監基報720
監査基準報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」
出典:日本公認会計士協会『監査基準報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」』最終改正 2025年7月17日公式ページ:JICPA 監査実務指針等の一覧 ↗本文(要求事項・適用指針)を収録。付録(文例・表)と「適用」の節は載せていません。本文は公式の文書から取り出し、一字一句照合しています(2026-10-19 取得)。出題された2か所に線を引いています。
改正の予定:2026年3月18日に改正されています(サステナビリティ保証業務実務指針5000の公表に伴う修正)。改正後の版は2027年4月1日以後開始する事業年度の監査から適用(早期適用可)。ここでは、いま適用されている2025年7月17日改正の版を載せています。 JICPA 2026年3月の改正の公表 ↗
1.本報告書の範囲
1
本報告書は、財務情報又は非財務情報を問わず、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容、つまり、通常、企業の年次報告書に含まれるその他の記載内容(財務諸表及びその監査報告書以外の情報)に関連する監査人の責任について実務上の指針を提供するものである。企業の年次報告書は、単一の文書である場合と、同様の目的のために作成される複数の文書から構成される場合がある。
2
本報告書は、独立監査人による財務諸表監査を前提としている。したがって、本報告書における監査人の目的は、監査基準報告書200「財務諸表監査における総括的な目的」第10項に記載された監査人の総括的な目的の観点から理解される必要がある。監査基準報告書の要求事項は、監査人が各報告書に記載された目的を達成すること、及びそれにより監査人の総括的な目的を達成することができるようにデザインされている。財務諸表に対する監査意見はその他の記載内容を対象とせず、また、本報告書は財務諸表に対する意見を形成するために要求される以上の監査証拠の入手を監査人に要求するものではない。
3
本報告書は、監査人に、その他の記載内容を通読し、財務諸表及び監査人が監査の過程で得た知識とその他の記載内容に重要な相違があるかどうかを検討することを要求している。財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識と重要な相違があるその他の記載内容の存在は、財務諸表に重要な虚偽表示があること又はその他の記載内容に重要な誤りがあることを示唆している可能性があり、そのいずれの場合においても財務諸表及びその監査報告書の信頼性を損なう可能性があるためである。そのような重要な虚偽表示又は誤りは、監査報告書の利用者の経済的意思決定に不適切な影響を及ぼす可能性がある。
4
我が国における職業倫理に関する規定は、監査人が以下のいずれかの情報であると認識しながらその報告、回答、コミュニケーション又はその他の情報に関与してはならないと定めている(倫理規則R111.2項参照)。・重要な虚偽又は誤解を招く情報・思慮なく提供された情報・必要な情報を省略する、又は曖昧にすることにより誤解を生じさせるような場合において、当該情報を省略する、又は曖昧にする情報本報告書は、当該原則の遵守に資するものである。
5
その他の記載内容には、財務諸表の数値又は数値以外の項目と同一の情報、要約した情報又はより詳細な情報を提供することを意図した情報が含まれることがある。また、その他の記載内容は、財務諸表には記載されていないが、監査人が監査の過程で知り得た数値又は数値以外の項目を含むこともある。さらに、その他の記載内容には、それら以外の事項が含まれることもある。
6
その他の記載内容に関する監査人の責任は、監査報告書における報告責任を除き、監査人がその他の記載内容を監査報告書日以前に入手したか監査報告書日より後に入手したかにかかわらず同じである。なお、監査人は、その他の記載内容が存在しないと判断した場合であっても、本報告書に従った監査報告書における報告責任を有する。
7
本報告書において「監査した財務諸表を含む開示書類」は、通常、第11項(3)で定義されている年次報告書である(第11項(1)参照)。そのため、本報告書は、決算短信等の財務情報の速報には適用されない。ただし、本報告書は、有価証券届出書等、監査した財務諸表を含む年次報告書以外の開示書類にも適用されることがある。
8
本報告書における監査人の責任は、その他の記載内容に関する保証業務を構成するものではなく、また、監査人にその他の記載内容について保証を得て意見又は結論を表明する義務を課すものでもない。
9
法令等によりその他の記載内容について監査人に対して追加の義務が課される場合もあるが、そのような追加の義務は本報告書では取り扱っていない。
2.本報告書の目的
10
本報告書における監査人の目的は、その他の記載内容を通読し、以下を行うことである。(1)その他の記載内容と財務諸表との間に重要な相違があるかどうかを検討すること。(2)その他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかを検討すること。(3)重要な相違又はその他の記載内容に重要な誤りがあると思われる状況を識別した場合、適切に対応すること。(4)本報告書に準拠して報告すること。
3.定義
11
