出題マップ/監基報705独立監査人の監査報告書における除外事項付意見
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監基報705
独立監査人の監査報告書における除外事項付意見
1.本報告書の範囲
1
2.除外事項付意見の類型
2
3.本報告書の目的
34
1.除外事項付意見の表明が必要とされる場合
5
(1)限定意見
67
(3)意見不表明
89
(4)監査人が監査契約を締結した後に経営者による監査範囲の制約によって十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合
10111213
(5)否定的意見又は意見不表明に関するその他の考慮事項
14
(1)監査意見
15
(2)限定意見
16
(3)否定的意見
1718
(5)除外事項付意見の根拠区分
1920212223242526
(6)監査人が意見を表明しない場合の「財務諸表監査における監査人の責任」の記載
2728
4.監査役等とのコミュニケーション
29
1.除外事項付意見の類型(第2項参照)
A1
(1)重要な虚偽表示の性質(第5項(1)参照)
A2A3A4A5
(3)選択した会計方針の適用
A6
(4)財務諸表の注記事項の適切性又は十分性
A7
(5)十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合(第5項(2)参照)
A8A9A10A11A12
(1)監査人が監査契約を締結した後に経営者による監査範囲の制約により十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合(第12項(2)から第13項参照)
A13A14
(2)否定的意見又は意見不表明に関するその他の考慮事項(第14項参照)
A15
監査報告書の文例(第15項参照)
A16A17
(1)監査意見(第15項参照)
A18
(2)限定意見(第16項参照)
A19
(3)除外事項付意見の根拠区分(第19項、第20項、第22項及び第26項参照)
A20A21A22A23
(4)監査人が意見を表明しない場合の財務諸表の監査における監査人の責任(第27項参照)
A24
(5)監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合の考慮事項(第28項参照)
A25
5.監査役等とのコミュニケーション(第29項参照)
A26
監基報705

監査基準報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」

出典:日本公認会計士協会『監査基準報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」』最終改正 2025年7月17日公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧 ↗本文(要求事項・適用指針)を収録。付録(文例・表)と「適用」の節は載せていません。本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された4か所に線を引いています。

1.本報告書の範囲

1
本報告書は、監査人が、監査基準報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」に基づく監査意見の形成を行う際に、財務諸表に対して除外事項付意見を表明する必要があると判断する場合に、適切な監査報告書を発行するための実務上の指針を提供するものである。また、本報告書は監査基準報告書700を基礎としており、本報告書の要求事項によって明示的に対応又は修正されない限り、監査基準報告書700における監査報告書の要求事項が適用される。

2.除外事項付意見の類型

2
本報告書における除外事項付意見には、限定意見、否定的意見、及び意見不表明の三つの類型がある。除外事項付意見を表明する場合にどの類型の意見を選択するのが適切かについては、以下の事項に基づいて決定される。(1)除外事項付意見を表明する原因が、以下のいずれの性質を有しているか。・財務諸表に重要な虚偽表示がある場合・十分かつ適切な監査証拠が入手できず、重要な虚偽表示の可能性がある場合(2)除外事項付意見を表明する原因となる事項が財務諸表に及ぼす影響の範囲、又は及ぼす可能性のある影響の範囲が広範なものかどうかという監査人の判断(A1項参照)

3.本報告書の目的

3
本報告書における監査人の目的は、以下の場合において、財務諸表に対して除外事項付意見を適切かつ明瞭に表明することである。(1)監査人が、自ら入手した監査証拠に基づいて、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示があると判断する場合(2)監査人が、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示がないと判断するための十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合《4.定義》
4
本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。(1)「広範」-未修正の虚偽表示が財務諸表全体に及ぼす影響の程度、又は監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できず、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表全体に及ぼす可能性のある影響の程度について説明するために用いられる。財務諸表に対して広範な影響を及ぼす場合とは、監査人の判断において以下のいずれかに該当する場合をいう。①未修正又は未発見の虚偽表示の及ぼす影響が、財務諸表の特定の構成要素、勘定又は項目に限定されない場合②未修正又は未発見の虚偽表示の及ぼす影響が、特定の構成要素、勘定又は項目に限定されているものの、財務諸表全体としての虚偽表示に当たる場合、又は当たる可能性がある場合③注記事項における未修正又は未発見の虚偽表示の及ぼす影響が利用者の財務諸表の理解に不可欠であると判断される場合(2)「除外事項付意見」-財務諸表に対する限定意見、否定的意見又は意見不表明をいう。適正表示の枠組みの場合は、限定意見は限定付適正意見、否定的意見は不適正意見という。

