若しくは活動を行う企業若しくは事業単位にのみ存在する場合がある。
A112
本報告書の付録3は、不正によるか誤謬によるかを問わず、連結プロセスに関するものを含め、単独で、又は組合せによってグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクを示唆する状況又は事象を例示している。
(1)不正
A113
監査基準報告書240第24項及び第29項を適用するに当たり、監査人には、不正による財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別し評価するとともに、リスク対応手続を立案し実施することが要求されている。当該リスク対応手続の種類、時期及び範囲は、識別されたアサーション・レベルの不正による重要な虚偽表示リスクに対応させる。不正によるグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクを識別するために利用される情報には、例えば、以下を含む場合がある。・グループ財務諸表に不正による重要な虚偽表示が行われるリスクに関するグループ経営者の評価・グループ経営者がグループ財務諸表の不正リスクの識別と対応について構築した一連の管理プロセス(グループ経営者が識別した特定の不正リスク、又は不正リスクが高い取引種類、勘定残高若しくは注記事項を含む。)・不正による重要な虚偽表示リスクの影響を受けやすい特定の構成単位の有無・連結プロセスにおける不正リスク要因又は経営者の偏向の兆候の有無・グループ経営者がグループの不正リスクの識別と対応について構築した一連の管理プロセス及び不正リスクを低減するために構築した内部統制に対する、グループ・ガバナンスに責任を有する者によるモニタリングの方法・構成単位又はグループに影響を及ぼす不正、不正の疑い又は不正の申立てを把握しているかどうかについてのグループ監査人の質問に対する、グループ・ガバナンスに責任を有する者、グループ経営者及び内部監査人(適切な場合には、構成単位の経営者、構成単位の監査人及びその他の者)の回答《(2)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項》(第34項参照)
A114
グループ監査人は、リスク評価手続の立案及び実施に構成単位の監査人を関与させる場合であっても、第33項に従って、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別及び評価に対する十分な基礎を得られるよう、グループ及びグループ環境、適用される財務報告の枠組み並びにグループの内部統制システムについて理解することに引き続き責任を負う。
A115
リスク評価手続から得られた監査証拠が重要な虚偽表示リスクの識別及び評価のための適切な基礎を提供していない場合、監査基準報告書315第34項は、監査人に、適切な基礎を提供する監査証拠が得られるまで追加的なリスク評価手続を実施するよう要求している。
(1)構成単位の手続実施上の重要性(第35項(1)参照)
A116
第35項(1)は、細分化された財務情報に対して監査手続が実施される場合、構成単位ごとに構成単位の手続実施上の重要性を決定するよう、グループ監査人に要求している。構成単位の手続実施上の重要性の金額は、構成単位ごとに異なる場合がある。また、個々の構成単位の手続実施上の重要性の合計は、グループ・レベルの手続実施上の重要性と一致する必要はなく、それを超える場合もある。
A117
本報告書は、監査手続が実施される構成単位に対して、取引種類、勘定残高又は注記事項ごとに構成単位の手続実施上の重要性を決定することは要求していない。しかしながら、グループの特定の状況において、グループ財務諸表全体としての重要性の基準値よりも低い金額の虚偽表示がグループ財務諸表の利用者が行う経済的意思決定に影響すると合理的に見込まれる取引種類、勘定残高又は注記事項が一つ又は複数ある場合、監査基準報告書320は、それらの特定の取引種類、勘定残高又は注記事項に適用される重要性の基準値を決定することを要求している(監基報320第9項、A8項及びA9項参照)。このような状況において、グループ監査人は、構成単位の監査人とコミュニケーションを行った金額よりも低い構成単位の手続実施上の重要性が、特定の取引種類、勘定残高又は注記事項にとって適切であるかどうかを検討することが必要となる場合がある(監基報320のA10項参照)。
A118
構成単位の手続実施上の重要性は、単純で機械的な計算により決定されるものではなく、その決定には職業的専門家としての判断を伴う。グループ監査人が構成単位の手続実施上の重要性を設定する際に考慮する要因には、以下が含まれる場合がある。・構成単位全体における財務情報の細分化の程度。例えば、構成単位全体で細分化の程度が高くなる場合、合算リスクに対応するためには、通常、構成単位の手続実施上の重要性を低くすることが適切である。グループに対する構成単位の相対的な重要性は、細分化の程度に影響することがある。例えば、単一の構成単位がグループの大部分を占めている場合、細分化の程度は構成単位全体で、より低くなる可能性が高い。・構成単位の財務情報における虚偽表示の内容、頻度及び影響の度合いに関する想定。例えば、以下の事項がある。-構成単位の財務情報に特有のリスクが存在するかどうか(例えば、業種特有の会計に関する事項、通例でない、又は複雑な取引)。-過年度の監査において構成単位で識別された虚偽表示の内容及び程度