本報告書における用語の定義は、以下のとおりとする。(1)「その他の記載内容」-監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容をいう。その他の記載内容は、通常、財務諸表及びその監査報告書を除く、企業の年次報告書に含まれる財務情報及び非財務情報である(A8項からA10項参照)。(2)「その他の記載内容の誤り」-その他の記載内容における不正確な記載又は誤解を生じさせる記載(その他の記載内容に開示された事項の適切な理解のために必要な情報を省略している場合又は曖昧にしている場合を含む。)(A6項及びA7項参照)。(3)「年次報告書」-法令等又は慣行により経営者が通常年次で作成する単一又は複数の文書であり、企業の事業並びに財務諸表に記載されている経営成績及び財政状態に関する情報を所有者(又は類似の利害関係者)に提供することを目的としているものをいう。年次報告書には、財務諸表及びその監査報告書が含まれているか、又は添付されており、通常、企業の動向、将来の見通し、リスク及び不確実性に関する情報並びに企業のガバナンスに関する情報が含まれる(A1項からA5項参照)。
1.その他の記載内容の入手
12
監査人は以下の事項を行わなければならない(A11項からA22項参照)。(1)経営者との協議を通じて、年次報告書を構成する文書並びにその発行方法及び発行時期の予定を特定する。(2)年次報告書を構成する文書の最終版を、適時に、また可能であれば監査報告書日以前に入手するため、経営者と適切な調整を行う。(3)監査人は、(1)において特定された文書の一部又は全てを監査報告書日までに入手できない場合がある。そのような場合、本報告書により要求される手続を完了できるようにするため、経営者に対し、企業が当該文書を発行する前に最終版の提供が可能となった時点で監査人に提供する旨を経営者確認書に含めるよう要請する(A22項参照)。
2.その他の記載内容の通読及び検討
13
監査人は、その他の記載内容を通読しなければならない。また、通読の過程において、以下を行わなければならない(A23項及びA24項参照)。(1)その他の記載内容と財務諸表の間に重要な相違があるかどうか検討すること。当該検討の基礎として、財務諸表とその他の記載内容の整合性を評価するため、監査人は、その他の記載内容の数値又は数値以外の項目のうち、財務諸表の数値又は数値以外の項目と同一の情報、要約した情報又はより詳細な情報を提供することを意図した情報から選択したものを、財務諸表における当該数値又は数値以外の項目と比較しなければならない(A25項からA29項参照)。(2)監査において入手した証拠と到達した結論の観点から、その他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識の間に重要な相違があるかどうか検討すること(A30項からA36項参照)。
14
監査人は、第13項に従ってその他の記載内容を通読する過程において、財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容について、重要な誤りがあると思われる兆候に注意を払わなければならない(A24項、A37項及びA38項参照)。
3.重要な相違があると思われる場合又はその他の記載内容に重要な誤りがあると思われる場合の対応
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監査人は、重要な相違があると思われる場合(又は重要な誤りがあると思われるその他の記載内容に気付いた場合)、当該事項について経営者と協議し、以下に該当するかどうかを判断するために、必要に応じてその他の手続を実施しなければならない(A39項からA43項参照)。(1)その他の記載内容に重要な誤りがあること。(2)財務諸表に重要な虚偽表示があること。(3)監査人の企業及び企業環境に関する理解を更新する必要があること。
4.監査人がその他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合の対応
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監査人は、その他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合、経営者にその他の記載内容の修正を要請し、以下を実施しなければならない。(1)経営者が修正に同意した場合、監査人は修正が行われたことを確認しなければならない。(2)経営者が修正に同意しない場合、監査人は監査役若しくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会(以下「監査役等」という。)に当該事項を報告するとともに、修正を要請しなければならない。
17
監査報告書日以前に入手したその他の記載内容に重要な誤りがあると判断し、また監査役等への報告後もその他の記載内容が修正されていない場合、監査人は以下を含む適切な措置を講じなければならない(A44項参照)。(1)監査報告書に及ぼす影響を検討し、監査報告書において重要な誤りに関して監査人がどのように対応する計画かを監査役等に対して報告する(A45項参照)。(2)現実的な対応として可能であれば、監査契約を解除する(A46項参照)。
18
監査報告書日より後に入手したその他の記載内容に、重要な誤りがあると判断した場合、監査人は以下のいずれかを行わなければならない。(1)その他の記載内容が修正された場合、状況に応じて必要な手続を実施する。(A47項参照)(2)監査役等に報告した後もその他の記載内容が修正されない場合、未修正の重要な誤りについて監査報告書の利用者の注意が適切に喚起されるよう、監査人としての法的権利と義務を検討して適切な措置を講じる(A48項及びA49項参照)。
5.財務諸表に重要な虚偽表示がある、又は監査人の企業及び企業環境に関する理解を更新する必要がある場合の対応