1.除外事項付意見の表明が必要とされる場合

5
監査人は、以下の場合、監査報告書において除外事項付意見を表明しなければならない。(1)監査人が自ら入手した監査証拠に基づいて、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示があると判断する場合(A2項からA7項参照)(2)監査人が、全体としての財務諸表に重要な虚偽表示がないと判断するための十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合(A8項からA12項参照)

(1)限定意見

6
監査人は、以下の場合、限定意見を表明しなければならない。(1)監査人が、十分かつ適切な監査証拠を入手した結果、虚偽表示が財務諸表に及ぼす影響が、個別に又は集計した場合に、重要であるが広範ではないと判断する場合(2)監査人が、無限定意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できず、かつ、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能性のある影響が、重要であるが広範ではないと判断する場合《(2)否定的意見》
7
監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手した結果、虚偽表示が財務諸表に及ぼす影響が、個別に又は集計した場合に、重要かつ広範であると判断する場合には、否定的意見を表明しなければならない。

(3)意見不表明

8
監査人は、意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できず、かつ、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能性のある影響が、重要かつ広範であると判断する場合には、意見を表明してはならない。
9
監査人は、複数の不確実性を伴う極めてまれな状況において、たとえ個々の不確実性については十分かつ適切な監査証拠を入手したとしても、それらが財務諸表に及ぼす可能性のある累積的影響が複合的かつ多岐にわたるため、財務諸表に対する意見を形成できないと判断する場合には、意見を表明してはならない。

(4)監査人が監査契約を締結した後に経営者による監査範囲の制約によって十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合

10
監査人は、監査契約を締結した後に、経営者による監査範囲の制約に気付き、財務諸表に対する限定意見の表明又は意見不表明につながる可能性が高いと判断する場合、経営者に当該制約を取り除くように要請しなければならない。
11
経営者が、第10項に記載した制約を取り除くことを拒否した場合、監査人は、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)に当該事項を報告するとともに、十分かつ適切な監査証拠を入手するための代替手続を実施できるかどうかを判断しなければならない。
12
監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合には、以下に従って、その取扱いについて判断しなければならない。(1)監査人は、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能性のある影響が、重要であるが広範ではないと判断する場合には、監査意見を限定しなければならない。(2)監査人は、未発見の虚偽表示がもしあるとすれば、それが財務諸表に及ぼす可能性のある影響は重要かつ広範であり、その状況を伝達するためには監査意見の限定では不十分であると判断する場合には、以下のいずれかを行わなければならない。①現実的な対応として可能であれば、監査契約を解除する(A13項参照)。②監査報告書を発行する前に監査契約を解除することが現実的に不可能な場合、財務諸表に対して意見を表明しない。
13
監査人は、第12項(2)①に従い監査契約を解除する場合には、監査契約を解除する前に、監査の過程で識別した除外事項付意見の原因となる虚偽表示に関する事項を、監査役等に報告しなければならない(A14項参照)。

(5)否定的意見又は意見不表明に関するその他の考慮事項

14
監査人が、全体としての財務諸表に対して否定的意見を表明する、又は意見不表明とすることが必要であると判断する場合、監査報告書に、個別の財務表又は財務諸表項目等が適用される財務報告の枠組みに準拠しているという無限定意見を併せて表明してはならない。これは、一つの監査報告書にそのような無限定意見を含めることは、全体としての財務諸表に対する否定的意見又は意見不表明と矛盾するためである(A15項参照)。

(1)監査意見

15
監査人は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明する場合、監査報告書の「監査意見」区分において、状況に応じて「限定意見」(適正表示の枠組みの場合は「限定付適正意見」)、「否定的意見」(適正表示の枠組みの場合は「不適正意見」)又は「意見不表明」という見出しを付して適切に記載しなければならない(A16項からA18項参照)。

(2)限定意見

16
監査人は、財務諸表の重要な虚偽表示により限定意見を表明する場合、意見区分に以下を記載しなければならない。(1)適正表示の枠組みの場合、財務諸表が、「限定付適正意見の根拠」区分に記載した事項の及ぼす影響を除き、適用される財務報告の枠組みに準拠して、全ての重要な点において適正に表示している旨(2)準拠性の枠組みの場合、財務諸表が、「限定意見の根拠」区分に記載した事項の及ぼす影響を除き、全ての重要な点において、適用される財務報告の枠組みに準拠して作成されている旨無限定意見の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できないために除外事項付意見を表明する場合、監査人は、除外事項付意見において、「…事項の…に及ぼす可能性のある影響を除き」という文言により記載しなければならない(A19項参照)。