A119
第35項(1)は、合算リスクに対応するために、構成単位の手続実施上の重要性がグループ・レベルの手続実施上の重要性を下回ることを要求している。A118項で説明したとおり、構成単位全体での細分化の程度が高まると、通常、合算リスクに対応するために構成単位の手続実施上の重要性の金額をより低くすることが適切である。ただし、状況によっては、一つの構成単位の財務情報がグループ財務諸表の大部分を占めているなど、合算リスクが低いことを理由に、構成単位の手続実施上の重要性がグループ・レベルの手続実施上の重要性に近い金額に設定される場合がある。持分法適用企業に対するグループの持分に関する構成単位の手続実施上の重要性を決定する際、グループ監査人は、グループの持分割合及び被投資企業の損益の負担割合を考慮する場合がある。
A120
場合によっては、グループ監査人又は構成単位の監査人が、重要な取引種類又は重要な勘定残高について構成単位に細分化することなく、単一母集団としてリスク対応手続を実施することがある。そのような場合、グループ・レベルの手続実施上の重要性が、これらの手続を実施する目的で使用されることが多い。
(2)「明らかに僅少」な金額の基準値(第35項(2)参照)
A121
グループ監査人と虚偽表示についてコミュニケーションを行う金額の基準値は、グループ財務諸表にとって明らかに僅少と考えられる金額以下に設定される。監査基準報告書450のA3項によれば、この金額の基準値は、これを下回る金額を集計してもグループ財務諸表に重要な影響を与えないことが明らかであるとグループ監査人が想定しているため、虚偽表示を集計する必要がない金額である。
①構成単位の手続実施上の重要性の伝達(第36項参照)
A122
構成単位の監査人が有する構成単位及び構成単位の財務情報における潜在的な虚偽表示の原因についての知識を考慮し、適切な構成単位の手続実施上の重要性を決定する際に、グループ監査人が構成単位の監査人を関与させることが適切となる場合がある。これに関連し、グループ監査人は、構成単位の監査人とグループ・レベルの手続実施上の重要性についてコミュニケーションを行うことが、グループ・レベルの手続実施上の重要性との関係で構成単位の手続実施上の重要性が状況に応じて適切かどうかを、構成単位の監査人と協力して判断することに役立つと考える場合もある。
A123
構成単位の手続実施上の重要性は、少なくとも構成単位の財務情報における虚偽表示の内容、頻度及び影響の度合いに関する想定に基づく部分がある。したがって、構成単位の監査人によって識別された虚偽表示の数と影響の度合いが想定を超える場合、構成単位の監査人とグループ監査人との間の継続的なコミュニケーションが特に重要となる。
①リスク対応手続の集約的な実施
A124
一つ又は複数の重要な取引種類、勘定残高又は注記事項についてリスク対応手続を一括して実施することによって、評価した重要な虚偽表示のリスクに対応する監査証拠が得られる場合には、リスク対応手続を集約的に立案及び実施することがある。例えば、グループ全体の収益取引に関する会計記録が集中的に維持される場合(例えば、シェアード・サービス・センターの場合)が挙げられる。集約的にリスク対応手続を実施するか否かの監査人の決定に関連する可能性のある要因には、例えば、以下が含まれる。・財務報告に関連する活動の集約化の水準・共通化された内部統制の程度及び範囲・グループの活動及び事業分野の類似性
A125
グループ監査人は、例えば、取引が同一の特性を有し、関連する重要な虚偽表示リスクが同一であり、内部統制が一貫した方法でデザイン及び運用されていることから取引が同質であると考えられる場合には、リスク対応手続を実施する目的で、複数の構成単位の財務情報を一つの母集団と考えることができると判断する場合がある。
A126
リスク対応手続が集約的に実施される場合でも、構成単位の監査人が関与することがある。例えば、グループが複数のシェアード・サービス・センターを有している場合、グループ監査人は、これらのシェアード・サービス・センターに対するリスク対応手続を実施する際に、構成単位の監査人を関与させることがある。
②構成単位レベルでのリスク対応手続の実施
A127
構成単位の財務情報に関連するグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応するための手続が、構成単位レベルでより効果的に実施される場合がある。グループに以下が存在する際には、これに該当することがある。・異なる収益源・複数の事業分野・複数の拠点にまたがる活動・分散化された内部統制システム《③個別には重要ではないが集計するとグループ財務諸表にとって重要となる財務情報を有する多数の構成単位》
A128
個別には重要ではないが集計するとグループ財務諸表にとって重要となる財務情報を有する多数の構成単位によって、グループが構成されることがある。グループ財務諸表における重要な取引種類、勘定残高又は注記事項が多数の構成単位にわたって分散しているような状況においては、リスク対応手続を計画及び実施するに当たって、グループ監査人に追加の検討が必要となる場合がある。
A129