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監査人は、第13項及び第14項の手続を実施した結果、財務諸表に重要な虚偽表示がある、又は監査人の企業及び企業環境に関する理解を更新する必要があると判断した場合、他の監査基準報告書に従って適切に対応しなければならない(A50項参照)。
6.報告
20
監査人は、監査報告書に「その他の記載内容」又は他の適切な見出しを付した区分を設けなければならない。
21
「その他の記載内容」区分には以下を含めなければならない。ただし、第12項に基づいて実施した手続の結果、その他の記載内容が存在しないと判断した場合には、その他の記載内容が存在しないと判断した旨及びその他の記載内容に対していかなる作業も実施していない旨を記載する(A51項参照)。(1)その他の記載内容の特定①監査報告書日以前に監査人が入手したその他の記載内容②監査報告書日より後に入手する予定のその他の記載内容(2)経営者のその他の記載内容に対する責任及び監査役等のその他の記載内容に対する責任(3)監査意見の対象にはその他の記載内容は含まれておらず、監査人は意見を表明するものではなく、また、表明する予定もない旨(4)本報告書で求められる、その他の記載内容の通読、検討及び報告に関する監査人の責任(5)監査報告書日以前に入手したその他の記載内容がある場合には、以下のいずれかの記載①監査人が報告すべき事項はない旨②監査人がその他の記載内容に未修正の重要な誤りがあると結論付けた場合、当該未修正の重要な誤りの内容
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監査人は、監査基準報告書705に従って、財務諸表に対して限定付適正意見又は不適正意見を表明する場合、第21項(5)に基づく記載において、除外事項付意見の原因となった事項の影響を検討しなければならない(A52項からA56項参照)。
法令等により監査報告書の様式又は用語が規定されている場合
23
法令等において、監査報告書に使用するその他の記載内容に関する具体的な様式や文言が規定されている場合、監査報告書に、最低限、以下の記載が含まれている場合にのみ、監査報告書において一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠している旨を記載することができる(A57項参照)。(1)監査報告書日以前に監査人が入手したその他の記載内容の特定(2)その他の記載内容に関する監査人の責任(3)本報告書に基づいて実施した監査人の作業結果の明示《7.監査調書》
24
監査基準報告書230「監査調書」の適用に当たっては、監査人は、同報告書第7項から第10項に注意を払い、以下の事項を監査調書に含めなければならない。(1)本報告書により実施した手続の記載(2)本報告書により要求される作業を監査人が実施したその他の記載内容の最終版《Ⅲ適用指針》
(1)年次報告書(第11項(3)参照)
A1
その他の記載内容は、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容であり、通常、財務諸表及びその監査報告書を除く、企業の年次報告書に含まれる財務情報及び非財務情報である。年次報告書の内容及び名称は、法令等又は慣行により規定される場合があり、様々である。
A2
年次報告書は、通常、年次で作成される。ただし、監査対象となる財務諸表が一年未満又は一年を超える期間を対象として作成される場合、年次報告書もその財務諸表と同じ期間を対象として作成されることもある。
A3
企業の年次報告書は、「年次報告書」又はその他の名称が付された単一の文書の場合がある。また、法令等又は慣行により、企業はその所有者(又は類似の利害関係者)に対し、企業の事業並びに財務諸表に記載された経営成績及び財政状態に関する情報を、単一の文書又は複数の文書の組合せにより提供するよう要請される場合もある。これらの単一の文書又は複数の文書も年次報告書に該当する場合がある。例えば、法令等又は慣行によっては、以下の事項を記載した単一又は複数の文書が年次報告書の一部を構成する場合がある。・経営者による事業(事業上のリスクを含む。)及び財務に関する報告若しくは類似の説明・ガバナンスに責任を有する者による報告・コーポレート・ガバナンスに関する報告・内部統制及びリスク評価に関する報告。ただし、金融商品取引法に基づく場合等、財務報告に係る内部統制の監査を行っているときは、内部統制報告書は監査対象となっているため、本報告書におけるその他の記載内容には含まれない。
A4
年次報告書は、書面で又は企業のウェブサイトを含め電子的に、利用者に提供される。利用者への提供方法は、ある文書が年次報告書の定義を満たすかどうかに影響しない。
A5
特定の利害関係者グループの情報ニーズを満たすために作成された報告書や、特定の規制による報告要請に準拠するために作成された報告書は、外部に公表されるとしても、その性質、目的、内容において年次報告書とは異なる。これらの文書は、単一の文書として発行された場合、通常、法令等又は慣行に基づく年次報告書の一部を構成する文書に該当せず、したがって、本報告書の対象となるその他の記載内容には該当しない。これには、以下が含まれる。・銀行、保険等の特定業種で作成が求められる規制上の報告書(例えば、自己資本の適切性に関する報告書)・企業の社会的責任に関する報告書・サステナビリティー報告書・多様性及び機会の平等に関する報告書・製品責任に関する報告書・労働慣行及び労働条件に関する報告書・人権に関する報告書《(2)その他の記載内容の誤り》(第11項(2)参照)
A6
その他の記載内容に特定の事項が開示されている場合、当該事項の適切な理解のために必要な情報が省略されていたり、又は曖昧になっていることがある。例えば、その他の記載内容が経営者の主要な業績評価指標に言及している場合、経営者が利用する複数の業績評価指標のうち1つの指標を省略して記載することは、利用者に誤解を生じさせる可能性がある。