(3)否定的意見

17
監査人は、否定的意見を表明する場合、意見区分に以下を記載しなければならない。(1)適正表示の枠組みの場合、財務諸表が、「不適正意見の根拠」区分に記載した事項の及ぼす影響の重要性に鑑み、適用される財務報告の枠組みに準拠して、適正に表示していない旨(2)準拠性の枠組みの場合、財務諸表が、「否定的意見の根拠」区分に記載した事項の及ぼす影響の重要性に鑑み、適用される財務報告の枠組みに準拠して作成されていない旨《(4)意見不表明》
18
監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手できずに意見を表明しない場合、「意見不表明の根拠」区分に記載した事項の及ぼす可能性のある影響の重要性に鑑み、財務諸表に対する意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかったため、意見を表明しない旨を記載しなければならない。

(5)除外事項付意見の根拠区分

19
監査人は、財務諸表に対して除外事項付意見を表明する場合、監査基準報告書700が要求する特定の記載事項に加えて、以下を行わなければならない(A20項参照)。(1)監査基準報告書700第28項が要求する「監査意見の根拠」の見出しを、状況に応じて、「限定意見の根拠」(適正表示の枠組みの場合は「限定付適正意見の根拠」)、「否定的意見の根拠」(適正表示の枠組みの場合は「不適正意見の根拠」)又は「意見不表明の根拠」に修正する。(2)本区分に、除外事項付意見を表明する原因となる事項について記載する。なお、この記載には、除外した不適切な事項及び財務諸表に与えている影響を踏まえて除外事項を付した限定意見とした理由の記載も含まれる。
20
定量的な注記事項を含め、財務諸表の特定の金額に関連する重要な虚偽表示が存在する場合、監査人は、金額的な影響額を算定することが困難でない限り、監査意見の根拠の区分に、当該虚偽表示による金額的な影響額とそれに関する説明を記載しなければならない。監査人は、金額的な影響額を算定することが困難な場合、監査意見の根拠の区分にその旨を記載しなければならない(A21項参照)。
21
財務諸表に、定性的な注記事項に関連する重要な虚偽表示が存在する場合、監査人は、監査意見の根拠の区分に、当該虚偽表示の内容について記載しなければならない。
22
財務諸表に開示することが必要な情報が開示されていない場合、監査人は、以下を行わなければならない。(1)監査役等と、必要な情報が開示されていないことについて協議する。(2)監査意見の根拠の区分において、どのような情報が開示されていないかについて記載する。(3)法令等で禁止されていない場合、実務的に困難でなく、かつ監査人が開示されていない情報について十分かつ適切な監査証拠を入手したときは、監査人は、監査意見の根拠の区分に、開示されていない情報を記載しなければならない(A22項参照)。
23
無限定意見の表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手できないために除外事項付意見を表明する場合、監査人は、監査意見の根拠の区分に十分かつ適切な監査証拠を入手できない理由を記載しなければならない。
24
監査人は、限定意見又は否定的意見を表明する場合、監査基準報告書700第28項(4)の要求事項に関して、入手した監査証拠が監査人の限定意見又は否定的意見の基礎を得るために十分かつ適切なものであると判断した旨を記載しなければならない。
25
監査人は、財務諸表に対して意見を表明しない場合、監査報告書には監査基準報告書700第28項(2)及び(4)により要求される以下の事項を含めてはならない。・監査人の責任に関し、監査報告書の「財務諸表監査における監査人の責任」区分に記載がある旨・意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手したと判断した旨
26
監査人は、財務諸表に対して否定的意見を表明する、又は意見を表明しない場合に、否定的意見又は意見不表明の原因となる事項以外に除外事項付意見の原因となる事項を監査人が識別している場合には、当該事項についても全て、監査意見の根拠の区分に、その内容及びそれによる影響を記載しなければならない(A23項参照)。