例えば、重要な取引種類、勘定残高又は注記事項が同質であり、共通化された内部統制の対象となっており、また、適切な情報にアクセスできる場合、これらに対して集約的にリスク対応手続を実施することによって十分かつ適切な監査証拠を入手できることがある。このリスク対応手続には、監査基準報告書520「分析的手続」に従った分析的実証手続が含まれることもある。分析的実証手続を実施する際に、推定値の設定及び計上された金額と推定値との差異を決定する目的で、構成単位の財務情報が、監査業務の状況に応じて、適切なレベルで集約されることがある。これらの状況においては、自動化されたツール及び技法の利用が有用なことがある。
A130
また、グループ財務諸表における重要な虚偽表示リスクに対応するために、選択した構成単位におけるリスク対応手続の実施が必要となることがある。監査手続を実施する構成単位の決定並びに選択した構成単位において実施するリスク対応手続の種類、時期及び範囲は、職業的専門家としての判断に係る事項である。こうした状況においては、監査手続を実施するために選択した構成単位について企業が想定しない要素を取り入れることは、不正によるグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対して有用となる場合がある(A136項参照)。
(2)リスク対応手続の種類及び範囲
A131
グループ監査人は、評価した重要な虚偽表示リスクに対応して、構成単位において以下のいずれの作業の範囲が適切であるかを決定する場合がある。この場合において、それぞれの作業について構成単位の監査人を関与させることがある。・構成単位の財務情報全体に対するリスク対応手続の立案及び実施・一つ又は複数の取引種類、勘定残高又は注記事項に対するリスク対応手続の立案及び実施・特定のリスク対応手続の実施
A132
グループ監査人は実施するリスク対応手続の種類、時期及び範囲に対して責任を負うが、構成単位の監査人がリスク対応手続の立案及び実施を含むグループ監査の全ての段階に関与することは可能であり、実際に関与することが多い。
①構成単位の財務情報全体に対するリスク対応手続の立案及び実施
A133
グループ監査人は、以下の場合を含め、構成単位の財務情報全体に対するリスク対応手続を立案し実施することが適切なアプローチであると判断することがある。・グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応するために、構成単位の財務情報の全部又は重要な割合について、監査証拠を入手する必要がある場合・構成単位に存在する事象又は状況に起因して、グループ財務諸表において広範に重要な虚偽表示リスクが存在しており、そのことが、グループの継続企業の前提に関するグループ経営者の評価に対するグループ監査人の検討に関連する場合《②一つ又は複数の取引種類、勘定残高又は注記事項に対するリスク対応手続の立案及び実施》
A134
グループ監査人は、構成単位の財務情報の一つ又は複数の特定の取引種類、勘定残高又は注記事項に対してリスク対応手続を立案し実施することが、グループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応するための適切なアプローチであると判断する場合がある。例えば、ある構成単位において、事業活動が限定されているもののグループの土地及び建物の重要な部分を保有している場合や、重要な税金残高を計上している場合が挙げられる。
③特定のリスク対応手続の実施
A135
グループ監査人は、一つ又は複数の関連するアサーションのみに対して監査証拠を入手する必要がある場合など、構成単位の財務情報に対する特定のリスク対応手続の立案及び実施が適切なアプローチであると判断することがある。例えば、グループ監査人は、取引種類、勘定残高又は注記事項を集約的に検証し、構成単位の監査人には、その構成単位における特定のリスク対応手続(構成単位の国又は地域における訴訟事件等の評価、資産の実在性等に関連する特定のリスク対応手続)を実施するよう要求することがある。
(3)企業が想定しない要素
A136
企業が想定しない要素を、実施する作業の種類、手続を実施する企業又は事業単位及びグループ監査人が関与する作業の範囲に組み込むことにより、グループ財務諸表に不正による重要な虚偽表示をもたらす可能性がある構成単位の財務情報における重要な虚偽表示を発見する可能性が高まる場合がある(監基報240第28項(3)参照)。
(4)内部統制の運用状況の有効性
A137
グループ監査人は、グループ・レベル又は構成単位のいずれかで実施する実証手続の種類、時期及び範囲を決定するに当たり、グループ全体で運用される内部統制の運用状況の有効性に依拠することがある。監査基準報告書330は、内部統制の運用状況の有効性に関する、十分かつ適切な監査証拠を入手する運用評価手続を立案し実施することを監査人に要求している(監基報330第7項参照)。構成単位の監査人は、こうした運用評価手続の立案及び実施に関与することがある。
A138
監査人が依拠しようとしている内部統制からの逸脱を発見した場合、監査基準報告書330は、逸脱が生じた原因及びその潜在的な影響を理解するために質問を実施することを監査人に要求している(監基報330第16項参照)。内部統制の運用状況の有効性を検証した結果、予想よりも多くの逸脱を発見した場合、詳細なグループ監査計画の修正が必要となることがある。詳細なグループ監査計画の修正には、以下が含まれることがある。・特定の構成単位において追加の実証手続の実施を要請すること。・有効にデザインされ、業務に適用されている他の関連する内部統制を識別し、その運用状況の有効性を評価すること。・リスク対応手続の実施に当たって選択する構成単位の数を増やすこと。