A7
その他の記載内容に関する作成基準等において重要性の概念が取り扱われている場合には、監査人が本報告書に係る重要性を判断する際の参考となる。しかし、多くの場合、その他の記載内容に適用される枠組みにおいて重要性の概念は取り扱われていない可能性がある。そのような状況においては、以下の特性がその他の記載内容の誤りの重要性を判断する際の参考となる。・重要性は、監査報告書の一般的な利用者が有する共通の情報ニーズの観点から検討される。その他の記載内容の利用者は、財務諸表に関する背景情報を得ることを期待してその他の記載内容を利用すると考えられるため、財務諸表の利用者と同一と想定される。・重要性の判断は、未修正の誤りが利用者に影響を及ぼすかどうか、誤りのそれぞれの状況を検討して行われる。全ての誤りが利用者の経済的意思決定に影響するわけではない。・重要性の判断は、質的な側面及び量的な側面の双方を検討して行われる。したがって、その判断に当たりその他の記載内容に記載された事項の性質及び影響の大きさを、年次報告書全体に照らして検討することがある。なお、我が国においては、記述情報の開示の重要性は、投資家の投資判断にとって重要か否かにより判断すべきという考え方が「記述情報の開示に関する原則」において示されている。
(3)その他の記載内容(第11項(1)参照)
A8
付録1は、その他の記載内容に含まれる可能性のある数値又は数値以外の項目の例を示している。
A9
適用される財務報告の枠組みによっては、特定の開示を財務諸表以外の箇所に記載することを許容する場合がある。例えば、国際財務報告基準(IFRS)第7号「金融商品:開示」は、要求される特定の開示を、財務諸表と同じ条件で同じ時期に財務諸表の利用者が入手することのできるその他の文書(経営者による説明書又はリスク報告書など)に財務諸表から参照することを許容している。当該開示は適用される財務報告の枠組みに基づく開示のため、財務諸表の一部を構成する。したがって、当該開示は本報告書の目的においてその他の記載内容を構成しない。
A10
XBRLのタグは、本報告書に定義されるその他の記載内容ではない。
2.その他の記載内容の入手(第12項参照)
A11
年次報告書又は年次報告書を構成する文書は、通常、法令等に基づき明確に特定される。一方、複数の文書が慣行に基づいて発行されている場合、どの文書が年次報告書を構成する文書であるか明確ではないことがある。そのような場合、文書の発行時期及び目的(並びに想定される利用者)が監査人による年次報告書の特定に関連することがある。
A12
年次報告書が法令等に従い他の言語に翻訳されている場合(例えば、複数の公用言語が存在する国の場合)、又は複数の年次報告書が異なる法律に基づき作成される場合(例えば、複数の国に上場している場合)、単一又は複数の年次報告書がその他の記載内容を構成するかを検討する必要が生じることがある。我が国においては、例えば、以下の場合に作成される報告書は、それぞれ年次報告書として完結しているため、他方のその他の記載内容を構成しないものとする。(1)会社法及び金融商品取引法に基づく監査を実施している場合・計算書類及び事業報告並びにこれらの附属明細書・有価証券報告書(2)有価証券報告書を基に他の言語に翻訳されたアニュアルレポートの監査を実施している場合・有価証券報告書・アニュアルレポート(3)企業が米国SECに登録している場合・有価証券報告書・SEC規則に基づく年次報告書(Form20-F)
A13
経営者は、年次報告書を作成する責任を有する。監査人は、以下の事項に関して、経営者とコミュニケーションを行う場合がある。・監査人が本報告書により要求される手続を監査報告書日以前に完了することができるよう、適時に年次報告書を構成する複数の文書の組合せを含む最終版を入手することを想定している旨。又は、当該入手が実務上不可能な場合には、企業が当該情報を発行する前に可能な限り早く入手することを想定している旨・監査報告書日より後にその他の記載内容を入手する場合の監査への影響
A14
A13項に記載されたコミュニケーションは、例えば以下の場合に特に適切になることがある。・初年度の監査業務・経営者の交代があった場合・監査報告書日より後にその他の記載内容を入手することが想定される場合
A15
年次報告書の発行に関して、認められた権限を持つ者が承認したものがその他の記載内容の最終版となる。なお、我が国では、会社法において取締役会による事業報告の最終承認が要求されているが、そのような最終承認は監査人がその他の記載内容について本報告書で要求される手続を行うために必要なものではない。したがって、本報告書では、事業報告の最終版は、経営者が最終版であることを表明した事業報告を指し、通常、経営者確認書の日付までに監査人に提出された事業報告となる。
A16
企業の年次報告書が、法令等又は慣行により、単一の文書として期末日後速やかに発行される場合、監査人は、年次報告書を監査報告書日以前に通常入手できる。一方、期末日後、相当の期間経過後まで発行が要求されない場合や、企業が発行時期を選択できる場合もある。また、企業の年次報告書が複数の文書から構成される場合、法令等又は慣行により、各文書の発行時期が異なる場合もある。我が国においては、法令等に基づいて作成される年次報告書を構成する有価証券報告書や事業報告は、それぞれが完結した単一の文書として作成されるものと考えられる。したがって、それらの一部分のみが監査報告書日以前に入手できないことは通常想定されない。
A17