(6)監査人が意見を表明しない場合の「財務諸表監査における監査人の責任」の記載

27
監査人は、十分かつ適切な監査証拠を入手できないため財務諸表に対する意見を表明しない場合、「財務諸表監査における監査人の責任」区分に、監査基準報告書700第38項から第40項により要求される事項に代えて、以下の事項を記載しなければならない(A24項参照)。(1)監査人の責任は、我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施し、監査報告書において意見を表明することにある旨(2)しかしながら、「意見不表明の根拠」区分に記載されているとおり、監査人は、財務諸表に対する意見表明の基礎となる十分かつ適切な監査証拠を入手することができなかった旨(3)監査基準報告書700第28項(3)により要求されるとおり、監査人は、我が国における職業倫理に関する規定(特定の事業体の財務諸表監査に特有の独立性に関する規定が適用される場合には、当該独立性に関する規定を含む。)に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている旨《(7)監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合の考慮事項》
28
監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合、監査基準報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」第10項から第12項に基づいて「監査上の主要な検討事項」区分を設けて監査上の主要な検討事項を記載してはならず、また、監査基準報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」に基づいて「その他の記載内容」区分を設けてその他の記載内容に関する事項を記載してはならない(A25項参照)。

4.監査役等とのコミュニケーション

29
監査人は、監査報告書において除外事項付意見の表明が見込まれる場合、その原因となる状況と、除外事項付意見の文言について、監査役等に報告しなければならない(A26項参照)。

1.除外事項付意見の類型(第2項参照)

A1
以下の表は、除外事項付意見を表明する原因の性質と、それが財務諸表に及ぼす影響の範囲、又は及ぼす可能性のある影響の範囲が広範かどうかという監査人の判断が、監査人の表明する意見の類型に対しどのように影響を及ぼすかを示している。除外事項付意見を表明する原因となる事項が財務諸表に除外事項付意見を表明する原因の性質財務諸表に重要な虚偽表示がある及ぼす影響の範囲、又は及ぼす可能性のある影響の範囲が広範なものかどうかという監査人の判断重要だが広範でない重要かつ広範である限定意見否定的意見(限定付適正意見)(不適正意見)十分かつ適切な監査証拠が入手でき限定意見ず、重要な虚偽表示の可能性がある(限定付適正意見)意見不表明括弧内は適正表示の枠組みの場合の意見の類型を示している。

(1)重要な虚偽表示の性質(第5項(1)参照)

A2
監査基準報告書700第11項は、財務諸表に対する意見を形成するため、財務諸表に全体として重要な虚偽表示がないということについての合理的な保証を得たかどうか判断することを監査人に求めている。監査人は、この判断において監査基準報告書450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」第10項に従った財務諸表における未修正の虚偽表示に関する評価を考慮する。
A3
監査基準報告書450において、虚偽表示とは、財務諸表に含まれる財務諸表項目の金額、分類、表示又は注記事項と、適用される財務報告の枠組みに準拠した場合に要求される財務諸表項目の金額、分類、表示又は注記事項との間の差異として定義されている。したがって、財務諸表の重要な虚偽表示は、以下に関連して生ずることがある。(1)選択した会計方針の適切性(2)選択した会計方針の適用(3)財務諸表の注記事項の適切性又は十分性《(2)選択した会計方針の適切性》
A4
経営者が選択した会計方針の適切性に関する財務諸表の重要な虚偽表示は、例えば、以下を原因として生ずることがある。(1)選択した会計方針が、適用される財務報告の枠組みに準拠していない。(2)財務諸表において、貸借対照表、損益計算書、包括利益計算書、株主資本等変動計算書、又はキャッシュ・フロー計算書に関する重要な会計方針が適切に記載されていない。(3)財務諸表において、基礎となる取引や会計事象について適正表示を達成する表示又は注記が行われていない。
A5
適用される財務報告の枠組みには、会計方針の変更における会計処理と注記事項に関する要求事項が含まれている。企業が重要な会計方針の変更を行う際にこれらの要求事項に準拠していない場合、財務諸表の重要な虚偽表示となることがある。

(3)選択した会計方針の適用

A6
選択した会計方針の適用に関する財務諸表の重要な虚偽表示は、以下を原因として生ずることがある。(1)経営者が、選択した会計方針を、適用される財務報告の枠組みに準拠して一貫して適用していない。これには、選択した会計方針を、各期間において継続的に適用していない場合や、類似の取引及び会計事象の間で一貫して適用していない場合が含まれる(適用における一貫性)。(2)選択した会計方針の適用方法(例えば、適用の際の意図的でない誤り)

(4)財務諸表の注記事項の適切性又は十分性

A7
財務諸表の注記事項の適切性又は十分性に関する財務諸表の重要な虚偽表示は、以下を原因として生ずることがある。(1)財務諸表において、適用される財務報告の枠組みが求める注記事項の全部又は一部が含まれていない。(2)財務諸表の注記事項が、適用される財務報告の枠組みに準拠していない。(3)財務諸表の適正表示のために、適用される財務報告の枠組みによって具体的に要求されている以上の追加的な注記が行われていない。