A139
例えば、シェアード・サービス・センターにおける内部統制又は共通化された内部統制の運用評価手続の実施等、内部統制の運用状況の有効性を集約的に評価する際、グループ監査人は、実施する監査の作業に関する情報について構成単位の監査人とコミュニケーションを行うことが必要となる場合がある。例えば、構成単位の監査人が、構成単位の財務情報全体に対して実証手続を立案し実施するよう要求される場合又は一つ若しくは複数の取引種類、勘定残高又は注記事項に対して実証手続を立案し実施するよう要求される場合、構成単位の監査人は、実証手続の種類、時期及び範囲を決定するために集約的に実施される内部統制の運用評価手続について、グループ監査人と協議することがある。
①連結手続(第38項参照)
A140
サブグループの連結プロセスを含む連結プロセスに関するリスク対応手続には、以下が含まれる場合がある。・必要な仕訳が連結手続に反映されているかどうかを判断すること。・連結プロセスに対する内部統制の運用状況の有効性を評価し、何らかの内部統制が有効でないと判断された場合には適切に対応すること。
②連結のための修正及び組替(第38項(2)参照)
A141
連結プロセスでは、通常のITアプリケーションを通さずに、又は他の財務情報に適用される内部統制を適用せずに、グループ財務諸表上の金額の修正及び組替が実施される場合がある。グループ監査人は、このような修正及び組替の適切性、網羅性及び正確性の評価において、以下の手続を実施することがある。・重要な修正が、その原因となる事象や取引を適切に反映しているかどうかを評価すること。・グループ財務諸表に財務情報が含まれている企業又は事業単位が、適切な会計処理に基づいて含められているかどうかを判断すること。・重要な修正が、正確に計算、処理され、グループ経営者(該当する場合には、構成単位の経営者)によって承認されているかどうかを判断すること。・重要な修正が、適切に裏付けられ、十分に文書化されているかどうかを判断すること。・グループ内取引、未実現利益及びグループ内勘定残高に係る調整及び消去を評価すること。
(6)構成単位の監査人が関与する場合の考慮事項(第42項及び第43項参照)
A142
グループ監査人がリスク対応手続の立案及び実施において構成単位の監査人を関与させる場合、構成単位の監査人は、専門家の業務を利用することが適切であると判断し、これについてグループ監査人とコミュニケーションを行うことがある。そのような状況において、グループ監査人は、構成単位の監査人のリスク対応手続の立案及び実施が適切かどうかを判断するに当たり、例えば、以下の事項を構成単位の監査人と討議する場合がある。・監査人の利用する専門家の業務の内容、範囲及び目的・監査人の利用する専門家の業務がグループ監査人の目的に照らして適切であるかどうかについての構成単位の監査人の評価
A143
グループ監査人がどの程度関与すれば適切であるかは、グループの状況やグループ構造その他の要因によって異なる場合がある。例えば、サブグループの連結プロセスを含む連結プロセスに関する手続を実施する構成単位の監査人に関するグループ監査人の過去の経験や、企業又は事業単位の財務情報がグループ財務諸表に適用されている会計方針と同一の会計方針に従って作成されていない場合等のグループ監査業務の状況が挙げられる。
(1)グループ監査に関するグループ監査人の結論に関連する事項についてのコミュニケーション(第45項参照)
A144
第45項に従ってコミュニケーションを行うことが要求されている事項は、グループ監査に関するグループ監査人の結論に関連するものであるが、特定の事項は、構成単位の監査人による手続の過程でコミュニケーションが行われる場合がある。そのような事項には、第32項及び第50項において要求されている事項に加えて、例えば、以下がある。・独立性の規定への違反を含む、職業倫理の規定への違反に関する情報・違法行為に関する情報・不正リスクを含む、新たに発生した特別な検討を必要とするリスク・グループ財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性がある、構成単位の経営者又は従業員が関与する不正若しくは不正の疑い又は違法行為若しくは違法行為の疑い・重要な通例でない取引
FA144-2JP
第45項(8)の不正又は不正の疑いには、不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断した場合を含む(監基報240第40項参照)。
(2)構成単位の財務情報の虚偽表示に関するコミュニケーション(第45項(5)参照)
A145
グループ監査人は、構成単位全体での修正済み及び未修正の虚偽表示について、第45項(7)に従った不備のコミュニケーションを考慮すると、広範囲に影響を及ぼす内部統制の不備が存在するかもしれないと考える場合がある。また、識別した修正済み又は未修正の虚偽表示の件数が予想よりも多いことは、未発見の虚偽表示リスクがより高いことを示唆している場合があり、この結果、グループ監査人は、特定の構成単位において追加的な監査手続の実施が必要であるという結論に至る場合がある。
(3)構成単位の監査人の発見事項又は結論(第45項(11)参照)
A146
