監基報706
監査基準報告書706「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」
出典:日本公認会計士協会『監査基準報告書706「独立監査人の監査報告書における強調事項区分とその他の事項区分」』最終改正 2025年7月17日公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧 ↗本文(要求事項・適用指針)を収録。付録(文例・表)と「適用」の節は載せていません。本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された2か所に線を引いています。
1.本報告書の範囲
1
本報告書は、以下の場合における監査報告書の追記情報に関する実務上の指針を提供するものである。(1)財務諸表に表示又は開示されている事項について、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であるため、当該事項を強調し利用者の注意を喚起する必要があると監査人が判断する場合(2)財務諸表に表示又は開示されていない事項について、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連するため、当該事項を説明し利用者の注意を喚起する必要があると監査人が判断する場合
2
監査基準報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」は、監査人が監査上の主要な検討事項を決定し、監査報告書において報告を行う場合の実務上の指針を提供している。監査人が監査報告書に監査上の主要な検討事項を含める場合、監査上の主要な検討事項と本報告書に基づく追記情報との関係を本報告書は取り扱っている(A1項からA3項参照)。
3
監査基準報告書570「継続企業」は、継続企業を前提として財務諸表を作成することに関する、財務諸表の監査における実務上の指針を提供している。また、監査基準報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」は、その他の記載内容に関する監査報告書の記載について実務上の指針を提供している。
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付録1及び付録2には、それぞれ、監査報告書に「強調事項」区分及び「その他の事項」区分を設けることを監査人に求めている監査基準報告書を記載している。これらの場合においては、監査報告書における「強調事項」区分及び「その他の事項」区分の様式に関する本報告書の要求事項が適用される(A4項参照)。
2.本報告書の目的
5
本報告書における監査人の目的は、財務諸表に対する意見を形成した上で、監査人が必要であると判断する場合に、監査報告書に明瞭に追記することによって、以下の事項について利用者の注意を喚起することである。(1)財務諸表に適切に表示又は開示されている事項のうち、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要である事項(2)必要に応じて、財務諸表に表示又は開示されていない事項のうち、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連する事項《3.定義》
6
本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。(1)「「強調事項」区分」-財務諸表に適切に表示又は開示されている事項について、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であると監査人が判断し、当該事項を強調するため監査報告書に設ける区分をいう。(2)「「その他の事項」区分」-財務諸表に表示又は開示されていない事項について、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連すると監査人が判断し、当該事項を説明するため監査報告書に設ける区分をいう。
1.監査報告書における「強調事項」区分
7
監査人は、財務諸表に表示又は開示されている事項について、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であるため、当該事項を強調して利用者の注意を喚起する必要があると判断し、かつ以下のいずれにも該当する場合、監査報告書に「強調事項」区分を設けなければならない(A1項からA6項参照)。(1)監査基準報告書705「独立監査人の監査報告書における除外事項付意見」に従い強調事項に関連して除外事項付意見を表明する必要がないと判断している。(2)監査基準報告書701が適用される場合、「強調事項」区分への記載を検討する事項が、監査上の主要な検討事項に該当しないと判断している(A1項からA3項参照)。
8
監査人は、監査報告書に「強調事項」区分を設ける場合、以下に従って記載しなければならない。(1)「強調事項」という用語を含めた適切な見出しを付して、当該区分を監査報告書の独立した区分として設ける。(2)当該区分に、財務諸表における記載箇所と関連付けて、強調する事項を明瞭に記載する。当該区分は、財務諸表において表示又は開示されている情報にのみ参照される。(3)強調事項は監査人の意見に影響を及ぼすものではないことを記載する(A7項、A8項、A16項及びA17項参照)。
2.監査報告書における「その他の事項」区分
9
監査人は、財務諸表に表示又は開示されていない事項について、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連するため監査報告書において説明する必要があると判断した場合で、かつ、以下のいずれにも該当する場合、監査報告書に「その他の事項」区分を設けなければならない(A10項からA17項参照)。(1)法令等によって監査報告書に記載することが禁止されていない。(2)監査基準報告書701が適用される場合、「その他の事項」区分への記載を検討する事項が、監査上の主要な検討事項に該当しないと判断している(A10項からA14項参照)。