企業が年次報告書の一部を構成する可能性がある文書の作成を検討しているが(例えば、利害関係者に対する任意の報告書)、監査報告書日において、経営者が監査人に対し当該文書の目的又は発行時期を示すことができない場合がある。監査人が当該文書の目的又は発行時期を確認できないのであれば、当該文書は本報告書におけるその他の記載内容には該当しない。
A18
監査人がその他の記載内容を監査報告書日以前に適時に入手することにより、財務諸表、監査報告書又はその他の記載内容に対する必要な修正を発行前に行うことが可能となる。監査人は、その他の記載内容を適時に、また可能であれば監査報告書日以前に監査人に提供することを経営者と合意し、その旨を監査契約書に含めることがある(監査基準報告書210「監査業務の契約条件の合意」のA24項参照)。
A19
その他の記載内容が、利用者にとって企業のウェブサイトにおいてのみ利用可能である場合であっても、本報告書に従って監査人が手続を実施すべき文書は、企業のウェブサイトから直接入手したその他の記載内容ではなく、企業から入手したその他の記載内容である。本報告書において、監査人は企業のウェブサイトを含めその他の記載内容を探索する責任や、その他の記載内容が企業のウェブサイトにおいて適切に表示され、又は送信若しくは電子開示されていることを確認するための手続を実施する責任はない。
A20
監査人は、その他の記載内容の一部又は全部を入手していない場合であっても、監査報告書の日付を決定し、又は監査報告書を発行することができる。
A21
監査人は、監査報告書日より後にその他の記載内容を入手した場合、監査基準報告書560「後発事象」の第5項及び第6項に従って実施した手続を更新することは要求されない。
A22
監査基準報告書580「経営者確認書」は、経営者確認書に関する要求事項を規定し、また実務上の指針を提供するものである。第12項(3)によって要求される経営者確認書は、監査報告書日より後にのみ入手可能なその他の記載内容に関して、本報告書において要求される手続を監査人が完了できるようにすることを意図している。また、監査人は、経営者確認書において、例えば以下のその他の確認事項を要請することが有用であると判断する場合がある。・経営者は、発行を予定しているその他の記載内容を構成する可能性がある全ての文書について監査人に通知した旨・財務諸表と監査報告書日以前に監査人に提供したその他の記載内容には一貫性があり、また当該その他の記載内容には重要な誤りが含まれていない旨・監査報告書日以前に監査人に提供されなかったその他の記載内容に関して、経営者が当該その他の記載内容を作成し、発行する意図がある旨及び発行時期の予定《3.その他の記載内容の通読及び検討》(第13項及び第14項参照)
A23
監査人は、監査基準報告書200第14項において、職業的懐疑心を保持して監査を計画し実施することが要求されている。その他の記載内容の通読及び検討において職業的懐疑心を保持することには、例えば、経営者が計画の達成に関して過度に楽観的である可能性を認識することや、以下と相違する可能性がある情報に関して注意を払うことが含まれる。(1)財務諸表(2)監査人が監査の過程で得た知識
A24
監査責任者は、監査基準報告書220「監査業務における品質管理」第29項及び第30項に基づき、監査チームのメンバーへの指揮、監督及び作業の査閲に対する責任を負うこと、また指揮、監督及び査閲の内容、時期及び範囲について監査事務所の方針又は手続、職業的専門家としての基準並びに適用される法令に従って計画し実施しているかを判断することが要求されている。第13項及び第14項の要求事項に対応するための適切な監査チームメンバーを決定する際に、以下の事項を考慮することがある。・監査チームメンバーの相対的な経験・業務を割り当てられる監査チームメンバーは、その他の記載内容と関連する知識との相違を識別するための、監査の過程で得た知識を有しているかどうか。・第13項及び第14項の要求事項に対応するために必要な判断の程度。例えば、財務諸表の金額と同一であることが意図された、その他の記載内容の金額の整合性を評価する手続は、より経験の浅い監査チームメンバーによって実施されることもある。・グループ監査の場合、構成単位に関連するその他の記載内容に対応するために、構成単位の監査人に質問する必要があるかどうか。
(1)その他の記載内容と財務諸表に重要な相違があるかどうかの検討(第13項(1)参照)
A25
その他の記載内容に、財務諸表の数値又は数値以外の項目と同一の情報、要約した情報又はより詳細な情報を提供することを意図した情報が含まれる場合がある。そのような数値又は数値以外の項目には、例えば以下がある。・財務諸表の抜粋を含む表、図表又はグラフ・財務諸表に表示された残高又は勘定より詳細な開示、例えば「20X1年の売上は、製品○○売上高XXX百万円と製品□□売上高XXX百万円から構成される。」・経営成績の記述、例えば「研究開発費の合計は、20X1年はXXX百万円であった。」
A26
その他の記載内容から選択された数値又は数値以外の項目について財務諸表との整合性を評価する際、監査人は、その他の記載内容に含まれる財務諸表の数値又は数値以外の項目と同一の情報、要約した情報又はより詳細な情報を提供することを意図した情報の全てを財務諸表において対応する情報と比較することは要求されていない。
A27
比較する数値又は数値以外の項目の選択は、職業的専門家としての判断に関する事項である。その判断に関連する要因には、以下のような事項を含む。・数値又は数値以外の項目の記載の方法や文脈を考慮した重要度。例えば、主要な比率又は金額として記載された場合など、記載の方法や文脈は、利用者が数値又は数値以外の項目をどの程度重要と考えるかに影響を与えることがある。・定量的である場合、財務諸表又はその他の記載内容の関連する勘定又は項目との比較における、相対的な金額の大きさ・その他の記載内容における慎重な取扱いを要する特定の数値又は数値以外の項目(例えば、上級経営者の株式報酬)