構成単位の監査人による成果物の様式及び内容は、構成単位の監査人が実施することを依頼された監査作業の内容及び範囲によって影響を受ける。グループ監査人の監査事務所の方針又は手続により、グループ監査の目的で実施された監査の作業に対する構成単位の監査人の全体的な結論の様式又は特定の文言が指定されている場合がある。現地の法令が、構成単位の監査人が提供する結論(例えば、意見)の様式を規定する場合もある。
(4)構成単位の監査人とのコミュニケーションがグループ監査人の目的に照らして十分かどうかの評価(第46項(2)参照)
A147
グループ監査人は、構成単位の監査人とのコミュニケーションがグループ監査人の目的に照らして十分ではないと判断した場合、例えば、以下を考慮する場合がある。・追加的な協議又は会議等を通じて、構成単位の監査人から追加的な情報を入手できるかどうか。・第47項に従って、追加的に構成単位の監査人の監査調書を査閲する必要があるかどうか。・第48項に従って、追加的な監査手続を実施しなければならない可能性があるかどうか。・構成単位の監査人の適性又は能力についての懸念があるかどうか。
(5)追加的な構成単位の監査人の監査調書の査閲(第47項参照)
A148
A75項は、グループ監査人に、グループ監査の事実及び状況並びにその他の事項(例えば、評価したグループ財務諸表の重要な虚偽表示のリスク)に基づいて構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の内容、時期及び範囲を決定する際の適用指針を提供している。グループ監査人による第47項(3)に従った検討は、構成単位の監査人の作業に対するグループ監査人の継続的な関与に関連する以下の事項によっても影響を受ける場合がある。・第45項に従った事項を含む、構成単位の監査人からのコミュニケーション・グループ監査の過程においてグループ監査人が既に実施した、構成単位の監査人の監査調書の査閲(例えば、第34項、第42項及び第43項の要求事項を満たす目的で監査調書の査閲を既に実施している場合)又は監査基準報告書220第31項に従ったグループ監査責任者による構成単位の監査人の監査調書の査閲
A149
状況において追加的に構成単位の監査人の監査調書を査閲する必要があるか及びその範囲についての、グループ監査人の判断に影響する可能性のあるその他の要因には、以下が含まれる。・リスク評価手続並びにグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクの識別及び評価への構成単位の監査人の関与の程度・グループ財務諸表にとって重要な事項について構成単位の監査人が行った重要な判断及びグループ財務諸表にとって重要な構成単位の監査人の発見事項又は結論・構成単位の監査人における、経験の浅いチームメンバーによる作業に対する査閲の責任を負う経験豊富なチームメンバーの適性及び能力・構成単位の監査人及びグループ監査人が監査調書の査閲のための共通の方針又は手続に従っているかどうか。
11.後発事象(第49項及び第50項参照)
A150
グループ監査人は、以下を実施する場合がある。・構成単位の財務情報の期末日とグループ財務諸表の監査報告書日との間に発生した事象をグループ監査人が識別することを支援するため、後発事象の手続を実施するよう構成単位の監査人に依頼すること。・構成単位の監査人によって後発事象に関するコミュニケーションが行われた日からグループ財務諸表の監査報告書日までの期間を対象とする手続を実施すること。
(1)監査証拠の十分性及び適切性(第51項参照)
A151
グループ財務諸表の監査は、累積的かつ反復的なプロセスである。立案した監査手続をグループ監査人が実施するに従って、リスク評価の基礎となった情報と著しく異なる情報に気付いた場合、グループ監査人は、入手した監査証拠に基づいて他の立案した監査手続の種類、時期及び範囲を変更することが必要となる場合がある。例えば、・構成単位において識別された虚偽表示について、他の構成単位との関連で考慮が必要となることがある。・グループ監査人は、環境の変化(例えば、戦争、内乱又は感染症の流行)による構成単位の情報又は人へのアクセスの制限に気付くことがある。このような状況において、グループ監査人は、重要な取引種類、勘定残高又は注記事項及び関連するアサーションの全部又は一部に対するリスクの再評価に基づいて、立案した監査手続を再検討することが必要となる場合がある。
A152
第51項により要求される評価は、評価したグループ財務諸表の重要な虚偽表示リスクに対応するために立案したグループ監査の基本的な方針及び詳細な監査計画が引き続き適切であるかを、グループ監査人が判断する際に役立つ。関連するアサーションを識別していない(重要な虚偽表示リスクを識別していない)が重要性のある取引種類、勘定残高又は注記事項等に対する実証手続を立案し実施しなければならないという監査基準報告書330第17項の監査人に対する要求事項は、グループ財務諸表の観点からの第51項により要求される評価のためにも役立つ場合がある。
A153
グループ監査人は、入手した監査証拠の十分性及び適切性を評価する際、監査チームが職業的専門家としての懐疑心を保持しているかどうかを考慮する場合がある。例えば、グループ監査人は、A17項に記載された事項によって監査チームが不適切に以下のようなことを行っていないか考慮することがある。・適合性及び信頼性を適切に考慮することなく、アクセスが容易な監査証拠を入手すること。・その状況において必要とされるよりも証明力が弱い監査証拠を入手すること。・裏付けとなる証拠を入手する方向又は矛盾する証拠を除外する方向に偏った方法で監査手続を立案し実施すること。