(5)十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合(第5項(2)参照)

A8
監査人は、以下を原因として、十分かつ適切な監査証拠を入手できない場合がある(監査範囲の制約)。(1)企業の管理の及ばない状況(2)監査人の作業の種類又は実施時期に関する状況(3)経営者による監査範囲の制約
A9
監査人が特定の手続を実施できない場合においても、代替手続の実施により十分かつ適切な監査証拠を入手できる場合には、監査範囲の制約とはならない。代替手続の実施によっても十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合には、必要に応じて第6項(2)、第8項及び第9項が適用される。経営者による監査範囲の制約により、例えば、不正リスクの評価や、監査契約の更新についての検討など、他に検討すべき事項が生じる場合がある。
A10
企業の管理の及ばない状況には、例えば、以下が含まれる。・企業の会計記録が滅失している。・グループ監査のためにリスク対応手続が必要であると判断される構成単位の会計記録が、行政当局により長期にわたり差し押さえられている。
A11
監査人の作業の種類又は実施時期に関する状況には、例えば、以下が含まれる。・持分法の適用が要求される関連会社の財務情報に関して、持分法が適切に適用されているかどうかを評価するための十分かつ適切な監査証拠を入手できない。・監査人の選任の時期により、棚卸資産の実地棚卸に立ち会うことができない。・監査人は、実証手続の実施のみでは十分かつ適切な監査証拠を入手できないと判断しているが、これに関連する企業の内部統制が有効でない。
A12
経営者による監査範囲の制約により、十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合には、例えば、以下が含まれる。・監査人による実地棚卸の立会を経営者が拒否している。・特定の勘定残高に関する外部確認についての監査人の要求を経営者が拒否している。

(1)監査人が監査契約を締結した後に経営者による監査範囲の制約により十分かつ適切な監査証拠が入手できない場合(第12項(2)から第13項参照)

A13
監査契約の解除が現実的に可能かどうかは、経営者により監査範囲が制約された時点で、監査業務がどの程度完了しているのかによって決まることがある。監査人は、監査のほとんどが完了しているような場合には、監査契約を解除せずに、実施可能な範囲で監査を完了し、監査報告書の「意見不表明の根拠」区分において監査範囲の制約について説明した上で、意見不表明とすることもある。
A14
監査人が、監査範囲の制約により監査契約の解除が必要であると判断する場合、職業的専門家としての基準又は法令等の規定に基づき監査契約の解除に関する事項を株主総会で陳述することがある。

(2)否定的意見又は意見不表明に関するその他の考慮事項(第14項参照)

A15
否定的意見又は意見不表明とした場合においても、例えば、以下の状況があり得る。・ある適用される財務報告の枠組みに基づき作成された財務諸表に対して無限定意見を表明し、かつ、同じ監査報告書において、同じ財務諸表に対し、別の適用される財務報告の枠組みに関しては否定的意見を表明する(監基報700のA30項参照)。・経営成績及びキャッシュ・フローの状況(関連する場合)に関しては意見不表明とし、財政状態に関しては無限定意見を表明する(監基報510第9項参照)。

監査報告書の文例(第15項参照)

A16
付録の文例1、文例2及び文例6は、それぞれ、財務諸表に重要な虚偽表示があることから、限定付適正意見、不適正意見又は否定的意見を表明する場合の監査報告書の文例を記載している。
A17
付録の文例3は、監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できず、限定付適正意見を表明する場合の監査報告書の文例を記載している。付録の文例4は、財務諸表の一つの要素について十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったことにより意見不表明となる場合の文例を記載している。付録の文例5は、財務諸表の複数の要素について十分かつ適切な監査証拠を入手できなかったことにより意見不表明となる場合の文例を記載している。なお、文例4及び文例5は、いずれも、十分かつ適切な監査証拠を入手できないことが財務諸表に及ぼす可能性のある影響が重要かつ広範な場合である。除外事項付意見の監査報告書の文例は、監査基準報告書570「継続企業」のほか、他の監査基準報告書の付録にも含まれている。

(1)監査意見(第15項参照)

A18
意見区分にこれらの見出しを記載することによって、利用者に対し、除外事項付意見の表明が行われていることを明確にするとともに、監査意見の類型を示すことができる。

(2)限定意見(第16項参照)

A19
監査人が限定意見を表明する場合、意見区分において「前述の説明はあるが」や「を条件として」等の文言を使用するのは適切ではない。これは、これらの表現は十分に明瞭でない又は説得力がないためである。