A28
本報告書における監査人の責任は、その他の記載内容に対する保証業務を構成するものではなく、またその他の記載内容について保証を得て意見又は結論を表明する義務を課すものでもない。それらを認識した上で、第13項(1)の要求事項に対応するための手続の種類及び範囲を決定することは、職業的専門家としての判断に係る事項である。対応するための手続例には以下がある。・財務諸表の情報と同一であることが意図された情報については、当該情報と財務諸表を比較する。・財務諸表の開示と同じ意味を伝えることが意図された情報については、使用された文言を比較し、また使用された文言の相違の重要性及び当該相違により意味が異なるかどうかを検討する。・その他の記載内容の金額と財務諸表の調整を経営者から入手し、以下の手続を実施する。-当該調整における項目を財務諸表及びその他の記載内容と比較する。-当該調整における計算が正確かどうかを確認する。
A29
その他の記載内容から選択された数値又は数値以外の項目と財務諸表との整合性の評価には、その他の記載内容の性質に応じ、財務諸表の表示方法との比較が含まれる。
(2)その他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識との間に重要な相違があるかどうかの検討(第13項(2)参照)
A30
その他の記載内容には、監査人が監査の過程で得た知識と関連する数値又は数値以外の項目が含まれることがある(第13項(1)に関するものは除く。)。当該数値又は数値以外の項目の例には以下が含まれる。・生産、受注及び販売の実績に関する開示(生産量、受注量又は販売量に関する開示)・「当社は製品○○と製品□□を当事業年度に発売した」という記述・「当社は主として○○国において事業を行っており、また□□国及び△△国においても事業を行っている。」等の主要な事業拠点の要約
A31
監査人が監査の過程で得た知識には、監査基準報告書315「重要な虚偽表示リスクの識別と評価」に従って得た、企業及び企業環境、適用される財務報告の枠組み並びに企業の内部統制システムに関する監査人の理解が含まれる。監査基準報告書315では、以下の事項を含め、監査人が理解しなければならない事項が規定されている。(1)企業の組織構造、所有とガバナンス及びビジネスモデル(ビジネスモデルがITをどの程度活用しているかを含む。)(2)企業に関連する産業、規制等の外部要因(3)企業の業績を評価するために企業内外で使用される測定指標(4)企業の内部統制
A32
監査人が監査の過程で得た知識には、将来に関連する事項が含まれることがある。例えば、のれん等の無形資産に関する減損テストにおいて経営者が使用した仮定を検討する場合、又は継続企業の前提に関する経営者の評価を検討する場合に、監査人が検討した事業の予測や将来キャッシュ・フローが含まれることがある。
A33
その他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識の間に重要な相違があるかどうか検討する際に、監査人は、その他の記載内容の誤りが重要な誤りとなり得る項目に焦点を当てることがある。
A34
その他の記載内容における多くの事項について、監査において入手した監査証拠及び結論に対する認識と照らし合わせて検討することで十分なことがある。監査人が、経験豊富で監査の主要な部分に精通しているほど、関連する事項に対する監査人の認識と照らし合わせることで十分である可能性が高まる。例えば、経営者若しくは監査役等との協議又は取締役会議事録の通読といった監査期間中に実施した手続から得た情報に関する監査人の認識と照らし合わせることのみにより、監査人はその他の記載内容と監査人が監査の過程で得た知識の間に重要な相違があるかどうか検討することが可能な場合もある。
A35
監査人は、例えば以下のような場合には、重要な相違があるかどうかの監査人の検討の基礎として、関連する監査調書を参照する、又は関連する構成単位の監査人を含む関連する監査チームのメンバーに質問を行うことが適切と判断する場合がある。・その他の記載内容において、主要な製品の製造中止計画が記述されている場合、監査人は当該中止計画を知っていても、当該記述が監査人が監査の過程で得た知識と重要な相違がないかどうかに関する監査人の検討を裏付けるために、当該領域の監査手続を実施した監査チームメンバーに質問を行う場合がある。・その他の記載内容において、監査において対応した訴訟の重要な詳細が記述されており、監査人の記憶が曖昧な場合、監査人の認識を裏付けるために、その詳細が要約された監査調書を参照することが必要となる場合がある。
A36
監査人が関連する監査調書を参照するかどうか、又は構成単位の監査人を含む監査チームのメンバーに対して質問を行うかどうか、及びその場合の範囲は、職業的専門家としての判断に係る事項である。したがって、その他の記載内容に含まれる事項に関して、監査人が関連する監査調書を参照する、又は構成単位の監査人を含む監査チームのメンバーに対して質問を行うことが必要でない場合もある。
(3)その他の記載内容における重要な誤りのその他の兆候への注意(第14項参照)
A37
その他の記載内容には、財務諸表に関連しておらず、また監査人が監査の過程で得た知識の範囲を超える事項に関する議論が含まれることがある。例えば、その他の記載内容は、企業の温室効果ガスの排出に関する記述を含むことがある。
A38