A154
監査基準報告書220第32項は、監査責任者に、監査報告書日以前に、監査調書の査閲及び監査チームとの討議を通じて、到達した結論と監査意見を裏付けるのに十分かつ適切な監査証拠が入手されたかを判断するよう要求している。構成単位の監査人が実施した作業から入手した監査証拠に対するグループ監査人による評価に関連する可能性のある情報は、グループ監査の事実及び状況によって異なるが、以下を含む場合がある。・第45項により要求される構成単位の監査人からのコミュニケーション。これには、グループ監査の目的で実施された作業についての構成単位の監査人の発見事項又は結論が含まれる。・グループ監査全体を通じた構成単位の監査人からのその他のコミュニケーション。これには、第32項により要求される事項が含まれる。・グループ監査人による構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲。これには、必要に応じて、第47項に従ったグループ監査人による追加的な構成単位の監査人の監査調書の査閲が含まれる。
A155
状況によって、実施された作業及びその結果を記載する総括的な要約文書は、それ自体が、構成単位の監査人が実施した作業及び入手した監査証拠がグループ監査の目的に対して十分であるとグループ監査人が結論付けるための基礎を提供する場合がある。例えば、グループ監査人によって識別され、コミュニケーションが行われた特定のリスク対応手続を実施するように、構成単位の監査人が要請された場合が考えられる。
(2)グループ財務諸表の監査意見に与える影響の評価(第52項参照)
A156
グループ監査責任者の評価には、構成単位の監査人からコミュニケーションが行われた修正済み及び未修正の虚偽表示が、他の構成単位に影響を及ぼすことがある広範な問題(例えば、共通の会計方針又は共通化された内部統制の対象となる取引に関する問題)を示しているかどうかの検討を含める場合がある。
13.監査報告書(第53項参照)
A157
構成単位の監査人は、グループ監査のために構成単位の財務情報に関する作業を実施し、その結果として自らの発見事項又は結論についての責任を有するが、グループ財務諸表の監査意見については、グループ監査責任者又はグループ監査責任者の監査事務所が責任を有する。
A158
構成単位の財務情報に関して十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったために、グループ監査人がグループ財務諸表に対して除外事項付意見を表明する場合、グループ財務諸表に対する監査報告書の「限定意見の根拠」(適正表示の枠組みの場合は「限定付適正意見の根拠」)又は「意見不表明の根拠」の区分において、監査証拠が入手できない理由を記載する(監基報705第19項及び第23項参照)。状況によっては、除外事項付意見の理由を適切に記載するために構成単位の監査人への言及が必要な場合がある。例えば、構成単位の経営者の管理の及ばない状況により、構成単位の監査人が構成単位の財務情報に対して要請された作業を実施又は完了できない場合である。
(1)グループ経営者とのコミュニケーション(第54項から第56項参照)
A159
グループ監査は、グループを構成する企業及び事業単位の数並びに特性により複雑となる場合がある。また、A7項の記載にあるとおり、グループ監査人は、グループ監査を計画及び実施する目的において、特定の企業又は事業単位を一体とみなす場合がある。したがって、計画した監査の範囲とその実施時期の概要についてグループ経営者と協議することは、構成単位において実施される作業(構成単位の監査人が関与する場合を含む。)を調整し、構成単位の経営者を識別する際に役立つことがある(A24項参照)。
A160
監査基準報告書240第39項から第41項には、経営者及び経営者が不正に関与している可能性がある場合には監査役等と不正に関するコミュニケーションを行うことについての要求事項と適用指針が含まれている。
A161
グループ経営者は、重要かつ慎重な取扱いを期する情報について、秘密を保持することが必要な場合がある。構成単位の財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があるが、構成単位の経営者が把握していない事項の例としては、以下のものがある。・訴訟の可能性・重要な事業資産の廃棄計画・後発事象・重要な契約
A162
グループ経営者は、グループ内の企業又は事業単位に違法行為又はその疑いがある場合、グループ監査人に伝達することがある。A87項は、これらの状況におけるグループ監査責任者に対する適用指針を提供している。
(2)グループ・ガバナンスに責任を有する者とのコミュニケーション(第57項参照)
A163
グループ監査人がグループ・ガバナンスに責任を有する者とのコミュニケーションを行う事項には、構成単位の監査人から報告された事項のうち、グループ監査人がグループ・ガバナンスに責任を有する者の責任において重要であると判断するものを含む場合がある。グループ・ガバナンスに責任を有する者とのコミュニケーションは、グループ監査における様々な時点で行われる。例えば、第57項(1)に関する事項のコミュニケーションは、構成単位の財務情報に対して実施する作業をグループ監査人が決定した後に行われる。一方、第57項(2)に関する事項のコミュニケーションは、監査の最終段階に行われ、第57項(3)及び(4)に関する事項のコミュニケーションはその発生時に行われる場合がある。