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監査人が監査報告書に「その他の事項」区分を設ける場合、監査人は、独立した区分として「その他の事項」又は他の適切な見出しを付さなければならない(A15項からA17項参照)。
3.監査役等とのコミュニケーション
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監査人は、監査報告書に「強調事項」区分又は「その他の事項」区分を設けることが見込まれる場合、その旨と当該区分の文言の草案について、監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)にコミュニケーションを行わなければならない(A18項参照)。
1.監査報告書における「強調事項」区分と監査上の主要な検討事項の関係(第2項及び第7項(2)参照)
A1
監査基準報告書701において、監査上の主要な検討事項は、当年度の財務諸表監査において、監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項であると定義されている。監査上の主要な検討事項は、当年度の財務諸表監査における重要な発見事項を含め、監査基準報告書260「監査役等とのコミュニケーション」第16項に基づいて監査役等とコミュニケーションした事項の中から選択される。監査上の主要な検討事項の報告により、想定される財務諸表の利用者に対して、当年度の財務諸表監査において監査人が職業的専門家として特に重要であると判断した事項を理解するのに役立つ追加的な情報が提供される。また、監査上の主要な検討事項の報告は、想定される財務諸表の利用者が企業や監査済財務諸表における経営者の重要な判断が含まれる領域を理解するのに役立つ場合がある。監査基準報告書701が適用となる場合、「強調事項」区分の利用は、監査上の主要な検討事項の記載の代替とはならない。
A2
監査人は、監査基準報告書701に従って決定した監査上の主要な検討事項が、同時に強調事項に該当すると判断することがある。すなわち、監査上の主要な検討事項の報告において、監査人は当該事項が相対的に重要であることを強調し、注意喚起することが適切と判断することがある。そのような場合、監査人は、当該事項を「監査上の主要な検討事項」区分の最初に記載したり、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であることを示唆する追加の情報を、監査上の主要な検討事項の記載に含めることが考えられる。
A3
監査人は、監査基準報告書701に基づき監査上の主要な検討事項には該当しないが、「強調事項」区分を設けることが適切であると判断することがある。例えば、後発事象等、利用者が財務諸表を理解する基礎として重要であると監査人が判断する事項がある場合、利用者の注意を喚起するために、本報告書に従って当該事項を監査報告書の「強調事項」区分に記載する。
(1)「強調事項」区分が必要となる可能性がある場合(第4項及び第7項参照)
A4
付録1は、特定の状況において監査報告書に「強調事項」区分を設けることを監査人に要求している他の監査基準報告書を記載している。当該事項が、監査基準報告書701に基づく監査上の主要な検討事項に該当する場合には「監査上の主要な検討事項」区分及び「強調事項」区分の両方に記載することになる。
A5
監査人は、例えば、会計方針の変更、重要な偶発事象、重要な後発事象について「強調事項」区分に追記する場合がある。以下は、「強調事項」区分が必要と監査人が判断する可能性がある場合の例である。会計方針の変更・財務諸表に重要な影響を与える新しい会計基準の早期適用(早期適用が認められている場合)重要な偶発事象又は重要な後発事象・重要な訴訟や規制上の措置の将来の結果に関する不確実性・企業の財政状態に重大な影響を与えた、又は今後も引き続き与える大きな災害・期末日の翌日から監査報告書日までの間に発生した重要な合併(監基報560第5項参照)
A6
しかしながら、「強調事項」区分を多用すると、強調事項の記載の有効性を損ねることになる。
(2)監査報告書における「強調事項」区分の性格(第8項参照)
A7
監査報告書に「強調事項」区分を設けることは、監査意見に影響を及ぼすものではなく、したがって以下を代替するものではない。(1)監査人が、除外事項付意見を表明すること(監査基準報告書705参照)。(2)適用される財務報告の枠組みにより経営者に要求される財務諸表の注記事項、又は適正表示を達成するために必要な財務諸表の追加的な注記事項(3)継続企業の前提に関する重要な不確実性に関する報告を行うこと(監査基準報告書570第22項及び第23項参照)。
A8
A16項及びA17項は、特定の状況における「強調事項」区分の記載箇所に関する、追加の実務上の指針を提供している。
(1)「その他の事項」区分が必要となる可能性がある場合
A9
付録2は、特定の状況において監査報告書に「その他の事項」区分を設けることを監査人に要求している他の監査基準報告書を記載している。当該事項が、監査基準報告書701に基づく監査上の主要な検討事項に該当する場合には「監査上の主要な検討事項」区分及び「その他の事項」区分の両方に記載することになる。
監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連する事項
A10
監査基準報告書260第16項は、計画された監査の範囲とその実施時期について、監査人が監査役等とコミュニケーションを行うことを要求しており、これには監査人により識別された特別な検討を必要とするリスクが含まれる。特別な検討を必要とするリスクに関する事項は監査上の主要な検討事項と判断される場合があるが、その他の監査計画及び範囲に関する事項(例えば、計画した監査の範囲、又は監査における重要性の適用)は、監査基準報告書701における定義から、通常、監査上の主要な検討事項とはならない。しかしながら、監査計画及び範囲に関する事項は、法令等により監査報告書において報告することが要求される場合、又は監査人が「その他の事項」区分で当該事項を報告することが必要であると考える場合がある。