財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容における重要な誤りのその他の兆候に注意を払うことは、監査人の倫理規則の遵守に資する(第4項参照)。重要な誤りのその他の兆候に注意を払うことで、結果として監査人は、その他の記載内容に重要な誤りがあると思われる以下の事項を識別する場合がある。・その他の記載内容を通読した監査チームメンバーが監査の過程で得た知識とは別の一般的な知識と、その他の記載内容との相違点・その他の記載内容における不整合《4.重要な相違があると思われる場合又はその他の記載内容に重要な誤りがあると思われる場合の対応》(第15項参照)
A39
監査人は、重要な相違(又は重要な誤りがあると思われるその他の記載内容)に関する経営者との協議において、経営者に対して、その他の記載内容における経営者の記述の裏付けの提供を要求する場合がある。監査人は、経営者からの追加の情報又は説明により、その他の記載内容に重要な誤りがないと判断することもある。例えば、経営者の説明は、判断の相違に関する合理的かつ十分な根拠を示すことがある。
A40
反対に、経営者との協議は、その他の記載内容に重要な誤りがあるという監査人の結論を裏付ける追加の情報を提供する場合がある。
A41
判断に関する事項について経営者に疑問を呈することは、事実に関する事項の場合に比べて困難な場合がある。しかしながら、状況によっては、監査人はその他の記載内容が、財務諸表と整合しない、又は監査人が監査の過程で得た知識と整合しない記述を含むと結論付ける場合がある。当該状況においては、その他の記載内容、財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に疑義が生じることがある。
A42
その他の記載内容には様々な情報が含まれるため、起こり得る重要な誤りは多岐にわたる。したがって、監査人がその他の記載内容に重要な誤りがあるかどうかの判断のために実施するその他の手続の種類及び範囲は、その状況における監査人の職業的専門家としての判断に関する事項である。
A43
ある事項が財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識と関連しない場合、監査人は監査人の質問に対する経営者の回答を十分に評価することができないことがある。そのような状況であっても、経営者からの追加の情報若しくは説明又はその他の記載内容に対する経営者による草案の変更に基づき、監査人は、重要な相違又はその他の記載内容に重要な誤りがあると思われる状況には該当しないと判断することがある。監査人はそのような判断ができない場合には、経営者に対し、適格な第三者(例えば、経営者の利用する専門家又は顧問弁護士)への相談を要請することがある。監査人は経営者による第三者への相談結果を検討してもなお、その他の記載内容に重要な誤りがあるかどうかを判断できないことがある。その場合に監査人は、以下の措置を講じるときがある。・監査人の利用する法律専門家から助言を得る。・監査報告書に及ぼす影響、例えば経営者から課された制限がある状況を記載するかどうかを検討する。・現実的な対応として可能であれば、監査契約を解除する。
(1)監査報告書日以前に入手したその他の記載内容に重要な誤りがあると監査人が判断した場合の対応(第17項参照)
A44
監査役等への報告後においてもその他の記載内容が修正されない場合の監査人による措置は、監査人の職業的専門家としての判断による事項である。経営者及び監査役等から提供された、修正しないことに関する根拠に利用者に誤解を与える意図が疑われる場合などにおいては、監査人は、経営者又は監査役等の信頼性や誠実性に関する疑義を生じさせるかどうかを考慮することがある。監査人は、法律専門家に助言を求めることが適切と考えることもある。監査人は、職業的専門家としての基準及び適用される法令等により、当該事項を規制当局に報告することが求められる場合や国によっては関連する職業的専門家団体に報告することが求められる場合がある。
監査報告書に関する事項(第17項(1)参照)
A45
まれではあるが、経営者及び監査役等がその他の記載内容における重要な誤りの修正に同意せず、経営者及び監査役等の誠実性に関して疑義が生じ、監査証拠全体の証明力が疑われる場合には、財務諸表に対して意見不表明とすることが適切なことがある。
監査契約の解除(第17項(2)参照)
A46
経営者及び監査役等がその他の記載内容における重要な誤りの修正に同意せず、経営者及び監査役等の誠実性に関して疑義が生じ、監査の過程で入手した経営者及び監査役等の陳述の信頼性が疑われる場合には、現実的な対応として可能であれば、監査契約を解除することが適切なことがある。
(2)監査人が監査報告書日より後に入手したその他の記載内容に重要な誤りがあると判断した場合の対応(第18項参照)
A47
監査報告書日より後に入手したその他の記載内容に重要な誤りがあると監査人が判断し、かつ当該重要な誤りが修正された場合に必要となる監査人の手続には、第16項(1)に従った修正が行われたことの確認が含まれる。また、すでにその他の記載内容が発行されている場合には、その他の記載内容を受領した者に対して修正内容を伝達するために経営者が行う対応を検討することが含まれることがある。
A48
監査役等がその他の記載内容の修正に同意せず、監査人が未修正の誤りに対して、監査報告書の利用者の注意を喚起するために適切な措置を講じる場合には、職業的専門家としての判断を要し、また関連する法令により影響を受ける場合がある。したがって、監査人の法的権利及び義務に関して、監査人は法律専門家に助言を求めることが適切と考えることがある。
A49