FA163-2JP
第57項(4)の不正又は不正の疑いには、不正による重要な虚偽表示の疑義があると判断した場合を含む(監基報240第40項参照)。
A164
監査基準報告書260第15項は、監査人が計画した監査の範囲とその実施時期の概要について、監査役等とコミュニケーションを行うことを要求している。グループ監査の場合、このコミュニケーションは、ガバナンスに責任を有する者がグループ監査人の決定した監査の作業を実施する構成単位(グループの特定の企業又は事業単位を一つの構成単位とするかどうかを含む。)及び計画した構成単位の監査人の関与を理解するのに役立つ。このコミュニケーションはまた、グループ及びグループ環境(第30項参照)、並びに該当する場合にはガバナンスに責任を有する者がグループ監査人に追加手続の実施を要請する領域について、相互理解及び討議を可能にするのに役立つ。
(3)識別された内部統制の不備に関するコミュニケーション(第58項参照)
A165
グループ監査人は、実施した監査手続に基づいて、識別された不備が単独で、又は複数組み合わさって重要な不備となるかどうかを判断する責任を負う(監基報265第7項参照)。グループ監査人は、構成単位において識別された不備又は不備の組合せが内部統制の重要な不備となるかどうかについて、構成単位の監査人に見解を求める場合がある。
15.監査調書(第59項参照)
A166
他の監査基準報告書には、それらの監査基準報告書の特定の状況において監査基準報告書230の適用を明確にすることを意図した、文書化に関する特定の要求事項が記載されている。監査基準報告書230の付録には、文書化に関する特定の要求事項及び適用指針を記載した他の監査基準報告書が列挙されている。
A167
グループ監査の監査調書は、グループ財務諸表の監査意見の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することができたかどうかに関する、第51項に従ったグループ監査人の評価を裏付ける(A154項参照)。
A168
グループ監査の監査調書は、以下から構成される。・グループ監査人の監査ファイルに綴じ込まれる文書・グループ監査の目的で構成単位の監査人が実施した作業に関連する各構成単位の監査人の監査ファイルに綴じ込まれる別個の文書(すなわち、構成単位の監査人の監査調書)
A169
グループ監査の監査調書の最終的な整理及び保存は、品質管理基準報告書第1号第31項(6)及びA83項からA85項に従ったグループ監査人の監査事務所の方針又は手続に従う。グループ監査人は、グループ監査の目的で構成単位の監査人が実施した作業の文書の整理及び保存に関して、構成単位の監査人に特定の指示を与える場合がある。
(1)グループ監査人による構成単位の決定の根拠(第59項(2)参照)
A170
グループ監査人による構成単位の決定の根拠は、本報告書第22項、第33項及び第57項(1)の要求事項を満たすための文書など、様々な方法で文書化される場合がある。
(2)構成単位の監査人の適性及び能力についてのグループ監査人による判断の根拠(第59項(4)参照)
A171
品質管理基準報告書第1号のA96項は、監査チームメンバーの適性及び能力に関して対応する監査事務所の方針又は手続に関する事項についての指針を定めている。当該方針又は手続は、構成単位の監査人を含む監査チームの適性及び能力の判断をどのように文書化するかに関する適用指針を説明又は提供している場合がある。例えば、第24項に従って構成単位の監査人から得られた確認は、関連する業界に対する構成単位の監査人の経験についての情報を含むことがある。グループ監査人は、構成単位の監査人が割り当てられた監査手続を実施するための十分な時間を有していることの確認を求める場合もある。
(3)構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲の文書化(第59項(6)参照)
A172
A75項に記載されているとおり、グループ監査における指揮、監督及び査閲に対するアプローチは、業務の事実及び状況に基づいてグループ監査人が個別に調整するものであり、一般的に、グループ監査人の監査事務所の方針又は手続及びグループ監査固有の対応への対処の組合せが含まれる。当該方針又は手続は、グループ監査人による監査チームへの指揮、監督及びその作業の査閲に関する文書化についての指針を説明又は提供している場合がある。
A173
監査基準報告書300第8項は、監査人に対して、監査チームメンバーへの指揮、監督及び作業の査閲の内容、時期及び範囲を記載した詳細な監査計画を作成することを要求している。構成単位の監査人が関与する場合、計画された構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲はA51項に記載されている事項によって影響を受けることがあるため、当該記載の程度は構成単位によって異なることが多い。
A174
構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲に関するグループ監査人の文書には、例えば、以下の事項が含まれる。・発行した指示書及び本報告書により要求される他の確認事項を含む、要求されている構成単位の監査人とのコミュニケーション・構成単位の監査人の事務所への訪問について、選択した理由、会議の出席者及び協議した事項の内容・構成単位の監査人又は構成単位の経営者と協議した事項・構成単位の監査人の監査調書をグループ監査人が査閲対象として選択した合理的な根拠・構成単位の監査人の作業への関与について、計画された関与の内容、範囲に対する変更及びその理由(当初予想していたよりも複雑又は主観的な監査の領域に、経験豊富な監査チームメンバーを割り当てる必要がある等)