(3)除外事項付意見の根拠区分(第19項、第20項、第22項及び第26項参照)

A20
監査報告書間の様式や内容等の一貫性は、監査報告書の利用者の理解を助けるとともに、通例でない状況が生じた場合にこれを認識することを容易にする。したがって、除外事項付意見の文言及び除外事項付意見の根拠に関する記載を同一にすることはできないにしても、監査報告書の様式と内容は、監査報告書間で一貫していることが望ましい。
A21
例えば、棚卸資産の過大表示の場合、監査人は、監査報告書の監査意見の根拠の区分に、重要な虚偽表示に関する金額的な影響額として、税引前当期純損益、当期純損益及び純資産への影響額を記載することがある。
A22
財務諸表に開示されていない情報を、監査報告書の監査意見の根拠の区分に開示することが実務的に困難な場合とは、以下のいずれかに該当する場合である。(1)当該開示を経営者が作成していない、又は監査人が容易に入手することができない場合(2)当該開示を監査報告書に含めるには膨大であると監査人が判断した場合
A23
監査意見の根拠の区分に記載した特定の事項に関連して、否定的意見を表明する、又は意見不表明とする場合であっても、除外事項付意見の表明が必要となるその他の事項を識別した場合には、当該事項に関する記載も行わなければならない。これは、監査人が識別したその他の事項に関する開示が、財務諸表の利用者の理解に資する場合があるためである。

(4)監査人が意見を表明しない場合の財務諸表の監査における監査人の責任(第27項参照)

A24
監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合、本報告書の付録の文例4及び文例5のとおり、監査基準報告書700においては監査報告書の「監査意見の根拠」区分に記載される以下の事項は、「財務諸表監査における監査人の責任」区分において記載されることになる。これは、監査報告書の全体の構成の観点から、利用者の理解可能性を考慮したものである。・我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査を実施した旨(監基報700第28項(1)参照)・監査人は、我が国における職業倫理に関する規定(特定の事業体の財務諸表監査に特有の独立性に関する規定が適用される場合には、当該独立性に関する規定を含む。)に従って、会社から独立しており、また、監査人としてのその他の倫理上の責任を果たしている旨(監基報700第28項(3)参照)

(5)監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合の考慮事項(第28項参照)

A25
監査報告書に対して除外事項付意見を表明する原因となる事項は、その性質上、監査上の主要な検討事項に該当するが、監査報告書の「監査上の主要な検討事項」区分に記載してはならないとされている(監基報701第14項参照)。監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合、監査人が十分かつ適切な監査証拠を入手できない理由を監査報告書の「意見不表明の根拠」区分に記載することにより、利用者は監査人が意見を表明しない理由を容易に特定でき、また、財務諸表の不適切な利用を防ぐこともできる。一方、意見不表明の原因となった事項以外の監査上の主要な検討事項の報告は、財務諸表全体に対して意見を表明しないにもかかわらず、当該事項に対しては部分的に信頼を付与しているかのような誤解を与える可能性がある。同様に、その他の記載内容と財務諸表の重要な相違に関する監査人の検討を取り扱っている監査基準報告書720に基づいて「その他の記載内容」区分を含めることは適切ではない。したがって、本報告書の第28項は、財務諸表に対する意見を監査人が表明しない場合、監査報告書に「監査上の主要な検討事項」区分を設けること又は「その他の記載内容」区分を設けることを禁止している。

5.監査役等とのコミュニケーション(第29項参照)

A26
除外事項付意見の表明が見込まれる原因となる状況と除外事項付意見の文言の草案について監査役等に報告することにより、以下が可能となる。(1)監査人は、監査役等に、除外事項付意見の表明が見込まれること、及び除外事項付意見の表明の理由又は状況を事前に知らせることができる。(2)監査人は、除外事項付意見を表明する原因となる事実に関する監査役等の見解を確認することができる。(3)該当する場合、監査役等は、見込まれる除外事項付意見の原因となる事項に関して、追加の情報や説明を監査人に提供できる。

本文の出典:日本公認会計士協会『監査基準報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」』(最終改正 2025年7月17日)。公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧(https://jicpa.or.jp/specialized_field/publication/kansa/#705)。

過去問:公認会計士・監査審査会ウェブサイト(論文式試験 監査論の試験問題、公共データ利用規約1.0)。「何を問われているか」とメモはほしゅが作成したもので、公式の解答ではありません。基準との対応づけは、ほしゅの独自の分析です。

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