その他の記載内容の重要な誤りが未修正である場合、未修正の重要な誤りに関して監査報告書の利用者の注意を喚起することを求めるために、監査人がとる可能性がある適切な措置には、法令により許容される場合、例えば以下が含まれる。・第21項に従い、その他の記載内容に重要な誤りがある旨を含む新しい又は訂正された監査報告書を経営者に提供すること並びにこの新しい又は訂正された監査報告書を監査報告書の利用者に提供することを経営者に要請する。このために監査人は、監査基準報告書の要求事項又は適用される法令の観点から、新しい又は訂正された監査報告書の日付に対する影響を検討することが必要となる場合がある。監査人は、新しい又は訂正された監査報告書をその利用者に提供するための経営者の対応を確認することもある。・その他の記載内容の重要な誤りに対して、例えば、株主総会において当該事項の説明をする等、監査報告書の利用者の注意を喚起する。・未修正の重要な誤りに関して、規制当局等に報告する。・監査契約の継続に関連する事項を検討する(A46項についても参照)。
6.財務諸表に重要な虚偽表示がある場合又は監査人の企業及び企業環境に関する理解を更新する必要がある場合の対応(第19項参照)
A50
監査人は、その他の記載内容の通読によって、以下の事項に影響する新たな情報に気付くことがある。・企業及び企業環境、財務報告の枠組み並びに企業の内部統制システムに関する監査人の理解。また、それらに応じて、リスク評価を修正する必要性(監基報315第7項、第18項及び第36項参照)・識別した虚偽表示が監査に与える影響や未修正の虚偽表示が財務諸表に与える影響を評価する監査人の責任(監査基準報告書450「監査の過程で識別した虚偽表示の評価」参照)・後発事象に関する監査人の責任(監基報560第9項及び第13項参照)
(1)文例(第21項及び第22項参照)
A51
付録2には、監査報告書の「その他の記載内容」区分の文例を記載している。
(2)財務諸表に対する監査意見が限定意見又は否定的意見である場合の報告事項(第22項参照)
A52
除外事項付意見の原因となった事項がその他の記載内容に含まれていない、又は参照されておらず、当該事項がその他の記載内容のどの部分にも影響しない場合、財務諸表に対する限定意見又は否定的意見は第21項(5)で要求される記載に影響しないことがある。例えば、適用される財務報告の枠組みにより要求される、担保資産を開示しないことによる財務諸表に対する限定意見は、本報告書において要求される事項に関連しないことがある。その他の状況においては、A53項からA56項に記載された報告事項があることがある。
財務諸表の重要な虚偽表示による限定意見
A53
監査意見が限定意見である場合、財務諸表に対する限定意見の原因となった事項又は関連する事項について、その他の記載内容にも重要な誤りがあるかどうか検討することがある。
監査範囲の制約による限定意見
A54
財務諸表の重要な項目に関して監査範囲の制約がある場合、監査人は当該事項に関して十分かつ適切な監査証拠を入手していない。このような状況において、監査人は、当該事項に関連するその他の記載内容の数値又は数値以外の項目が、重要な誤りとなるかどうかを判断できないことがある。そのような場合には、第21項(5)の適用において、監査人は、限定意見の根拠区分で記載されている事項に関連したその他の記載内容の記述を検討できない旨を記載することがある。ただし、監査人は、その他の記載内容に、他の未修正の重要な誤りを識別した場合には報告することが要求されている。
否定的意見
A55
否定的意見の根拠区分に記載した特定の事項に関連して、財務諸表に対する否定的意見を表明する場合であっても、第21項(5)②に従って監査人は識別したその他の記載内容の重要な誤りを監査報告書において報告しなければならない。財務諸表に対して否定的意見を表明する場合、監査人は第21項(5)で要求される記載において、財務諸表に対する否定的意見の原因となった事項又は関連する事項に関して、その他の記載内容の数値又は数値以外の項目に重要な誤りがあることを示すことがある。
意見不表明
A56
監査人が財務諸表に対する意見を表明しない場合、その他の記載内容に関する区分を含め、監査に関するより詳細な情報を提供することにより、財務諸表全体に対する意見不表明と矛盾しているとの誤解を与えるおそれがある。したがって、このような状況においては、監査基準報告書705第27項で要求されるとおり、監査報告書には、その他の記載内容に関する区分は含めない。
(3)法令等により監査報告書の様式又は用語が規定されている場合(第23項参照)
A57
監査基準報告書200のA54項は、監査人が一般に公正妥当と認められる監査の基準に加えて、法令により要求される事項の遵守が求められる場合があることを説明している。この場合、監査人は本報告書とは異なる監査報告書の具体的な様式や文言の使用を義務付けられることがある。一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して実施されている場合の監査報告書の一貫性が保たれていることにより、監査が一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して実施されていることを容易に認識でき、市場における監査の信頼性を高める。その他の記載内容に関して法令等により要求される事項と一般に公正妥当と認められる監査の基準との間の差異が、監査報告書の様式や文言のみに関連しており、最低限、第23項に記載された事項が監査報告書に含まれる場合には、監査報告書において、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠している旨を記載することができる。したがって、この場合、監査人は、監査報告書で使用する様式や文言が、法令等により監査報告書に関して要求される事項によって規定されている場合であっても、一般に公正妥当と認められる監査の基準の要求事項を遵守したと判断される。