A175
第47項は、グループ監査人に、構成単位の監査人の監査調書を追加的に査閲することの要否及びその範囲を判断することを要求している。A148項及びA149項は、この判断をする際のグループ監査人に対する適用指針を提供している。
A176
通常、構成単位の監査人の監査調書を、グループ監査人の監査ファイルに複製する必要はない。ただし、本報告書によってコミュニケーションを行うことが要求される事項を含め、構成単位の監査人からのコミュニケーションにおける特定の事項の記載を補完するために、グループ監査人は、グループ監査人の監査ファイルにおいて特定の構成単位の監査人の文書を要約し、複製し、又は複写を保存する場合がある。このような構成単位の監査人の文書には、例えば、以下が含まれることがある。・グループ監査に関連して、構成単位の監査人により行われた重要な判断及び到達した結論の一覧又は要約・グループ・ガバナンスに責任を有する者に伝達する必要がある事項・グループ財務諸表の監査報告書において監査上の主要な検討事項であると決定される可能性のある事項
A177
構成単位の監査人が実施した作業に関連する文書を検査する規制当局からの要請への対応等、法令により要求される場合には、特定の構成単位の監査人の文書をグループ監査人の監査ファイルに含めることが必要となる場合がある。
A178
監査事務所の品質管理システムに従って監査事務所が確立した方針若しくは手続又は監査事務所若しくはネットワークが提供する資源は、グループ監査人にとって、構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲を文書化する際に役立つ場合がある。例えば、電子的な監査ツールは、グループ監査人と構成単位の監査人との間のコミュニケーションを円滑に行うために使用されることがある。また、電子的な監査ツールは、査閲者、査閲日及び査閲の対象に関する情報提供を含め、監査調書に使用されることがある。
(4)構成単位の監査人の監査調書へのアクセスが制限されている場合の追加の考慮事項(第59項参照)
A179
グループ監査の監査調書には、特定の状況において、追加的な複雑性又は課題が存在する場合がある。これには、法令により当該国又は地域外に構成単位の監査人が文書を提供することを制限している状況や、戦争、内乱又は感染症の流行によって、関連する構成単位の監査人の監査調書へのアクセスが制限されている状況等が該当する。
A180
グループ監査人は、例えば以下により、こうしたアクセス制限を克服できる場合がある。・構成単位の監査人の所在地への訪問又は構成単位の監査人の所在地以外の場所での構成単位の監査人との会議により、構成単位の監査人の監査調書を査閲すること。・法令で禁止されていない場合、IT技術を使用して関連する監査調書を遠隔で査閲すること。・構成単位の監査人に、関連する情報を要約した文書の作成及び提供を要請すること並びに、必要に応じて、構成単位の監査人が作成した当該文書について討議すること。・構成単位の監査人が実施した手続、入手した証拠及び到達した結論について構成単位の監査人と討議すること。上記の一つ又は複数の行動が制限を克服するために十分であるかどうかは、グループ監査の事実及び状況に応じた職業的専門家としての判断に関する事項である。
A181
構成単位の監査人の監査調書へのアクセスが制限されている場合であっても、グループ監査人の監査調書は、グループ監査人による構成単位の監査人への指揮、監督及びその作業の査閲に関するそれぞれの内容、時期及び範囲に関する記載を含め、本報告書の要求事項を遵守している必要がある。A148項及びA149項の適用指針は、この状況におけるグループ監査人による構成単位の監査人の監査調書の査閲の範囲を決定するに当たり有用なものとなる場合がある。A176項及びA177項は、特定の構成単位の監査人の監査調書が、グループ監査人の監査ファイルに含まれることがある状況を例示している。
A182
構成単位の監査人の監査調書へのアクセス制限を克服できない場合、グループ監査人は、グループ財務諸表に対する除外事項付意見の表明が要求される監査範囲の制約が存在するかどうかを検討することが必要になることがある(A45項参照)。以・上本報告書(2022年10月13日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。-倫理規則(2022年7月25日変更)(修正箇所:付録3)-監査基準報告書(序)「監査基準報告書及び関連する公表物の体系及び用語」(2022年7月21日改正)(上記以外の修正箇所)・-・-本報告書(2024年9月26日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。監査基準報告書260「監査役等とのコミュニケーション」(2024年9月26日改正)本報告書(2025年7月17日改正)は、次の公表物の公表に伴う修正を反映している。監査基準報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」(2024年9月26日改正)