A11
法令等又は一般に認められる実務慣行によって、財務諸表監査における監査人の責任又は監査報告書についての追加的な説明を記載することが監査人に要求されている又は認められている場合がある。例えば、我が国の場合、公認会計士法の規定により要求される利害関係の記載がこれに該当する。「その他の事項」区分が、監査、監査人の責任又は監査報告書についての利用者の理解に関連すると監査人が判断した複数の事項を含む場合、各事項に小見出しを付すことがある。
A12
「その他の事項」区分は、監査人が我が国において一般に公正妥当と認められる監査の基準に基づく監査人の責任に加えてその他の報告責任を有する状況(監査基準報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」第43項及び第45項参照)、若しくは、監査人が追加的な特定の手続を実施し報告すること、又は特定の事項について意見を表明することを依頼されている状況を扱うものではない。
一組の財務諸表が複数作成されている場合の報告
A13
ある適用される財務報告の枠組み(例えば、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準)に準拠して作成された一般目的の一組の財務諸表に加え、他の適用される財務報告の枠組み(例えば、国際会計基準)に準拠したもう一組の一般目的の財務諸表が作成されている場合、監査人は、両方の一組の財務諸表に対して報告する業務を依頼されることがある。監査人は、二つの適用される財務報告の枠組みがそれぞれの状況において受入可能なものであると判断した場合、監査報告書の「その他の事項」区分において、企業が他の適用される財務報告の枠組みに準拠した財務諸表を別に作成している旨、及び監査人が当該別の財務諸表に対して監査報告書を発行している旨を記載することがある。
監査報告書の配布又は利用制限
A14
一般目的の財務諸表が、特定の利用者の財務情報に対するニーズを満たすと特定の利用者が判断する場合には、一般目的の適用される財務報告の枠組みに準拠して作成された財務諸表が特定の目的に利用される場合がある。この場合の監査報告書は特定の利用者を想定しているため、監査人は、「その他の事項」区分を設け、監査報告書は特定の利用者のみを対象としており、当該監査報告書が特定の利用者以外に配布又は利用されてはならない旨を記載する必要があると判断することがある。
(2)監査報告書における「その他の事項」区分の性格
A15
「その他の事項」区分は、財務諸表で表示及び開示することが要求されていない事項であることを明瞭に示す内容となる。「その他の事項」区分には、法令等又は他の職業的専門家としての基準(例えば、秘密保持に関する倫理規則)によって、監査人が提供することが禁止されている情報は記載しない。また、「その他の事項」区分には、経営者が提供することが要求されている情報も記載しない。
3.監査報告書における「強調事項」区分と「その他の事項」区分の記載箇所(第8項及び第10項参照)
A16
監査報告書における「強調事項」区分又は「その他の事項」区分の記載箇所は、当該事項の内容及び想定利用者にとっての相対的重要性に関する監査人の判断によって決まる。相対的重要性は、監査基準報告書700に従って報告することが求められる他の要素と比較して判断される。以下は記載箇所に関する例である。「強調事項」区分・「強調事項」区分が適用される財務報告の枠組みに関連する場合(例えば、監基報210第15項及び監基報800第13項に基づく場合)、監査人は当該「強調事項」区分が監査意見と適切に関連づけられるように、監査意見の根拠の区分の後に記載することが適切と考えることがある。・「監査上の主要な検討事項」区分が監査報告書において記載されている場合、「強調事項」区分に含まれる情報の相対的重要性に関する監査人の判断に基づいて、「強調事項」区分は、「監査上の主要な検討事項」区分の前後いずれかに記載する。また、監査人は、「強調事項」区分を「監査上の主要な検討事項」区分に記載される個別の事項と区別するため、「強調事項」の見出しに追加的な情報を加えることがある。「その他の事項」区分・監査報告書において、「監査上の主要な検討事項」区分とともに、「その他の事項」区分の記載も必要と考えられる場合、監査人は、「その他の事項」の見出しに追加の情報を加えることによって、当該「その他の事項」区分を「監査上の主要な検討事項」区分に記載された個別の事項と区別することがある。・監査報告書に記載される法令等によるその他の報告責任に関連する事項について利用者の注意を喚起するためにその他の事項を記載する場合、「その他の事項」区分は、「法令等が要求するその他の事項に対する報告」に含められる場合がある。・財務諸表監査と法令等が要求するその他の報告責任の双方に関連する場合や、監査報告書についての理解に関連する場合には、「その他の事項」区分は、「財務諸表監査」と「法令等に基づくその他の報告」の次に、別個の区分として設けられる場合がある。
A17
付録3には、監査上の主要な検討事項が含まれている監査報告書の文例を記載している。
4.監査役等とのコミュニケーション(第11項参照)
A18
本報告書の第11項により監査人が「強調事項」区分又は「その他の事項」区分を含む監査報告書の草案を監査役等に示すことによって、監査役等は監査報告書で記載される特定の事項の性質について認識することができる。また、監査役等は必要に応じて監査人から追加的な説明を受ける機会を得ることができる。継続監査において、特定の事項に関する「その他の事項」区分が監査報告書に毎期設けられる場合、法令等により要求されない限り、監査人は、監査役等とのコミュニケーションを毎期繰り返す必要はないと判断することがある。